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第6話 泣き出した美少女

 わたしの言葉に、ラナさんは暫く固まっていた。


 それから、肩を震わせたかと思うと、ぽろぽろ……と涙を零し始める。


 海を想わせる瞳から落ちるそれを、真珠のようだと思って、一瞬見惚れてしまった。


 でも、わたしはすぐに我に返って、あたふたとする。


「ど……どうしたんですか!? もっもしかして、覗き見されていたのが嫌だったんですか!? ごっご安心ください、流石にお手洗いとかお風呂とかまで付いていったりはマジでしていないので信じてくださいー!」


 ずざあ、とラナさんに向かって土下座するわたし。


 視界に広がる暗闇の中で、これから自分へと注がれる言葉に怯える。


 けれど、聞こえたのは……「ふふっ」という、可笑しそうな笑い声だった。


 驚いて顔を上げたわたしの視界に、泣きながら笑っているラナさんの姿が映る。


「違うの」


「違うん、ですか……?」


「うん」


「何が、ですか……?」


 弱々しいわたしの声にまたくすりと笑ってから、ラナさんはそっと涙を拭う。


「私は、悲しかった訳でも、怒った訳でもないの。むしろ、逆なんだよ。……嬉しかったの」


 彼女の声音は、確かに本当に嬉しそうで。


 わたしは何も言うことができずに、ただ目の前のラナさんを見つめていた。


「私、その……アンちゃんのパーティーにいたとき、全然肯定してもらえなかったんだ」


 寂しそうに微笑みながら、彼女は言う。


「冒険者の両親に憧れて、冒険者になって。初めは期待で胸がいっぱいだったけれど、現実は甘くなかった。パーティーのアンちゃんやオリバーくんに、貶されてばっかりで。私は二人と仲良くなりたかったけれど、向こうは全然そうじゃなかったみたい。あはは、バカだよね、私……」


 ラナさんが零した笑い声は、震えていた。


「大好きな料理を二人のためにつくっても、一言も褒めてもらえなくて。そんな時間がずっと続いて、私、思うようになったんだ。自分はもしかしたら、価値のない存在なのかもしれないって。これからずっと、認められないままなのかもしれないって……」


 そこまで言って、ラナさんはわたしと目を合わせる。


 真っ青の瞳に、自分の姿が映り込む。


 だからね、と彼女は微笑んだ。



「――――シャロンちゃんの言葉に、救われた気がしたの」



 止まっていたはずの涙が少しだけ溢れて、ラナさんの頬をすっと伝う。


 そうして、彼女は口を閉じる。


 どんな言葉をかけるのが正解なのかはわからなかった。

 だからせめて、素直な自分の思いを口にしようと思った。


「……もうわかっていると思いますが、わたし、料理にはすごーくうるさいんです。だから、料理人探しも引くほど難航しましたし。それに実は、人間にもうるさいんです。結構人の好き嫌いがあるタイプなので。……そんなわたしが言うんだから、間違いないですよ?」


 にかっと笑いながら、両手の親指を立てる。



「ラナさんは、最高の料理人で、最高の女の子です!」



 ……気が付いたら、天井を見ていた。


 え、何で? と思ったのも束の間、柔らかな感触を覚える。


「シャロンちゃああああああああん!」


 耳元で大きな声がして、ようやく気付く。


 わたし、この子に抱きつかれてるのか!


 なるほど、そういうことか!


 …………って、


「いや何でですかあ! ちょっとそれは刺激が強すぎるんですけれど!? 離れてください離れて離れろー! ハッしまったわたしとしたことが、女の子に敬語を使わないなんて許されません!」


「ありがとおおおおおおおおおおお!」


「声がデカいです声が! 鼓膜が破れそうですグワァー!」


 わたしは何とかして、ラナさんを引き剥がす。


 きょとんとした顔をしている彼女は、思い出したようにはっとして、それから――本当に可愛らしい笑顔を、浮かべた。


「シャロンちゃん。不束者だけれど、ぜひぜひ私とパーティーを組んでほしいな! よろしくね!」


「おっ、おおおお、ありがたやですー! やったあ! イェーイ!」


「美味しい料理、沢山つくってあげるから!」


「おや、ここが天国でしたか……」


「それと、正直なところ、治癒術師としてはまだまだだけれど……でも、シャロンちゃんのお役に立てるよう頑張るから! 後方支援は任せてね!」


「うわーい、ありがたやです! ……ありがたやなんですが、なんかわたしに都合がよすぎる気がしてきました。もしかして夢ですか?」


「夢じゃあないよー、現実だよ現実! 実は私、冒険するのもすごく好きなんだから! なので、料理人兼治癒術師として頑張ります! ふぁいとおー!」


 右腕を掲げて、元気いっぱいなポーズを取るラナさん。

 ……あ、尊すぎる。


「って、ちょっと、また倒れちゃったよー! 起きて、おーきーてー!」


 彼女に揺さぶられながら、わたしは思う。


 最高の仲間を見つけてしまった……と。


 取り敢えず、今日はよく眠れそうだ。


 すやすや。


「ねーなーいーでー!」

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