第7話 お嬢様からの勧誘
食事をしていた僕たちの前に現れた少女に、まるで鳩がマシンガンでも喰らってしまった様なマヌケな顔を向けて固まってしまう。そんな僕の反応を見た少女は左右の手でスカートを軽く上げ、頭を下げる。
「いきなり失礼しましたわ。ワタクシは『フラウム・フツ・カレエ』と申しますわ。以後お見知りおきを」
華麗に挨拶をする少女に僕たちは困惑しながらも、名を名乗られたからには無視するわけにはいかなかったので、軽く挨拶をし、隣の席の椅子を借り、同じテーブルについてもらった。
「先程はお見苦しいものを見せてしまいましたわね」
「ん?何故わたしゃたちがあそこにいることが分かったんじゃ?それにかなりの野次馬じゃったろう」
「ワタクシがしっかりと貴方方を見たからですわ」
その言葉にさっき彼女と目が合った気がしたのは、気のせいではないのだと思った。
「え、えーと、フラウムさんでしたよね?その、何故、僕たちのところに?」
「いきなり踏み込むのう」
「いや、気になるでしょ。さっき輩達を蹴り散らしてた謎の少女が急に食事に割り込んでくるとか。相席いいですか?って、感じじゃないでしょ!」
もしかしたら、僕たちを倒しにきた刺客かもしれないじゃないか!しかも、見た目的にピンコさんより年下な感じがする。僕は警戒しながら彼女に目線を向けるとクスクスと笑い出す。
「面白いお方ですわね。まさかこんな反応されるとは思いませんでしたわ。まあ、相席は半分合ってますわ」
まさかのホントに相席いいですかだった。
「正直に申し上げますと、先程の騒ぎの視線の中で貴方方から不思議な感覚不思議な感覚を感じました」
またそれかー、不思議な何かを感じたとか言っとけばいいと思ってないか?
「えーっと、本日2度目ではありますが、一応聞いておきます。そこのハムスターみたいに食事を頬張ってるピンコさんみたいに魔力を感じたでいいですか?」
例えに出されたピンコさんは「え?わたしゃ?」とでも言いたげな顔をするが、もちろん、わたしゃである。
「いえ、ワタクシ、魔力もスキルも『持ち合わせておりません』」
「え?」
彼女の言葉に僕たちは反射的に互いの顔を見る。2人も彼女の言葉が意外だったようだ。そりゃそうだろう。だって、彼女のあの華麗な動きと足捌き、どうみても僕みたいな身体強化的なスキルかと思ったからだ。
僕たちの反応を見て何を思ってるか察したのか、フラウムさんは言葉を続ける。
「ワタクシは自分でいうのはあれですが、『貴族』ですわ」
まあ、そうだろうな。ベッタベタのですわ口調で金髪ロングのドレスっぽい服だ。
「ですが、お恥ずかしながら生まれつき魔力もスキルも授かれませんでしたわ」
「まていまてい」
フラウムさんの話にピンコさんは慌てて止めに入る。かなり慌てた様子だったのでどうしたのかと思っていると、ピンコさん何故か額から汗を流していた。
「お、お主……貴族様と言ったのう?」
「はい」
「それで魔力もスキルも持たぬと言ったのう」
「はい」
質問に一言で返されるピンコさんは大量の汗を流す。それを見て僕は何かやばいことを聞いてしまったのだなと確信する。
「フウタさん……お主、本当に『運がない』のう」
何故か哀れみの目を向けられる。僕は状況が理解できず「え?え?」と某ふじわらさんみたいな声を出してしまう。そんなピンコさんとは違ってラフルさんは冷静に僕に説明してくれる。
「貴族が能力を持たないというのは、死んでも隠したいものといいます。それを聞いてしまった以上場合によっては死刑です」
なんかいきなり僕の異世界スローライフ終わったんだが?異世界生活3日目で家を破壊されて、すぐ即死イベントにエンカウントした形ですか?
僕はゆっくりとコップを手に取り、水を一口飲み、天を仰ぐ……グッバイ楽しい三日間だったぜ。
「ああ、勘違いなさらないでください。別にワタクシの家系はそういったの気にしないので大丈夫ですわよ」
「え?」
世界が白く染まりかけた僕にフラウムさんは軽い感じに言い、反射的に顔を降ろす。
「確かにそんな理不尽な理由をつけて武力行使する貴族もありますが、まあ、大半だと思いますけど、ワタクシの家系はそんなくだらないことはしませんわよ。もちろん、ワタクシも気にしておりませんわ」
まさかの復活演出ッ!!
「まあ、この話を踏まえて、貴方にお願いがありますの」
「おねがい?」
内心、復活で喜ぶ僕に彼女は顔を向ける。
「ワタクシと『パーティー』になってくださらない?」
「え?パーティー?」
突然の勧誘に意図が読めずにいると、彼女が説明してくれる。
「実は、冒険や採掘に憧れていましたの、ですが、立場上なかなかお許しを頂けませんでしたわ。自分でいうのはなんですが、武術の心得はあるので大丈夫だと言ったのですが、もしもひとりでなにかあった時に大変だということですの」
確かにさっきの彼女の強さなら大丈夫と言えるのは分かるが、ひとりは危険だ。
「それでお許しを頂ける条件として、『パーティーメンバーを見つければいい』と言われたので探していたところですの」
「で、さっきの輩に絡まれていたんですか?」
「ええ、不埒な方達でしたので、パパッと蹴り飛ばしたところ、貴方方を見て『見つけた!』と思いましたわ」
それって、ただの『勘』では?……え?このお嬢様、ただの勘で僕たちにそれをお願いしてるの?アグレッシブ過ぎでしょ?アグレッシブ過ぎて、ビート刻むレベルだよ。
「理由は分かりました。ですが、正直、いきなりイエスなんて言えないです」
僕の言葉にラフルさんは「まあ、当然でしょう」と静かに目を瞑る。
「協力してあげたいところですが、実は、僕たちも結構訳ありで」
この言葉は本心だ。だけど、この世界のことを全く知らない僕からしたら、逆に危険に合わせてしまうかもしれない。しかも、今は家無しだからそんな余裕はない。心苦しいがここは断る方向でいこう。
「そうですか……残念ですわ。ですが、ワタクシが『能力なし』だと知って帰れると思えて」
いや、しっかり脅しに使っとるやないかい!
フラウムさんは右手で髪を靡かせ不敵に笑う。貴方のご家族と友人の身元を調べましょうか
「そうですわね……まずは、貴方のご家族と友人の身元を調べましょうか」
「………………っ!」
その言葉に僕の身体が震える。
フラウムさんは「………………ふっ」と笑う。
「なーんて、冗談ですわ。まあ、当然ですわよね。いきなりこんなことを言われても困りますわよね」
年相応の少女のように彼女は笑うが、僕は乾いた笑いを返してしまった。
彼女は何か様子の変な僕に気付き、首を傾げ、周りを確認すると、ピンコさんは気まずそうに顔を反らし、ラフルさんは静かに目を閉じていたが、ゆっくりと目を開けるとフラウムさんを少し睨みつけるようにしながら口を開く。
「フウタさんは度重なる不運で家族、友人、フウタさんを知る全ての人ともう2度と会えなくなってしまいました。そのまま途方にくれてある意味死んでいた彼は運よく私に出会い私は彼をサポートしようとしていた所、3日目で私達の家が吹き飛び、私も何もなくなりました」
「………………え?」
間違ってはないけど、とても簡素に不憫に解説するものだから場が凍る。それを聞いたピンコさんは目にも止まらぬ速さで地面とキスをしていた。
「……え……あ、その」
フラウムさんは自分の言ってしまったことが、大地雷だったことに気が付き顔を青くする。
「す、すみませんでした!そうとは知らず、ワタクシ、とんでもないことを口走ってしまって」
彼女は慌てて頭を下げる。周囲がどうしたのかと様子を伺っていたので僕も慌てる。
「い、いえ、その、こっちこそすみません。顔を上げてください」
フラウムさんに顔を上げてもらって(ついでにピンコさんにも地面とのキスをやめてもらった)、僕の今までの経緯を簡潔に話した。
「………………」
彼女はとても気まずそうに顔を反らしていたが、しばらくするとこちらに顔を向けた。
「……わかりました……ワタクシの別荘を提供いたしますわ」
「え?」
一通り話終えた僕にフラウムさんが突然言ってきたので驚くと、ピンコさんは怪訝そうな顔をする。
「なんじゃ?急にそんなことを言うなんて怪しいのう」
「まあ、いきなりこんなことを言われて何かないかと疑うのは当然ですわよね」
フラウムさんは言葉を探しているようだったが、口を開く。
「信じていただけるか分かりませんが、何もかも失い家も無くして困っている人をそのままにさせる訳にはいきませんわ。それに実はパーティーの拠点として使おうとしていたので、そこに住んで頂ければ、ある意味都合がいいかと」
「それって遠回しにパーティー入ったことにならんか」
彼女の言葉にピンコさんは突っかかると首を横に振る。
「いえ、まあ、正直に言いますと入ってほしいですが、それは一旦保留にしていただいて構いませんわ。それに事情を聞く限り、フウタさんはかなり不運に見舞われてるみたいなので、少しでも助けてあげたいと心から思ってのことですわ」
その言葉は本心のようだ。僕は、ラフルさんを確認すると、彼女は静かに頷く。
「あ、ありがとうございます!フラウムさん!」
恐らく、罪悪感からきてしまっているみたいだが、本当にありがたい提案に僕は心の底から感謝をする。
「い、いえ……それに……その……知らなかったとはいえとても失礼なことを言ってしまい大変申し訳ありませんでした」
「大丈夫です。悪気があった訳じゃないって分かってますから」
ここまで気にしてしまうと思わなかったので、僕はできるだけ元気に返す。
「フラウムさんの好きな食べ物ありますか?」
「え?」
「それ僕たちが奢りますんで、元気出してください……って、家を提供してもらう分際で偉そうにいえないか……あはは」
僕が陽気にいうと、フラウムさんは少し笑顔になり、「お言葉に甘えて」とメニューを一品頼む。
「あの、フウタさん、敬語はなくて大丈夫ですわ」
「そ、そう?わかったよ」
彼女の言葉に僕は承諾すると、ラフルさんが何か言いたげな顔を僕に向け




