第21話 みんなで囲もう楽しい食卓
大広間に懐かしい匂いが広がる。懐かしいと言ってもほんの一週間程だが、何故だかそう感じる。
厨房から3人の女性の楽しそうな声が聞こえてくる。
「フウタさん、お主のことで数日ずっとうじうじしておったぞ」
「慣れないお酒も飲んでいましたね」
「そうなんですの!?ワタクシがお酒を促した時は飲んでくれませんでしたわ」
そんな賑やかな声を聞きながら僕は机にスプーンとコップを並べる。
「なんでそんなにお酒飲ませたいんじゃ?」
「それはもちろん、酔ったところをワタクシの好みに………ふふ」
聞かなかったことにしよう。
ていうか、久々に聞いたな………あの、ドS笑い。とても怖い。
「そういうことでしたら、お手伝いしましょう」
しなくていいですからね!?
「それならクア・レイに混ぜてみるかのう?」
僕は慌てて怪しい会議を止めに入った。
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「いただきます」
僕たちは手を合わせて食事を楽しむ。
口に広がるスパイシーな香り、前世の食卓を感じさせる懐かしさ、やはりこの世界のカレーはこの味だなと実感する。
「やっぱりこれじゃのう。正直、悔しいがわたしゃではこの味は出せん」
「はい、とても落ち着く味です」
女神からのお墨付きとは一生誇れることだろう。
フラウムさんは僕たちが美味しそうに食べるのをみて笑顔を浮かべると、自分のカレーを眺める。
「この味はお母様の味を求めてワタクシなりに作ったものですわ」
話はじめた彼女に僕たちは視線を集める。
「求めてとは、覚えてないということかのう」
ピンコさんが少し聞きづらそうに聞くと、フラウムさんは目を閉じ静かに頷く。
「最後に食べたのが小さい頃だったので、正直、ちゃんしたと味は思い出せません。ですが、記憶の底の思い出と味をなんとかここまで再現できましたわ」
「努力の成果だね」
「はい」
フラウムさんは優しく微笑んだ。
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久々の楽しい食卓に僕たちは心の底から楽しんだ後、お開きとなった。
僕は、寝支度を済ませて自分の部屋でゆっくりとしていると、部屋のドアが叩かれた。
ドアを開けると、寝着姿のフラウムさんがいた。
「夜遅くに申し訳ありませんわ」
フラウムさんは頭を下げる。
あれ?なんかデジャヴ?
「どうしたの?」
デジャヴを感じながらも、僕は冷静を装い尋ねる。
「………………」
この前と違って何故かフラウムさんは顔を下げてなにも言わない。
「もしかして、何処かに散歩かな?」
なにも言わない彼女に僕が問いかけると、首を横に振る。
「いえ、今回はお礼をしたくて」
「おれい………」
僕が言い終わる前に口に柔らかいなにかが当たり言葉が遮られる。
「………………」
一瞬なにが起きたか分からなかった。
固まる僕を他所にフラウムさんは背を向け去って行く。
そして、少し離れた場所で顔だけ振り返り、イタズラっぽい笑顔を僕に向ける。
「どうですか?ワタクシのクア・レイのお味は?」
「……………甘口です」
僕は無意識に口に手を当て顔を反らし、彼女の顔を見ることが出来なかった。




