第6話 風脚!金髪武闘派お嬢様
人の波が流れ、日の光がまだ天高く昇っている時間帯。街の外での騒ぎをもう忘れてしまったかの様にそこは賑わっていた。
「まさか、こんなすぐに戻ってくるとは」
そう、僕たちは再び都市【アルコバレーノ】に戻ってきていた。正直、騒ぎを起こした手前、戻るのはかなり怖かったが、ラフルさん曰く、「顔バレしてないので大丈夫でしょう」とまあまあ適当な言われたが、行く当てのなかったのでその言葉にかけて戻ってきた。
「思ったより、普通だな」
僕は少し挙動不審気味に周りを確認すると、ピンコさんがクスクスと笑う。
「なにそんなにオドオドしとるんじゃ。シャキッとせい。逆に怪しいのじゃ」
誰のせいでこうしているのかと引っぱたきたくなったが、ピンコさんのことを笑顔で見つめるラフルさんが隣にいた、彼女は能天気に笑っているが、その内またラフルさんにシバかれそうだと思い、僕は敢えてなにも言わない。
取り敢えず、宿を探すかと思ったけど、ピンコさん曰く、まずはこの世界に慣れていない僕は情報収集をした方がいいと言ったので、確かにそうだと思い、先程途中で切り上げてしまった観光を兼ねて、街をもう一度見て回る。
城下町を回りながら彼女に僕とラフルさんの素性を話した。正直、話すか迷ったが、これからのことを考えると早めに話しておいた方がいいと思ったからだ、信じてもらえるか心配だったが、意外にもあっさり信じてくれた。彼女曰く、身で味わったのと僕が何回か「女神」と発言していたから、バカでも気付くと言われた。
その後、軽く会話をしながら街の情報やこの世界の人達のことを教えてくれた。彼女との会話はかなり面白かった。知り合いの天才発明家や本の魔物を持つ少年の話などをしてくれたり。驚いたのが、『女神の魂を持つ少女』がいるらしい。その話にラフルさんも少し驚いていたが、ありえない話ではないらしい。
「『女神の転生』というのは、とても珍しいことではありますが、『女神の魂を持つ人間』が生まれることが、稀にあります。ですが、ひとりの人間に宿るのではなく、『複数の人間に分かれて転生』すると言われています」
正直、情報量が多すぎてよくわからないが、この世界では当然、僕の常識は通用しないようだ。ていうか、本当にこの世界で僕ってめちゃくちゃ弱いのでは?
「おい、アレ大丈夫か?」
「?」
なんて話していると、何かを遠巻きに見ている人達が目に入る。その先を確認すると、ひとりの少女を数人の男が囲んでいた。
「あれって……」
僕も遠巻きではあるが、その人達に目を向け、2人も僕の目線の先を見る。
少女は遠目から見ても分かる美しい金の長髪で青色のドレスにも見える胴着姿をしていた。何故そんな表現になったかと言うと、ドレスにしてはかなり動きやすそうな感じがしたからだ。それにドレス特有の背中が開いていたり、美しい素足が見えない。だが、それでも感じる美しさがあった。
「………………!」
離れていて聞こえないが、どう見ても、数人の輩が少女を囲んでいるという、穏やかではない光景だった。それに周囲の人達は気付いているが、助けようにもどうしていいか分からないといった感じだ。何故なら、数人の輩に囲まれているのに、少女はとても冷静に目を瞑っていていた。なので、助けを求めてる感じは一切しなかったのだ。
「………………」
少女は目を開けると、周りの輩には一切興味がないと言った感じで虚空を見つめる。それを見た輩のひとりが、何かを言っているが、気にしていない様子。それに痺れを切らせたのか、その輩は少女に触れようと手を前に出す。すると……。
「…………っ!?」
次の瞬間には、その男は綺麗な放物線を描き宙を舞っていた。
「!?」
地面に滑っていく男の周囲に砂埃が舞う。その光景に男達も含め、周囲もざわつく。
少女が風でも吹いたのかと錯覚するスピードで男の顎に蹴りを入れたのだ。
「……!?…………ッ!!」
状況を理解した男達はまとめて少女に襲い掛かる。だが、少女は冷静に前方の男に大きく右足を上げ蹴りを入れ、そのまま三日月のように美しくバク転し、背後の男を踏みつけるように地面に叩きつける。そして、ダンスでもするかの様に左足を軸に華麗に回ると左右の男を足払いし、宙に浮いた2人を右足を前に左足を後ろにして蹴り飛ばし。一瞬で4つの砂埃が地面を舞う。
「………………すご」
あまりの華麗な動きに僕を含め、周囲の人たちは言葉を失っていた。しかし、騒ぎを聞きつけたのか数人の警備隊らしき人達がやってきた。
「フウタさん、離れましょう」
「あ、はい」
顔バレしてないとはいえ、さっき騒ぎを起こした僕たちは急いでその場を離れる。しかし、離れようとした瞬間、視線を感じた気がして見ると、金髪少女がこちらを見ている気がしたが、すぐに警備隊の人達に話しかけられ、そちらに顔を向けたので気のせいだろう。
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「にしても、さっきのあれすごかったなぁー」
「まさに風の様な蹴りじゃったのう」
その後、僕達は少し離れた食堂で食事をしながら、さっきのことを話す。
「かっこよかったな、僕、ああいうの好きなんですよ。拳じゃなくて蹴りで華麗に戦うの。いやー、ホントにスタイリッシュで好きなアニメを思い出すなー」
「アニメ?なんじゃ?それは」
ピンコさんは口をハムスターみたいにもぐもぐしながら聞いてくるが、この世界では普通に説明できないので、物語と言っておいた。
「あの洗礼された動き、かなりの腕だと思います」
意外にもラフルさんもかなり好評する。女神さまからのお墨付きとはやはりすごかったんだな。
「あの華麗な回転キック、きっと華麗なジャンプキックもできるに違いない。いつか僕もやってみたいな」
「よろしければ、お教えしますわよ?」
「え?」
突然の背後からの返事に振り返ると先程の金髪蹴り少女がいた。




