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第19話 乗り込めお嬢様の食卓

 街から少し離れた山の中、自然が美しく風に吹く場所、その中に存在感を放つ大きな屋敷が立っている。自然に囲まれながらも自らの姿を白色の外壁で主張するその建物は屋敷というには存在感を放ち過ぎていて、山の中に佇むその外壁は『城』と言っても差し支えないだろう。


 その存在感放つ屋敷の前で僕は口を開き、呆気に取られてた。


「すごいな……さすが異世界のお嬢様」


 とてもシンプルでバカっぽい感想しか出てこない。そんな僕にピンコさんは呆れたような顔を向ける。


「なにアホ面しとるんじゃ、そんなんでフラウムさんの父上を説得できると思っとるんか」

「そ、そうだね」


 ピンコさんの言葉に僕は気を取り直し、ラフルさんを見ると、周りをキョロキョロと見回していた。


「さて、どこから入りましょうか」

「そりゃ、もちろん」


 ラフルさんの問に僕はふっと笑い答える。


「玄関から」

「真面目か」


 何故かピンコさんにツッコまれてしまう。


「いや、玄関以外から入ったら、普通に失礼でしょ」

「だから、真面目か!わたしゃたちの立場を忘れたんか、フラウムさんのおかげでまだ平穏に過せとる。そんなヤツらが父上の説得に来たとなったら、追い出されるに決まっとろう」


 当然と言っちゃ当然だが、かといって何処から入っていいかも思いつかない。柵を越えて不法侵入でもしろというのか?


「一番打倒そうなのは、柵を越えて入るですかね?」


 まさかの女神の口から不法侵入宣言である。


「ラフルさんや、お主のチカラでワープできんのかのう?」


 確かにラフルさんは瞬間移動的なことができたはずだ。


 だが、ラフルさんは首を横に振る。


「女神のチカラも別に便利ではありません。私の場合ですが、『行った事ない場所』と『魔力のない場所』には行けません。行ったことない場所と言っても、魔力のある人の近くに飛ぶという条件で無理やり行けなくはありませんが、『フラウムさんは魔力を持たない』ので何処にいるか分かりません。なので、今回はリスクが高すぎるかと」


 なるほど、今回はその2つの条件がガッチリハマってしまったと。


 じゃあ、決まりだね。


「正面から入ってフラウムさんにきてもらいましょう」

「え?」


 僕の言葉に2人はきょとんとした顔をする。まあ、任せてくださいよ。

 




ーーーーーーーーー





「お引き取りください」

「じゃろうな」


 僕は、堂々と正面から入ろうとしたら、メイドさんに止められた。


 いや、ここで諦める訳にはいかない!


「無理を承知でお願いします。中に入れてください。フラウムさんに合わせてください!」

「お引き取りください」

「そこをなんとか!話をさせてください!」

「お引き取りください」


 それしか言えないのか!と少しイラっとしてしまうが、まあ、彼女も仕事だ。それを責めることはできない。かといって下に出過ぎて舐められるのも正直嫌だ。……ああ、下に出てたら、調子に乗るヤツらを思い出して、ムカついてきた。


 なんて考えていると、数人の執事服の男達が出てきた。


 それを見て、ピンコさんは慌てる。


「一旦、引き上げるのじゃ」

「そうですね。引きましょう」

「わかりました」

 

 ここは2人の意見に従った方が良さそうだ。


 僕は威圧してくる彼らに向かって頭を下げる。


「また来ます」

「真面目か!」




 

ーーーーーーーーー





 屋敷の少し離れた場所で再度作戦会議をする。


「堂々とまた邪魔する宣言してどうするんじゃ!余計入りずらくなるじゃろう!」


 会議早々ピンコさんに説教されてしまう。


「逆にお相手の方々困惑してましたね」

「そりゃそうじゃろう。あんなバカ真面目に頭下げればのう」

「バカって言う方がバカなんだぞ」

「こどもか」


 ピンコさんは大きな溜息を付き、「やっぱりこれの出番かのう」と小袋からなにかを取り出した。


「これを使って侵入するのじゃ」

「これは?」


 ピンコさんの出したものにラフルさんは首を傾げる。


「これは身に着けて、スイッチを入れれば姿を消せるキーホルダーと消えてる人を確認できるレンズじゃ」

「なにそのチートアイテム」

「それを4セットじゃ」

「チート部隊じゃん」


 突然のチートアイテムに僕は目を見開いて驚く。


「え?ほんとになにそれ?どこでそんなものを?」

「前に話したことあるじゃろう。知り合いに天才発明家がおると」

「ああ!」


 いたなーそんなのと思いながら、僕は手をポンと叩く。


「こうなると思って数日前に依頼しとったんじゃ」

「準備良ッ!」

「にしても、よくそんなの作ってくれましたね。犯罪の片棒を担ぐようなもの」


 ラフルさんも少し驚きながら聞いてくる。


 犯罪の自覚あったんですね。


「さすがに屋敷に忍び込むから作ってくれいなんて言わんのじゃ」

「じゃあ、どうやって?」

「同居人の風呂を除くから作ってくれいと言ったんじゃ」

「普通にそれも犯罪なんですが?」

「よくやりました」

「え?」


 ラフルさんが肯定し出したので、僕は反射的に顔を向けると何故かドヤ顔をしている。


「フウタさん待ってます」

「なにがですか?」


 意味の分からない言葉に反射的に返してしまう。


「この変態がッ!!」

「なにが!?」


 突然、ピンコさんの迫真の顔にびっくりするかと思った。


 まあ、それは置いておいて話を戻そう。


「それを使って正面から入るんだね」

「なんでじゃ!それじゃ、透明になる意味ないじゃろう!」

「いや、せめて玄関から入らないといけないと思って」

「だから、真面目か!」


 どうしても正面から入りたかった僕を2人が説得してきたので、渋々姿を消して柵を越えて入ることにした。


 レンズを目に掛け、キーホルダーを身に付ける。


「……にしても、このキーホルダーかわいいな」


 さっきはツッコまなかったが、謎のタマゴのキャラクターみたいなかわいいキャラクターのカタチをしていた。


「そうじゃろう、作ってくれた友人曰く、このアイテムの名前は『スケスケタマタマンくん』だそうじゃ」

「………………」


 聞かなかったことにしよう。


「では、スイッチを入れるのじゃ」


 僕たちは頷き、スイッチを入れる。


 ……消えたのか?


 正直、分からなかったので、レンズを外すと2人の姿が見えなくなった。


「え!?すごっ!?ほんとに視えない!」


 もう一度レンズを着けると、2人の姿が現れる。それを繰り返していると、ピンコさんに手を掴まれ止められる。


「遊んどるんじゃないのじゃ」

「あ、はい」


 ちょっとテンションが上がり過ぎたようだ。


「確かにこれは便利じゃが、制限時間は1時間らしいのじゃ」

「やっぱり制限時間付きなんだ」


 まあ、そうだよな。普通に便利過ぎるもん。  


 その後、僕たちは屋敷裏に周り、宙を飛び屋敷の庭に入る。


 屋敷に入る為に庭を散策していると、運よく数人のメイドさんが庭の手入れなどの為に出入りしているテラスを見つけたのでそこから屋敷内に入る。


「やっぱり広いですな」

「そうじゃのう、普通に探しては1時間なんぞすぐに過ぎてしまうのじゃ」


 互いに姿は視えているが、侵入してる立場なので小声で話し細心の注意を払う。

 

「恐らくですが、時間的にダイニングでしょうか?」


 ラフルさんが顎に手を当てていい、その可能性が高いと思った僕たちは互いに頷くとダイニングを探す。


 そして、料理を運んでいる人を見つけついていくと、恐らく、ダイニングみたいなところに着いた。


 そこに威厳のある金髪の男性とフラウムさんがいた。


「いた!」


 つい反射的に声が出てしまったが、慌てて口を抑える。


「………………!」


 フラウムさんに聞こえてしまったのか、少し驚いた顔をすると周りを見回すが、姿が見えないので気のせいかと少し落ち込んだ顔をする。


「……………………」


 楽しいはずの食卓でなんて顔してるんだ。それに会話が一切ない。


 僕たちはなんとも言えない表情でその光景を見つめていると、男性、恐らく、お父さんが口を開く。


「フラウム、先程お前の友人が来ていたらしいぞ」

「え?」


 その言葉にフラウムさんは顔を上げると嬉しそうな表情を浮かべる。


「本当ですの?お茶の準備をしなくてはいけませんわね」

「はしたないぞ」


 食事中に立ち上がろうとした彼女を父親は言葉で静止する。


「それに追い返したからもう遅い」

「……え」


 明るかった顔がすぐに暗くなり静かに席に座り直す。


「……お話ぐらいさせてほしかったです」

「………………」


 彼女の言葉になにも返さない。沈黙はNOといったところか。


「大事な友人達の居場所を奪いたいか?」

「!?」


 父親の言葉にフラウムさんはカラダを少し震わせると、顔を下に向ける。


 ………………………。


 本当に食卓でなんて顔だよ。


「その言葉ズルくないですか?」

「!?」


 空気の重い食卓に場違いなほど、呑気な声が響いた。

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