腐女子のワイ、ついにヤツに会ってしまった?!
今日はちょっと長いかも?
オイッスー!高校1年生の腐女子、ワイだぞ♡
おっと、そこ「キモイ」って言ったか?言ってねぇよな?うんうん、言ってないようで安心したぞ♡
まぁ、何とは言わないが、あそこはF(カップ)だ。もう聞き飽きた?そう言わずに、聞いてよ。だってワイこう見えても美少女なんだぞ♡本物はそんな事言わないだって?おいてめぇ何つった?何でもないって?なら良かったぞ♡
あれ?同志が走ってきてる…
「咲良ちゃん緊急事態!大変、大ニュースよ……ッ!!」
昼休み。豚汁を口に飲んでいる瞬間、オタ友の同志が教室のドアを爆破せんばかりの勢いで飛び込んできた。胸辺りまであるワイの黒髪ロングが、彼女の鼻息の風圧で激しく揺れる。
「ゲホッどうした?嬉しいニュースでもあった?新しい店でもできたの?」
「違うわよ!リアル配給!生よ!」
同志はワイの机に両手を叩きつけると、周囲を警戒するように声を潜めた。
「例の180センチヤンキー君(仮)がいるじゃない?彼、今日の3時間目の休み時間……同じ学年の剣道部員(相棒くん)と、放課後を待たずに部室に入っていくのが目撃されたわ……!」
「……は???」
ワイの脳内CPUが一瞬でフリーズし、次の瞬間に大爆発を起こした。ちょっと待て。放課後を待たずに?昼間の、鍵のかかった部室(密室)に、男二人で……?
「放課後まで我慢できなかったってコト……!?昼間の部室とか背徳感の塊じゃん!何それ神の配給!?解釈の一致、圧倒的感謝……ッ!!」
「でしょ!?しかも鍵を閉めて二人きりよ!?」
悶絶するワイ。しかし、胸の奥がチクッと痛む。
昨日、母ちゃんに「それ、恋なんじゃない?」と言われてから、ワイの心臓は彼を見るたびにうるさい。だけど、こんな「極上の生BLルート」を見せつけられたら、ワイの入る隙間なんて1ミクロンもあるわけがない。
(そうや……ワイは天井のシミ。二人の美しい青春を邪魔してはならない、ただのモブ壁なんや……!)
涙を呑んでオタクの本分を全うすることを誓ったワイだったが、オタクの業には抗えなかった。放課後、ワイの足は吸い寄せられるように剣道場の裏へと向かっていた。自分の目で真実を確かめ、そして二人の聖域をひっそりと見守るために。物陰に身を潜め、地味な黒縁メガネの位置を直す。するとその時、カツカツと足音が響き、ジャージ姿の彼と、同じ学年の相棒くんが歩いてきた。二人は流れるような動作で部室の扉を開け、中へと消えていく。ガラガラ、バタン。鍵の閉まる音が静かに響いた。
「う、嘘やろ……本日2回目……ッ!!」
1日に2回。濃厚すぎる。過剰摂取でワイの命が危ない。震える手で同志に『【悲報】現在進行形で2回目入った』とLINEを送ると、秒で『公式が最大手』『ガチすぎて無理』と返ってきた。画面の前でヘドバンせんばかりに共感する。
(ああ、やっぱり二人はガチなんや。これでええ、これで……)
推しカプの尊さに感動しつつも、自覚したばかりのリアルな初恋が秒で玉砕した現実に、ワイの目からガチの涙がこぼれそうになる。胸のFカップの肉の壁が、切なさで締め付けられるように苦しい。
「もうええわ!ワイは二人の幸せを陰から見守る天井のシミとして一生を終えるんや……!」
ハンカチで涙を拭い、これ以上は精神が持たないと立ち去ろうとした、その時。――ガラッ!!!部室のドアが、勢いよく開いた。
「ふぅ、あちぃ……」
中から出てきたのは、少し汗をかいてジャージの首元を大胆にはだけさせた「彼」だった。そして最悪なことに、立ち上がろうとしていたワイと、至近距離でバッチリ目が合ってしまった。
「……あ?」
彼はピタッと動きを止め、不審者をを見るような目でワイをじっと見つめてくる。
「おい、お前……さっきからそこで何してんだ?」
低い、だけどどこか優しい声が、ワイの鼓膜をダイレクトに揺らした。
(ひ、ヒエッ……!!!!本日2回目の密室から出てきた推し(好きな人)と、人生初の会話イベントが発生してもうたァァァァァ!!!!)
脳内で緊急警報が鳴り響き、心臓が防音壁をぶち破る勢いで大暴れし始める。
ヤバい、ヤバい、ヤバい!!!
至近距離で見る180センチヤンキー君(仮)の破壊力は、双眼鏡越しとは比べ物にならない。はだけた首元から覗く鎖骨、部活帰り特有の熱を帯びた空気、そして射抜くような鋭い視線。
すべてが、至高の2.5次元。
だけど、今のワイはただの不審者(黒縁メガネ装備・涙目・挙動不審)!!!
「あ、いや、その……!!」
声が裏返り、頭の中で同志の「逃げて咲良ちゃん!」という幻聴がこだまする。
恋心が大爆発する音と、オタクとしての墓碑銘が刻まれる音が同時に聞こえた。
――こうして、ワイのひっそりモブライフは音を立てて崩れ去った。
天井のシミから、まさかの「当事者」へ。
脳内実況は強制終了。リアルな鼓動が、放課後の剣道場裏にうるさく響き渡っていた。
腐女子のワイ、ついにヤツに会ってしまった?!
(ここから、ワイの本当の戦いが始まる――!!!)




