プラチナキラー
「ええいっ!!これでも喰らえっ!!」
ヴォルフガングは手から楽譜の5線みたいな物を出して、ヴィオレに打とうとした。しかしヴィオレは元々鞭使いなのか、何の苦もなくかわして、ヴォルフガングに銃を撃った。ヴォルフガングは全命中してしまい、よろけてしまった。その隙にアスールがワイヤーを接続した剣を振り回して、ヴォルフガングにダメージを与えた。
ヴィオレ「どんなもんよっ!!」
アスール「派手に行くわよーっ!!」
ヴォルフガング「やかましいわっ!!"悪夢協奏曲」
ヴォルフガングもすかさず反撃をした。手から黒い煙を出した。この技を喰らうと、相手は寝てしまい、さらに悪夢も見させる能力だ。いくら力があっても、風だけは避ける事が出来ない。すると、後ろから竜巻が出て来て、煙を吹き飛ばした。そう、後ろからヴェルデが竜巻を起こしたのだ。
ヴェルデ「今のうちよ!!」
ヴェルデの合図と共にヴィオレとアスールが追加攻撃をしてきた。ヴィオレは手から植物、アスールは水を放出させた。またしてもヴォルフガングは吹き飛ばされてしまった。その頃、ノワール、ブラン、アマリージョ、ブルーノはラファエロと戦っていた。
ノワール「ラファエロ・ペンテールだっけ?何処かで聞いた事ある名前ばかりだな」
ラファエロ「名前を馬鹿にするなっ!!"原型崩し"」
ラファエロは筆からカラフルな色の絵の具を撒き散らした。それをかわし、地面にビチャッとつくとその場所は溶け出した。融解液のようだ。危険なのがよく分かる。
ラファエロ「それを受ければみ〜んな、いい絵の具になるんだな〜♪」
アマリージョ「悪いけど、あなたの趣味に付き合うつもりはないわ。"電撃一閃"」
アマリージョは両手を握り合わせ電気を溜めて、地面に豪快に振り下ろした。すると振り下ろした場所から電気が出て、次第に地面をひび割れながら電気が流れていった。やがてラファエロの所まで来ると、下から電撃攻撃してきて、ラファエロは痺れ出した。
「ぐぎゃあぁぁぁぁーっ!!!」
その隙にブルーノとブランが顔に蹴りを入れた。ラファエロは何の抵抗もな、吹き飛ばされ、建物の壁に激突した。壁には穴が空き、ラファエロもさっきの痺れで体が麻痺してうまく動けなかった。
(こ、こいつら強いんだなー。もしかして、あれが噂のノワールファミリー!?)
正体を知ったラファエロは驚いた。今、自分達が戦っているのは、あの十二神将と黄道13星座隊を撤退させた謎の集団、ノワールファミリーだという事に。急いでこの場を立ち去ろうとするも、何故か足が動かなかった。しかも片足ではなく、両足捕まっている感じがした。試しに足元を見てみると、なんと足首を謎の手によって掴まれていた。
「なっ!?これは一体何なんだなーっ!?」
すると今度は地面から誰かが出て来た。最初は土を盛った形で、次第に手や足、体や腕、髪、顔、服と形を変えていき、やがて人間に変わった。その姿はブルーノだった。実はブルーノに"動作術"を与えた。この能力はありとあらゆる物を動かす事ができ、地面を動かしたり機械も自在に動かす事が可能だ。もちろん自身も物体に入り込んで操る事も出来るチートみたいな能力だ。今、彼女は地面と同化しているのだ。
「私、今地面ト同化シテルネ。地面ダカラアナタノ動キモ読メルネ!!」
「何いぃぃ〜!?」
ブルーノの言葉にラファエロは驚愕した。恐らくこんな敵を見た事がなかったのだろう。今度は地面から巨大な手が形成されていき、そのデカさにみんな唖然とした。実は彼女は土属性なのだ。だからなのか、地面に同化すると凄まじい力を発揮する。パーの形をした手はグーの形になり、見た目とは裏腹に素早い動きでラファエロに降り掛かろうとした。
「"ボーデンハンマー"!!」
グーの形の土はそのままラファエロの真上にあり、ラファエロは固まってしまった。そして徐々に距離が近づき、やがてグシャッと潰された。自分が呼び出した奴隷に反撃されるという、まさに因果応報の末路だった。
「ラファエローっ!!!」
遠くで見ていたヴォルフガングが叫んだ。あの3人にボコボコにされながらも、しぶとさだけは人一倍だった。これこそ怪人だな。さてと、僕もいい所見せようか。
「"暗黒車輪"」
手を挙げて、輪っか状に回した。すると魔力を帯びた黒い輪っか状の物が出て来て、一周回すとヴォルフガングにめがけて放った。黒い輪っかはグルグルと回りながら、ヴォルフガングに当たって爆発した。こうしてラファエロとヴォルフガングはいとも容易くやられてしまった。結局、使った魔力量もそんなに減ってない。ゲームでいう、中の小ボスぐらいの敵だったな。しかし、倒した後もやることはあった。
「あとはこいつらから情報を聞き出せば・・・」
ノワールが2人を掴もうとした時、足元に黒い球体がゴトンッゴトンッと転がって来た。上は緑色に光っていて、全身金属で出来ていた。
「何これ?」
冬美が興味本位で触ろうとした時、ピピピピピピーッと音が鳴り出した。何か怪しいと感じたノワールは冬美を捕まえて抱き抱えた。そして案の定、爆発した。球体の正体は小型爆弾だったのだ。いきなりの爆発にこの場にいたみんなは驚き固まった。恐らく新手が来たようで、そう遠くにはいないはずだ。ノワールは辺りを探してみた。すると上に何かがいる気配がした。そして上からビューッと音がして、その正体が見えた。それはグライダーに乗って、全身フルメタルスーツを着た謎の敵だった。顔にはマスクがしてあったので分からなかった。その人はしばらくノワールの上を飛び回した。特に何か攻撃してくる訳でもなく、腰のバックルから2枚カードを取り出した。そしてそのカードをラファエロとヴォルフガングに投げ出すと、2人はカードに吸収されて、吸収し終わると謎の人物の方に戻っていった。恐らくラファエロとヴォルフガングの回収をしにいったんだろう。
「お前は何者だ?」
ノワールが試しに聞いてみると謎の人物はグライダーから降り、ノワールと対面し
「私は白金の暗殺者。あなた方、特にあなたを殺しに来た」
と言い出し、グライダーからまた小型爆弾を数個取り出した。そしてボタンらしき物を押し、ノワールめがけて投げ出した。もちろん爆弾をスライム触手でかわしたが、爆弾の他に先端が鋭い手裏剣も投げてきた。爆弾は囮だったのだ。爆弾の背後に手裏剣を投げるとは、暗殺者の名前は伊達じゃなかった。体に数個手裏剣が刺さったが、手や口を使って3個は止めた。
「君、殺し慣れてるね」
「あなたも噂通りね。このくらいでは死なないのね」
「僕もとうとう人気者だね、ある意味」
「そうね。でもあなたには消えてもらう」
「あ、プラチナって呼んでいい?」
「ふざけてるのか」
今度は日本刀を取り出した。ノワールもスライムソードを取り出し、ガチンッとぶつかった。刀の使い方も上手で素人の殺し屋とは桁違いの技術もある。こちらがスライムで攻撃しても見事にかわし、魔法もスキルも使わずに見事に刀で攻撃している。さらには全身フルメタルなのに軽やかに動く、恐らく軽い金属で作った特注スーツなのだろう。それをあんな操縦が難しそうなグライダーを乗り回すなんて、うちに欲しいぐらいだ。グライダーだけに。
「中々やるね。こっちの攻撃が全然当たらない」
「それは私も。私の戦術が中々聞いてないじゃない」
お互い殺し慣れてるためか、なかなか決着がつかずに泥沼戦になっていった。その頃、その戦いを見ていた一同。なんかすごそうな戦いを見て、ただただ固まってしまった。
ブラン「あれがノワールちゃんの実力・・・」
ブルーノ「Uberrascht!!漫画ヤアニメデ見タ景色ピッタリネ!!」
アスール「ブルーノって時々ドイツ語で囁くのね・・・」
ヴェルデ「相手も刀使いか。私も刀使いだけど、あんなの見たら、なんか自分のがまだ未熟者って思っちゃう」
アマリージョ「これぞ私が見たかった背景!!熱い戦いに謎のライバル登場!!これこそまさに・・・」
ヴィオレ「はいはい、黙りなさい」
ジャラゴン「しかし、あれ程の実力、ケンちゃん!!」
ケンちゃん「はい、今録画してますっ!!」
冬美&冬音「すごーい!!」
ある者は興奮し、ある者は危機感を覚え、ある者は己の未熟さを痛感した。まだ戦い慣れていないとはいえ、いずれあんな風の敵と戦わなければならない。これは貴重なサンプルだろう。その頃、2人は鍔迫り合いになる程、激しい戦いをしていた。
「このままじゃ、埒が開かないな」
「当たり前だ。死なない相手をしているのだからな」
「お前は死ぬだろ?」
「あなたは私を殺さないの?」
「面白い奴は殺さない主義なんでね」
プラチナは戦いを通して分かった事がある。それはノワールという男は手加減しているという事。今まで戦ってきた敵の中で手加減してきた相手は数える程度だ。それにあの男はかなりの技術があるだけでなく、魔力量も普通の人と比べて桁違いの強さを持っている。まるで全身魔力で作られたみたいに。するとプラチナは何故か一旦距離を取って、刀を収めた。その後、どこかに喋りかけていた。
「あれ?戦わないの?」
「今日はこいつらの回収しに来ただけだ」
「なるほど、じゃあ我も武器を収めるから貴様の正体を教えろ」
「まだあなたには教えない。そのうち分かるかもね。覚えていればの話だけど・・・」
「・・・?」
そう言ってお互い武器を収めた。そしてグライダーに乗り何処かへ飛んで行った。それを見たみんなはただただ見ていた。まるで風のように現れて、風のように消えていった。
ノワール「・・・一体何だったんだ?」
ブラン「また何処かで会えないかな?今度は身近に現れたり♪」
ノワール「言霊に気をつけろよ。そんな怖い事言うなよ」
これにてミッションはクリアだ。最初は冗談のつもりだったが、これが現実になるなどとはこの時はまだ誰も知る由もなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『こちら、プラチナキラー。2人は回収した』
『ではこのまま帰還してくれ。あ、君がノワールと戦った事は黙っておくよ』
アートルムと通信しているプラチナ。そう言って通信を切った。その後、ある島に降りて仮面を外した。仮面からは白金、まさにプラチナみたいな色の長い髪が出て来た。そう、プラチナキラーは女だったのだ。
「やはりアートルムは全てを知ってたわね。それにノワールか。あんな敵は初めて」
休憩をした後、再び仮面を被ってグライダーに乗り、帰っていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌日、学校にて。放課後、空き教室にみんな集まっていた。内容はもちろんプラチナキラーの事だ。
黒季「あの殺し屋、一体誰なんだろう?」
白沢「う〜ん、今の所敵みたいだけど詳細不明ね。ケンちゃんは?」
ケンちゃん「僕も今データを解析していますが、あんな敵の情報は出て来ません」
ジャラゴン「情報操作をしてるのか?」
みんなプラチナキラーについてあれやこれや話し合っているが会議は踊る、されど進まず状態だった。ただ、グレゴリーと関係がある事は確かだ。この日は何の結論も出ず、アインス達の情報を待ってからまた話し合いをする事になった。
黒季「プラチナキラーか、君は一体誰なんだ?」
黒季は1つ腑に落ちないことがあった。それはプラチナが言ってた"そのうち分かる"と言う言葉に。いずれ正体が分かるまでは、記憶に残しておこうと思った。




