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人は話題に飢えている

 ポワソン「あーあ、折角ピーターの所から人間仕入れようとしたのに、あっさりやられちゃったじゃないの」


ポワソンはピーター・ランチューダーの殉職の話を聞いてがっかりした。人体実験が好きな彼女にとって人間売りが死ぬのはよほどショックのようだ。とはいえ、まだ人間売りは他にもいるが品揃え豊富なのはピーターの方らしい。


ポワソン「これじゃあ、能力者が生み出せないわね」


ブロンガス「お前が弱気になるとは珍しいな」


ポワソン「あら、ブロンガスじゃない。何しに来たの?」


ブロンガス「心配しに来ただけだ。ま、貴様はすぐに立ち直るがな」


ポワソン「あら?そんなに心配だったかしら?」


ポワソンが嘆いてる時に丁度ブロンガスが現れた。しばらく顔を見ていないと思ったら、服や体には返り血がついており、全身ボロボロになっていた。恐らく、他の世界を制圧したのだろう。


ポワソン「で、今回はどこの世界を侵略したの?」


ブロンガス「スシワールド、スイーツワールド、マジックワールド、エレキワールドを制圧した」


ポワソン「いきなり4つも!!特効隊長は忙しいわね!!」


ブロンガス「貴様が暇なだけだ」


ブロンガスはグレゴリーの中でも実力があり、今回もたった数名の軍で国を滅ぼしたらしい。恐らく彼は世界最強の名に相応しい男だろう。彼に勝てる奴がいるとするならば、恐らく彼以上の怪物だろう。


ブロンガス「貴様もしくじらないよう頑張るんだな」


ポワソン「そう言えば、この前ノワールファミリーにやられて帰って来たじゃない。あなたもしくじらないようにね」


ブロンガス「同じ過ちは2度とせん。今度は叩き潰す」


ポワソン「今度は失敗しないようにね」


ブロンガスはそう言い残して部屋を出て行った。その後、しばらく1人になったポワソンは別室にいるポカリの所に行った。ポカリの部屋には紙や本が山積みになっており、埃まみれだった。部屋も電気がついてなく、光が唯一あるのは奥の机に光っているパソコンだ。パソコンの周りには様々な色の液体が入った試験管、怪しげな実験器具などが散乱していた。それを見たポワソンはやれやれと言わんばかりにソファで寝ているポカリを叩き起こした。


ポワソン「起きなさい!!実験したい事があるから、すぐに来なさい!!」


ポカリ「ふあぁぁぁ・・・あああっ!?ポワソン様!?すみませんっ!!ただいま、着替えます!!」


ポカリはタンクトップにショートパンツ姿でいた為、急いで白衣を着て身支度をして、ポワソンと一緒に部屋を出た。その頃、グレマーズは何か怪しい事を考えていた事には、まだ誰も気づかなかった。


グレマーズ「もう少しです。もう少しで、()()()()()()()()()()()


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


アインス「やはり知れ渡ったか」


イザナギ「やはり警察か」


モルドレッド「他にも人間がいたそうだ」


一方、暗黒の魔城(ノワールカステルム)ではみんな東京の新聞を見ていた。その見出しには『謎の集団!?ノワールファミリー!?』と書かれていた。他にも警察から謎の怪人の話も書いており、誘拐事件が世間的に話題を集めるようになった。新聞はノワールがマザーに配らせておいた。それをマザーが倍増魔法を掛けて、人数分用意した。それを見た仲間はどよめきを隠せていなかった。それはアインス達も同じだった。


イザナギ「こうなっては、コソコソと陰で動く必要もないか」


モルドレッド「いや、逆に陰で出来た事が出来なくなる可能性もある」


ツヴァイ「SNSも話題沸騰中です。最早、怪人や異世界の存在よりこちらに夢中のようです!!」


アハト「これで私達も一躍時の人になれちゃうかも!?」


ジーナ「そんな訳ないでしょ!!我々は陰で暗躍する存在。闇の中でしか生きられない存在ですわ!!」


フィア「むしゃむしゃ・・・しんぶんは、食べられないです〜」


ジーナの言う通り、我々は闇で暗躍する組織。表立つのは危険すぎる。しかし、バレてしまっては仕方がない。ノワールも承知の上でやった事だから。アインスは新聞を通りかかったゴーストに預けて部屋を出た。部屋を出ると扉の前にいたのはアグネスだった。アグネスも今日の新聞を見ていた。


アグネス「新聞を見たわ。我々の存在が世間に広まった」


アインス「まだ全て広まった訳ではないわ。私達の存在はまだ地球には知られていない」


アグネス「とはいえ、いつどこかで私達の事もバレてしまうわ。そうなると・・・」


アインス「アグネス、もういいわ。今更どうこう言ったって何も変わらないわ」


アグネス「・・・」


アグネスは黙った。アインスもこれ以上話すのをやめた。ノワールファミリーがグレゴリーだけでなく、世間に広まるのもいつかは来るんじゃないかと覚悟していた。これ以上、互いを責めても仕方がない事だった。ノワールが出てしまった以上、この現実を認めざるを得ない。この判断が将来、どういう結果をもたらすのかは誰にも分からないが、ノワール自身どう考えているかも分からない。まさに塞翁が馬だ。


アグネス「・・・ひとまず、情報の整理・確認をし、正確な情報を言った方が早いわね」


アインス「私もそう思うわ。まずは混乱を一刻も沈めるのが先ね」


2人はそう言うと、お互い違う方向に歩いた。果たして、この結果がどういう風に転がるかは運命しか知らないであろう。    


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


黒季「・・・やっちゃったね」


秋穂「うん・・・お兄ちゃん、これ」


冬美「お兄、すごい・・・なんか、すごい」


冬音「・・・にいに、ついにデビュー化!?」


翌日、4人は新聞を広げて見ていた。そこには誰が撮ったであろう、ノワール姿の黒季が映っていた。その姿は見るも凛々しく、見る者を闇にいざなう雰囲気が出ていた。ちなみに他のメンバーは人質を警察の所へ送っている際、カオス兵に襲われそうになった時の護衛として戦っていた。人質は無事、パトカーの近くまで送り出せたそうだ。


冬美「ここに白沢お姉ちゃんに春姉ちゃん達も写っている」


冬音「・・・冬音は秋ねぇねといたから写ってない」


秋穂「警察もここまで取り上げるとは、きっと朝のニュースでもやってそう」


ジャラゴン「あら、何見てるのかと思ったら昨日のじゃないか!!」


ケンちゃん「うわー、これはすごいです!!」


丁度、ジャラゴンが起きた。それと同時に春香と夏菜が玄関から帰ってきた。2人は早起きをして、日課のランニングにいつも行くそうだ。


春香「何見てるのって!!これ、昨日のやつじゃない!!」


夏菜「本当だ!!もう取り上げちゃってる!!」


2人も昨日の事件を見て驚いた。他のみんなももう見てる頃だろう。幸い、母さんは出張でいなかった為、しばらくは身バレはしないだろう。新聞を見た後、学校に行く為に制服に着替えて家を出た。学校に着くと昨日の事件について、もちきりになっていた。


女子生徒A「見た!!今日のニュース!!なんかすごいじゃない!!」


男子生徒A「朝南副会長を救ったらしいぜ!!」


女子生徒B「なんかかっこいいし!!」


男子生徒B「可愛い子もいたらしいぜ!!」


女子生徒C「一体誰なんだろう!?」


学校中、ノワールファミリーについて盛り上がっていた。まあ、本人いるんだけどね。教室に入ってもノワールについての話題ばかりだった。これほどまで影響力があるとは知らなかった。これが話題を求める生き物、人間なのか。スライムの自分にはよく分からなかった。そんな事を考えていると、白沢と宝華がやって来た。


白沢「ねえ、昼休み屋上に集合ね」


宝華「他のみんなにも伝えているからな」


2人はそう告げると席に戻った。なんか嫌な予感がするかもしれないが、そんな事起こらないでほしいと願うばかりだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


???「・・・全く、派手にやって」


同時刻、あるビルの屋上で新聞を読んでいる人がいた。ローブをしていた為、全身は見れないが何かワクワクしていそうな雰囲気だった。もちろん、ノワールファミリーについての記事だ。


ローブの人物「今すぐ会いたいが、まだ会う時じゃないな」


???「まだそんな事を言っているのですか?もう会われたらよろしいのでは?」


すると後ろから声がした。声の主はスーツ姿の黒子だった。出張から帰って来たのだろうか、スーツケースを引いていた。そんな黒子が謎のローブ人間に話しかけていた。何の疑いもなく、まるで上司と部下みたいな関係だった。すると、ローブ人間は新聞を懐に入れ


「彼が強くなったらたくさん遊んであげるつもりさ!!」


と言ってどこかへ行った。黒子は追いもせずにスーツケースを引っ張って、帰って行った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


昼休み、机を並べてみんな昼食をしていた。もちろん議題は昨日の事について。今日はみんな楽しい雰囲気ではない。何か険しい顔をしていた。まあ、あれだけの事があればそんな顔をするか。


白沢「ねえ、どうするの?私達、遂に世間に出ちゃったわよ?」


黒季「まあ、正体がバレてないだけマシだと思うけど」


宝華「それじゃダメでしょ!!」


赤城「それに今までの事件も明るみに出てますわ!!どうやら情報が抑えられなかったのでしょうか」


灰川「今まで報道していなかったのは情報操作していたせいね!!」


オリヴィア「私ノ顔、写ッテルネ!!」


夏菜「最悪、もし警察に追われるようになったら、面倒な事になるわね」


氷山「あのー、あまりそう言うのは口にしないほうが・・・」


みんなは意見を主張し合っているが、なかなか解決策は出ない。むしろ、こうなった時の解決策なんてあるのかという程だ。今までは正体が分からないから隠れて出来たが、今回はがっつり顔も見られたし、つい名乗ってしまったから取り返しがつかなかった。自分で墓穴を掘ってしまうとは情けない。とはいえ、バレてしまったものはしょうがない。リーダーらしく、腹を括ろう。


宝華「だいたい、あんたはどうするつもりよ!?」


黒季「バレてしまったものはしょうがない。これからもやるしかないよ」


灰川「やるしかないって、今回たまたまバレなかっただけであって、いつかはバレてしまうんじゃないの!?」


黒季「でも異世界の事はあまり取り上げられていないみたいし、ノワールファミリーは異世界にあるから大丈夫だよ」


宝華「不安しかない」


灰川「同感」


ジャラゴン「でもカオスを倒せるのは我々以外いないし、グレゴリーが地球を制圧するのは嫌だろ?」


灰川「そう言われると・・・」


黒季「ま、これから面白い方向へ伸びていく事を願うばかりだね。コソコソやるよりも堂々とやった方が面白そうだし」


オリヴィア「確カニネ!!」


白沢「そうよ!!捕まる訳でもないし、私達が協力し合えば大丈夫よ!!」


灰川「そう言うならいいけど・・・」


宝華「ちゃんと責任取りなさいね」


黒季「分かったよ」


こうして、ノワールファミリーはこれからも活動する事にした。世間が騒いでいるなら、僕達が世間をもっと騒がせてやる。そしてグレゴリーに対抗する為に僕達は戦うのであった。




廣嶋「ノワール、これがお前を地獄へ落とすカウントダウンが始まったぞ」


その頃、廣嶋が学校を見ていた。相変わらずチューリップキャップにコートを着ていて、いかにも変質者らしい格好だった。その後、廣嶋はどこかへ行ってしまった。

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