32-7 次の次の帝
光四十一歳の弥生、姫君がたいらかに子を出産した。
しかも男の子。
「これは次の春宮にするしかないね」
つまり、次の次の帝ということで。
光、むふふと嬉しそうに笑う。
大将の、あまたまうけたなるを、今まで見せぬが、恨めしきに。*
「夕霧が子どもいっぱい作るんだけど、ちっとも見せてくれないん
だよ。ひどいよね」
光は若君を抱いてよしよししながら言った。
実はこれ、去年の正月にも言っていた。
髭黒の子(二人目)を見せにきてくれた玉鬘にぽろり。
今は娘にぽろり。
「だって仕方ないだろ、紫式部俺に全然興味ないんだから」
夕霧はぷんとそっぽをむいた。
たしかに雁出産の記述は毛ほども出てこない。
「ひどいな。大切なことだから二度言ったんだよ。これは相当見せ
に来ないってことでしょ」
「もうすこし大きくなったらね」
「えー今すぐー」
「うるさい」
すっかり幸せな祖父づらしてる父に、軽く悪態ついている。
「ご出産おめでとうございます」
冷泉帝からも産養いのお祝いが届いた。
山にこもった朱雀に頼まれ、その分までことづけてくれる。
「兄貴にも見せてやりたいなあ」
光は微笑みながら、孫の頬を撫でた。
この子はもちろん朱雀の孫でもある。
その頃朱雀は、父のこと、葵のこと
それにまだ生きてる三宮と柏木のことも祈っていた。
紫さんの無事も祈って。いろいろ欲張りに祈る。
どうか皆が幸せになりますように。
夕霧や光がいてくれるとしても、不安がないとは言えなかった。
未来が台本どおりなら
孫が生まれたこの年いよいよ
柏木が、その懊悩の発端となる三宮垣間見をすることになる。




