第15話 いつもの楽しい食卓
「ほんほほ~ん♪」
とある日の採掘帰り、街で換金を終えた僕たちの前をピンコさんが独特な鼻歌混じりでご機嫌にホウキを振り歩いていた。
「ご機嫌ですわね。ピンコさん」
「そうだね」
その様子を見て、隣を歩くフラウムさんがいい、僕は返事を返す。
まあ、理由は分かってる。久しぶりに採掘に行くことになった僕たち。採掘中に現れた獣の群れに前みたいに連携取ろうと、手筈通りピンコさんの牽制の魔弾を放った。それがまさかの全弾命中したのだ。その後、数回群れと対峙したが、ピンコさんの拡散攻撃はほぼ外すことなく獣に命中した。多分、8割ぐらい当たっていたのではないだろうか。
「にしても、すごい命中率でしたわね」
「そうだね。もしかして、知らない内に練習とかしたのかな」
「いえ、違うと思います」
僕とフラウムさんの言葉を遮るようにラフルさんは会話に入る。
「恐らく、ですけど、フウタさんの『幸運』が発動していたのかと」
「え?」
突然、幸運と言われるものだから、僕は目を丸くする。
「フウタさん、もしかしてですけど、彼女にホウキ以外でなにかあげました?」
「ホウキ以外って………」
それ以外だったら、あれだよね?
僕は、ピンコさんのホウキについているリボンを見る。それを見てラフルさんは「なるほど」と呟く。
「それがどうかしましたんですの?」
僕と同じでフラウムさんも分かってないのか聞くと答えてくれる。
「あくまで仮説ですが、フウタさんが彼女にプレゼントしたものが、『お守り』のような作用を発揮したのだと思います」
「お守り?」
「んーーーーー?それは分かったけど、なんで『僕の幸運』なの?」
僕が首を傾げるとラフルさんは逆に質問してくる。
「フウタさん、前世で友人に『運で』頼られることありませんでしたか?」
「あーそういえば」
前世で友達にお前を連れていくとパチンコよく当たるからついてこいと、行きたくないのによくパチンコに連行されてたな……毎回ではないけど、数万勝つことが、よくあった気がする。今思わなくても、そんな理由で貴重な休みを潰されてたとかなんかムカつくな。
「フウタさんは、無自覚だと思いますが、他人に幸運を与えることがあるんです。それが今回の場合、プレゼントという形だったのかと、ですが、プレゼントをあげたからとそうなるわけではないですけど」
「ということは、僕は幸運の女神だったと」
「そうだと思います」
ボケのつもりだったが、本当らしい。
ちょっと待てよ……?
僕はあることを思い出した。
学生時代、僕は雑魚だったので、レギュラーメンバーや後輩のパシリ、それに武道場の施錠や片付けを一人でやっていた。その部活はほぼ毎回、準優勝をしていた。だが、身体の弱かった僕はたまに入院をしていた。それで僕が入院してた時の大会の戦績は散々だったと聞いたことがある。それと、僕が入院している時に部室の使用禁止令が出てた時はびっくりした。その後、部活メンバーにボロクソ言われたのをよく覚えている。
それがもしかして、『僕の幸運』だったってこと?だとしたら、今更怒りが湧いてきた。あのやろー。
「なるほどのう。お主のお陰じゃたか」
過去の怒りにふつふつとしていると、前を歩いていたピンコさんが振り返る。
「なら、お主もう一回頭打ってみんか?そしたら、わたしゃの運も爆上がりじゃ。ほれ、そこに良さそうな角があるのじゃ」
おい、このやろう。
僕は心の中でツッコム。
「おい、このやろう」
口でも言っていた。
そんな僕にピンコさんは笑いながら、肩をポンポンと叩いてくる。
「冗談じゃ、冗談じゃ、まあ、怪我をしてしまったら看病してやるから、いつでもしていいのじゃ」
「おい、このやろう」
まあ、僕の幸運で誰かが幸せになるならいいか。
正直、僕も幸運ほしいけどね。
「………………」
ふと、フラウムさんを見ると、なにか不思議な顔をしていた。
最近、たまにあの顔するんだよな…………なんというか、哀しそうというか、悩んでる顔っていうのか。
そんな僕の考えを振り切るようにフラウムさんはいつものような明るい顔をすると、思いついたように口を開く。
「今日の夕食、クア・レイにしませんか?」
「え?いいけど、いいの?」
僕たちはフラウムさんを見て少し驚くが、それには理由があった。少し前から週一でカレーの日を作っていたのだが、その周期には数日早かったのだ。
「数日後また食うじゃろう?その時でよくないかのう?」
ピンコさんも同じことを思ったのか代わりにいうと、フラウムさんは前のめりになる。
「いえ、今日がいいんですの!クア・レイの気分ですわ!」
譲る気はないようだ。まあ、かといって拒否する理由もないからな。
「うん、いいよ。今日の夜ご飯はカレーにしようか」
「クア・レイですわ」
何回したんだろうこの会話。
まあ、カレーはカレーだ。こっちも譲る気はない。
「じゃあ、このまま買い出しに行こうか」
「はい!」
僕たちはそのまま買い出しに向かい、カレーの材料を買いに行った。ピンコさんがあれを入れようこれを入れようと、色んな食べ物を買おうとして、フラウムさんとちょっと揉めていたが、楽しく買い物をして、その後、楽しく食卓を囲み、美味しくカレーを頂いた。
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その日の夜、僕はお風呂から上がり大広間でゆっくりした後、部屋でだらだらとしていると、部屋のドアが叩かれた。
「……んあ?」
ほぼ寝かけていたので、閉じかけの瞼を擦りながらドアを開けると、寝着姿のフラウムさんがいた。
「夜遅くに申し訳ありませんわ」
フラウムさんは頭を下げる。
「どうしたの?」
突然、来たのも驚いたが、僕は冷静を装い尋ねる。
「少し付き合っていただけませんか?」




