第12話
勝利者な俺。やはり神は俺を見捨ててはいなかった。
【見捨てるどころか暇つぶしに何時も寝ながら見てますよ】
神のひつまぶしになるのも良いが、今はこの全能感に包まれよう。
チーム?仲間?俺くらいになれば、友人知人戦友ずっ友100人程度拵えるのもアットユーマbyアレック・ヘストンなのである。
そしてその後の友達100人ランチに1人ハブられるのも朝飯前なのであるランチなのに朝飯前とは如何いや待てそうではなくてだな。
「仲間とは、かくも尊いものなのか。俺は今猛烈に感動している。あと角よりも飛車のほうが尊い派なのは秘密だ。王より飛車を河合塾。」
「お主のことじゃからそんな事だろうと思ったわ。」
と、見るからに「全くもう」という表情のヴァル。
でもって「お前立ち回りが極端すぎるんだよもっと上手く人脈作れるだろおい」という明らかに表情で表現するには長文過ぎる内容を顔に浮かべるシャル。芸達者な奴だ。好き。正確にはシャルが好きな洋風豚骨甘酒が好き「そんなヤバい字面の飲み物知らないんだけど」美味だと言うのに…見たことないが。
「まあでも正直助かった。やはりアイリーンは出ないらしいしな。」
「お主と組める人材をまともに探し始めたら演習会が終わってしまうわ。」
「実際のところ他のクラスの誰かと組むのも難しいだろうしね。」
ということで、演習会にはこの3人でエントリーすることになった。エスよ、心配しなくても兄は立派にやり遂げてみせるぞ。後はこの俺のチーム『フルグラexp@rimentsレイン』にこの世の全てを一点賭けして勝って儲けてこの世の全てが数倍に膨れ上がってえーとその差分は何処から来たんだ?その差分も含めて一点賭けすれば更にそれが数倍に…ん?結局俺は何を賭けていたんだ?夢?希望?イリス?
「で、チームの方針はどうするんじゃ?」
「方針?決まっている。バーっと行ってドーンとかましてズバッと惨状。全ての対戦相手に地獄と天国を同時に見せてやるぜ天地来蛇殺!ってところ?」
「馬鹿者。演習会の趣旨を忘れたか。」
「チームの連携が主目的なんだから、立ち位置から何からしっかり決めておかないと、あれでもSSSSかよって見くびられるだろ。そこはしっかりしろよ。」
むむ。正論、ガーン。略してセイロガン糖衣ターンA。しかし一理ある「いや一理しかないから」ではこれから基本的な動き方や戦術的なところを話し合う時間にしようそうしようたんしよう。
「前提として、身体能力には大きな差がつかないように調整される。ということは、普通に考えれば手数や体捌きで工夫して相手の動きの隙を誘発させるのが第一だろう。」
「何じゃ真面目にできるではないか。そうじゃな、それと睨み合いが続くのも不本意とすれば、戦いのとっかかりとして先陣を切る誰かが必要じゃな。」
「それなら僕がやるよ。元々魔導の出力や制御にはヴァル姉に叶わなかったけど、回避と見切りなら自分の方が得意だと思うから。」
「うむ。シャルなら大丈夫じゃろ。」
「例えば3人が一斉にシャルに向かってきた場合は、それぞれが1対1になるように動く方が良いのか?」
「正直シャルなら相手が5人でも平気で躱し続けるじゃろ。タイマンも良いがシャルの特性を最大限に生かすなら2体1の状況を作るのがよいのではないかの。」
「なるほど。シャルに集中してきたら俺たちがツーマンセルで端から落とす。」
「下手に混戦に持ち込むと万が一ということもある。前衛にシャルを置いて役割をはっきりさせた方がよさそうじゃの。」
「分かった。では基本はそれで。あとはエス対策だな…。」
「あ奴と直接やりあったことは勿論無いのじゃが…厳しい戦いになりそうじゃの。」
「レインとヴァル姉で当たれば大丈夫じゃないの?」
そこに大きな落とし穴がある。
「俺はエスに攻撃は出来ない。何故ならエスだから。」
「まあ…そうだと思ったわ。」
「エスと組み手は良くやるが、物理的精神的精霊的信仰的信心的ダメージを与えたことは無い。」
「自分が負けないとして、良くて引き分け?」
「そうだな。だから仮に1対1になったら、他のメンバーで勝ち負けを決めることになる。」
仮に天地がひっくり返ってヘルヘブンな状態になっても、エスに刃を向けることはない。
何故なら、そうだからだ。それが俺の河底式方程式。
「エスターリアを抑えてくれれば後は王子2人組でしょ?何とかなるんじゃない?」
「そうじゃな。」
「ただ、今回はエスも俺対策をしていそうなんだよなあ。」
「例えば?」
「例えば【兄さま!脱いだ服はキチンと畳んで洗濯場まで運ばないとおやつ抜きです!】とか言われたら【そんな、10回に1回はキチンと運んでいるのに!】とショックで打ちひしがれて蹲ってそのまま負ける可能性が高い。」
「それはお前が悪い。」
「同じく。こいつとチーム組むのやめようかな。」
「それから【兄さま!靴下が左右で違う兄さまは嫌いです!】とか言われたら最早引退して何処か遠い国でひっそりと暮らすだろう。」
「それもお前が悪い。」
「ヴァル姉、今からでもアイリーン誘ってみない?」
「本気で考えたくなってきたの…。」