第4話
さて、講堂に着いた俺。
「講堂だな。」と、誰かが言った。俺だ。
「そうですね。」と、誰かが言った。俺だ、いや嘘だ妹のエスだ。
そんな隣のエスに視線を向けると、間違いなく、妹だ。ということは4歳だな。
4歳児と5歳児の二人だけで行動って大丈夫なん?ライスじゃなくてナンなん?と思ったらチーズナンなん?と思ったら周りにいろんな気配がありました。
要は親の差配かガードマン的隠密部隊な人たちがいるのでしょう。
ほら貴方の後ろにも○○ガードマンが…。2000ポイント貯まるんです。
「つまり影日向からガードされていて安全は指差し確保されている、ということだな。」
「私たちの年齢でここまで自由に動けている方が珍しいと思いますよ。」
全くだ。この世の全ては全くだ。やばい「全」が段々「ハ」と「王」に分かれて見えてきた。これがあれか、崩壊スタ何とかか?凝視し過ぎか?凝視力が問われるとはテ○リスか?
さて、一瞬で冷静になった俺。
それにしても随分集まっているな。何人位いるんだ。ひのふのみのよの…いっぱいだな。
「学園の入学は年1回、毎年1,500人くらいだそうですよ。」
1,500人だって!?1,484人よりも18人も多いじゃないか!
「あ、でも俺のIQよりは少ないか。」
「ちなみに兄さまのIQはいくつですか?」
「私のIQは53万で「本当は?」約110です…。」
約110ってギリギリ平均ちょい上辺り?のIQ?の俺?って本当に全知全能なのか?いやちげーか。全能だけど全知ではないな。何故ならエスがここにいる理由を知らないからだ。エスも事情を話す雰囲気ではないし、どうなっているんだるまさんがココロン。あと本当に全能なのか自分でも疑わしい&広重。
とか何とか適当に思考を思考の海に海水浴しながら頭の中で浮世絵を描いていると、周りからヒソヒソ声がひそひそと聞こえてきた。
「おい、あれ…。」
「ああエスターリア嬢だ、間違いない。」
「僅か4歳児にして飛び級で学園に入ることになった美貌と羨望の美少女魔女、エスターリアだ。」
「ええっ、あの無限の魔力を誇るというインフィニティマスターエスターリア!?」
「好きなタイプは騒がしくも頼もしい男性と公言していたエスターリアだ!」
「4歳児って嘘だろう?」
「バカ野郎、女性に年齢を聞いたら八つ裂きにされるぞ!」
うーんモブ説明ありがとう。一瞬で諸々把握。女性に年齢を聞いても八つ裂きにされる程度の優しい世界把握。あと騒がしくも頼もしい男性って誰だ?俺か?クレカ?禁断の恋キング?というかエスも学園に入学するって、誰かから聞いたっけ?
「いえ、言ってません。どうせ言っても言わなくても同じだろうと母様が。」
おっとそれは聞き捨てならねえ。同じっていうのはどういうこってい、大事な大事な妹の進路を聞かされていないのは納豆食う外貨ねえ、もとい納得がいかねえ。
「ちなみに兄さまのことは血縁があることが心の底から憎らしい程度に好きですよ。」
「思い重い思い!まあ可愛い妹のやることには無条件1000%肯定皇帝ペングインですけどね。きゃはっ。とはいえ血縁は如何ともし難いが、何か策略前略中略攻略はあるのかい?」
「はい。でも詳細は秘密です。」
血縁を後天的に何とかすることができるのは、流石に神の御業だろう、つまりイリスの逆切れで何とかなるわけだ。あーイリスさんイリスさん、聞こえますか?妹が頼もしすぎてかつ面白おかしいので、ここはひとつ将来を誓い合った前前前世の再現とかいかがでしょうかね?報酬は俺の膵臓で。
【いりませんできません無理です「めっちゃ逆切れっすねイリスさんぱねっす」切れてません!】
まあ、単純に法と秩序を狂わせればいいだけだしな。スーパーウルトラハイパーミラクルエスターリアならどうとでもするだろう。ということは後は自分の覚悟だけだが、そもそも俺の花嫁は最低でも四十八(仮)人いるはずなので、血縁だのなんだのは白色矮小な問題だ。
さて、我儘女神のまな板イリス【後で校舎裏に来るように「すいませんでした」】を適当にからかったところで講堂の前の方に視線を向けると、そろそろ盛大なイベントの盛大な始まりを予感させる盛大な雰囲気を醸し出し始めている。今から学園の関係者が入場してくるかな。
「ところでエス、今日はクラス分けって言ってたよな?何が始まるんだ?」
「来月から始まる学園の生活全般についての説明と、それからクラス分けの指標となる魔力測定ですよ。」
魔力測定!?それは最早テンプレを通り越してテンプラになっているアレではないか。ん?テンプレを通り越したらテンプロか?まあいっか。
それよりもあれだ、魔力を測る装置を何も知らない俺がヤバい数値をたたき出し破壊、賞賛と硝酸と嫉妬と湿布。荒れる魔力測定大会、渦巻く陰謀、エスの身に迫る魔の手足口…ところで『魔』ってこの世界の人たちはどういうイメージを持っているんだろうか。悪魔系?魔王系?魔法という便利グッズの源?おじゃ魔女っ子?そういえば魔力測定のやり方を聞いてないぞ。全力で把握しないと、ということで必殺アカシック・レコード!
説明しよう。アカシック・レコードは明石っぽい記録の事である。つまり、標準時間なのか?それとも秋刀魚が名探偵なのか?
「兄さま、簡単に説明するので落ち着いてください。」
さて、一瞬で冷静になった俺。
エスから改めて今日のイベントの概要説明を受けて、もはや準備万端突端最先端。
クラス分けも魔力値と魔力操作の実力を総合的に判断できる魔力と若さの測定装置「プラズマ」を使って4つのランク、上からSSSS、SSS、SS、Sに振り分けられるということも聞いた。
まあ、エスは物語の流れ的にSSSS確定だとして、俺はどうなんだろう、まあやってみないと分からんな。あと全校生徒を無理やりS以上に割り当てたいからといってSSSSはやりすぎ感が否めないないないいないばあっ!そしてエスは学園入学後はエスエスエスエスターリアに改名することが決まった。ん?エスが一個少ないかな?むしろ100個ぐらいつけると開運開眼できそうな気がする。
「する?」
「しません。」
即答だったが遠慮しなくても良いぞ我が妹よ。遠慮は無用の長物、長い物?長いと大変なのか?帯に短いのか?襷に長いのか?なら短く切って襷にしろよ頭を使え皆の衆。
「普通に呼ばれるのが一番好きです。」
「じゃあそれで。」
ということで一瞬で冷静になった俺は、愛称がエスに戻ったエスとともに、講堂の前の方を向く。
すると教務長っぽい人が学園生活についての簡単な説明を始めた。色々細かいことを話しているが全く問題ない。全部ばっちりエスが対応してくれるだろう。
「私が同行できない場所場面もあります。しっかり聞いてください。」
「おおっと!まるで地面に叩きつけられたような衝撃的な言葉、MALOR転送失敗じゃないですかぁやだぁ、しょうがない頑張って覚えよう。」
既に八割方説明は終わっているが、まあ何とかなるだろう。諦めたら試合開始だからな。あれ終了だっけ?しかし説明の最後に良い事が聞けたぞ。食堂は食べ放題飲み放題タレ付け放題テレホーダイだと。それだけ分かれば大丈夫。順風満帆な学園生活が、俺を待っている。今夜こそ女神のアレを奪うぜ。
『では、今から魔力測定を行います。事前に案内した番号ごとに、決められた列に並ぶように。』
ん、事前にお知らせ?聞いていたけど聞いていなかったぞ。要約すると忘れた。いや、もしかしたら本当に聞いていないかもしれない。だとしたらあの教務長は有罪だな「私は589番、兄さまは590番です。500番台はあの列ですよ。」嘘ですすいません無罪ですξです。
さて、一瞬で冷静になった俺。
エスと一緒に静かに列に並ぶ。
エスの前にいるのは金髪の少年、年齢は概ね約8歳3カ月11日10時間程度位。
俺の後ろにいるのは銀髪碧眼で顔立ちが整い過ぎてクールな印象の愛嬌全振り闇夜専門狩人の少女、年齢は非公開だ。
年齢非公開の割には職業は公開しているのか凄いな現代社会、とよく考えたら俺が勝手にスキル「お~い千里眼」で覗いただけだった。失敬失敬ピッチャー愛敬。
視線を向けられた少女は「私の職業年齢は他言無用ですいいですね」というオーラを出しているが、そんなクール愛嬌オーラ力少女はさておき、魔力測定の列は順調に昇華されている。人間が昇華して消えてなくなるのか、怖いなこの世界。
「おっ、何か隣の列の前の方が騒がしいが、何か面白い宴会芸でも披露したのかな?」
「恐らくSSSSかSSS判定が出たのでしょう。毎年2,3人はSSSSとなるようですし。ただ昨年と一昨年はSSSSが居なくてSSSが最高と聞いていました。」
「ふーん。誰から聞いたん?」
「兄さまからです。」
「そうだった!下調べしてたんだったーって、よく考えたらこの情報自体もエスから聞いた気がするぜ☆」
「はい、そうですね。」
ということは結局どこ情報なのだ?まあ、いっか。
それよりもエスや自分の測定結果が気になるな。早く列が昇華してくれることを祈ろう。イリス以外に。あいつに祈ると本気で『昇華させました!』とかやりそうだからな【そんなことする訳がないでしょう!】からかうと面白いなイリス。好き。正確にはイリスが好きな豚骨ナポリタンが好き。
そんな思考回路がショートケーキな俺の順番まであと少し、といったところで、再びどよめく講堂。
どうやらエスの前の少年がSSSSだったようだ。