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お姫様と女騎士と賢者

 その夜、僕はお姫様と飲み屋に行っていた。丸い机に5人囲うように座った。料理と飲料が机に並べられ、お姫様がコップを手に取って


「それでは、今日という日にかんぱ〜い!!」


と乾杯の挨拶を仕切った。それに続き4人も乾杯と言ってコップを持ち上げた。ここの料理はどれも美味しく手が止まらなかった。家ではいつもカツカツの夕飯なのでこれはありがたい。何しろタダ飯だから。


「そういえば、まだあなたの名前を聞いてなかったわね?何ていうの?」


突然エルフの少女が僕に話しかけてきた。そういえば、みんな初対面だな。飲み屋でサラリーマンが酔っ払って、知らない人と酒を飲んでいる気分だ。このままでは変な印象をつけられてしまうな。


「僕の名前は―ノワオだ」


「ノワオ?変わった名前ね」


「僕の生まれた所はみんな名前が変わっているんだ」


そう言うと、エルフ少女は納得した。すると今度はお姫様が話しかけてきた。


「では今度は私が。えっと、名前はエリザ・・・いやエリーザよ。このパーティーの団長をやってますわ」


本当はエリザベスって言いたかったんだろう。君の素性は全て知っている。アインス、ツヴァイ、ドリィらやゴースト達から情報は貰っている。君は冒険者ではなく、この国のお姫様だってことがな。それに昼の出来事を見ると、こっそり城から抜け出しているんだな。ということはこの人達誰?


「それからそっちの僧侶はスターバ。そっちの魔法使いはテリアーロ。エルフちゃんはタリー」


みんな変わった名前だな。異世界だから。でもせっかく来たんだから仲良くはしないとな。


「あのー、一つ気になったんですけど・・・」


「?えっと、どうしました、テリアーロさん?」


突然テリアーロが僕に話しかけてきた。一体何だ?


「その、肩にあるそれは何ですか?」


そう言って肩の方に指を指した。肩、あ、ジャラゴンのことね。しかしどうやって説明しようか?この世界、文明は発達しても流石にロボットまでは知らないだろう。一方ジャラゴンは僕の方を見て、何か察したのかずっと黙っていた。悪いね、ジャラゴン。


「あ、これはたまたま質屋で見つけた道具でして。なんか面白そうだと思い買ったんです」


そう言うと彼女達は納得した様子だった。これで疑問は消えたはずだ。


「僕からも一ついいですか?みなさんはどうやって出会ったのですか?」


「私達は偶然ギルドで出会いました。それから意気投合してパーティーを作るようになりました」


「私もこの国に来てまだ半月でして。どこも雇ってくれなくて最初は困りました」


聞くとどうやらタリーはエルフの国出身のようだ。エルフの国か。いつかは行ってみたいな。


「今はまだFランクだけど、村の為にも早くA、S級になりたいんです。ちなみに私は他の国の魔法学院に通っていたのでD級までの魔法なら使えるわ」


テリアーロはミニストから遠く離れた村から来たらしい。少子化の影響で村には活気がないらしい。だから冒険者になったのだとか。


「私は元々他のパーティーに所属してました。しかし不要だったらしく、パーティーから追放されました」


追放とは異世界ではあるあるだな。しかし2ヶ月で追補は早くない?それほど使えなかったのか?まあ、知ってもいいことないし。するとエリーザは


「そういうあなたは何しにここに?」


と質問してきた。『グレゴリーについて探してます』なんて言える訳がない。ここは旅行に来たただの一般人というと、これまたみんな納得してくれた。なんか緩いな、このパーティー。


「じゃあ改めてもう一度飲みましょー!!!お姉さん、もう一杯お願いしますっ!!!」


「はーい!!」


後で騎士団長様に怒られない?そんな心配をよそにお姫様はガブガブとお酒を飲み干してしまった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「姫様にはきちんと叱るべきですっ!!」


「落ち着きなさい。娘には自由に生きてほしいだけなんだ」


「それでは姫様はこの国を背負っていけませんっ!!」


その頃、ソフトール城の謁見の間でサファイア騎士団長とトモーヤーミ国王が話し合っていた。サファイアは怒号を上げていて、国王に怒っていた。その様子を大臣、騎士団達はずっと見ていた。騎士団長を一度怒らせると手がつけられないからだ。彼女が鎮火するのを待っていたのだ。


「またやってますよ」


「このやりとり、前も見たっすよ」


「いい加減勘弁してくださいよ」


騎士達がコソコソと話すも気に止めなかった。このままではいつ収まるのやら。すると


「もうこの辺で勘弁してくだされ」


と一人の大臣が話しかけてきた。名はハマーズ大臣。髭を生やしているので、かなりの高齢だろう。しかし本人はまだそこまでいってないと言うが。


「ここは謁見の間ですよ。その態度はいかがなものかと」


「しかし大臣・・・」


「今日は休まれては。姫様は国王様が対処しますので」


「えっ!?そ、そうだな。今日は疲れただろ。今日は早くゆっくり休みなさい」


国王の一言でサファイアは何も言えなくなった。そして「申し訳ありません。失礼します」と言って外へ出た。するとそこには女性と男性の騎士達と一人の男性が立っていた。


「流石に今日はやりすぎだぞ。国王も大臣も困っていただろ」


「スッシーロ・・・」


スッシーロと名乗る男性は肩をポンと叩いて


「姫様のことを心配するのは大事だけど、ちょっと過保護すぎないか?」


「!!!私はもうあんな失態をしないと決めた!!だからっ!!」


「だからと言って、姫様のプライベートを監視するのは良くないと思うよ。それに相手が国王だからあれだけど、さっきの態度は控えた方がいいよ。みんな困ってたじゃないか。いい加減冷静になれ」


と宥めていた。実際、場の空気を乱した彼女もそこには罪悪感があった。なのでみんなに正論を言われて固まってしまった。そして


「ごめん、みんな。迷惑をかけた。どうやらいつもの業務で疲れがたまっていたようだ」


と謝った。


「そうだよ。だから明日は休んだらどうだ?後の仕事は俺がやるから」


「しかし・・・」


「はーい!!この話はここまで。女性諸君、この団長様を部屋までお送りしてくれないか?」


スッシーロに言われるがままに女性達はサファイアを連れて行ってしまった。残った騎士達もスッシーロの命令で解散した。一人残されたスッシーロだったが、誰もいないことを確認して顔をニヤけさせた。


「サファイア、君は何て美しいんだ。その姿勢も他の女とは違う。あの日見た時からずっと、君に、一目惚れ、だ。いつか俺の物にしてやる・・・」


縁起のないことを言って、その場を去った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「あの男共と女共の行方が分からないだと!?」


「ご心配なさらないで。俺達には世界中にタレコミ屋がいますから、すぐに見つかりますよ〜!!」


「イッヒヒヒヒッ〜!!」


同時刻、ある場所でドラゴとキツネ集団グレゴリーパトロールが会っていた。そのある場所とは、先日ノワールを捕まえ、ノワールファミリーが総襲撃してきた研究所だった。グレゴリーパトロールはこの辺でノワール達を探していたのだ。


「しかし、こんなだだっ広い世界にガキが何人いると思いで?探すの大変なんっす」


「それを探すのがお前達の仕事だろうがっ!?」


「ウヘヘヘヘッ!!キレてやんの!!」


「何だとっ!?」


キツネに馬鹿にされてドラゴは腹が立ってしまった。そしてハンマーで殴りつけようとした時、


「おいっやめんか、ズワールっ!?また笑い死に未遂になってしまうぞ」


「俺達、ハンマーでやられても死なないタフな体なんで・・・ヒヒヒヒ」


「お前も火に油を注がせるな、カルト」


「ウヘヘヘヘッ!!ドロル巡査部長が苦労してる〜!!」


「おい、やめろっ!!」


「ウヘヘヘヘッ!!」


「お前は何も笑うな!!ガルド・ショー!!」


「ウヘ?」


とみんなを鎮めていた。そういえば、まだグレゴリーパトロールの名前を紹介してなかったね。高級そうな白い帽子とスーツを着てるのがグレゴリーパトロール自称巡査部長"ドロル"、緑の帽子とズートスーツを着ているのが"ユーケン"、大量のタバコを差し込んだ帽子によれよれでシワだらけのシャツ、緩く結んだネクタイと黒いベストを着ているのが"ズワール"、ギラギラ光る目をして拘束服を着てるのが"クレージ"、最後に舌が剥き出しで青と白の横稿が入った半袖服、頭にプロペラハットをしているのが"ガルド・ジョー"だ。みんな剣で刺されても、銃で撃たれても、魔法攻撃されても死なないように作られた言わばトゥーンみたいなモンスターだ。ただトゥーンなだけあってか、弱点は笑いすぎると死ぬことだ。しかしキツネ共はいつも笑っているが。


「お前達に任せて本当に大丈夫なんだろうな、ドロル?」


「安心してくだせい。俺達は鼻が効くんで、奴らを探してみせましょう」


そう言ってキツネは車に乗ってどこかへ行った。


「ヘマをしなければいいがな」


ドラゴは一人呟いてた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


場所は自宅。それに自分の部屋。ノワールは家に帰って寝ていたのだ。疲れたのかグッスリと眠ってしまった。するとどこからか声がしてきた。


「おいっ、起きろっ!!」


「誰だよ?」


「忘れたのかっ!?僕は最強の賢者だよ!!」


「・・・うん、いたな。こんな奴・・・じゃ、おやすみ」


「おやすみ・・・っておい、寝るなー!?」


僕の眠りを妨げたのは昔、魔力を与えた自称賢者だ。最近会ってなかったからすっかり忘れてた。で今頃何しに来たん?


「あー、最近グレゴリーの壊滅をやっているんだって?そんな君に称して我の力と知恵を与えてやろうと思ってね」


「あー、間に合ってるんで」


「えっ!?そんな新聞屋みたいなノリで断ったっ!?」


「うちの仲間、結構優秀なんでお前いらないかも」


「そんな酷いこと言わないでよ〜!!我は賢者だよっ!?」


「賢者っぽいこと、会って以来したことないのに」


「きびし〜!!」


賢者はとてもダメージを受けていた。よほどショックなんだろう。しかし最強の賢者が仲間になってくれるという話を捨てるのは勿体無いかも。でも精神だけの奴をどうやって仲間にするんだ?しばらく考え込んだ。すると手元にスマホがあった。スマホか・・・そういえば、前学校にスマホを忘れてきたんだっけ。この時、スマホに魂が宿っていればと思った。宿る・・・うん、待てよ。これは使えるかも!そして賢者に


「まあ、魔力をくれたお礼だから仲間にしてあげるよ」


と言うと賢者は


「えっ?!ホントにっ!?やったぁー!!これで精神の世界から出られる!!」


と喜んでいた。そんなに嬉しかったのか?それに精神の世界から出られるってそれが本音だろっ!そこである提案をしてみた。


「君をここから出す代わりに精神だけの君に体を作ってあげよう」


「何と!!まあ、ここから出ても体がないとな。一体どうするんだ?」


「もちろん、これに!!」


そう言って賢者を捕まえて、スマホと融合させた。ぎゃあああっ!!と叫んでいる賢者を無視して実験を続けた。そして実験が終わって、スマホがカタンッと落ちた。そのスマホを拾い上げ、 確認してみた。見た所、時に変わった様子はないけど。試しに電源を入れてみるとそこから


「ひー、何か頭がクラクラするー。てあれ、何か君の顔が近くにあるんですけど?」


と画面から声がした。よく見ると目や口が画面に映っているんだけど?しかも何か感触もあるし。これって失敗?


「あのー、そんなに見られるとその、恥ずかしい、というか今僕どうなっていますか?」


「スマホの付喪神になってる・・・?」


「すまほ?一体何を言って?」


「まあこれで見て」


そう言って鏡を取り出した。そこに映った自身の体を見て


「なっ何じゃこりゃぁぁぁぁーっ!!!」


と発狂した。まあそうなるか。成功って捉えて大丈夫かな?


「いやこれ、成功も失敗もないじゃないですか!?何してくれたんだっ!?」


「そうカッカしないでよ。体は一応与えたし」


「これは酷い!!もっと人間らしい体を作ってよ!?」


「丁度いい物があったから」


「最悪だぁー!!」


賢者は酷く落ち込んでしまった。まあやってしまったものはしょうがない。これからもよろしくかな?


「じゃあまたよろしくね」


「一生こんな体とは・・・不幸だっー!!」

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