33-4 未来変えない?
なあ、君ならどうしてほしかった?
俺たちに娘がいたとしたら。
きっちり三日通ったあと、蛍の足ははたと止まった。
祖父宮悲しがる
父髭黒やはりなと罵る
でももうすこしだけ、考えさせて。
蛍は、亡き妻にたずねた。
自分がつらい思いをしたのなら、よけい娘は幸せにしたいよな。
俺もそうだよ
つらい思いをした彼女を、なんとか幸せにしてやりたい。
俺に抱かれることが彼女の幸せなのかな
彼女はそれを本当に望んでいるのだろうか。
わからなかった
蛍には、真実がわからない。
まあともかく、もうすこし交流してみないことには
お互いわかりあえないよな。
ふっとそう思う。
蛍はごく簡単な決意をして、眞木柱に会いにいった。
眞木柱はご機嫌ななめらしく、格子戸を開けてくれない。
蛍はとんとん、その戸をたたいた。
「まきちゃん、いる?」
いるのはわかっていた
すぐそばの気配でわかる。
「そこでいいから、きいて」
蛍はすうっと、息を吸った。
彼は眞木柱が嫌いではなかった。そんなに浮気者でもない。
髭黒に不快がられたくもないし、玉ちゃんに軽蔑されたくもない。
蛍は現在を変えたかった
自分の言葉で、今を変えたい。
「俺のこと、すぐに受け入れられないのはわかる。俺も君の若さ
と美しさに、正直戸惑うよ」
ここが物語の世界なら
俺たちにはもうすこし自由があるはずだと思った
今に戸惑う自由。
今を選びとる自由。
蛍の手がぐっと、格子をつかむ。
「俺、このままじゃ嫌なんだ。君と仲良くなれないなんて。君を愛せ
ないなんて。俺、この本捨てるよ。すこしずつ、すこしずつわかって
いくから。近づいていくから。だから…俺と一緒に、未来変えない?」
一瞬時が止まったように見えた。
すべての音が消える。
誰ひとり、身じろぎひとつしなかった。
俺、間違ったこと言ったかな…
蛍が不安げにきゅっと身を固くする。
さぶらふ女房も眞木柱も、母北の方ですら、蛍の叫びをきいた。
精一杯しぼりだした、心の叫び。
未来を変える…?
母の目が思わずうるんだ
娘はそっと戸をあけた
突然内側から開くから、つかんでいた蛍の方が驚いた
あけた彼女と目が合う。
「すこしずつ、ですよ」
すべての警戒は解かない目だった。
それでも三割くらい窓をあけて、蛍に風を送ってくれる。
「ありがとう!」
蛍は思わず眞木柱を抱きしめた。
スポーツマンのくせにペース配分がない
加減するということがなかった
彼はいつも全力で人を愛す。




