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朱雀と弟  作者:
第四部  借り物を返す旅路のはじまりにさしのべらる手二度と離たず
158/175

36-1 来たなロリ

三十六.鈴蟲

「あれ?蛍さん、やけに元気そうですね」

秋の夜、虫の声をきく宴だった。

「やっぱ若いお嫁さんに刺激されて?」

「そんなことないよ」

「うわ、来たなロリ」

「ロリじゃねえし。眞木ちゃんもう大人だし」

「でも二十才以上も歳違うんでしょ?もう親子じゃないですか」

「仕方ないじゃん、そういう設定なんだから」

「栄養ドリンクやろうか?よく効くやつ。マムシとかオットセイとか」

「いらないし。まだまだ自分でやれるし」

蛍は悪態つきながら、こほんと咳払いをした。

「俺たちそんな関係じゃねえんだよ。今だって別に、趣味の話で

盛り上がってるだけだし」

「うわ、なんか介護ぽくて逆にやらしいな。話相手から始めよう的な?」

「介護言うな。まだ人の手は必要としてないわ」

「趣味って何ですか?」

「蹴球だよ。彼女も見てみたいんだってさ。どうしよ、うちの庭も少し

広げようかなー」

「庭なんかでやったら池ポチャしますよ、五十前のおっさんが」

「だから年を言うなって」

「池ポチャってお前がはまるんだろ?まさに年寄りの冷や水だな」

「少しでも老化に抵抗したいんだよ。この男心がわからんかねえ」

蛍がゆるゆる首をふるので、夕霧はくすりと笑った。

この人本当変らないな

いつまでも少年みたいな目をしている。

「柏木、元気かなあ」

蛍があまりにもふっと言うので、夕霧もそっと故人を思った。

「薫が成長するたびにさ、ああもう何年たったんだなって思うよ」

「じじくさいすね」

「だってじじいだもん」

蛍が苦笑して酒をのむ。

「葵と同じだよな」

光はぽつりと言った。

「葵も、夕霧が生まれてすぐ逝っちまった。なぜいい人は皆、先に

逝くのかね」

夕霧は光の顔をそっと注視した

今まであまり見せたことのない、厳かな顔。

「でも薫にはお母さんがいるからな。誰かさんみたいに生意気には

育たないことを祈るよ」

「誰かさんて俺かよ」

「他に誰がいるんだよ」

冗談いいつつ、酒酌みかわすのも悪くない。

薫は俺と同じ、か…

夕霧はゆっくり杯をなめた。

そうだよな。だったら余計寂しくないように

俺たちが支えてあげなくちゃならない。


かわらけ二周くらいした頃

「冷泉さんからお手紙きたよー」

蛍が水色の紙をひらひらさせた。

女のような美しい手で、丁寧に書いてある。

「皆さんこんばんは。

楽しい宴をなさっているとお聞きして、ついお便りしました。

夕くんお元気ですか?

もしそこにいたら、私の本命は夕くんだけだよってお伝えください」

「冷泉さんw」

「ちょっと、お前らどうなってんの?だめだよそういうの。お父さん

泣いちゃうよ?」

「どうにもなってねえし。何だよこのいかがわしい文面は」

やけにきれいな紙だった。いい匂いするし。無駄に艶。

「冷泉さんきっと寂しいんだよ。譲位した後、お前がちっとも遊んで

くれないから」

「だってお互い大人だし。いろいろあるだろ」

「お前のいろいろは子作りだろ」

「うるさいな。できちゃうもんは仕方ないだろ」

「いや、さすがに十二人は多いと思うぞ?イレブンできちゃうよ。

補欠も入れたイレブンできちゃう」

「お前はガキに囲まれて楽しいだろうけど、冷泉さんは一人寂しく

女たちのお世話だぜ?たまにはかまってやらなきゃ可哀想だろ」

「むう…」

子のことを言われると夕霧弱かった。

少し反省しつつ、それでも一言いい返す。

「でもそれ、親父宛の文だろ」

「まあそれもそうか」

光は美しい文をそっと懐にしまうと

「じゃ、お呼ばれしようかな」

よっこいしょと席を立った。

蛍とか夕霧とか、今日のお客さんを皆連れて

お忍びで冷泉院に参る。

冷泉はひとりでお祈りしているところだった。

「…え?」

父たちが来てくれたというので、少し驚いて立ち上がる。

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