31-5 冷や水ぶっかけ発言
「本当にありがとうございました。あなたの一言があったから
俺はがんばれたように思います」
夕霧は深く頭を下げた。
お世辞ではない
のぼせた俺の頭に、冷や水ぶっかけてくれたあの一言
あれがあったから
今まで上を目指して、ひたむきにやってこられたように思う。
夕霧は中納言になっていた。
光など、太上天皇になずらえる待遇で
冷泉帝相変わらず、実の家族に大盤振る舞い。
「父上やりませんか?帝。けっこう楽しいですよ」
にこにこ笑って、まだおすすめしている。
「ごめん、俺もうそんな体力ないのよ」
光はさびしげに笑って断ったりしていた
娘を入内させるので精一杯。
内大臣さんは太政大臣になったし
慶びがあると加階するってのが、ひとつのパターンらしい。
「まだ中納言なので不足と思われるかもしれませんが。雁のこ
と、大切にします」
母がわりのこの乳母に、しっかり約束した。
彼女は夕霧の立派な姿に恐縮しきりで
「六位宿世などと失礼なことを申しまして。本当にすみません」
ぺこぺこ頭をさげた。
いえいえ、本当に感謝してるんだよ
なんだかんだ言って、俺は甘やかされてきたと思う。
叱ってくれる人は貴重だった
信じて、待っててくれる人も。
夕霧はしあわせだった
やさしい家族に囲まれて
祖母の住んでた三條邸を改修して、雁とともに住もうと思う。
内部はあまり変えないつもりだった
昔ともに住んでたときの、俺と雁の部屋もそのままで
祖母や祖父、母、柏木たちとの思い出もそのまま残して
きれいに移り住む。




