孤独じゃなくなっていく僕へ
・真田健
中高一貫校である愛知学園中学校の中学2年生。
谷田先輩のことが好き。
身長145cm。
・谷田みなみ先輩
大学1年生愛知学園高等学校の元生徒。
大学に通いながら女優をやっている。
KENのことが好き。
高校3年生の時に健と同じ園芸委員会に所属していた。
身長162cm。
7月1日、学校。
今は2時間目と3時間目の間の休み時間だ。
僕は「友達作り」とか「コミュニュケーション」とかそういうものに縁がなく、必要としていない僕は自分の席に座って、本を開いた。
やはり、谷田先輩がいなくなった学校は息をしづらい…
「よっ、真田。何読んでるの?今日も浮かない顔してるな」
…というわけではなかった、一人友達ができたのだ。
その友達は僕の机の前にしゃがみ込み、腕枕を作り、そこに顎を乗せた。
「………っと…?」
「藤田だよ!そろそろ名前くらいは覚えてくれ!毎日喋ってるんだし!」
「…はは…ごめん…」
中学二年生になって、クラス替えがあった。
元のクラスと他クラスのメンバーがシャッフルされたのだ。
結局、僕は中学一年生の時のクラスの誰の名前も覚えず、一年が終わってしまった。
僕の嫌いなアイツも今では別のクラスだ。
ええと…名前はなんだっけ…。
思い出せない、けど、どうでもいいか…。
でも…こんな感じで、谷田先輩も僕のことを忘れていくのかな。
僕の名前も顔も声も全て忘れて生きていくのかな。
そう考えると、急に堰き止めていた感情のダムが決壊して寂しさの波が押し寄せた。
「…藤田、お前だけは僕のこと覚えていてくれよ」
「なんだよ、いきなり。気色の悪リィ」
僕が藤田の名前を新学年が始まって3ヶ月が経過しても、未だに覚えることができていないので、友達と呼んでいい存在なのかは不明だが、そろそろ覚えておきたい。
藤田藤田藤田…と…。
こいつとは長い付き合いになる気がする。
「そういえばよ、お前、あの、女優の谷田みなみと仲良かったんだってな!卒業式にもわざわざ会いに行ったって」
「…あぁ…」
「すげぇよな。4月頃に初めてテレビで見るようになったと思ったら、もう番組にCMにSNSに引っ張りだこ。最近じゃ、本当かどうかわからないが、俳優の△△と恋愛観家にあるとか…」
「…」
「あ、いや、すまん。知り合いのこういう話はあんまし気持ちの良いものでもないよな…ごめん!」
僕は藤田のこういうところが好きだ。
悪いと思ったことはちゃんと謝れる。
「良い…どうせそういうのは全部噂の域を出ない…嘘っぱちの紛い物だ」
…でも…それはそれとして、恋愛関係って何だよ。△△が何者かも知らないし、名前を覚える気にもなれない。
ただ、もしかしたら、本当にこんな感じで将来、僕は手も足も出ないまま谷田先輩を何処の馬の骨ともわからない奴に谷田先輩と僕との6年後の約束ごと奪い去られてしまうのかもしれない。谷田先輩は誰かと付き合うのかもしれない。
…僕との約束覚えていますか…谷田先輩…。
「でも、やっぱすげぇよ!谷田みなみは愛知学園の誇りだぜ!」
「なに」
と、小さいけれど、芯の通った声が響いた。
藤田の真横に女子が立っていたのだ。
前髪がやや長めで、藤田を見下ろすように首だけ下に傾けて喋っていることも相まって、前髪で目が隠れてしまっている、顔がよくわからない。
いかにも、陰キャという風貌で、纏っているオーラが暗かった。身長は僕より少し小さいだろうか。
藤田の真横に立っているので、僕からすると正面に立っているわけだが、その僕でもいつからそこにいたのか知らない。気づくことができなかったのだ。
それくらい、影の薄い女子だった。
「あ、『そっち』の谷田みなみじゃないんだわ。ごめん。女優の方」
とバツの悪そうに藤田が女子に謝った。
「誰それ?知らない」
半分くらい隠れた顔でも分かる仏頂面でぶっきらぼうに答える女子。
「最近良く見るだろ?SNSとかで」
「私、あまりSNS見ない」
「…あ………そう…」
これには藤田も何を喋れば良いか窮してしまったようだ。
「そこ、私の席」
とその女子は僕の隣の席を指差した。
お隣さんだったのか…名前は確か…なんだっけ…?
「通路だからどいてほしい」
「ああごめんごめん今退くわ」
藤田が退くと、女子はでまるでモデルや女優でもやっているような華麗な足取りで自分の席へと向かっていった。
と、その刹那、ひゅうと風が吹き、その女子の髪がふわりと上がり、顔が見えた。
「…ぇ…」
その顔は…
「…は…?」
…見紛うはずもない。幼いながら面影がある見覚えしかない顔…。
「…なん…で…?」
僕はまだ夢を見ているのか?
「…君…名前は…」
僕は名前なんか覚えない。
「谷田みなみ。さっき藤田君が言ってたよね?」
お読みいただきありがとうございます…✨
谷田先輩とそっくりの谷田みなみ…一体何者なのでしょうか…✨




