金色のライオンを見つけた少女達
アートルム「ついに知っちゃったか、ノワールファミリー」
グレゴリー本部にて、地球の新聞を読んでいたアートルム。彼の顔は何故か楽しそうだった。ピーター・ランチューダーがやられたのは予想外だったが、その事は気にも留めなかった。むしろ、ノワールの事が世間に知られている事に夢中だった。
アートルム「あー、これからが楽しみだな!!今度は何しようかな〜?」
ネメアー・ビースト「何か楽しそうだな」
アートルム「あ、ネメアー!!見てよ、ノワールが写ってるんだよ!!」
ネメアー・ビースト「それのどこがいいだよ、うちのしまを荒らしてるんだぞ」
この場にはネメアーもいた。ネメアーはコーヒーを飲みながら新聞を見ていた。ネメアーはやれやれと言わんばかりに、アートルムに呆れていた。こっちは商売人がやられたのに、敵の事を高く評価する奴がいるか。毎度ながらアートルムやみんなの無茶振りに振り回されている苦労人、いや苦労獅子であった。
ネメアー・ビースト「今度は俺の部下にやらせる。命令は俺が出すから、あんたは何もしなくていい」
アートルム「いいけど、大丈夫か?」
ネメアー・ビースト「俺の部下を甘く見るなよ。あんたに撃たれた銃のおかげで最強の能力を手に入れたんだ。実績もある」
アートルム「なら安心だね」
そう言ってネメアーは行ってしまった。実際、彼が動くのは珍しい。基本、彼は必要な時以外動かないからだ。今回は本人の中で激しく乱れたんだろう。
アートルム「まあ、流石に怒るのも無理はないか。でも、また人間から作ればいいけどね」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ノワールファミリーが世間に知られてから1週間後、そろそろ鎮火する勢いに下がってしまった。ネタが切れて落ち着いたのだろう。まあ、こっちの方が都合がいいけど。おかげで学園生活は少しだけ穏やかになった気がした。相変わらず僕はゆっくり寝られそうだ。しかし、中にはそうじゃない人もいた。白沢だ。折角人が気持ちよさそうに寝ている時に話しかけてきた。
白沢「ねえねえ、次は異世界に行きたくなった!!」
黒季「どうぞ、お一人で」
白沢「何言ってるのよ!!みんなも連れていくよ!!」
黒季「いってら」
白沢「あなたは強制参加。拒否権は永遠になーいっ!!」
黒季「この怪物が・・・」
どうやら、僕には選択権すら与えてくれなかった。何しろ拒否したら全て話すと言う顔をしていた。残された道は彼女に従うしかなかった。一応、力を与えたのは僕なのに。その後、白沢は満足そうに席に戻った。辺りからは羨望と遺憾の目で見られていた。話の内容はコソコソ声で喋っていたから聞こえなかったが、学年1の美女と話が出来るだけでも羨ましかったのだろう。この後、鎌を持った黒い覆面に服を着た奴らに殺されなきゃいいけど。なんか、付き合ってる設定もまだ生きてるし。時間は流れて放課後、旧校舎に集まったノワールファミリー。みんなは僕が来るのを心待ちにしていたようだ。まあ、異世界に行ってない人もいるからな。
赤城「異世界に行けるなんて、すごいですわ!!」
灰川「私は1度飛ばされたわ」
氷山「ワクワクワクワク!!!」
僕はすぐさま黒い緞帳を開いた。それを見たみんなは期待を膨らましていた。
黒季「ここから先は日本国憲法が通用しないし、全て自己責任、後戻りは出来ないよ」
赤城「構いませんわ!!むしろ、あなた方だけ行かれるのは不平等ですわ!!」
灰川「またあの人に会いたいし。今度はお礼を言いたいわ」
氷山「私は・・・なんか楽しそうだから!!」
・・・まあ、なんやかんや覚悟は決まったらしい。そして、僕を筆頭にみんなは異世界へと向かった。出てきた場所は広い荒野。木が数本あるかないかの場所で、殆どが岩で覆われた場所だ。特に何かあるかと言えば、こっちに向かってきてるサイ型のモンスターの群れぐらいかな、うん。
黒季「・・・」
白沢「・・・」
宝華「・・・逃げましょ」
彼女の一言で僕達はサイモンスターの群れから逃げ切る羽目になった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
時間は遡り、ノワール達が荒野に降り立つ前に、既に誰かいたのだ。その人は魔法を唱えていた。それはユーフェミアだった。ノワールがミニストに置いてきた後、ノワール達がいない事に気付き、必死で修行してきたようだ。クエストをこなして、魔法を極め、ついにlv.18になったようだ。
ユーフェミア「ノワール!!今度こそ倒すわ!!あの屈辱を今度はあなたに与えるわ!!」
ただ、ユーフェミアは1人でいる訳ではなかった。そこにはお馴染みの面子が揃っていた。テリアーロにスターバ、タリー、そしてエリザベスもといエリーザだった。何やら彼女達は共にクエスト中に出会い、意気投合したようだ。あれからサファイアに訓練してもらったせいか、エリーザ達もlv.18になった。今日はみんなでランドライノスの討伐に来ていた。ランドライノスは群れで動くモンスターで、群れを率いるボスは角が1番大きく神々しいそうだ。しかし、気性が荒いためlv.15以上はないと厳しいモンスターでもある。
エリーザ「これが終わったら、今日はみんなでパーティーでもしましょうね!!」
テリアーロ「あのー、死亡フラグをあまり言わない方が・・・」
スターバ「それに他にも人がいたら・・・」
エリーザ「大丈夫よ!!今日はついてる日だから!!」
タリー「うーん・・・」
なんの根拠もないエリーザに3人は呆れていた。また、何も起こらない事を願うのだった。そんな時、ユーフェミアが放った魔法の一撃がランドライノスのボスに当たった。激しい爆風と共にボスは倒れてしまった。しばらくこの場にいたみんなは固まったが、その後ボスのランドライノスが立ち上がった。その顔は怒りに満ちていた。ユーフェミア達は岩陰に隠れて、コソッと覗くと不機嫌そうに辺りに当たっていた。そのせいか、仲間のランドライノスが次々と倒れていき、次第に暴走し始めた。
エリーザ「・・・うん、なんかやばい事になったね」
ユーフェミア「・・・これって私のせいよね?」
タリー「・・・こくり」
テリアーロ「・・・こくりこくり」
スターバ「・・・うん」
やがて静かになったので辺りを見ると、そこには誰もいなくなった。事態を重く見た5人は急いでランドライノスの方へ走った。そして現時刻、状況を知らない黒季達は暴走したランドライノスから逃げていた。白沢達はどこか隠れそうな場所を探したが、一向に見つからなかった。やはり女子だからか、悲鳴をあげて逃げていたが、悲鳴をあげた所でまた興奮し、女子も興奮すると言う謎のループが出来てしまった。このままでは埒が明かないと思ったのか、デッキケースからカードを3枚取り出した。そのカードを投げ出すとそこから眩い光が出始め、モンスターが出始めた。1体は巨大で大きな牙に鼻に氷のハンマーがついた"コキューモス"、もう1体は羽の代わりにヘリコプターの羽と腰にガトリングがついた"エアロドラゴン"、もう1体は巨大な花の姿に何本もの触手が生えた植物"ヴェレーネアイビー"。どれも僕の能力で作ったモンスター達だ。コキューモスの突進とハンマー攻撃、エアロドラゴンのガトリング射撃、ヴェレーネアイビーの触手でランドライノスを縛って地面に叩きつけた。それを見ていた白沢達は足を止めて、今のうちに懐からアイマスクを取り出して顔につけ、黒季達はノワールファミリとして活動しようとした。ある程度ランドライノスは片付いたが、他の奴らは一目散に逃げて行った。
ルージュ「今のは一体、何だったんですか?」
ブラン「誰かが興奮させたとか?」
ケンちゃん「解析した結果、あれはランドライノスというこの地帯に生息するモンスターです。気性が荒く、いつも群れで行動する他、群れを率いるボスも存在します」
ジャラゴン「でもボスの姿は見えなかったよ?まさか、やられたとか・・・?」
辺りを見るとランドライノスの死体が転がり落ちていた。ノワールはモンスター達をカードに戻したが、誰もボスとは会ってないらしい。まあ、ランドライノスに会うのが目的じゃないからどうでもいいけど。
その頃、頑張って走っているエリーザ一同。ランドライノスが通った跡を必死に追いかけているが、距離が遠い為なかなか追いつけなかった。もし、万が一に一般人に危害を加えたら、自分達の責任になって慰謝料や損害賠償請求など面倒な事に繋がってしまう。そんな事だけは避けたいと必死に走っている時、目の前にランドライノスのボスが逆走していた。ただ、今度は群れを率いていなかった。一旦不思議に思ったが、気を取り直して攻撃態勢に入った。やがて距離が近づいていき、ユーフェミアとテリアーロ、スターバは詠唱を唱え始める。エリーザは剣、タリーは弓を構えた。やがてボスのランドライノスが近づいて来た。エリーザとタリーは魔法組を守るためにひたすら襲いかかろうとした。その時
「邪魔だ」
と言ってきた。その声の主は低い声でどこから話しかけられたのか分からなかった。しかし、それはすぐに知る事になった。暴走したランドライノスのボスを一撃で真っ二つにしたのだ。ほんの一瞬の出来事だった。体からは血が噴き出し、綺麗に中身が見れる状態だった。その後、ランドライノスのボスは左右に倒れて死んだ。詠唱を唱えていた者は唱えるのをやめ、武器を構えていた者は武器をおろした。その姿は金色の体で右腕には大きな鉤爪、左腕には棘鉄球付きのロッドを持っているライオン顔の男だった。それを見た彼女達はある事に気づいた。そのライオンは何故かゴツい鎧を着ていて、普通に喋っている。装備をするモンスターは稀にいるが、ほとんどは手作りやガラクタを寄せ集めて作った物が多い。さらに喋るモンスターは歴史上発見されていない。もしかしたら突然変異怪物の可能性が浮上してきた。
エリーザ「あなた、喋れるのっ!?」
ユーフェミア「こんなの、聞いた事がない・・・」
タリー「ねえ、何か知ってる?」
テリアーロ「私もこんな事、初めてですわ!?」
この場にいたみんなはただただ固まってしまった。それと同時に恐怖感も感じた。戦って勝てる相手ではない。そう思うと足がすくみ、手や体も動かせなかった。
金色のライオン「貴様らに用はないが消えさせてもらう」
スターバ「なっ!?」
金色のライオン「まずは貴様からだ!!」
金色のライオンはロッドを構えると僧侶であるテリアーロに向かって走った。恐らく回復役を倒そうという考えなのか。しかし、一目見ただけで彼女が僧侶って事にいち早く気づいた。このライオン、ただのモンスターでらない気がした。テリアーロは我に返り、ライオンがこちらに向かっている事に気づいた。テリアーロは慌てて詠唱を唱えようとするも、時間がなかった。やがてロッドの先端がテリアーロに近づいた時、間一髪タリーがライオンに目掛けて矢を3本射った。矢は鎧に当たるもすぐに弾き返された。すると金色のライオンはテリアーロの方を向き、
「邪魔だ」
と言うと右腕の鉤爪を振りかざした。するとそこから斬撃状の衝撃波を発射させた。衝撃波の速度が速いせいか、テリアーロは逃げる間もなく衝撃波を喰らってしまい、倒れてしまった。
エリーザ「なっ!?」
ユーフェミア「う・・・嘘・・・でしょ?」
金色のライオン「まずは1人」
金色のライオンはテリアーロがやられたのを確認すると、今度は口から火炎弾を出して、タリーとスターバに目掛けて攻撃した。もちろん2人はもろに喰らってしまい、悲鳴を上げながら倒れてしまった。
金色のライオン「後は貴様らだけか」
ユーフェミア「き、貴様ーっ!!!」
エリーザ「うおぉぉぉぉぉーっ!!!!」
エリーザは剣を構えて走っていったが、金色のライオンは鉤爪で剣を掴むといとも容易く剣を壊した。
金色のライオン「終わりか?」
エリーザ「そ、そんな・・・」
エリーザがショックを受けている間に金色のライオンは彼女の腹に強烈なパンチを喰らわせた。彼女はそのまま飛んでいき、岩にぶつかった。岩が粉々に壊れていくほどの威力があった。残ったのはユーフェミアただ1人。しかし、目の当たりにした出来事を見て彼女は固まってしまった。そして、彼女に残されたのは絶望感と恐怖心。金色のライオンが少しずつ近づいていくだけでも、体は言う事を聞かなかった。
ユーフェミア「あ・・・あぁ・・・」
金色のライオン「これで終わりだ」
金色のライオンはユーフェミア目掛けてロッドを振りかざそうとした時、後ろから何か素早く駆けつけてくる気配がした。それはまさに風の如く、隼のような動きで近づいてきた。それを感じたのか、金色のライオンは後ろに振り向いた。そして、剣先が目の前にあるのを確認する時間もなく、体を突撃されてゴロゴロと転がった。
金色のライオン「ち、新手か」
ユーフェミア「あ、あなたは・・・」
砂煙と共に現れたのは人間、しかも女性だった。髪は白銀のような色合いのある長髪、腕や足は白く細長い。それに反してゴツい鎧は着てなく、あるのは胸当てのみ。そして、細く長く眩く輝いている剣を手にしていた。砂煙が収まると全身が見えた。
ユーフェミア「あ、あなたはっ!!」
???「もう大丈夫。あとは私がやる」
金色のライオン「面白い。次は貴様だ」
彼女の正体は"ヴェルーナ・ペレグリン"。ミニストにおける最強冒険者パーティー『ヴァイスファミリー』の冒険者である。




