ノワールVSブラッド
「もう、どこまで来たか忘れちゃった」
僕らは現れてくる敵をどんどん倒して、上に上がっていった。最初は階段で昇っていたけど、途中自動で上がるものを見つけてから、上にいった。すげー楽ちんだ!今度、城にも同じ物を作ろうかな、と考えていると、途中で止まった。扉が開くと、また戦闘員が襲ってきた。彼女たちも戦闘態勢になり、敵を次々と片付けていく。全て片付けると、また乗って上にいった。そして、最上階になると光が消えていた。なんだか薄気味悪くなってきたので、魔法『光る妖精』を発動して、前へ進んだ。不思議なことに戦闘員は誰もいなかった。静かすぎる。でもまぁ、戦いすぎて疲れちゃったからちょうどいいや。しばらく歩くと、大きな扉を見つけた。扉の高さは数十センチあって、ドアノブを引こうとしても押してもビクともしなかった。しょうがない、壊すか。早速準備をすると、扉がひとりでに動いた。驚きつつも中に入り、みんなが入った瞬間扉がバンと素早く閉じた。まあ、帰れないことでもないし、問題ないな。しばらく探索すると、壁が急に光った。そこには、丸い球体に鳥の頭、羽、足が突き出ていて、丸の中に奇妙な絵が描いてあった。おもしろい絵だな。そういや、うちはシンボルマークがないな。帰ったら、作ろう。すると奥から、コツコツと音がした。振り返ると
「ようこそ、秘密結社【グレゴリー】第175支部へ。私はここの用心棒をしているブラッドだ。まあ、偽名だから本名ではないが。初めまして、『ノワールファミリア』諸君。それより君たち、ここで好き勝手暴れてくれたようだね」
と色白で黒い服やマントを羽織った男が現れた。ブラッド?175支部?次から次へとくるワードに混乱した。第175支部だって⁉そんなにあるんだ。結構な数あるな。
「ここは全世界のなかの一つの部署だ。つまり、この施設は全世界に一つずつあるってことだ。それにあのマークは【グレゴリー】のシンボル。全世界を鷲掴みするという皮肉な意味がこもっている」
なるほど。確かにそれなら納得する。どうりで探しても見つからないわけだ。しかも、全世界に一つずつ置いてあるって!よう作ったな。それにあの絵についても理解できたし。確かに趣味が悪い絵だね。
「つまり、貴方は組織の関係者。ここで潰させてもらうわ」
アインス達は剣をとって、ブラッドに襲い掛かった。
「無論、こちらの話も終わった。これからは遊びの時間だ。血液吸収」
と言った途端、彼の体から血が現れた。血は槍のように形を変え、彼女たちを突き刺した。幸い、スライムスーツで体は貫通しなかったが、腕や頬など無防備な所を刺した。
「血を操るなんて・・・まさかあなたは吸血鬼⁉」
「そうだ、私はその中でもより上位の吸血王だがな」
なるほど、どうりで部屋が暗い訳だ。吸血鬼は確か太陽が苦手なはず。なら、太陽さえ当たれば。
「無理だ。この部屋は特別な作りで、窓は一切開かない」
しまった。これではあいつを倒せない。こうなったら、一斉にやるしかない。テスラ達を見ると、なぜか彼女たちは疲労していた。
ツヴァイ「なんだか、力が抜けてきます・・・」
フィア「うう・・・なんか立てないですぅ・・・」
ゼクス「なんだか、貧血みたいで苦しい・・・」
ジーナ「た、助けて・・・」
ティーナ「・・・苦しい」
これはどういうことだ?
「一体彼女たちになにをした」
「ちょっと血を貰っただけさ。私の魔法血液吸収でね。この魔法を喰らった者は血を吸いとられるし、量も調整できる。傷を作らせたのは、血が出ていないと吸えないからだ」
さすがは吸血王。一筋縄ではいかない。吸血魔法は厄介だな。血を全部吸われれば、そこでお終いだ。なんとか彼女たちを守らないと。
「今度は貴様の番だ!彼女たちを死なせなかったのはこの小娘共を捕まえて売ること、リーダーであるお前を殺して絶望を与えさせるためだ。お前を殺したのちに彼女たちを回収する」
ほー。こいつ、折角見つけた仲間を売るんだな。やっぱり気に食わない。彼女たちを回収する?はっ?何言ってんだ、お前。彼女たちは僕の仲間だ!つまり、家族同様、僕の物だ!それに絶望を与えるって。それは僕の専売特許だっつうの。
「面白い。では、我が相手をしてやろう。そして、お前に絶望を与えよう」
「いいだろう。手加減はしないぞ。かかってこい」
彼女たちを隅っこに運び、僕は絶望と滅亡の剣を取り出し、構えた。ブラッドも血から剣を作った。
「これは紅血之剣といってな、切った相手の血を吸いとる剣だ」
なるほど、僕のと同じだね。ただ、違うのはあっちは血しか奪えないこと。そして、僕とブラッドの一騎打ち。まずは両方相手の出方を伺っている。すると、ブラッドが飛び出してきて、剣を振った。僕も剣で守って、しばらく鍔迫り合いになった。すると、ブラッドがニヤっと笑った。彼の剣から無数の赤い糸が出てきた。そして、糸は僕を刺した。
「言い忘れていたが、この剣は切られる以外にも血を吸うんだ。だから、その糸が刺されたら、血を全て吸い尽くすまで離れられないぞ」
と言って、僕とブランドは離れた。ブランドは剣を下したが、糸はとれない。
アインス「ノワール・・・危ないわ・・・早く助けに行かないと・・・」
ドリィ「しかし・・・私たちもあれを喰らってしまいます・・・」
フェリカ「ある・・・じ・・・様・・・」
アハト「でも、早く行かないと・・・ご主人様が・・・」
ノイン「この・・・うまく立てない・・・」
みんなが立ち向かおうとするも血をほとんど抜かれたからか、立つことすらままならない。
「年貢の納め時だな。遊んでやるつもりがもう早く片付いた。そうだな、最後にチャンスをやろう。なにか言い残すことはないか?」
「うん、最後に言い残すことは・・・僕、血なんてないよ。そもそも人間じゃないし」
「なに?」
「え?」
みんなぽかんとしている。あれ?そういえば、僕の正体、彼女たちに喋ったっけ?あ、ジャラゴンのこともすっかり忘れてた。そういや、あんまり話してないな。しょうがない、ジャラゴンを呼ぼう。
「来い、ジャラゴン」
僕は体の中に手をいれて、ジャラゴンを出した。
「よう、久しぶりの娑婆だ。やっほー!て、あれ?どういう状況?」
ジャラゴンは状況を把握出来てないらしい。そこで
「お前、この糸とってくれない?すごい邪魔なんだ」
と言ったら、
「いいよ、じっとしてろよ」
とジャラゴンは糸を束ねて、一気に全部抜いた。糸はしゅるしゅると紅血之剣の元に戻った。
「なっ⁉」
ブラッドは驚いた。あの糸は絶対抜けないはずなのに!それをいとも簡単に抜くとは!こいつ、ただ者じゃない!面白い。こんなやつは初めてだ。
「なかなかやるな。なら、これはどうだ。鮮血斬」
紅血之剣は形を変え、鎌のようになった。ブラッドは僕に切りつけようとした。
「なるほど、こんな技もあるんだ。勉強になるよ」
と、彼の攻撃をかわし、両手を突き出して
「反撃だ!『ブラック・スピリット』」
と彼に攻撃を与え、後ろの壁に当たった。
「どうした?吸血王の名が泣くぞ」
「くそ、血を無駄に使いたくない。なら、これはどうだ!」
ポケットから何かを取り出した。それが何なのか、僕には分からなかった。そして、パンパンッと音がして、僕の肩と足に当てた。
「なにか飛んできたけど、それはなに?」
「これは拳銃っていってな。遠距離攻撃が可能な武器だ!」
「なるほど、拳銃っていうのか。勉強になるよ。じゃあ、これも拳銃っていうの?」
僕はポケットから拳銃をだして、ブラッドの肩や足、体に数発撃った。彼は倒れ込んだ。
「なぜ、おまえが・・・?」
「なんか、相手が持ってたから。しかも、見たことない物だったから拾った」
ブラッドは撃たれた部分を抑えながら、立ち上がった。血はどくどく出ているためか、息切れをしている。
(このままでは血が無くなってしまう。なんとかしないと・・・。なら!)
彼は持てる力全てを使って、技を出そうとした。
「私の最強の・・・切り札を出してやろう。まさか・・・こんな場面で・・・お前につかうとはな・・・」
そういって、壁を壊してた。すると、戦闘員の遺体がごろごろと出てきた。
「君たちが来るまでに、待ちくたびれたから・・・殺しておいた。この技を・・・使う時の・・・保険としてね・・・」
すると、遺体の血が全てブラッドの体に吸収された。一体なにをするのだろうか?
「見よ。これが我が最強奥義「八岐大血」」
すると、彼の背中から血で出来た八体の龍になった。
「この技を喰らって生きた奴はいない。死ねぇ~!」
八体の龍は一斉に襲いかかってきた。あ、これは危ないかも。でも、喰らったらどうなるのか、気になる。そう思って、とりあえず喰らってみた。
「おお。これはすごい!」
この技を喰らって、体がどんどんバラバラになっていった。大きな爆発と共に部屋が崩壊した。
部屋には、黒焦げになった跡と、ルシカ達、ブラッドだけが残った。
アインス「そ、そんな・・・」
ツヴァイ「ノワール様が・・・」
ドリィ「負けた・・・?」
フィア「う、嘘です。ボスはどこかにいるです」
フェリカ「しかし、どこにおられるの?」
ジーナ「な、なんで・・・?」
ゼクス「見たところ、ここにはいないぞ・・・」
アハト「そんな、神よ、なぜ・・・」
ノイン「う、嘘よ・・・」
ティーナ「マスター、消えた」
彼女たちは涙を流し、絶望した。
「ふっ、ふははははー!ようやく死んだ!これでもう厄介者はいなくなった。あとはお前達を運んでこの世界とさらばだ!ふははははー!」
ブラッドの笑い声と彼女たちの悲しむ声が響いた。すると、ジャラゴンは
「じゃあ、次!第2ラウンドの始まりだから、準備しな!」
と言った。
「?」
みんな泣くこと、笑うことをやめた。すると、上から何かがものすごい勢いで落ちてきて、その衝撃で部屋が揺れた。一体どうなった。みんながそう思った時、
「ちわー」
そう、そこにいたのは黒いスライムだったのだ。
アインス「な、なんなの?」
ブラッド「なんだお前は?」
みんな驚いていた。すると
「あ、そうか。この姿は初めましてかな。我だ、ノワールだ」
と、みんな驚き
アインス「ノワール、なの?」
ツヴァイ「ノワール様が復活した!?」
ドリィ「ノワール様が生き返った!?」
フィア「さすがはボスですぅ!」
フェリカ「やはり、主様はすごいです!」
ゼクス「でも、一体どうやって?」
ジーナ「分からない。でも、もうダメかと思った」
アハト「やっぱり、ご主人様は素敵!」
ノイン「これで仕返しが出来る」
ティーナ「うれしさマックス」
十人は泣くほど喜んだ。
しかし、絶望する者もいた。ブラッドだった。
「な、馬鹿な。なぜだなぜだ?!」
と問いかける彼に、僕は人間体形に戻りながら
「我は死亡術というスキルを持っているから、死んでもまたすぐに生き返るのだ。また、僕スライムだし」
と答えた。
「馬鹿な、そんなスキル聞いたことがないぞ!しかも、スライムだと!」
と絶望する彼をよそに
「驚いた?さて、そろそろ第2ラウンドといこうか」
僕が剣を持とうとすると、ブラッドの後ろから黒い緞帳が現れ、そこから腕が伸びて、彼を掴んで中に引きずった。すると、向こう側から声が聞こえた。
「悪いね。勝負は中断するでぇ。彼は持って帰るからなぁ。ほな、またどこかで」
と言って、消えていった。
声はアートルムではなかったが、なぜあいつは使えたのか?あいつを捕まえたかったが、遅かった。またどこかでって言ってたけど、また会えばいっか。それより、彼女たちの所にいって、回復魔法をかけた。