第23話 ラフルの思い出の味
いつもと変わらぬ日、僕たちは採掘帰りに街によっていた。
「今日も素晴らしい収穫でしたわね」
「そうじゃのう。わたしゃの魔力にも磨きがかかってとてもいい気分なのじゃ」
2人はとても楽しそうに僕たちの前を歩き城下町を見て回っている。
「お、見てみい!新商品じゃぞ!ちょっと見て行くのじゃ!」
「まあ!あれは珍しいお紅茶の葉ですわ!香りがとてもいいんですの!」
いつもしっかりとしている2人の楽しそうに買い物をする姿を見てると、改めて年下なのだなと実感する。そのまだ子供のような笑顔が抜けきっていない顔を見ると自然と笑顔が零れる。
この世界にきて半年近くが過ぎた。時間というのは、残酷で前世の記憶が少しずつ薄れているような気がする。正直、忘れたいこともあるが、当然、忘れたくないものもある。そんな矛盾のような感覚に襲われながらも、こっちの世界にも慣れてきてだいぶ城下町の賑わいにも慣れてきた。そして、過ごした時間が長くなるほど彼女たちの好みも少しずつ分かってきた。
それに
僕は横で立つラフルさんに目を向ける。
「どうかしました?」
「いえ」
彼女の大切さや偉大さに改めて気付く。本来なら自分でやらなければいけない戦闘や身の回りのサポートをしてくれる彼女に頭が上がらない。いつもの口だけの感謝では到底返しきれないな。
……よし。
「ラフルさん、なにか欲しいものありますか?」
「欲しいものですか?」
僕の言葉に少し目を丸くさせる。
「はい、まあ、日頃のお礼っていったら生意気かもしれないですけど、折角きたのでなにかあれば」
「…………食べたいものならあります」
「え?」
僕は少し驚く。なんで聞いたやつが驚いてるんだって話だが、ラフルさんはいつも遠慮するのに今回はあっさり欲しいものを言ったのだ。
「ダメでしたか?」
「いえいえ!とんでもない!」
僕は慌てて訂正してなにかを訪ねる。
ーーーーーーーーーーー
「………ここって」
僕とラフルさんは城下町にあるシュークリームの出店前に立っていた。ここは僕とラフルさんがはじめてこの街にきた時によったお店だ。ピンコさんとフラウムさんはまだ見たいものがあるからということで僕たちだけでここにきた。
シュークリームを人数分買い、近くのベンチに座る。
「またこの場所で2人で食べれるんですね」
「そうですね」
ラフルさんは手に持ったシュークリームを目を輝かせながら一口食べ、美味しそうに笑う。
「ふふ、やはり美味しいですね」
「はい」
いつもクールな彼女の無邪気な笑顔に僕はとても嬉しい気持ちになる。
「それ好きなんですね」
僕の質問に「はい」と頷くと言葉を付け足す。
「この味から2人と出会えましたからね」
「え?」
「お忘れですか?」
首を傾げると僕にラフルさんは軽く笑いかける。
もちろん、忘れてなんかいない、確かにこのシュークリームを食べてる時にピンコさんの視線を感じて、その後、待ち伏せして彼女を問い詰めたら、いろいろあり、家が吹っ飛び、ラフルさんにボコられたピンコさんを連れて街に戻ったら、輩を蹴り飛ばすフラウムさんと出会い、なんやかんやで別荘に住むことになった。
「はは、今考えてもめちゃくちゃですね」
「はい、めちゃくちゃです」
彼女も同じことを思っていたのか、クスリと笑う。
「このシュークリームが私の『思い出の味』です」
「!?」
その言葉に僕は少し身体を震わす。
「どうかしましたか?」
「いえ、なんでもないです」
「………………」
僕の反応に気付いたのか、ラフルさんは静かに見つめる。
「おー!おったおった!」
「お待たせしましたわ」
声が聞こえてきて顔を向けると、ピンコさんとフラウムさんが手を振りこっちに向かってきていた。
「お、うまそうなの食べとるのう」
「2人の分もあるよ」
「まあ!さすがフウタさんですわ!ありがとうございますわ!」
2人もベンチに座り、シュークリームを頬張る。
「ふぬ、うまいのじゃ」
「すわ」
2人も目を輝けせ、フラウムさんは適当な返事になってしまうぐらい夢中になって食べる。
「やはり小腹には甘いものに限るのじゃ」
「すわ」
手についたクリームを舐めてしっかりと最後まで味わう2人に布巾を渡す。
「おお、すまんの」
「すわ」
フラウムさんに至っては、喋り方が戻っていない。
そんな2人を僕たちは微笑ましく眺める。
「さて、そろそろ行きましょうか」
ラフルさんは立ち上がりこちらに笑顔を向ける。そんな彼女に僕は自分の頬を指さし、その意味にすぐ気付いたラフルさんは顔を真っ赤にさせる。
「またやってしまうとは……」
恥ずかしそうにするラフルさんに僕は布巾を渡す。
「ほうほう、女神さまもおっちょこちょいじゃのう」
「ですわね」
「たまたまです」
3人の楽しそうな会話を僕は親心の様な気持ちで眺めていると、ラフルさんが誤魔化すように僕に声をかける。
「ついでに食料を買っていきましょうか、フウタさんはなにが食べたいですか?」
「そうですね、か……………」
僕は出かかった言葉を無意識に引っ込める。
「………………」
なんで、今、あれを言おうとしたんだ?
僕は、突然襲ってきた疑問に頭が回らない。
「クア・レイですか?」
「え?」
フラウムさんは首を傾げながら聞いてくる。
「うん!そうそう、カレー」
「もう、クア・レイですわよ」
彼女の言葉に僕は慌てて誤魔化すようにいうと、クスクス笑いながら返してくる。
「またクア・レイかのう~正直、飽きてきたのじゃー」
「ワガママはいけませんわよ、なら、ピンコさんはご自分でお得意の煮物だけ食べててください」
「それとこれとは別じゃ」
2人は軽口を叩き合い、今日の夕飯について語りあう。
「よし、じゃあ!さっそく材料買いに行こうか」
僕たちは夕飯の素材を買いに賑わう街に戻った。




