28-3 本当の姉弟
「俺たち、実の姉弟だったみたいですね。それなのに、あんな熱心
な文を送ってしまって。知らなかったとはいえ、我ながら恥ずかしい
です。本当ごめんなさい」
「いえ、こちらこそ」
柏木は、玉鬘と初めて対面した。
ただし、姉弟としてだが。
「しかし危なかったですね。俺なんて惚れっぽいから、あなたのこと
本気で好きになりかけてて。人の道踏み外すところでした」
柏木は、少し自嘲的に笑ってみせた。
なりかけてたじゃない。本当はかなり好きになってた。
少し切なく、胸が痛む。
「俺のこと、まだ警戒してますか?」
人づてに会話されて、柏木は苦笑してしまった。
「さすがの俺も、姉に手を出そうとは思いませんよ。宮仕えのお手伝い
とか、そういう下働きでお役に立ちたいと思います」
「はい…」
玉鬘はそっと嘆息した。
知りながらずっと黙ってたことを、お詫びしたい。
でもまだ早い気もした
この聡明な子の情熱が、もうすこし冷めるまで。
「しかし変な時代ですよね。姉弟なのに、ずっと離れて顔も見ないで
過ごしていたら、まるで他人かと思って、好きになってしまえるなんて」
少し恐ろしく思った。
きらびやかな幕の下の、乱れた世界。
「でも、もったいない気もしますね。時代さえ違えば俺たち、もっと違っ
た関係を築けたかもしれないのに」
「たとえば、どんな関係ですの?」
「うーん、たとえば、一緒に球蹴って遊んだり、海で泳いだり、紅葉
狩りしたり、雪合戦したり」
「みんな外ね」
「うん。一緒に遊んで、笑いあうような関係が築けたように思うんだ。
だって、郊外の子なんて皆遊んでるよ。農民の子も、漁民の子も。
皆楽しそうに」
「まあ」
貴族を全否定してるなと思って玉鬘は苦笑した。
「でも楽しそうですね、自由で」
「でしょ?」
柏木もにこっと笑う。
「今度生まれ変わったら、男の子に生まれますわ。それか、走っても
困らないくらい髪を短くした女の子に」
「ええ。そのときは一緒に遊びましょうね」
明るく笑うから、無邪気ないい人だと思った。
「はい、きっと」
玉鬘も久々に、安心しきって微笑む。




