雪ならぬ氷の女王
氷山「な、何ですかっ!?ここ!?」
突如飛ばされた事に驚く氷山。あの時、黒い緞帳と一緒に巻き込まれたのだ。失敗だ、焦って出すんじゃなかった。この事を誰かに喋ったら、もう地球には住めなくなってしまう。
ノワール「しょうがない、今まであった事を全て忘れさせる。忘却術」
ノワールは指を伸ばし、氷山の頭の中から記憶を抜こうとした時、急にカオス兵が現れた。しかも、その内数十体は騎士の姿に変わった。タイミングが悪い。
氷山「な、これはまた、す、すごい人達が来ました!?」
ブラン「氷山ちゃん、下がって!!これは敵よ!!」
ブラン達は手から自分達の武器を取り出し、カオス兵に襲いかかった。騎士型カオスも剣と盾を構えて攻撃した。
ナイトカオス「ふん、人間如きに負けてたまるか!!我々の新たな力を見せてやる!!」
確かに今までのカオス兵とは違う、まさに進化したものだ。力も格段に上がっている。しかし、それでも所詮カオス。ノワール達は最も簡単に薙ぎ倒していった。
ナイトカオス「ば、馬鹿な!?最強の力を得た我が!?」
アスール「井の中の蛙って知ってる?上には上があるのよ!!」
そして、この場にいたカオスを全て全滅させたのであった。とはいえ、これで近くにカオスがいる事に間違いはなかった。あとはそのボスを倒すだけだ。その後、近くに廃工場を発見した。もう何十年は経っているであろう、壁や屋根は剥がれ落ち、おどろおどろしい雰囲気だった。早速入ろうとするも、肝心の氷山はいつもの弱々に戻っていた。
氷山「こ、ここに入るんですか・・・?なんか怖そうですけど・・・」
ブルーノ「大丈夫ネ。私達、闇属性ネ」
氷山「闇属性?」
ブラン「百聞は一見にしかず、まずは見てみたらいいよ」
ブランにそそのかれつつ、みんなと入った。確かに初見で見ると、背筋が凍るだろう。なんてったって山の中だからな。まあ、僕達は慣れちゃってるけど。しかし氷山がいるので明かりをつける事にした。
ノワール「光る妖精」
すると真っ暗だった中は魔法の光により、明るくなり部屋が一面見渡せた。氷山はもちろん、他のみんなも驚いていた。辺りを見渡すと壊れたソファにテーブル、缶詰などの食料が転がっていた。恐らくここが居住地であろう。しかし、肝心の相手はいない。とはいえ、魔力が微小に残っている。ノワールは魔力が感じる所にリボルバーを構えて、1発撃ってみた。するとガンッと音がして、そこから姿が現れた。
シーカー・メレーオン「げっ!?」
ノワール「また会ったな」
シーカー・メレーオン「また合うとはな!あん時は邪魔が入ったが、今日は貴様らを始末してやる!!」
すると突然、ナイトカオスが現れた。今度はさっきより数が多い。みんなは再び武器を取り出し、戦闘態勢にかかった。すると、遅れてエレキ・ソンもやって来た。
エレキ・ソン「ぎゃははは!!また会えたねー!!」
アマリージョ「あいつの相手は私がやるわ」
ブルーノ「私モヤルネ!!」
2人はエレキ・ソンの方に走り出した。残った者はナイトカオスとシーカー・メレーオンを相手にした。みんな剣を振りかざし、次々とナイトカオスを蹴散らした。とはいえ、鎧を着ているので簡単には斬らせてくれないが、何とか倒せる。やがて全て倒すと、残ったシーカーは舌を伸ばして攻撃をし始めた。ついでに肩からも舌を伸び始め、尻尾も攻撃し始めた。
シーカー・メレーオン「グハハハ!!どうだ、苦しいか!?」
アスール「別に?もっと楽しませてよ!!」
アスールは青の三叉槍を構えて攻撃をかわし、体を液体化させながら戦い続けた。みんな各属性の力を持っている為、攻撃を受け流す事が出来るのだ。その力を利用して、相手の攻撃を交わしつつ、攻めているのだ。
シーカー・メレーオン「く、ちょこまかと・・・」
ヴィオレ「悔しかったら反撃してみな」
シーカー・メレーオン「なら、あの手を使うしか・・・」
すると、シーカーは突然舌を引っ込めた。諦めた、と言う雰囲気ではなかった。何かを待っているようだ。しばらく動かなかったが突然腕が伸び始め、みんなに襲いかかった。
ブラン「きゃあぁぁぁっ!!!」
グレーズ「何なのあれ!?」
ヴェルデ「な、何!?」
襲いかかってきた腕や、舌攻撃ににみんな苦戦していた。それを見たシーカーは嘲笑いしていた。
シーカー・メレーオン「ふはははっ!!どうだ、俺の能力は!?苦しいだろ?」
ブラン「能力?」
シーカー・メレーオン「俺は能力をもう一個持ってるんだよ!教えてやろう、その名は"長く長く長く"。さっき見た通り、体の一部を伸ばす力だ!!」
さっきの姿を消す能力と、体を伸ばす能力の掛け持ち。まるで僕みたいな奴だな。例え体を交わしたとしても、舌攻撃でダメージを与えられる。まさにカメレオン怪人にはぴったりな能力だな。今度は腕を伸ばした後、ばね状にぐるぐると巻いて、ブラン達目掛けて炸裂パンチを繰り出した。
ブラン「うわーん!!あっちは余裕そうなのに、何でこっちは大変なのよ!!」
ルージュ「このままでは、泥沼戦になってしまうわ!!」
慣れない敵にみんな苦戦し、愚痴をこぼしている。確かにこれは楽しくなりそうだ。まさに弱点を克服した敵という事だな。その頃、陰から見ていた氷山。非現実なものを目の当たりにして、固まってしまった。
氷山(な、何なの・・・さっきから・・・。私はただ、あの人達についてきただけなのに・・・)
コスプレイヤーかと思いきや、体が伸びたり火を出したり、最初はマジシャンかと思いきや全然そうではなかった。今、目の当たりにしているのは作り物ではない、魔法みたいなものだった。この場は危険だから逃げたいが、さっき森の奥と言ってたので帰れなくなった。物陰からこっそり見ている時、背中に硬い何かに当たった。嫌な予感がすると思い、恐る恐る上を見るとそこにはさっき戦っていた騎士のカオスがいたのだった。氷山は思わず悲鳴を上げてしまった。
氷山「きゃあぁぁぁぁぁー!!!!」
それに気づいたのか、みんな戦うのを止め、声のする方に目を向けた。そこにはナイトカオスに捕まった氷山の姿だった。氷山の喉に刃を突きつけていて、今にも斬りかかりそうな状況だった。
アマリージョ「しまった!!」
ブラン「氷山ちゃん!!」
シーカー・メレーオン「ぐ、ぐははははっ!!面白いじゃないか!!さあ、助けたくば武器を捨てて、腕を頭につけろ!!」
ブラン達はシーカーの命令に従うしかなく、持っている武器を投げ捨てた。そして、頭に手を当ててじっとした。ただし、ノワールだけはそれをしなかった。それを見たシーカーは
「何をしてる!!お前もやれ!!」
と怒ったが、ノワールは言う通りにしなかった。何故従わないのかと怒るシーカーにノワールは
「僕は自分より弱い奴の言う事には従わない。それと人質は通用しない」
と一蹴した。怒ったシーカーは殺れと命令したが、ノワールは銃を突きつけて、カオスに1発当てた。しかし、兜を被っていたカオスに効くはずもなく、すぐに跳ね返された。
シーカー・メレーオン「どうしたんだ?やけになったのか?」
シーカー達は笑っていたが、実はさっき撃ったのは弾ではなく、ある物だった。それはコロコロと転がっていき、やがて氷山の手に渡った。それを掴んだ氷山は一見何をしたのか分からなかった。何故これを弾にしたのか、そしてこれは何なのか。しかし、何やら大事な物だという事だけ何故か分かる気がした。これを持っていれば安心する気もした。
エレキ・ソン「何をするかと思えば。早くそいつを始末しろ」
ノワール「答えろ、お前らにとって人間とは何だ?」
エレキ・ソン「人間はだな、我々の目的を果たすための道具、奴隷だ!!」
その言葉を聞いた氷山はカチンときた。何故かは分からなかったが何となく分かる、私は今猛烈に怒っていると。人間が道具?冗談じゃない。人間は道具や奴隷なんかじゃない!!人間は自分の意思で生き、自らの運命を切り開く生き物よ!!なんかあいつに文句が言いたくなってきた。氷山は罵声を上げて
「あなたみたいに何も分かってない人程、愚かな事はないわ!!」
と叫んだ。それを聞いたエレキ・ソンは
「何!?貴様らは黙って我々に支えていればいいんだよ!!」
と反論したが、氷山は
「あなたみたいな無責任で行き当たりばったりで見切り発車な人に支える訳ないじゃないですか!!」
と反論した。もちろんエレキ・ソンは激怒し、電気を帯びた両手を上げて、氷山に目掛けた。
エレキ・ソン「貴様らは生きたまま働かせようと思ったが我々に逆らうようであれば、全員皆殺しだー!!」
エレキ・ソンは辺り中に電気攻撃を仕掛けてきた。ノワール達は電気に耐性を持つアマリージョとブルーノを盾にしたが、肝心の氷山には攻撃が届いてしまう。
エレキ・ソン「終わりだー!!!」
エレキ・ソンは氷山に目掛けて雷を発射させたその時、氷山の手に持っていた石が光り出し雷を防いでくれた。ついでにナイトカオスも吹き飛んだ。つまり、これは認められたという事だ。しかし、実はこれノワールにとって賭けであった。あの石が彼女を認めるか、それはノワール本人にも分からないのだ。しかし、こうして反応したという事はそういう事だろう。すかさず指を伸ばして魔力を注入させた。そして黒いオーラが出て、彼女を包んだ。その後出て来たのは、水色の髪にへそ出しの黒服にスカート、そしてつばが大きい帽子を被った氷山だった。それと同時になんだか冷たい感じがした。よく見ると、足元は凍っていて冷気を出していた。壁や床、天井や置物はもちろんカオス兵を数人凍らしていた。
ジャラゴン「すごい・・・まさかの氷属性」
アスール「私とは気が合わない属性ね」
ノワール「氷か・・・なら君は今日から"ベルブラン"だ」
ヘルブラン「ヘルブラン、それが私の名前・・・」
氷山は一瞬沈黙した。状況が追いついていないのだろう。まあ、最初にはよくある事だ。するとそれを見たエレキ・ソンは腕を上げ
「なんだか分からんが、今度こそ死ねー!!」
と放電攻撃をしてきたが、ヘルブランは冷気を放出させ、彼の腕を凍結させた。両手はキンキンに凍っており、電気が出せなかった。
エレキ・ソン「な、なんなんだー!?」
シーカー・メレーオン「どけ!!今度は俺が!!」
そう言ってシーカーは舌を伸ばしたが、彼女に近づいた瞬間舌が凍りついた。そしてヘルブランは舌を掴み、シーカーを引っ張るとシーカーの体はすぐに引っ張られて、ヘルブランの近くまで来た。
シーカー・メレーオン(や、やばい!!このままでは危ない!!何なんだ、なんだか気温も下がってきたぞ!?あの女の能力か!?)
「こうなったら喰らえ!!"長く長く長く"!!!」
シーカーは体全身にある生物の頭蓋骨の口から舌を出した。もちろん、凍るのは承知の上だがダメージは与えられる、そう考えたのだ。さらに念の為に腕や足、尻尾も伸ばしてタコ殴り状態に入った。これが命中すれば、まず命があるかどうかだろう。しかし、彼女は動じなかった。何が彼女に勇気を与えているのか、何故余裕そうなのか、それはこの場にいた全員知らなかった。何か策があるのか、しかし戦い慣れていない彼女がそれを今考えるのは難しい話だ。するとヘルブランは手をかざし始めた。手から何かが出てきて、次第に体全身に纏った。よく見ると、氷の結晶が風と一緒にグルグルと回っていた。
ヘルブラン「"フリージングストリーム"」
そしてそれは、強力な竜巻となりシーカー目掛けて放った。シーカーはもろに喰らってしまい、全身凍りついた。
ケンちゃん「一撃で凍った!?」
ルージュ「彼女の能力、なんなの?」
ノワール「ヘルブランの能力、それは"氷結術"。まあ、文字通りの能力だね」
氷結術、それは確かに名前通りの能力だった。あらゆる氷を操ったり、相手を凍らせる事が出来る能力だ。人間はもちろん、生き物や植物、レベルの低いカオス程度なら全身凍らせて凍死させる事は出来る。また、氷属性の力なので同じ属性の人が使うと更にパワーアップするのは間違いない。
ブルーノ「オオ・・・ナンダカ寒クナッテキタネ」
辺りが寒くなってきたその時、奥から音がしてきた。どうやら誰かが来たようだ。最初、氷煙で見えなかったが後からやってきて正体が分かった。なんとマゼンタ第8部隊がやってきたのだ。
葉月「追い詰めたぞ、カオスと・・・な、なんだか人増えてないか?」
ノワール「多分気のせい」
葉月「この状況でよく気のせいと言えるな!!」
ノワール「うるさい」
葉月「な、貴様!?」
エレキ・ソン「おい!!何してやがる!!」
ここからノワールファミリーVSマゼンタVSグレゴリーのカオスな戦いが始まったのだ。




