表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/22

第11話 楽しい楽しい採掘

 巣窟内に獣の雄叫びが響き渡った。


 その声はひとつではなく、十数にも及ぶ。獣の群れを前に僕たちは臨戦態勢を取り、様子を伺う。流れる緊張の中、治癒魔女ヒールウィッチであるピンコさんは前に出てホウキを構える。


「まずは、攪乱するのじゃ!マジカルボムッ!」


 彼女のその言葉と共にホウキの先から、丸型のエネルギーが獣の群れに飛ぶ、獣達はそれを様々な方向に避け、こちらに向かってきた。


「パラレルショット!」


 もう一度呪文を唱えるとホウキからエネルギーが拡散して飛んでいき、半数近くの獣に命中した。しかし、撃ち漏らした獣はやられた仲間を気にせずに襲いかかってくる。


「『Cカップ巨乳好きのフウタさん』!そっちに行ったのじゃ!」


 恐らく、僕のことを言っているのだろうが、戦闘中なので気にしない。僕は、左手に力を込めてそのまま前に突き出し、拳圧を飛ばす。そこから出た風圧に獣達は吹き飛び、散っていく。だが、後ろにいた数体は左右に分かれ攻撃を避け、周り込んでくる。僕は、もう一度拳を構えるが、横を華麗な女性が過ぎていく。


「『Dカップ巨乳好きのフウタさん』!ここはワタクシに任せてください!」


 戦闘中に出たとは思えない言葉をスルーしながら、華麗な女性ことフラウムさんは、飛び出すと左右に散った数体を華麗な足技で蹴散らしていく。その美しい動きといったら、まるでダンスを見ているようだ。はじめの蹴りを起点に美しく空中で回るとそのまま獣を地面に蹴りつけていく。そう、例えるなら、ファイヤトルネードである。


 地面の砂誇りと共に獣達の鳴く声が止む。


「すごいのう、まさに洞窟で舞い輝く姫じゃのう。やはり胸なんかいらんのじゃ。そうは思わんか?」


 こっち見て言わないで?


「いえいえ、ピンコさんの魔法攻撃の援護があってこそですわ。爆風も爆乳に変わるというではありませんか。そう思いますわよね?」


 いや、言わないよ?だから、最後にこっち見ないで?


 ていうか、いつまでそれいじるの?普通に傷つく。


 そんな様子を見ていたラフルさんは大きく溜息を吐いてますけど、これラフルさんのせいですからね?


 そんな僕を知ってか知らずか、呆れた様に口を開く。


「あらあら、どうしたんですか?揺らすものがなくたっていいじゃないですか。とても動きやすいと思いますよ。採掘が捗りそうです」


 めっちゃ煽るじゃん……。


 その言葉を聞いた2人は、スンとなると、ラフルさんを見つめる。急にスンとしないで、普通に怖い。


「どうしたんですか?ああ、すみません、そんなに気にしなくてもまだ子供なので大丈夫ですよ」


 ラフルさん、意外と煽り癖があるんだな。


 無表情だったピンコさんは笑顔を作るとクスリと笑い出す。


「そうじゃったのう。女神さまじゃったのう。19の小娘がそれはそれは失礼しましたのじゃ。ところで、女神さまは『歳はおいくつ』でございますかのう?」


 その言葉にラフルさんは身体をびくりと震わせる。


「あ、これまた失礼しましたのじゃ。きっとわたしゃたちなんかと違って長生きされとる女神さまの歳を聞くなんて失礼じゃったのう。あるえ~ということは今の見た目若そうに見えますけど~若作りですかのう~?」


 やめろぉ!言葉の切れ味がすごい!

 

 ラフルさんは眉間をぴくぴくとさせる。


「きっとそのお胸も女神パワーで盛ってるんでしょうね。羨ましいですわ~さすが女神さまですわ~」


 フラウムさんも意気揚々と追撃しないで!


「……この小娘共が、女神に向かってなんたることを」


 ラフルさんはドス黒笑顔で2人に笑いかける。意外と女神としてのプライドがあったみたいだ。


「女神さまは人間風情のお言葉を気になされるのですか?意外と人間臭いんですのね」


 さらなる追撃にラフルさんは眉間に青筋を増やす。


 この女神、意外と煽りに弱いんだな。しかも、お嬢様はかなり饒舌なご様子で。

 いきなりパーティーに亀裂が走っている。


 …………さすがに見てられないな。


「3人のとも、そこまで、僕がいじられるのはいいけど、互いを互いで貶しあうのはよくないよ」


 僕は3人の間に割って入る。険悪な目を向けられながらもなんとか言葉を探す。


「僕たちは、パーティー(仮)なんだから助け合わないと、それに誰にだっていい所や悪い所、得意や苦手なことがあるでしょ?それをさっきみたいに補うんだよ……って、僕なんかの言えたことじゃないか」


 ありきたりなことしか言えなかったので、僕は「たはは……」と笑って誤魔化す。


 3人は互いに目を逸らす。


「まあ、確かに一理あるのう。だが、あくまで採掘中だから協力するだけなのじゃ」

「ええ、採掘中に仲間割れはよくありませんわ。一時休戦といきましょう」

「いいでしょう」


 まだ、険悪な空気が漂っているが、協力はしてくれるみたいだ。一緒に暮らしてるんだから、正直、仲直りはしてほしいものだ。


「それにフウタさん、また、自分を犠牲にしましたね」

「え?」


 一時的に争いが下火になったと安心していたら、ラフルさんが怪訝な顔を向ける。


「フウタさんの悪い癖です。自分を下げれば場が収まると思っています。それで損してどうするんですか」

「は、はい、すみません」


 確かにそうだ……自分を下げたところで場が収まるなんて、傲慢だ……また、やってしまったか。


「少しずつでいいです」

「え?」

「少しずつでいいので、もっと自信を持てるように、大切にできるようになってください」


 人はすぐには変われない。それを彼女はよく知っているようだ。さすが女神、言葉の重みが違う。


「はい、もっと自分を傷つけないようにし……まああ!?」

「!?」


 突然、頭部に衝撃と激痛が走る。


 カゴンッと音と共に頭から何か大きなものが地面に落ちて割れる。


 それは大きめの岩だった。


「うごおおおおおおおお!!?」 

「フウタさん!大丈夫ですか!?」


 僕は頭を抱えその場でしゃがみ悶える。ラフルさんは慌てて駆け寄ってくる。


「噓じゃろ……」


 ピンコさんの引いた声に顔を上げるとフラウムさんは突然のことに目を見開いて驚いて岩と天井を交互に見ている。


「フウタさん!大丈夫ですか!?」


 ラフルさんはもう一度、僕の心配をしてくれるが、大丈夫な訳がないので、呻き声を挙げる。

 

「うぐごごごごご……」


 僕は頭を抱えて痛みに震える。


「まったく……ほんとお主は運がないのう。ほれ、ちょっと視せるのじゃ」


 ピンコさんはしゃがみホウキを地面に置くと、「ちょいと失礼するぞ」といい、僕の頭部を確認する。


「コブが出来かけておるのう。外傷は治せると思うが、これはちょいと病院で視てもらった方がいいかもしれないのじゃ」


 さすが治癒魔女ヒールウィッチと言ったところか、かなり的確に視てくれる。


「ええっ!?これって!?」


 突然、フラウムさんが叫んだので、僕たちは反射的に見ると割れた岩を見て驚いていた。


「これって、高級鉱石ですわ!」


 割れた岩の一部が水色に光っており、かなり綺麗な形の鉱石が埋まっていた。その石が高級鉱石なのだろう。

  

「噓じゃろ……」


 不幸と共に舞い降りた鉱石にピンコさんはまたしても引いた顔をする。


「すごいですわ!まさかはじめての採掘で高級鉱石が落ちてくるなんて!」

「どんな確率じゃ」


 運よく高級鉱石を手に入れたフラウムさんは意気揚々とポーチにしまい、ピンコさんはありえない偶然にツッコム。


 ワオオオオオオォォォッ!!!


「!?」


 突然の叫び声に顔を向けると、獣の群れが再び僕たちの前に現れた。恐らく、さっきの獣達の仲間だろう。仲間の仇を取りに来たと言ったところか。


「また来ましたわね」

「ピンコさん、フウタさんを頼みます」

「わかったのじゃ」


 ラフルさんは僕の前から離れ、戦闘態勢を取っているフラウムさんの横に立つ。


「早く終わらせて、今日は帰りましょう」

「そうですわね」


 2人が互いに言葉を交わすと、獣の群れに走って行く。それを見た獣達も一斉に雄叫びを上げる。


「……っ!?」


 その雄叫びの僅かな振動に僕は『イヤな予感』がした。そして、その予感は的中した。


 獣達の雄叫びで洞窟ないが、少し振動した。本来ならどうってことのないものだろう。だが、先程、『僕の頭上には何が落ちてきた』?


 そんな僕の疑問と同時に頭上からイヤな音がする。その音は亀裂ができると同時に弾けた。そして、そのまま雪崩となって僕のだけでなく、ピンコさんにも牙を向ける。


「……なっ!?」


 突然のことにピンコさんは反応が遅れてしまう。僕は、反射的にピンコさんの手を引き、地面を大きく蹴り後ろに飛び退く。


「!?」


 2人の驚愕する顔と共に僕とピンコさんの視界は瓦礫で塞がれた。


「……っ、だ、大丈夫?ピンコさん?」


 なんとか雪崩には巻き込まれなかったみたいだ。だが、道はすっかり瓦礫で埋まってしまっている。


「……フウタさん」

「?」


 ピンコさんは言いにくそうな声を出す。


「そ、その、助けてくれたのは、ありがたいが……すまんが、早く退いてくれるかのう?」


 何故か照れくさそうにいうピンコさんに僕は首を傾げるが、すぐに気付く。


 引っ張って引き寄せた為、彼女を押し倒した体制みたいになっていた。


「あ!ご、ごめん!すぐ退くね!」


 僕は、慌てて彼女の上から退こうと上半身を上げる。


「……!?」


 しかし、次の瞬間、激しい眩暈に襲われた。


「……あ……れ?」


 そこで、僕の意識は途切れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ