前編
クリスマス短編です。
設定はあってないようなものなので暇つぶしでサラッと読む程度にどうぞ。
ふいに目が覚めた。
スマホのホームボタンを押せば時刻は6時。
今日はクリスマス。
何故よりにもよってリア充の祭典の日にこんな早起きなんだ。
休日はたっぷり昼まで寝てしまう私にはかなりめずらしい。
もう一眠りしようと頭を撫でる手のひらを感じながら布団をかぶり直したときだった。
「おはようございます」
「あー…おはようございます…」
うーん…こうも心地よい低音だと子守唄にもなるのか…あぁ日々発見…
「………誰?」
寝起きで腫れぼったい目とだるそうな目がパチリとあわさった。
※※※※※※※※※※
前提として、わたしに同棲している彼氏はいない。
ついでに言うと家族とも離れて暮らしているし、弟だって存在しない。
ここまではまず間違いない。
「つまり不法侵入ですよね」
「確かにそうなりますね」
どうぞと差し出されたお茶をすすりながら直立不動の姿勢でこちらを見るスーツ姿の男を見返す。
さて、早速間違い発見。
「どうして不法侵入者がいれたお茶をためらいもなく飲むんだ自分!!」
ああああ、と頭を抱える私に無表情のまま首をかしげる男。
「私、行動としては不法侵入でも名称は不法侵入者ではないのですが」
「そうね、自覚があってそんなに堂々としてるもんだからつい呼んじゃったわ不法侵入者さん」
「抜けてらっしゃるんですか」
「嫌味です!」
ばん、とテーブルをたたいても成る程失礼しましたと律儀に謝る。
なにこの打っても響かない感じ。
「はぁ…今すぐ警察に突き出しても良いですが素性くらいきいておきましょうか」
本心から言うと疲れた。
「申し遅れました。私、≦∝⊂‡∮∬から参りました¢*|}'$@\と申します」
どうぞよろしく、と言われてもこちらはポカーン。
な、なんだろう、とりあえず一番大事であろう部分が全く聞き取れなかった。
「えっ、と、あいどんとあんだーすたんどイングリッシュ?」
「米語ではありません」
じゃあ何語だ!
困った、全く素性は分からないがとりあえず乱暴をする様子もないから悠長に構えて(この時点で自分も大概普通ではないとはこの時は自覚なし)いたけど、この国の人ではないなら警察に突き出すだけじゃすまないかもしれない。
不法侵入の前に不法入国だったらどうしよう、ぱっと見すこーし日本人離れかもしれないけど顔立ちは整ってるから悪人ヅラにも見えないし…いやいや、人は見かけによらないとよく言うではないか。
うんうん唸るわたしに首をかしげた後、男は納得したようにああ、と頷いた。
「言っていませんでしたが、私この星の者ではないので共通の意味ではない言葉が聞き取れないのは仕方がないですね」
これは失礼しました、と頭を少し下げる男に本日二回目のポカーン。
…やばい、もしかして精神疾患でもある?
「至って正常です」
「口に出てた?!」
いえ、あ、おかわりいりますか?
あ、どうも。
「違う!」
流されている!
ものすごい勢いで流されている!!
ちゃっかり前の椅子に座っている男はさっきから全く表情が変わらない。
それでも人形のように生気がない、という訳ではないのはきっと彼の目だろう。
とろん、とも生気がない、とも違うこの目はまさにだるそうな、という表現が一番しっくりくる。
「というわけですので、私の名前はそちらで決めていただいて結構です」
「はぁ…は、あ!?」
「呼称がないと不便でしょう?」
さあ早く決めろとばかりに見つめられても突然の事にもう色々ついていけない。
「あの…でも、そのあなたの国の言葉?を教えてくれればなんとか…」
「国ではなく星です。私の母星の言語はこちらのヒトが発音できないものも多くあります。ですのでその場合は滞在場所の所有者または調査員の認めた者から呼称をもらうのが決まりになっていますので」
今回はその両方をクリアしていますね、おめでとうございますなんて…よく分からないがおだてられている?
「あの…調査員て…」
「私のことです」
「なんの…」
「他星の調査、交流を主に私の母星から送られる者の事です」
ちなみに掃除洗濯料理は一通りできます。
なんてぐるりと部屋を見回しながら言うな、分かってるよ女のくせに汚い部屋だって事は!
「それと、調査員は調査対象に不自由な思いは絶対にさせません。貴方と手を取り合って不和を起こさない事を誓います」
「いや、今現在不和起きまくってるじゃないで」
「さあ、とりあえず呼称をください。」
無表情の圧力。
クリスマスなのになんだってこんな訳のわからない事に巻き込まれるのだろう、とどこか理不尽を禁じ得ない。
世の中のリア充め、末長く爆発しろ!
なんて現実逃避も許さない目の前の男。
「泣かないでください、…いじめたくなるので」
「泣いてない!!ん?なんか言った?」
「いえ、さあ名前を」




