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朱雀と弟  作者:
第四部  借り物を返す旅路のはじまりにさしのべらる手二度と離たず
130/175

32-6 四十の賀

年末になって、いよいよ光四十の賀

大きな宴がふたつあった。

まず神無月

紫が光のために二條院でお祝いをする。

美しいしつらえをして、楽人、舞人を多く呼んだ。

「面倒くさいな。まあ柏木と一緒なら舞ってもいいけど」

夕霧はそっけない態度で、でも美しく入綾を舞った。

隣の柏木と息もぴったり合っている。

紅葉が散って、昔の紅葉賀が思い出された。

たしかにあの時の光は、鬼神のごとき美しさだったわけだが。

「お父上方と同じように、立派なご子息ね」

「官位はこちらのほうが、やや進んでらっしゃるわよ」

人々はそういって夕霧柏木を褒めそやした。

そうさ、俺は柏木と一緒に出世していくんだから。

夕霧、クールながらも少し誇らしげに柏木と微笑む。

「私も参りましょうか」

冷泉帝も父の長命を喜んで、つい行幸しようとした。

「あまり大げさにしないで下さいよ、年齢感じちゃうから」

光が苦笑して辞退する。


それでも師走の廿日あまりに、今度は六條院で宴が開かれた。

今度は秋好中宮まで里帰りなさって、光の長寿を祝ってくれる。

「そんな、いいですよ。もっとささやかで」

言うのだが、宮廷人のほとんどが関係者のため

祝もたいそうにならざるをえなかった。

古き世の一の物と名ある限りは、みな、つどひまゐる御賀に

なんあめる。*

とにかく豪勢にしたいらしい。

「夕霧くん、右大将にします」

冷泉帝は、父を祝う代りに夕霧の位を上げてくれた。

まだ十九なのだが、秀才なかなかの昇進ぶり。

「すみませんね、気使わせて」

「いえ。前任者がやっと辞めたので」

にこにこ笑って言うから光も苦笑した。

まさか、何か手まわしてないよね、冷泉さん?

世の何者をも恐れぬ無邪気さだから、少し不安になる。

「ほら光、ここに座って」

光の席は太政大臣がしつらえてくれていた。

この人らしく、これまた豪勢。

「何か照れますね」

光は笑って頬をかいた。

太政大臣は年相応に恰幅もよくなっているが

光は相変わらず、いつまでも老いないような若々しさで微笑む。

「アンチエイジングは貴族の基本だよー」

蛍は得意の琵琶を抱えて、べべべんと弾いた。

光は琴を、大臣の和琴とあわせる。

「今日は競わないんですね」

「お前とはもう張り合わないことにしたんだよ。傷つくし」

「やっと悟ったんですか。もう、大人になっちゃって」

「うるさい」

言いながら、にやりと笑った。

婿の夕霧がいい勢いで、大臣機嫌がいい。

年末だし、派手なことは控えようと思ったのだけど

冷泉帝、春宮、朱雀院、秋好中宮

尊貴な人のほとんどが縁者なので仕方ない。

除夜の鐘に突き出される前のこの世の煩悩

すべて集めだしたかのように。

派手で雅な宴になった。

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