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谷田先輩

・真田健

身長145cm。


・谷田みなみ

身長162cm。


「ありゃりゃ、健君、健君。そこの花壇のお花枯れちゃう。枯れちゃう。お水やりすぎ」

「へ…あっ!?ごっ…ごめんなさい」

「ぼわぁーっとしちゃってどうしたの?ふわふわりんなの?」

「ふわふわりん…???いや…理由は特にないです」

本当は先輩を見ていただけ。


谷田みなみ先輩。

中高一貫校である、ここ、愛知学園中学、高校の園芸委員会の先輩。

僕は谷田先輩が好きだ。

でも、僕は中学一年生。

谷田先輩は高校三年生。

歳の差の壁は厚い…。


カララ…。


僕の教室の窓が開いた。

「ねぇ、健君。お花って何色が好き?」

谷田先輩が、お昼の休み時間に自分の教室のある高校棟から中学棟の僕の教室まで移動してきて僕に会いにきてくれたのだ。

こうやって、いつも谷田先輩はお昼の休み時間に会いにきてくれる。

僕の席は窓際にあるので、先輩は教室に入ることなく、廊下から僕に話しかけることができる。

窓際席の特権である。

「黒…ですかね…」

黒薔薇とかちょっとかっこいいし。

「私はライトブルーだなぁ…パステルカラー、綺麗だと思うんだけど、どうかな?」

「はぁ…まぁ…良いんじゃ…ないですかね…」

あぁ…ダメだな…谷田先輩と喋ろうとすると、緊張してダメだ…。うまく会話ができない…。


「うわ…『ショタコン』だよ…」


どこかからそんな声が聞こえた。

誰が言ったのかはわからない。


しかし、そんな声を気にすることもなく、谷田先輩は会話を続けた。


「健君はさぁ…毎朝欠かさず、校庭のお花にお水をあげてるからさぁ…本当に助かってるんだよ?」

「それは谷田先輩も同じじゃないですか…」

「えぇ〜よく見てるなぁ〜」

と満足そうに窓枠に両肘をついてその掌の上に自分の顔を置く。

顔が近い…。

「花壇はそんなに広くないんですから、水やりに行ったら、見かけるのはしかたないじゃないですか」

「えぇ〜そうかなぁ〜?」

そうやってクスクス笑う谷田先輩はやっぱり素敵な女性だと思う。

「まぁ、い〜や〜じゃねぇぃ〜」

そう言って谷田先輩は走り去って行ってしまった。

もう少し話したかったな…。

いざ、話そうとすると、頭の中が空っぽになって上手く話せないくせに。



「ねぇ、健ってさ、あの谷田ってヒトのコトがスキなの?」

クラスメイトの一人が話しかけてきた。

「…」

「んー?シカトするんだー?」

「…」

「まぁーいいや。でも、あのヒトはやめておいた方がいいよ?同じクラスに友達はいないくせに、他の学年の男子に話しかけまくって、何股もかけてるってウワサだから。健君、遊ばれてるんだよ」

そういえば、谷田先輩が他の高校三年生の同級生と会話しているところを見たことがない。

でも。

「やめろよ。そういうの」

「うわー。怖い。せっかく『チュウコク』してあげたって言うのに」

「いらないから。本当に」

「わかったよー。じゃ、がんばってねー?」

その名前も覚えていないクラスメイトは手をぷらぷら振って、他のクラスメイト達と会話をしに行った。

こっちを見て他のクラスメイト達とにやにやしている。

概ね会話している内容は分かる。

そもそも、なんで僕がアイツの名前を覚えていないのに、アイツは僕の名前を覚えているんだ。心底気持ちが悪い。



4限と5限の間の休み時間。

僕は教室の中にいても、誰とも会話することはないので、廊下に出て特に目的もなく歩いている。

4限の教師の授業が早く終わったので、休み時間が5分程長くなった………時間があるな………たまには行ってみるか…僕の方から。

僕は高校棟へ向かった。


キーンコーンカーンコーン。

チャイムが鳴った。

各教室から生徒が溢れ出す。

………アイツの話には一理はあった。

僕は自分のクラスの誰の名前も覚えていない。担任の教師の名前も忘れた。

だから、友達が一人もできていない。

そんな中、園芸委員会で出会ったのが、谷田先輩だった。

谷田先輩は独りぼっちの僕によく話しかけてくれた。

だから、名前をフルネームで覚えられた。

谷田先輩は園芸委員会の僕以外のヒトと誰とも喋っているのを見かけたことはなかった。

だから、勝手に親近感を覚えてしまっていたのだ。

もしかしたら、僕と同じなんじゃないか。友達がいないんじゃないかって。

でも、違うのかもしれない。僕は自惚れているだけなのかもしれない。そこは反省しないといけな………

「〇〇君。これ、頼めるかな?」

「大丈夫ですよ」

「ありがとう」

そこにいたのは〇〇君という男と谷田先輩だった。

アイツのコトバが脳裏によぎる。

『同じクラスに友達はいないくせに、他の学年の男子に話しかけまくって、何股もかけてる』

話しかけられていたのは僕だけじゃなかった。

僕だけが特別な存在だと言うわけではなかった。

そんな。

息が詰まる。気管が痛い。鼻も痛い。全部痛い。もう止めようと思っても目から涙は止まってくれない。

僕はこの学校が怖い。

みんな怖い。全部怖い。誰も僕の味方じゃない。誰も僕をちゃんと見てくれない。

僕はその場から走って逃げた。



しばらく走って僕は疲れてその場に蹲った。

ここがどこなのかもわからない。

校門を出た覚えはないから、学校内ではあるのだろう。

でも、それは僕が無我夢中に走ったから覚えてないだけなのかもしれない。

すると、

キーンコーンカーンコーン。

チャイムが鳴った。

聴こえるということは学校内なのだろう。

授業が始まったらしい。

教室に戻る気力はなかった。

僕はただワイシャツの胸あたりを鷲掴みにし、歯を食いしばって、目ん玉をかっぴらいて、ただ声にならない声を漏らした。

「あああああああああああああああああ!」


「健…君…?」


「谷田先輩…なんで…?」


目を丸くした谷田先輩がそこにはいた。


「健君が走って行くのが見えたから」

「授業があるでしょう」

「健君が心配だよ」

あぁ…この人は…。

そうだよな。この人はそういうヒトじゃない。

僕のことを気にかけて、いつも優しく接してくれる。

谷田先輩はこういう人だ。

「少し怖くなっちゃったんです。びっくりしちゃったんです。谷田先輩が他の人と喋っているところなんて初めて見たから…。ごめんなさい」

谷田先輩は理解が思案顔になって、しばらく言葉の意味を考えるために沈黙したが、次の瞬間、意味をちゃんと理解したらしく顔を真っ赤にして驚いたような顔になった。


「あれはね…?POPを作るように頼んだんだよ。後輩の子に」

「そう…だったんですね…」

それでも、僕以外の男と話していた事実は変わらない。

「知ってるでしょ?〇〇君。園芸委員会の委員だよ?高校二年生の」

「え?あぁ…まぁ…」

嘘。全く知らない。というか、覚えていない。

「だから、話しかけただけなの」

「…でもそれなら僕に頼って欲しかったです」

…は?何を言ってるんだ僕は!?でしゃばって変なことを言うな!

「ごめんね。アレは高校生の仕事だからさ」

「………はい…ごめんなさい…」

分かってはいた。理解しているつもりではいた。

でもこうして中学生と高校生の分厚い越えることができない壁をはっきりと眼前に突きつけられるとやっぱり心が締め付けられる。

お前はまだ幼いんだと言われているような気がする。

僕があと五年…せめて三年…早く生まれていれば…。

「教室…戻ろっか」

僕の手を握り、くるり。と背を向けて谷田先輩は歩きだした。

「…ごめんなさい。谷田先輩、今年、受験なのに授業をサボらせてしまって…」

「いいんだよ。あんな授業。受けない方が正解なんだし」

「へ…?」

「私ね。クラスに友達一人もいないの。誰もね。私は私のことをちゃんと見てくれる人としか会話したくないから、それ以外の人とは必要最低限の会話しかしない。そしたら一人ぼっちになっちゃった」

あはは。と振り返って笑う谷田先輩の表情はどこか苦しそうで。

「そんなクラスで授業なんか受けたくないよね」

「…そうですね」

痛いほどよく分かる。谷田先輩の気持ちが。

「健君は私のことすごくよく見てくれる」

「そう…ですかね…?」

「だから話しかけたくなるの」

「…」

「さっきね、誰かを頼りたい、手を借りたいって思った時に思い浮かんだのは君の顔だったよ」

「…恥ずかしいです…」

「もうすぐ卒業かぁ…」

今は秋、十月である。卒業まで約五ヶ月。

「私はいつまで君の隣に居られるのかなぁ…」

「僕は…ずっと…一緒にいたいです…」

「ふふっ…ありがと」

なんか恋人みたいだなんて思ってしまった。

浮かれすぎだろうか。

年齢があまりにも離れすぎていて、お互いにそれが原因ですれ違ってしまうのが怖い。好き同士であるだけの関係。

好きな人である先輩に好きと言ってしまえれば僕はきっととっても幸せ。

泣きながら今ここで、先輩に好きだと言ってしまえたらどれだけ素敵なことだろうか。

でも、きっと付き合ってしまったら、今の関係は壊れてしまう。溝が深まってしまう。これ以上お互いクラスで浮いてしまう。だから、この気持ちはしまっておこう。

僕は先輩に一言。

「ありがとうございます」

と心を込めた感謝の言葉を贈った。

でも、本当に伝えたいのはそんな言葉じゃなくて。

こんなんでますます幸せになっていく僕をどうしよう。

僕は今すごく良くないこと考えた。

もう全員いなくなって僕だけ見てほしいとか、そんなこと。

今は少しだけこの時間が、関係が心地良くて、暫くこのままでいたいだなんて、そんなことさえ思ってしまっていた。

こんな日々が続いて欲しいから。

「…寝て起きて、気がついたら健君と付き合っていれば良いのにな」

ほとんど聞こえない声で谷田先輩が呟いたのが聞こえてしまった。

頼むからもうそんなこと言わないで欲しい。

僕をもうこれ以上泣かさないでほしい。

そんなの、僕だって。



3月1日。卒業式も終わって、谷田先輩は卒業した。


卒業しても会いたかった。

それでも進学先や連絡先を聞けなかったのは、きっと聞いてもまともに答えてくれはしないと思ったから。

お読みいただきありがとうございます…✨

ふわふわしてる大人のお姉さんとメンヘラショタのオネショタってえっちだよねってそう思っております…✨

二人きりの独りぼっちの連載版です…✨

まだ続きます…✨


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