海賊戦とタイタニック作戦って面白い名前だな・・・
「パッフェードがやられるとは、なかなかやりますねぇ」
「あいつらはただの請け負いだ。いなくなろうが関係ない」
ある場所で、グレマーズと謎のスーツ男が話していた。グレマーズは机の縁に、謎の男は椅子に座っていた。どうやらパッフェードが崩壊したことはグレマーズの耳にも入って来たようだ。グレゴリー関係の組織が崩壊してしまったが、謎の男はあっさりと切り捨てた。
「これからどうしますか?」
「まあ、あんな小さな組織の崩壊などよくある。適当にしろ」
「それはそうと、例のノワールファミリーについてですが」
「何・・・!?」
グレマーズが話題を変えると、謎の男はギラッとグレマーズを睨んだ。
「実は、ポワソンがノワールファミリーの関係者と戦ったのですが、相手に一本取られたようでして・・・」
「何だとっ!?」
「ついでに研究所は破壊され、実験に使う人間共を逃したそうです」
「どいつもこいつも使えねぇなっ!?」
謎の男は苛立ちを露わにした。組織崩壊ならともかく、ポワソンと互角に戦える存在を知った事にグレマーズは大変興味を持ったようだ。それが前に戦った相手かは分からないが、自分の想像を遥かに超えてくれる事が面白いようだ。
「おい、お前の能力で俺の十数年先を見ることは可能か?」
「残念ですが、私が見れるのは1日まで、それもすぐに起こる出来事だけしか見れません」
「それは残念だ。まあいい、その時はまた頼むよ」
「では、私はこの辺で」
男はグレマーズの予言能力で占って欲しかったが、限定条件付きを知り、諦めた。その後、グレマーズは部屋を出て、男だけが残った。
「馬鹿め。利用されてる事も知らずに。あいつも使えるだけ使ってやる」
男は1人不気味そうに笑い、その笑い声だけが部屋に響いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
午後9時ぐらい。ツヴァイの情報を頼りにある港町の倉庫にノワール達は来ていた。ブランを始め、アスール、アマリージョ、ヴィオレ、ヴェルデ、何故か冬美と冬音も来ていた。どうやら母さんは仕事が忙しくなり、残業するらしい。残業する時は大体2、3時ぐらいに帰ってくる。それまでまだ小さい妹達だけを留守番させる訳にもいかないから、ヴェルデが連れて来たようだ。
「ついて来るのはいいけど、僕達のいう事は聞いてね」
「「は〜いっ!!」」
ジャラゴンは2人に忠告した。夜は暗くても、港はまだ灯台が光を回して、船も数隻動いていた。しかし、それとは別にずっと奥の片隅にある倉庫は光すら届かなく、灯りも出ていなかった。まさに物を隠す、ヤバい組織の隠れ家にはうってつけの場所だった。早速倉庫に入ろうとするが、今回はアインス達は連れて行ってない。彼女達は他の任務で忙しいからだ。いつもなら潜入向きのゼクスが最初に入るのだが、今回はケンちゃんを先に入れて状況を確認した。数分経つと、ケンちゃんは帰ってきた。
「中身は誰もいません。怪しい魔力もありませんでした」
「なら良好ね。いくよ」
ブランがレイピアを抜き出し、大きな扉を斬った。数回斬った所で鞘に収めると、扉は形がバラバラの塊になり崩れた。中身は暗くて見えなかったが、月の光が照らし始め、入り口だけが見えた。ケンちゃんの言う通り、何もなかった。昔、ここは船の修理工事だったらしく、その名残がいくつも残っていた。みんなスマホのライトをつけて、中を確認した。壁や天井には蜘蛛の巣がびっしりと貼られているが、怪しい物はなかった。次に床を調べてみると、1つの場所だけ不自然に浮き出ていた。アスールに頼み、開けてみると案の定、地下施設があった。グレゴリーは地下施設がよく好きだなー。
ブラン「ねえ、行きましょうよ。この中にオリヴィアちゃんが?」
ヴェルデ「また捕まっちゃう事もあるんだね・・・」
ジャラゴン「中で寝てるかもよ?」
アスール「それはあるかも。あの娘、どの状況でも寝そうじゃない?」
アマリージョ「それはあるかも!!」
ヴィオレ「みんな、早く行くわよ」
みんなはハシゴをつたって降り始めた。中はただ掘っただけの洞窟のようで、ランプが吊るしてあった。まだ火は残っている。それからランプの明かりを頼りに道を進むと、大きな扉がまた出た。しかし、今度は鍵が掛かっていなく、スッと開けられた。中には空になった牢屋に机が置いてあるだけだった。
「逃げられた」
「えぇっ!!」
アスールはつい驚いてしまった。どうやら事前に場所を変えたようだ。だとするなら、あれしかないな。急いで外に出ると、ここから離れた港に巨大なコンテナ船があるのが見えた。荷物を下ろしていなく、逆に何かを運んでいた。
「あっちに行くぞ」
「行くって、結構距離あるよ?」
「腰のバックルを使ってみろ」
ノワールに言われるがままに、みんな腰にある銀色のバックルを取った。バックルは取り外し可能で、コンパクトなサイズである。横に小さなボタンがあり、試しにノワールがお手本を見せた。
「行きたい場所に向かってボタンを押す。するとワイヤーガンが出る」
ボタンを押すと、確かにワイヤーが出て、遠くのガントリークレーンに引っかかった。先が引っかかった事を確認し、もう一個のボタンを押すとスーッと前に飛び始めた。ノワールに続き、みんなもバックルを取り出し、ワイヤーを射出させた。冬美と冬音はヴィオレとアマリージョが抱いて来た。みんな揃った事を確認した後、下にあるコンテナ船を見た。船にはびっしりとコンテナが乗ってあった。おそらく全員誘拐された人達だろう。中にはオリヴィアもいて、出航されればもう助からない。なのでチャンスは今しかない。
「これから二手に分ける。アスールとアマリージョは船。あとは港」
一同「了解!!」
そういって、各自動き始めたのだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その頃、港ではラファエロとヴォルフガングが人間と武器などを積んだコンテナを運んでいた。この後、いつもならグレゴリーに報告するのだが、2人は黙って運び込もうとしていた。
「これで億万長者なんだな〜」
「まあ、そうじゃなくても儲け分はがっぽりもらえるぞ!!」
2人は高笑いしていた。最後のコンテナも積み、いざ出航しようとした時、エンジンがかからない事に気づいた。何やらおかしいと思い、エンジン室に行ってみると、なんとエンジンはあちらこちらグシャグシャに壊され、起動不能になっていた。これでは出航は出来なかった。
「こ、これはっ!?何なんだな〜!?」
「一体どういう事だっ!?」
状況が分からないみんなはただただ混乱していた。急いで修理するも、今でも爆発してる箇所がありすきて、到底出航には間に合わない。するとまた爆発音が聞こえた。今度は甲板の方からだ。そこには誘拐した人間を入れたコンテナがあった。もしやと思い、急いで甲板に出ると、辺り一面火の海になっていた。
「ど、奴隷があぁぁぁーっ!!!」
「は、早く集めろっ!!火も消せっ!!」
ラファエロは発狂し、ヴォルフガングはカオス兵に奴隷回収と消火するよう指示した。すると突然、何かがこっちに向かって飛んできたのだ。
「な、今度はなんだなぁ〜!?」
何かが飛んできた事に気づいたラファエロは、思わずしゃがんでしまった。そしてドカンッと音がして、見てみるとそれはカオス兵だった。一体何があったのかは分からないが、そのまま消えてしまった。これでこの船に誰かがいる事が判明した。
「探せっ!!この船のどこかにいるはずだっ!!」
「もう上にいまーす!!"超電磁射撃"」
ヴォルフガングが指示すると、上から電気攻撃が降ってきた。それは雷のように早く、この場にいた者に全命中させた。
「うぎゃあぁぁぁぁーっ!?し、痺れるんだなー!!」
「だ、誰だー!?」
「私はアマリージョ。ちょっとビリッとする女だぞ!!」
上からマスクをつけた女性が降りて来た。そう、この攻撃はアマリージョが仕向けたのだ。さっきのエンジン室の破壊も彼女の仕業だ。
「き、貴様っ!?なんて事をするんだなー!?」
「ん?ああ、さっきの攻撃は挨拶みたいなものだよ」
「いや、あんな物騒な挨拶なんて見た事がないぞ・・・てそっちじゃねぇっ!!何金づるを逃してんだっ!?」
「え?私はこの船を動かさないよう指示されただけよ」
「エンジンの故障、貴様の仕業だったのかっ!?」
「そ、それよりもはやく奴隷を回収するんだな〜!!」
しかし、人間共は何処にもいなかった。探しても燃える炎と消火で精一杯のカオス兵しかいなかった。人間共はどこに行ったのか、何故こんな状況になってしまったのか、誰も分からなかった。するとまた別の声がしてきた。
「甘いね、お二人さん。スライム銃の威力を味わいな」
今度は上から射撃され、カオス兵共々撃たれてしまった。相手は3人でワイヤーを使い、縦横自在に攻撃してきた。カオス兵はバタバタと倒れてしまったが、ラファエロとヴォルフガングは立っていた。
「次から次から何なんだな〜!!」
「貴様ら、許さねー!!」
2人は怒り出した。それに対し、ワイヤーを戻して床についた3人。正体はブラン、ヴェルデ、ヴィオレだ。3人共フェイスマスクをしているので顔は分からなかった。
ブラン「人質達はみんな元の場所に帰したわ」
ヴェルデ「あとはあんた達を倒すだけよっ!!」
ヴィオレ「それにしても、変わった姿ね」
ラファエロ「あんた達の方が変な姿何だなー!!」
ヴォルフガング「ええいっ!!やれっ!!カオス兵!!」
するとカオス兵は次第に泥に変わっていき、次第にバンダナを巻いた姿、トリコーンを被った海賊姿に変わった。左はサーベルを持ってたり、フックになっていた。
ブラン「海だから海賊ね。可愛い!!」
ヴェルデ「それ言ってる場合じゃないでしょっ!!私達も行くわよっ!!」
ヴィオレ「そういえば、あいつ、何処行ったのよ?」
3人はスライムで出来たフリントホック銃、柄にマジックハンドがついた剣を取り出し、一斉に襲いかかった。お互い剣同士ぶつかり合い、銃撃戦が始まるも、マジックハンドで相手の腕を掴んだりして攻撃した。見た目が変わったとはいえ、カオス兵はやっぱり一般兵なのですぐにやられていった。
ブラン「これが本当の海賊戦っ!!なんちゃって」
ヴォルフガング「ふざけるなっ!!」
焦った2人はついに動き出したのだ。その頃、アスールは船内の船底にいた。中には食料や生活必需品がびっしりと入っていた。
「私は一体何をしようとしているのか、最近頭が分からなくなってきた」
アスールはフリントホック銃を取り出し、壁に向かって数十発撃った。すると撃った穴から海水が流れ出して、次第に船底は海水でいっぱいになっていた。そして上に上がり、また数発撃つとまた海水が入った。そう、アスールは船に海水を入れて沈没させようとしているのだ。これが『タイタニック作戦』だ!!
「全く、嫌な作戦名ね」
アスールは急いで甲板に上がっていった。その頃、ノワールは船の金庫の前にいた。金庫には電子暗号ロックキーがあった。
「ここには絶対あるよね。なんか扉が大きいとお宝があるのはお約束だな」
ノワールは腰にあるバックルを取って、暗証番号ロックキーにくっつけた。そしてガチャッと開けた。そこには数字が書かれた電卓みたいな物があった。すると上にある画面が動き出し、『0・3・0・6』と数字が出た。すると暗証番号ロックが解除された。実はこのバックルは解除デバイス機能も付いていた。これで面倒臭い鍵開けも簡単に短く終わる事が出来る。そして、金庫の扉が徐々に動き出し、やがて完全に開き終えると中には金や財宝がたくさん入っていた。
ノワール「素晴らしいっ!!」
ジャラゴン「やりたい事ってこれだったんかい!?」
ケンちゃん「お前らしいよ」
2人は呆れていたが、これだけあればしばらくは遊んで暮らせる。そんな訳で背中にスライム製掃除機を作って、中にある金と財宝を全て吸い出した。どんなに大きい金塊も埃感覚で容易く吸い出す事が出来る。やがて全て吸い、空っぽになった。
「さてと、行くか」
金庫の扉を閉め、みんなのいる甲板に行き出した。




