第25話
良く分からん空間というか部屋というか何というかな所でエスを発見した俺は明らかにギリギリの状態だが呼吸があることを確認したエスを一瞬で完璧完全に回復させるために俺秘薬と水と必須栄養源を理想的なバランスで混ぜた特製超級覇王回復薬を口移しでゆっくりとだが確実にエスの体の隅々まで満遍なく確実に丁寧に浸透吸収作用させた。
完璧な薬。エリクサー?ソーマ?そんなちんけな気休め気付け薬と一緒にしてもらっては困る。
あらゆる異常を、その瞬間の気力と体力に合わせて理想的に、そして時間とともに回復する気力と体力と時の運に追従して細胞の一つ一つの状態をモニタリングしながら連続超回復させるエス専用の一品ものだ。
名前を付けるとしたら…そうだな…エスエス聖薬…ではなくてミラクルガール…ではなくて…えっとその…【名づけのセンス…ぷぷっ…】決めた『イリスの聖水(下ネタ)』だ。
エスには申し訳ないが、恨むならイリスのたぷたぷ二の腕とイリスのぽっこりお腹とイリスの酒癖の悪さと酒癖の悪さでこれまで数十人に振られて更に酒乱が進んでもはや箸が持てないほど震えが止まらないイリスとネイリン服用中のイリスの足の爪と右側頭部だけやけに多い白髪と十円禿げと痛風で靴もまともに履けない【すいませんでしたホントすいません勘弁して…うう…】を恨め。
ということで、四肢や内臓のダメージも一瞬で回復したエスは、穏やかに眠っている。
「遅くなった。すまん。」
眠るエスを優しく抱き起し、謝る。
すると、エスがうっすらと目を開け、穏やかに笑う。
「間に合うと、信じていましたので。」
「あの時も、そうだったな。」
「はい。」
そう、俺が転移した時。
あの時、あの場所に最初に居たのは。
俺ではない。
エスだった。
やっと、思い出せた。
【そうでしたね。まさか我々の記憶まで改竄するとは…。】
エスが、いや、莉愛が、狙われた。そうだな?
【そうです。前の世界の莉愛さんは、正に特異点と言うべき、異常な能力を持っていました。】
だが、当時はまだ1歳、そこまで目立った能力は無かったはずだ。
【だからこそ、今のうちに別の世界に飛ばしてしまえ、と考えた輩がいました。】
そのまま転移したのでは、いくらなんでも1歳児、危なすぎる。
【だからこそ澪音、貴方が身代わりとなった。】
莉愛は『転移』ではなく『転生』することとなり、無事に成長した。
【代わりにあなたが『転移』した。】
転移前の俺は只の5歳児だったが、自分の身代わりとなったことに気付いた莉愛が、俺に力の一部を分けた。だから、神の権能でも制御できない変なステータスになったんだな。
【そうですね。莉愛さんの力の極一部とはいえ、膨大でした。少なくとも私では制御が難しかった。ただ、私の力を分け与えることを邪魔することは無かった。流石莉愛さんですね。】
で、結局エス、莉愛は何故そんな力を持って生まれたのか?
神の陰謀?それとも何となくなご都合主義?
【推測の域を出ませんが…恐らく人の子ではありません。また、この世界でも、前の世界で生まれたわけでもなく、何度も転生を繰り返し、様々な時間と空間の影響を受けたことで神々の権能すら届かない『特異点』になったのだと思います。】
ん?じゃあ何故今回は無理やり転移できたんだ?
【それを調べるのに随分時間がかかってしまいましたが、結局のところ、莉愛さんの強制転移は無理に近い試みだったようです。】
何だと。そんな杜撰な計画で仕掛けてきたのか。ところでこれって何て読むんだ?とせん?
【「ずさん」です。話を続けますと、強制転移の力そのものではなく、その力の影響が莉愛さんの身に及び何らかの変調が起こる僅かな可能性、それに反応するであろう澪音の存在をまんまと利用されてしまいました。】
ということは、俺の行動を読まれた上での強行劇だったということだな。
【はい。】
うーん…俺や莉愛の思いを悪用されたようで超絶ムカつくな。
【全くです。なお自白済み、大人のお勉強タイムも済んでいます。後は任せてください。】
まあ、後は任せるとして。
今は。
「ありがとう莉愛。」




