第4話 爆風!のじゃ魔女少女!
城下町の人の波が緩やかに流れる。僕とラフルさんはその波に添いながら城下町を見て回っていた。しかし、僕は一度歩みを止める。
「あの、ラフルさん」
「はい」
僕は隣で止まったラフルさんに問いかけると彼女は僕が何を言いたいのかすぐに察し静かに頷くと答える。
「つけられていますつけられています」
「あ、やっぱり?」
淡々と答える彼女に僕はさっきから感じていた視線が間違いではなかったことを確信する。ラフルさんは怪しまれない為かすぐに歩みを進め僕も背後は確認せずに彼女の隣を歩く。
城下町に入って暫くした後、何か視線を感じた。はじめは気のせいだと思ってスルーしていたけど、さっきシュークリームを食べている時、ラフルさんが少し席を離して僕が彼女のプレゼントを見ている時にそれを強く感じ。今、それが確信に変わった。
「さっきのあれも見られてたってことですか?」
「はい、はっきり」
え~~~?気付いてたのにほうっておいたの?いや、はっきりと僕の泣いてるところ見られてたの?恥ずッ!
恥ずかしさで僕は左手で顔を覆っていると、ラフルさんは目線だけを少し先に向ける。
「あそこの少し先に見える路地裏に周りましょう」
彼女の視線の先を確認すると少し先に路地裏に続きそうな曲がり道があった。僕は「わかりました」と一言返すとつけている人物に気付かないように彼女と歩幅を合わせてゆっくり路地裏に入っていった。
そして、十数秒程止まって待っていると、長いピンク髪のワンピース姿のホウキを持った少女が姿を現した。
「!?」
少女は驚いた表情をすると僕達が待ち伏せしていたことに気付き慌てて引き返そうとするが、ラフルさんが既に背後に周って道を塞いでいた。少女は冷や汗をかきながらもう一度僕に向き直った。
「ほう、お主見かけない顔じゃのう。それにかわいい顔をしとる」
いきなり女性にかわいいと言われてしまう。嬉しくない訳ではないが、男なのでかっこいいがいいと言うのが本音だ。だが、誤魔化す為とはいえどう考えても適当すぎるでしょ。と僕は呆れる。
「わたしもそう思います」
「え?」
何故かラフルさんが共感しだしたので、素で気の抜けた声をだしてしまう。
「おお、やはりお主もそう思うか!」
「ええ、アナタとても見る目がありますね」
突然意気投合し出したので僕は慌てて止める。
「ちょっと待ってください。話を逸らそうとしないでください。後、ラフルさんも相手のノリに乗らないでください」
「いえ、別に乗った訳ではありません」
僕はラフルさんを注意するが、何故か彼女は不満そうだ。なんだ?女性特有のよくわからないものをかわいいと言うあれか?かわいそうはかわいい的な?まあ、そんなことは今はどうだっていい。
咳ばらいをしてつけてきた少女に向き直る。
「で、何故あなたは僕達をつけていたんですか?」
「い、いや~それはのう」
少女は罰が悪そうに目を逸らす。……にしても、なんか変わった喋り方だな。
「別にやましいことがあってつけてたわけじゃないのじゃ」
しかも『のじゃ』って、なんだ?いわゆる、『のじゃロリ』か?ロリって程ではないけど、見た目的に僕より多分年下だよね?
「やましいことがないのであれば直ぐに吐いた方が見の為ですよ?さもないと物理的に吐くことになります」
ラフルさんはしれっと恐ろしいことをいう。その言葉を聞き、少女はさらに冷や汗をかく。まあ、淡々と詰めてくるからそりゃ恐ろしいだろう。
「ま、まあ、まあ、ラフルさん暴力はいけないですよ?えーっと、あなたもなんでつけてただけを教えてくれればいいので」
僕は穏便に済まそうと慌てて二人の間に入る。しかし、それがいけなかったのか。少女は僕がさっきまで立っていた背後に勢いよく飛び退きながら手に持っていたホウキに乗り、宙に浮きそのまま路地裏の空を抜ける。
「飛んだ!?」
僕は流れるような少女の動きにバカ丸出しなことを言ってしまったが、ラフルさんは冷静に飛び上がり僕の頭上に舞う。
「フウタさん、なにをしているんですか?私たちも『飛んで追いますよ』」
ラフルさんは動かない僕に不思議そうに声をかける。
「あ!そうか!」
彼女の言葉に僕も飛べることを『思い出す』。異世界に来てまだ三日なので全然身体に沁みついてなかった。僕も地面を蹴ると少しフラフラしながらもラフルさんの隣に並ぶ。
路地裏の上まで飛び、さっきの少女を探すとまだ目で見える範囲に彼女の姿を捕えることができた。
「いた!」
「いきましょう」
僕達は彼女に向け、スピードを上げ飛ぶ、まだ慣れてないので上手く飛べないが少女よりは早いのか少しずつ距離は縮まっているようだ。彼女は背後の気配に気付いたのか振り返るとぎょっとした顔をした。
「なっ!?お主らも飛べるのか!?」
彼女の発言的にこの世界の全員が飛べる訳ではないようだ。
「私が一気に攻めます」
隣でラフルさんがそういうと一気にスピードを上げて距離をさらに詰める。
「うそじゃろ!?」
一気に詰めてくるラフルさんに少女は驚愕しながらも慌てて前を向きホウキを強く握った。すると、少女のホウキもスピードを上げる。しかし、次の瞬間には前方にラフルさんの姿があった。
「お久しぶりです」
「うぎょっ!?」
突然、前方に笑顔で出迎えたラフルさんが現れたことで少女はおばけが現れたみたいな半絶叫をし、空中で急ブレーキをして止まり。勢いで空中に投げ出されそうになるが、慌ててホウキにぶら下がってなんとか空中に留まる。
「お、お主ら……本当に何者じゃ?」
「え?」
驚愕する少女の言葉に僕は首を傾げるが、少し思考し、少女の『目的』が分かった気がした。
「ラフルさん、もしかして……」
「こうなったらやむをえん!」
「え?」
ラフルさんに少女がつけていた理由かもしれないことを伝えようとしたところ、緊迫した少女は何かを決心したように言い放つと、飛び上がり『乗っていたホウキの向きを変え、ホウキの先の部分をラフルさんに向ける』。
「すまんが、これはわたしゃの身の為じゃ!」
少女がラフルさんに言葉を投げかけるとホウキから何かエネルギーみたいなものが溜まっていく。
「安心せい!多分死なん!」
いや!多分って!!
「ラフルさんっ!!」
「マジカルパニッシャー!」
僕が慌てて彼女に声をかけるが遅かった。ホウキの先から大きなエネルギーがラフルさん向けて放たれてしまった。
「!?」
ラフルさんは慌てて空中で身体の向きを変え、後ろに飛び退きエネルギーを避ける。
「……っ!!」
しかし、エネルギーの風圧でそのまま背後に飛ばされてしまう。エネルギーはそのまま先に飛んでいき『森の一部で爆発を起こした』。
「うっそだろ……」
放たれたエネルギーの威力に僕は顔が引きつる。そんな僕を確認した少女はしめたとばかりにホウキの向きを変える。
「よし、すまんが今の内にとんずらさせてもらうの……じゃあ!?」
「!?」
突然の少女の断末魔の様な奇声に顔を向けると、ラフルさんが右手でホウキを持って、左手で少女の服の襟を持って少女は気絶していた。
「ラフルさん!大丈夫ですか!?」
僕はラフルさん急いで近づくと彼女は頷き、少女を見て溜息を吐く。
「まったく、いきなりあんなものを撃ってくるなんて頭おかしいですよ。私でなければ確実にはじけて混ざってます」
「でも、無事でよかった……そうだ、多分ですけど……」
「場所を変えた方がいいですね」
僕は心から安堵する。そして、はっとなりさっき言いかけたことを伝えようとするが、ラフルさんは僕の背後を確認すると急ぎ早に移動しようとする。
「どうしたんですか?」
「ちょっと騒ぎを起こし過ぎました、彼女が」
ラフルさんは吐き捨てるように少女に目を向けながら言葉を続ける。
「街の方から沢山の気配がします。野次馬と警備隊かもしれません。もし警備隊なら厄介なのでここは知らんぷりで彼女を連れて帰りましょう」
気絶した少女を連れて帰るって普通に誘拐では?なんて考える暇がないくらい確かに背後から沢山の気配がした。
「フウタさん、私の肩に捕まってください。一気にこの場から離れます」
「は、はい」
ラフルさんは両手が塞がっているので右肩を僕に差し出してくる。僕は女性に触るなんてと童貞丸出しなことを一瞬思ったが考えてる暇はなかった。ラフルさんの右肩に左手を乗せ彼女はそれを確認すると、僕達は光に包まれてその場から姿を消した。
ーーーーーーーーーー
次の瞬間には森の中で立っていた。
「ふう、なんとか我が家に帰ってき……」
僕は安心して息を吐こうとするとその吐きかけた息を飲む。そこには大きなクレーターが出来ていた。
「ラフルさん、なんでここに飛んだんですか?ここってさっきこの子が撃った『アレ』の場所ですよね?飛ぶ場所間違えてますよ」
僕は大きなクレーターを見ながら高らかに笑い彼女の肩をもう一度手を乗せる。
「それにしてもすごい威力だったんですね。よし!帰りましょう!」
「ここが家があった場所です」
彼女の口から淡々と残酷な真実が告げられる。
「すうーーーーーー」
僕は彼女の肩から手を放し、大きく深呼吸をする。
いやー森の空気っておいしいな!
両手を上に上げ背伸びし、もう一度笑顔で回れ右をしながら後ろを確認する。しかし、大きなクレーターが綺麗にできていた。
「ラフルさん、もう一回聞きますけど、あの真ん中になにかの破片が沢山散らばってますけど、もしかして、もしかしなくても」
「はい、我が家だったものです」
「………………」
まさかのピンポイントで『僕達の家が吹っ飛んでいた』。
「ラ、ラフルさん!これ直せないんですか!?」
現実を理解した僕は発狂しながら女神に懇願する。しかし、『派遣女神ラフル』は首を横に振る。
「できません。女神をなんだと思ってるんですか?女神はそんなに便利ではありません」
「うわあああああああああああああ!異世界生活3日目でホームレスになったあぁーーーーーー!!」
僕は膝から崩れ落ち両手を地面に着く。元社畜25歳の絶望の叫びが森中に木魂した。




