32-5 昨日より今日
「えっ、妊娠?!」
この前嫁入りさせたばかりの娘がもう妊娠したというので
光はすっかり驚いて取り乱してしまった。
「妊娠てあんな若くてもできるの?!」
「女は皆違うんだよ。体が丈夫なら、若くても産める」
こういうことにはむしろ夕霧のほうが冷静で
妹の具合をきき、妊娠期に応じたケアをしてやる。
夕霧が手慣れているのには理由があった。
彼はこの時期、すでに息子を持っている。
本文中に記載はないが。一切記載ないのだが。
「ちょっと初孫って重要なんじゃないの?夕くんなんで見せてくれ
ないのー」
「見せて何になるんだよ。姿を残せるわけでもなし」
夕霧はさらっと言って、相変わらずそっけなかった。
男の子ってこんなもんかねえ。
父光も思わずほろりとする。
「とにかく安定期までは注意が必要だから。変なストレスかけんなよ」
慣れた調子で去ってしまった。
明石姫君は悩ましげに、でも実家に帰れてくつろげるのか
紫と気安くすごしていた。
この機に、三宮さまにもお会いしようかしら。
父朱雀からもねんごろな消息がきていた。
「ふつつかな娘ではございますが、どうか許してやってください。
よろしくお願いいたします」
かしこまって、すごい平身低頭
まるで私のお嫁さんに下さるような言い方ね。
先帝ともあろうお方も、娘の前では一人の親らしい。
思わず苦笑してしまう。
あるべきかぎり、気高う、恥づかしげに整ひたるに添ひて、花やかに
今めかしく匂ひ、なまめきたるさまざまの薫りをも、とり集め、めでた
き盛りに、見え給ふ。*
去年より今年はまさり、昨日より今日はめづらしく、つねに目馴れぬ
さまし給へるを、「いかで、かくしもありけん」と、おぼす。*
相変わらず、紫式部の紫褒めは著しかった。
歳とともに増す、永遠の輝き。
三宮も緊張しつつ、彼女と対面した。
「私も絵が好きでね。人形も、いつまでも捨てられなかったわ」
そんなふうに話す姿が若々しく美しい。
本当にやさしそうな方。
宮さまも、すぐ紫に好意を感じた。
頻繁に手紙などをやりとりして、同じ邸内どうし
隔てなく付き合う。




