28-2 悪い子だ
「宮仕えを躊躇していただろ?蛍なんかが親切心を見せて気をひいて
たらしいけど、行幸に冷泉さんを見てからは、心が決まったらしい。
まあ女なら仕方ないよな。冷泉さんにはかなわないだろう」
「さあ、どうでしょうね。誰が一番お似合いなのか。冷泉さんには、やん
ごとなきお后女御がいるわけだし。尚侍なんて辞めればただの人なん
だから、それを理由に蛍さんを引き離すのも酷でしょう」
夕霧は、父にも大人びた返答をする。
「難しいな。俺一人で決められることでもないし。人の恨みをかうのも
嫌だしね。夕顔が生きていた頃から可哀想に言っていた人だから、
気になっていたんだ。いきなり実父の所へいっても受け入れられない
だろうと彼女が心配してたから、うちに引き取ったんだけどね。俺が
かしずいて立派に仕立ててやったから、内大臣も一人前の娘と認め
る気になったんだろう」
光は事実をゆがめながら、もっともらしく述べた。
嘘くさ
夕霧、はなから信用していない。
「世間ではいろいろ疑ってるようですね、あなたたちのことを」
少し出かたを見てやろうと思った。
「ずいぶん相応しくないことを言うね。宮仕えだって、内大臣が許して
こうしようと思うとおりに従うつもりだよ。女は三つに従うものだが、俺
は良人でも父でもないのだから」
おのが心に、まかせんことは、あるまじきことなり*―
「内大臣さんなんて、いたく感心なさってましたよ。あんな愛姫ばかり
の御殿に住まわせておきながら、あの娘にだけは手を出さず、まじめ
に世話して宮仕えにまで出してくれるのかって。ありえないほどやさし
い心だってね」
「何、お前まで疑ってんの?」
光は回りくどい会話に飽きてきて、直接きいた。
「別にどうでもいいですよ、俺は。あなたがどんなかしずき方をして
誰を抱こうが、俺には関係ない」
夕霧不機嫌なのか、ぷいと横をむく。
「何お前、すきなの?」
光は「おや?」と思って、すこし微笑んできいた。
「なんならお前にやろうか。冷泉さんも、お前の頼みなら喜んできいて
くれると思うよ」
「あんたの手垢のついた女など、誰が」
夕霧は言った後、つい顔を赤くした。
例の水商売的な絵がいろいろ浮んでくるらしい。
「お前、見たな?」
光は、にやにや笑って夕霧をこづいた。
「いつからのぞきなんて趣味もったの?悪い子だ」
「うるさい」
言いながら、のぞきは事実なので仕方ない
うつむいてきゅっと口を結ぶ。
「のぞいて楽しむとか、趣味が渋いぞ。そういうのが好きなの?」
「貴方と一緒にしないで下さい」
「俺は両方楽しめるもの。そんなに俺から学びたいか?習得したいのか。
仕方ない、かわいい息子のためなら、俺ひと肌脱いでやってもいいよ?」
「とりあえず今すぐ逝け」
アホな会話を打ち切って、夕霧は去ってしまった。
そのまじめぶったけなげさに、光はくすくす笑ってしまう。




