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サファイア、危機一髪!?

 「う・・・こ、ここはどこだ?」


ある場所でサファイアは目を覚ました。見たことがない場所で何処かも分からない。しかし分かっているのは、自分は今檻の中でベッドの上で寝ているということ。それに両手足手錠で拘束されている事実も。何とか手と足はちょっとは動けるが、手錠の鎖がベッドの足にくっついているため、まず外すことは不可能だ。


「私、一体どうなっちゃうの?」


部屋の片隅で天井から雫がポタポタと垂れている音がよく聞こえるので、この場所には自分以外誰もいないことも分かった。つまり絶対絶命。誰かが助けに来てくれたら嬉しいが、その可能性はほぼないだろう。


「これさえなければ、早く脱出しないと・・・」


しかし、体力が何故か落ちていて、力を出すことが難しかった。そんな状況でもやはり不安なことはあった。


「どうかご無事で、姫様・・・」


サファイアは一番にエリザベスのことを考えていた。しばらくするとまぶたが重たく感じ、また眠ってしまった・・・。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「おい、もう着いてるはずだろ?」


「それが、全く連絡してこないんだ」


「何だとっ!?早くしねえと作戦が狂っちまう」


その頃、ミニストの裏路地で2人の男性が話し合っていた。彼らはパッフェードの幹部。他の奴らと合流し、作戦を実行するのが彼らの仕事だ。しかし、その彼らが来ていないので苛立ち始めていた。


「あーもう!!何チンタラしてんだっ!!」


「折角ここまで来たのに・・・てあれ?来ましたよ、2人共?」


「何っ!?ったく、おっせーな。まあいい、終わったら事情を聞いてやる!!おい、遅かったじゃねぇか!!どこ道草してたんだ?!」


しかし彼らは答えるどころか、ひたすら歩いているだけだった。しかし、歩き方は何故か足を引きつっていて、猫背の他、喋ろうともしなかった。不思議がった2人は試しに様子を見ることにした。


「お、おい、大丈夫か?」


1人の男性が肩を叩いた途端、ぐらっと倒れ始めた。それはもう1人も同様で、触った途端にバタッと倒れた。


「な、これはどういうことだ?!」


「何か死んでるみたいですっ!?息をしてないですっ!?」


まるで2人は死体みたいに肌が白くなり、目も白目になっていた。体も冷えていて、まるでゾンビみたいな状態になっていた。


「こいつら死んでるのか!?でも、なんで!?」


「蘇生魔法でもこんな風にはなりません。それに死体がこんな風になるなんて、聞いた事がありません」


2人は余計混乱して、どうすることも出来なかった。


「くそっ一体何なんだっ!?」


「あー、悪いね。2人は今僕が操っているんだ」


すると奥からコツンコツンと足音を立てて、誰かがやって来た。陰で隠れていて姿は見えなかったが、声からして男性ということは分かった。2人はひどく怯えていた。


「だ、誰だ!?」


「何、怯える必要はない。僕はただの通りすがりの一般人だ」


やがて影から光が差して、姿が見えた。出て来たのは、本当にどこにでもいそうな一般人だった。武器も何も持ってなく、私服姿の少年だった。特に怖がっている様子も怯えてる様子もなく、堂々と歩いてきた。


「これは、お前がやったのか!?」


「その通り。つい細工してしまうのが悪い癖でね。た。あ、その人形はもう動くことは出来ないよ」


「こ、この化け物!!何なんだよっ!!気色悪ぃ!!」


2人はすぐさま剣を抜いて、身構えの姿勢を取った。もちろん、男性は気にせず歩き続けた。


「こ、この止まれっ!!殺されてぇのか!!」


「殺されるのは君達だよ。ただし、チャンスを与えよう。君達はパッフェードという組織に所属しているようだね。グレゴリーに関する情報とサファイア団長がどこにいるか教えてくれたら命は取らないであげる」


「ふっふざけるなっ!?そんなの教えてやるものかっ!!」


「お、おい。それよりも何でサファイア団長が捕まったことを知ってるんだ!?あれは俺達以外誰も知らないはず・・・!!」


「馬鹿っ!!余計なことを言うな!!」


(くそ、このままじゃ作戦に支障が出てしまうっ!!)


2人は体を震えながら、体勢を保っていた。もし崩してしまえば、命取りになりかねるからだ。この2人、実はサファイア騎士団のメンバーで戦闘力もそれなりにはあった。なのでどんな状況でも落ち着いて判断が出来るが、今回は状況が状況なのか思う通りに頭が働かなかった。こんな敵は初めてだからだ。


「くそっ!?お前は攻撃を仕掛けろ!!その隙に俺が・・・」


ズバッ!!トントン・・・ブッシャーッ!!!

・・・は?今何が起こった?気がついたら、隣のアイツの顔がなく、地面に転がっていた・・・?一体どう言うことだ?


「残念だな。話せばまだ命拾い出来たのに、チャンスを無駄にしたねー」


「なっ!?お前がやったのか!?いつの間に!!??」


状況が分からなくなり、頭が混乱し始めた。そしてこの出来事の振り返りをし始めた。まず、路地裏で約束した。次に仲間に会う約束だったが、肝心の仲間は既に死んでいて、その直後にさっきの変な奴が現れた。そしてさっき、もう1人の仲間が殺された。となると、次に来るのは・・・!!!


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁっー!!!!」


男は頭がおかしくなったのか、叫び始めた。持ってた剣を捨てて、ひたすら逃げようとした。逃げれば助かる、仲間に合流し知らせてやらねぇと!!大通りに出れば助かる!!そう思い、何も考えず走り続けた。あと数メートルで出られる!!やったー!!助かった!!


ドンッ!!


・・・は?今度は俺が下に落ちている?一体どうなった?いや、それよりももう考えられな・・・バタン。男は倒れた。ただ倒れた訳ではない。頭に小さな穴が貫通していて、その穴から血が流れ出ていた。死んだのだ。さっきの3人みたいに。ノワールが近寄るも息をしていなく、ただ固まって動いてなかった。


「あーあ、折角片付けようと思ったのに。いるんだろ、ツヴァイ」


「は、今ここに!!」


そうやって出て来たのはツヴァイだった。手には彼を殺したであろう、銃を手にしていた。銃にはサイレンサーをつけていたため、大きな音を立てることなく殺せたようだ。


「僕は君を咎めるつもりはないけど、最後の彼もやりたかったんだけどね」


「申し訳ありません。しかし、わざわざノワール様が手を下す必要なんてありません。この男はノワール様に刃を向けたのですから、それ相当の処置をしたまでです」


「あ、うん、なんかすまないね、いつも任せっぱなしで」


「いえ、そのために我らがおるのですから」


そう言われると、何も言い返せないなぁ。まあ、3人はやったし、たまには譲るのも悪くないか。さてと、この死体がここにあったら迷惑だから早く処理しないとな。


「じゃあ早速悪いけどこの転がってる死体、実験に使いたいから運んで来てくれない?」


普通は女性に死体を運ばせるなんて最低だと思う。しかし彼女達は僕が育てたので、どんな命令も素直に受け付けた。なんか悪い気も少しはするけど。しかし彼女はあっさりと受け入れた。・・・何か悪いね。


「じゃあ、そろそろ動こう。もうみんなは動いてはいるが、メインディッシュは最後に出る物だからね。じゃあ、後は任せた」


そう言って、全身にスライムを纏い、闇の支配者ノワールに変わった。そしてそのまま消えてしまった。その場に残ったツヴァイは1人で何やらゴソゴソしていた。


「あぁ、ノワール様!!いつまでも美しく強く素晴らしいですっ!!!いつ見ても見惚れてしまいます!!我慢するのが大変でしたわ!!このツヴァイ、必ずご期待に答えられるよう努力していく所存です!!」


彼女は1人興奮していた。腰をくねらせて頬を赤くしながら、頬に手を添えながら喜んでいた。彼女にとってノワールは特別な存在らしく、そのノワールに役に立てるのは光栄なことであるのだ。なのでツヴァイは1人で嬉しく興奮していたのだ。


「ノワール様、私達一同必ずや作戦を成功させていきます!!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


その頃、ミニスト内のある建物の中。見た目は立派な建物でまるで金持ちの住む家みたいだった。しかし、明かりはついてなく真っ暗だった。一見空き家にも見えるが、紛れもなくこの建物はパッフェードのアジトでもあった。本来なら中で色んな人達が話し合ったり、酒や料理を楽しんだりしているが今日はちょっと違う。月の明かりが窓から照らして、真っ暗な部屋に白い光が差し掛かった。中の様子が少し見えた。中には無惨に散らばった死体、壁や床に飛び散った血、そして怯えながら後退りする男性と黒い大鎌、スライム製フリントホック式銃を片手ずつ持った女性が歩いていた。男性の下には死体ばかり転がっていて、足の踏み場が悪くなっていた。しかし彼女は気にせず前へじわじわ進んでいった。


「なっ、何なんだよっ!?」


「あんた達のせいでこっちはゆっくり出来ないんだよね。あんた達が我儘やったせいなんだから、私達の我儘に付き合いなさい!!」


「ひ、ひいぃぃぃぃぃっ!!!」


そのまま銃を向けて、バンッと頭に命中させた。頭には小さな穴が空いて、そこから血を出して倒れていった。


「ふー、これで仕事終わりぃーっと!!」


彼女はスキップしながら部屋を出た。彼女の名前はフェンカ。アインスの命令でアジトの制圧に行っていたのだ。廊下に出るとそこにも死体と血がついていた。それと一緒にノワールファミリーの女性メンバーも来ていた。それともう1人。


「ガルルルッ!!もういないのですかっ!!」


「フィア、もうここはみんな死んでるわ。それもほぼあなたのおかげでね」


何と、フィアも一緒だった。フィアは戦闘狂でいつも戦場で暴れている暴れ馬、いや暴れ犬だ。


「じゃあ、もう一個の方も片付けるですっ!!」


「残念だけど、もうツヴァイとドリィ組がもう片付けたし、本拠地はアインス様達が片付けたわ」


「うう、もう終わりですか?」


フィアは残念がっていた。彼女ほど戦いが好きな人はノワールファミリーでは中々いない。フェンカも手を焼く程だった。しかしこれで終わりではなかった。


「ん?何かが来るわ!?まさかっ!!」


部屋の片隅から黒い何かが湧き上がって来たのだ。そう、カオスだった。カオスはフィア、フェンカ達に襲い掛かろうとしていた。しかしフィアとフェンカは何の問題もなく、全て蹴散らした。しかしそれでもうじゃうじゃと湧いて出て来た。


「獲物がいっぱいっ!!やっと面白くなってきたですっ!!!」


「さてと、残業いたしますか」


2人はカオスを倒す為に戦おうとしていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「く、何とか外れそうなんだが・・・」


その頃、サファイアは手錠を外すために1人戦っていた。手足をジタバタさせて手錠を壊そうとしていた。しかし流石に衰弱した女性1人の力では中々壊すことが出来なかった。


「早くしないと、ミニストが、奴らに乗っ取られてしまうっ!!」

サファイアは危機感を覚え、何とか外れようと努力していた。しばらくすると檻の扉がガシャンと開く音がした。誰かが入ってきた。白衣を纏った男性らしき人が2人、1人はベッドを動かして1人は周りを確認していた。


「だ、誰だっ!?」


「全く、全身麻酔をしたのにまだ元気そうじゃねえか」


「それでも抵抗されることはないさ。何しろ、手足を縛られてじゃ動くこともままならないからな」


「それもそうだな、ワハハハハッ!!」


2人の男性は笑いながら話していた。その後2人はある部屋に入り、ベッドを置いたまま出ていった。状況が分からないサファイアはただただ困惑するだけだった。


(自分は一体どこにいて、何が行われるのか!?)


部屋の周りを見てみると、カート、謎の機械、さらに棚には液体が入った瓶が入ってあった。この様子から見て、思い当たることがあった。


「・・・まさかっ!!」


「あら、おはよう。随分元気そうじゃない?気分はどうかしら?」


すると部屋から聞き覚えのある声がして来た。顔を見るとそこには、あの日戦ったことのある女の顔だった。


「お、お前はっ・・・ポワソンッ!!!」


「お久しぶりね、サファイアさん。言ったでしょ、近いうちにまた会おうって」


「なっ・・・!?」


「抵抗出来ないあなた、可愛いわ。切り刻むのが惜しいくらい」


しかしポワソンはカートから一本のメスを取り出した。彼女の周りには人間じゃない黒い何かもいて、黒い何かはサファイアの口を押さえた。恐らく黙らせるためだろう。そして服の腹部を破り、腹部を丸見えにした。次に体に何かが入った注射器をプスリッと刺した。


「な、何だ、これは・・・!?」


「麻酔よ。これで痛みは感じにくいけど、水で弱めたから余り効果はないかもね」


そして注射器を抜いた後、部屋の明かりでキラッと光っていたメスを彼女に向けて、体を解剖しようとした。流石のサファイアも恐怖の余り、ジタバタと抵抗したが、手足を縛られ、麻酔を打たれ、カオス共に体を押さえつけられていたため激しく動けなかった。そして。


「さてと、実験を始めましょう」


そう言って、メスが体とあと数センチにまで迫った。サファイアは涙を流しながら、死を覚悟していた。そして先端が体に触れた時、急にドカァァーンッと音がして警報器が鳴り始めた。部屋は赤いランプで赤くなり、実験どころではなかった。


「あ〜もう、折角良いところだったのにー!?一体誰?」


すると部屋にあった電話が鳴り出し、ポワソンが受話器をとった。


「一体何事なの?」


相手の方は怯えながらほそぼそと喋っていた。


『あ、あの、今、黒い服を着たってぎゃあぁぁぁぁぁーっ!!!!!』


「ちょ、ちょっと!?何があったのっ!?」


しかしポワソンが何度応答しても返事はなかった。その後、ピーピーピーと音が鳴ったので、受話器を戻したに違いなかった。明らかに何かがあったようで、不安になったポワソンはカオス共を連れて部屋を出ていった。部屋に残ったサファイアは間一髪救われたのだ。しかしピンチなのは変わらなかった。しかし誰が入って来たかは分からなかった。その正体が分かる数十分までは。

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