31-4 ねくたれの御朝顔
「んー…」
二日酔いに後朝の疲れが重なって、夕霧はまだ眠そうだった。
でも今ですらすでに遅い時間帯なので
夜も明け果てた頃、そっと退出する。
ねくたれの御朝顔、見るかひありかし。*
見ないでよ。
夕霧、眉間に少し皺が寄っていた。
頭、痛い…
ほうーっと息をつきながら、六條邸へ帰る。
「どうだった?新妻の抱き心地は」
光はにやりと笑って夕霧を眺めた。
親のひいき目なのか、いつもより美しく輝いて見える。
「ん?」
夕霧は眉をよせてふり向くと
「別に」
いつものそっけなさで返した。
とりあえず、服の馴れ方がただならねえんだけど。
甘い匂いもつけられちゃってるし
すっかり女に存在感主張されてる。
まあこの子は気づいてないんだろうな、そういうことに。
ただ無邪気に頭痛抱えて帰る夕霧を、父は可愛く、いとおしく思った。
「これで女に慣れたからって、調子乗って浮気すんなよ。内大臣さん
って怖いから。器の広い人と見えるけど、結構嫉妬深いし、難しい人
だから」
また偉そうに説教した。
「だからそれはあんたのせいだろ。六位もお后も」
「いや、俺は悪くない」
「もう」
光はにこにこしながら
「雁ちゃんとならお似合いかな」とうれしく思った。
気心も知れてるし、年上女房だし。
夕霧ぜったい年上女房が似合うよ
言わないけど、そう思う。
悪態つきあうふたりは兄弟のように見えた。
夕霧は光に慣れてるので、おっさんおっさんとのたまうが
普通の人から見れば、やはりふたりの美には特別の輝きがある。




