27-4 季語なくない?
唐衣又からごろもからごろもかへすがへすぞからごろもなる*
「どう、これ?」
「まあひどい。馬鹿にしてるようですわ」
「だって末さんあまり好きなんだもの、これが」
光は玉鬘を苦しいほど笑わせて、末摘花に返歌をしてやった。
彼女の裳着のお祝いに
いいっていうのにでしゃばって、物をくれたお返しに。
「何これ」
「すごい」
「すごいね」
「何か歴史的な返歌がきましたよ、姫さま」
女房たちは慌てて末摘花をつついた。
末摘花は本から目を離すと
「おお」
ちらと歌をよんだが
「季語なくない?」
すこし首をひねった。
いやそういう問題じゃないだろ。
女房たちが、思わずつっこみそうになる。
「歌に季語は要らないんですよ」
「あ、そか」
「いったいどんな歌を送ったんです?」
「どんな歌を詠むとこれが返ってくるのか知りたいわ」
「いや別に。ふつうに」
末摘花は褒められたと思うのか、すこし照れていた。
「ずっと思ってたんだけどさ、唐衣ってカラコルムに似てるよね」
「何ですそれ」
「モンゴルの要衝」
「知らんわ」
末摘花は笑って、さすが古典研究者
心はつねにグローバルである。
「でもこれいいよね。『名月やああ名月や名月や』的な?なんか
俳愁ただよってるよ」
「ただよってないし。全くただよってないし」
「そう?」
末摘花はあっさり笑った。
女房たちにつっこまれつつ、今日も元気に本をよむ。




