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朱雀と弟  作者:
第四部  借り物を返す旅路のはじまりにさしのべらる手二度と離たず
132/175

32-8 大きくて明るい星

「私には、母上よりかあさまのほうがずっと身近に感じられますわ」

明石姫君はほっとして笑った。

心配していた初産が平らかにすんで、心からほっとしている。

光に止められているのに、つい母と呼んでしまう姫君だった。

「紫は君の母じゃなくて、俺の女なの」

光は妙なところにこだわるから

父の前では、もちろん隠しているのだが。

「とてつもない大役だったけれど、無事にすんでよかったわね。本当

にお疲れさま。春宮さまのお子様だもの、大切にお世話しましょうね」

紫は微笑んで娘の労をねぎらった。

まだ若いのに、本当によくがんばってくれたと思う。

「かあさまのおかげですわ。かあさまが支えて下さったから」

姫君は何心なく笑って紫に甘えた。

それを何より嬉しく思いながらも

「明石様は、私よりずっと偉い方なのよ」

愛娘の髪を撫でながら、紫はそっと微笑んだ。

「ご自身でお生みになったあなたを、何も言わず旦那様に預けてくだ

さった。私が母親代わりに面倒をみるのも許してくださって。だから

あなたとも、こうして親しくなれたの。あなたなら考えられる?可愛い

娘を他人に預けて、めったに会えないなんて」

姫君はすこし黙って考え込んだ。

できない、かもしれない。

だって自分の子って本当に可愛いんだもの。

若君を抱きながら、まず無理そうだと首をふる。

「明石様はそれをして下さったのよ。内心どんなに寂しく、おつらかっ

たことでしょう」

紫はその心中を推し量ろうとした。

でも無理そうだった。

子のない自分の想像には、やはり限界がある。

「本当にすばらしいお母様なのよ。身分なんて関係ない。誇りに思って

感謝してね。明石様のおかげで、今のあなたの幸せがあるのだから」

姫君は神妙な面持ちで聞いていたが

何を思い出してか、くすりと笑った。

「母上も同じことをおっしゃってたわ。紫様のご恩を忘れてはならない。

今のあなたがあるのも、紫様のおかげだからって」

紫はその言葉にはっとした。

そうか…

やはり明石さんは偉い

だからかなわないんだと思った

春宮女御の母になるようなお方だ

やはり器が違っている。

「かあさまたちは、似てらっしゃるのね」

姫君は素敵な母を二人も持って、心底嬉しそうだった。

にこにこと無邪気に笑う。

「太陽と月のように、二人で私を守って、育ててくださったのね」

紫は娘の笑顔に微笑を返すと、かすかに首を振った。

「明石様は月ではないわ。太陽よりも大きくて明るい星なのよ。いつも

輝いているけど、太陽に遮られて、普段は見えないだけなの」

姫君はなぜかその言葉を遺言のように聴いた。

こくんとひとつうなずいて、母達への感謝を誓う。

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