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朱雀と弟  作者:
第三部  母なき子よたりいつたり集ひきてあひ惑はんやしあわせ探し
100/175

27-2 鬼修正

「はい、可愛い子なら大丈夫です」

玉鬘出仕の話をしたとき、冷泉帝は笑ってOKした。

彼は美人が好きである。

とくに面食いという意識はないが

そばに美人しか集まらないので仕方ない

美味い酒を飲みなれた人と同じ

それが普通と思っている。

光などは、生い立ちの悲しさのせいか

姿かたちの悪い女も同情で愛すところがあるが

冷泉兄にはそういう曇りがなかった

よくも悪くも、純粋に美で判断した。


「だって、顔は変えられないけど、性格は変えられますものね」

「えっ?!」

あまり微笑んで言うから、蛍は驚いて目を丸くした。

「変えられるって冷泉さん、変えちゃったりしてるんですか?」

「しないんですか?」

すこしきょとんとすると

「大丈夫。やさしくしますから」

にこっと笑って言う。

「何その熟練看護師みたいな言いぐさは。慣れですか?慣れちゃって

るんですか」

「ふふふ」

「ちょっと、兄にすごい子になってるよ。大きくなって、ただならぬ個性

でてきてるよ」

蛍はリアルにたじろいだ。その微笑が怖い。

「おい光、お前も親なら何か言えよ」

「言えないよそんな、帝だもの」

「だって息子だろ」

「夕霧には言えても、冷泉さんには言えない」

「まあ、たしかに…」

光の苦笑もごもっともに思えた。

光を帝にしたってこうはならないだろう

冷泉兄そのくらい欠点なく、完璧にできている。

「こええ、魔王みたい」

蛍はいい意味で苦笑した。

光の強いところを純粋培養したみたい

光にありがちな迷いやいびつさを、完全に排除している

しかも微笑

何ごとも微笑して、ばっさり斬った。

「朱雀さんに教わったんですよ」

「えっ、すー兄が?!」

「はい。とりあえずにこにこしてれば、帝は何とかなるからって」

「どんな教えだよ」

言いながら、でも正解かもしれないと思った。

こんな超絶笑顔でNOを言われたら、もう何も言い返せないわ

まさに鉄壁のディフェンス。

「冷泉さん、お前を超えたな」

蛍は確信して言った。

「あの方は、お生まれになった瞬間から俺などこえてるよ。藤壺さん

のお血筋だもの」

光はただ苦笑している。


「大げさな」

夕霧は、おっさん二人の派手なリアクションに

いつものクールな視線を返した。

「だってお前、可愛いけりゃいいってことは、どんなねじけた性格も直

しちゃうってことなんだよ?兄にの鬼修正入るってことなんだよ」

「鬼ってほどじゃないでしょ」

夕霧は兄帝のために少しフォローすると

「だってあの人、一晩一人じゃないし」

ごくさらりと言った。

「え?」

「複数呼ぶらしいですよ、たまに」

「何それ、同時なの?同時並行的な?」

「何がですか」

何を想像してんだよと夕霧は苦笑した。

「みんなでゆっくりお話するらしいですよ」

「言ってるお前もなんでそんな冷静なんだよ。最近ってそうなの?

最近の子は皆そうなの?!」

「興奮しすぎです」

蛍の異様な食いつきに、冷めた目を返す。

「あの人なりのやさしさなんだと思いますよ。一人だけ愛して、可愛が

れない人を作ったら可哀想でしょっていう」

「すげえ」

蛍は本当に感心していた。

「すげえ体力」

「体はってるな」

少し気遣いすぎなんじゃないかと光が心配する。

「だからか。いやさ、あんなに女御更衣あまたさぶらふのに、全然

いざこざが起きないから、何でかなとは思ってたんだよ。なるほど、

冷泉さんの人徳か」

蛍の言うように、冷泉兄の統治力は歴代帝の中でも群を抜いていた。

十、二十といる女たちに、不平不満を言わせたことがない。

それに呼応するかのように

この国もずっと災いなく、平和に治まっている。

「すげえ」

「なんというカエサル」

「マジでな。平安京に不戦のシーザー光臨した」

「ついに日ノ本も皇帝を戴くこととなったか」

「カエサルは皇帝じゃないだろ」

言いながら、夕霧も兄の手腕は認めていた。

この人は、たしかにすごい。

この人の技術と人望は卓越している。

鬼修正なんて言われてたけど

別に兄が何かを強制したり、強要したりすることはまずないし

その必要もなかった。

ただ、さぶらふ臣下たちが

彼に好かれたい、認められたいと思うあまり

己を変えてしまうだけである。

周りをも動かすそのカリスマ

微笑の美貌皇帝のもとで

パックスジャポニカ俄かに現出している。

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