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第18話 ケーキ作戦会議

 リビングのテーブルを囲むようにして、わたしたちはケーキを食べていた。


 トリエッタさんはチーズケーキ(好きらしい)、ラナさんはショートケーキ(好きらしい)を選び、わたしは余っていたチョコレートケーキ(わたしはどんなケーキも愛しています)を頂いている。三つ買っておいてよかった。


 それにしても、流石の老舗ケーキ屋ハシュティエルだけあって、とても美味しい。

 ふわっふわのココアスポンジと大人な味わいのチョコレート生クリームが、口の中で溶け合う。最高だ……。


「……と、いう訳なんですよ」


 そしてわたしは、ケーキタイムと同時並行で進めていたラナさんへの状況説明を終える。


 ラナさんは「なるほど、なるほど……」と言って頷いた。口元に生クリームが付いているけれど、可愛いので指摘しないでおこう。


「つまり私は、こちらのトリエちゃんと一緒にケーキをつくればいいってことだよね?」


「そうなりますね。お願いできますか?」


「勿論だよー! 私、ご飯をつくるのも大好きだけれど、お菓子をつくるのも大好きなんだから! それに最近ケーキつくってなかったから、めっちゃいいタイミングだよー」


 そう言って、ラナさんは微笑む。笑顔が眩しい……。


 わたしは、隣に座っているトリエッタさんへと笑いかけた。


「よかったですね! 最高のパティシエさん、乗り気ですよ?」


「うん、よかったのです……! あの、トリエ、おかしづくり、あんまりやったことないけれど……せいいっぱい、がんばるのです!」


「ご安心ください! ラナさんに教えてもらった通りにつくれば絶対うまくいきますし、何よりわたしよりは確実に料理上手だと思いますよ?」


「シャロンちゃんと比べるのはどうなのー」


 くすくすとラナさんが笑っている。


 確かに、ラナさんの言う通りだ。

 全世界でわたしより料理できない奴、多分いない。いたら見てみたい。


「それで、トリエちゃんはどんなケーキをお母さんにつくってあげたいとかある? 私、大体何でもつくれると思うから、どんなケーキでも大丈夫だよー」


「つくりたい、ケーキ……」


 トリエッタさんはそう言って、うんうん唸りながら考え始める。


 少し経って、ぱあっと表情を明るくした。


「おもいついたのです!」


「おっ! 聞かせて、聞かせてー!」


 楽しそうに言うラナさん。

 何というかこの人、子どもとの相性がいいな。

 いいお母さんになりそうだ。


 そう考えながら、わたしもトリエッタさんの次の言葉に耳を傾ける。



「――トリエ、お花みたいなケーキがつくりたいのです!」



 トリエッタさんはそう言って、柔らかく微笑った。


「お花みたいなケーキ……っていうと、フラワーケーキのことかな?」


「フラワーケーキ……って、何なのです?」


「確か、ケーキの上に乗っているクリームが花のような形をしているやつですよね。上から見るとまるで花畑、視覚的にも楽しいケーキです」


「そうそう、そういうのだね!」


 わたしの説明に、ラナさんが同意を示してくれる。


 トリエッタさんが、嬉しそうに両手を合わせた。


「おおお……トリエ、それ、つくってみたいのです!」


「それは何よりです。ところで、どうして花みたいなケーキがつくりたいって思ったんですか?」


「うんと、おかあさんがね、すっごくお花好きなのです!」


「へえ、そうなんだ! 確かにお花っていいよね。私も好きだなあ」


 ラナさんが顔を綻ばせる。

 確かにこの人、花畑が似合いそうだ。花冠とか被せてあげたい可愛さ。


 トリエッタさんはうんうんと頷いて、それから少しだけ寂しそうな顔をした。


「トリエにお金があったら、本当は、花たばもあげたかったのです……。きっと、よろこぶだろうなあって」


 彼女の言葉に、わたしは密かにすごいなという感想を抱く。


 自分が子どもだった頃、母親の誕生日をこんなに真剣に祝いたいと思っていただろうか?

 何というか、今度実家に戻ったら、沢山肩でも揉んであげよう……。


 それにしても、花束か。


 …………ハッ!


「それなら! わたしがいるじゃあないですか、わたしが! 家を破壊する危険性があるのでお菓子づくりには手を出せないわたしが!」


「えっ、ど、どういうことなのです?」


 困惑しているトリエッタさんへ向けて、わたしは胸に手を当てながらにっと笑う。



「――――つまりわたしが、最高の花ハンターって訳ですよ?」

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