6話 質の話
病院から家に帰ったとたん、少女から呼び止められた。
曰く「治療費の負担」についてだった。
俺が会計している姿を見て何を思ったのか、中学を卒業したらバイトをして、すぐにでも返すとのことだった。
「どうでもいい」
俺がそう言い捨てれば、少女はとんでもないと言い募ってきた。
必ず返す、と言い切る少女に俺は面倒臭さしか感じなかった。
事実、本当に金に関してはどうでも良かった。
却って、その金銭のやり取りのほうが面倒でならなかった。
「いらん」
何度断っても「でも!」と繰り返す少女に、俺もいい加減うんざりしてきた。
「いらねーよ。お前の親族から金はもらってる。今回はそこから払った」
この説明が面倒だったんだが、言わなければ終わらない応酬の方が厄介だ。
少女は俺の投げやりの言葉に一度ぽかんとした様子だったが、すぐに「養育費……」と口にした。
そのことから、すでに誰かしらから説明を受けていたんだろう。
それならもっと早くに思い出せよ。
「お前はガキなんだから、国が保証してくれんだよ」
大人じゃ、そうはいかない。
中にはガキのまんま、大人になるやつがいるってのに。
ガキはお気楽で羨ましくなる。
何も言わなくなった少女をそのまま残し、俺は仕事に出ることにした。
家を出てしばらくしてから、そういえばと気が付いたことが一つだけあった。
初めて、あいつと会話した。
これまで声がけなんかはあったが、まともな会話をしたのは多分今回が初めてだ。
しかし、そんなことはどうでもいいことか。そう思って、俺はそれ以上考えるのをすぐにやめた。
どうせ、すぐいなくなる。
そんなやつに思考を割くなど、無駄でしかないのだから。