ゼロから始める仲間作り
「あれから何年たったかなぁ~」
僕はスライムの姿で椅子に座りながら考えていた。あの誓いの日から数年たった。なんとかスライムの体にも少しずつ慣れてきた。仲間もだいぶ作った。そして、ここ何もなかったキゲンデに大きな城が出来たのだ。とても大きい城で、黒くてかっこいい!だからこの城の名前は【暗黒の魔城】と呼んでいる。もう一度言おう、かっこいい。結界が張ってあるから、安心して庭で遊べるし、地上だけでなく地下にも色々設備があるから、みんな楽しめるし。あとはなんていったって食器や家具、この城自体が全て生きているということだろう!どこぞの映画やどこぞの海賊みたいに、みんな動いているのだった。僕が座っている椅子は例外だけど。あの日、拠点を作っている時に、もし命ないものに命を宿したらどうなるんだろうと考え、実験を行った。生えている草と山で掘った鉱石を混ぜ合わせ、椅子を作った。試しにその椅子に魂を入れ込んでみた。すると、椅子は動いて、まるで生まれたばかりにような子馬みたいに走ったのだ。これはいけると思ったのか、ほかにもいろんなものを作っては魂を入れ込んで、どんどんやっていくうちに最終的には城にまで魂をいれた。例えばカートが来ては、ポットがコップにお茶を入れて、そのコップが僕の所に行く。すごいな。世の中ってのは不思議なものだ!この世界には、僕が知らないものがまだまだたくさんあるに違いない。そう思うとわくわくしてきた。すると、
「何かいいことでもあったのか?」
と、上から声がした。その声の正体は、以前僕が最初に出会って、僕と友情の契りをかわしたジャドラだったのだ。以前魂だけの状態だったが、その姿のままでは不憫だと思い、新しい体を僕が作った。その姿は、まるでドラゴンのおもちゃみたいだった。素材は、僕が独自に作った超合金、それは【ChromeHyperOrl合金】 略してCHO合金だ!なんかイカす!これは山の中で鉱物を摂取している時に偶然生まれた新しい合金だ!鉄はもちろん、ダイヤモンドやあのオリハルコンやアダマントよりも硬い、すなわち世界一硬い鉱石だ!そんなCHO合金を100%使っているから、どんな攻撃でも壊れないし、あと軽いというのも特徴だな。重いと色々不便だから。そして、ジャドラの名前だが、見た目と全く違ってきたので、新しく【ジャラゴン】と名付けてやった。以外にも、本人は気に入ったらしい。そんなジャラゴンは僕の頭に乗って
「今セブンブレイ王国とファミーマ帝国は戦争中だから今は下手に動かない方がいいよ」
と警告した。いくら山に囲われているとはいえ、いつ両国に攻められてもおかしくはない。今は仲間を多く集め、戦力を高めることに集中したい、それは僕も思った。すると左から赤い鎧を着た者が現れた。名前は【レッドカオスファザー】。僕が初めて作った仲間の一人だ。名前が長いのか、みんな”ファザー”って呼んでいる。僕も呼んでいるけど。見た目は赤くごっつい鎧を着て、片手には赤い剣を収納した赤い盾を持っている。実は、人間ではなくモンスターなのだ。昔、創造術と死亡術の力で人間を復元しようとしたけれど、なかなか思うように出来なかった。代わりにモンスターという形で生まれ変わったが、なぜモンスターは出来て人間は出来ないのか、今だに分からない。しかし、モンスターはそれはそれで面白いと思ったので、モンスターメインで仲間を作った。それは僕が描いた絵に魂を入れて、創造術の力で復元させる。復元したあとは必ず僕と契約をする決まりだ。その内容は
「契約。君は僕の命令に動き、僕に忠誠を誓え。身勝手に殺すのもダメ。仲間同士の殺し合いもダメ。もし、ルールを破ったら、魂は消え、永遠に復活することは出来ない。いいね?」
これで終わり。よく長い文章をいえるな、僕は。これを否定したらどうなるのかなと考えてはいたけど、不思議なことに誰もいいえとは言っていない。再び復活したから喜んでいるのかなとか、もし拒否ったら魂が消えるんじゃないかなとか思った。まあ、ざっくりいえば、モンスターの集団だ。ファザーは
「今が攻め時です!王国と帝国に我らの存在と力を見せつけましょう!」
といった。僕は考えた。たしかに今攻めたら、僕達の存在が世間に知られてしまう。だけど、今やると逆に世界の脅威になってしまうなぁ、と思ったから
「今はまだいい」
と言い返した。すると、右から白い鎧を着た者が現れた。名前は【ホワイトコスモマザー】。ファザー同様、最初に作った仲間だ。そして、ファザーと同じく僕やみんな”マザー”と呼んでいる。片手には魔法石を埋め込んだ白い杖を持っている。
マザーは
「私も反対です。今攻めても、世界の脅威にしかなりえないわ!」
なんと、マザーは僕のが思っていたことを全部喋ってくれたのだ。エスパーかな?それに
「この子にはまだ戦力不足よ!きちんと力や魔法を教えてからでも遅くはないわ」
と言って、そのままファザーと口論になった。そう、僕はこの二人に剣の技術や魔法を教わっている。おかしな話だろ?復活した者が復活させた本人にものを教えるなんて。まあ、どのみちこの世界で生きていくにはそういう技術も必要だし納得はした。ただまあ、この二人はとにかく厳しい。ファザーに至っては、朝から夜までずっと剣を交えるし、マザーに至っては勉強だからと言って、魔法や政治、一般知識に医学を教えたり、挙句の果てには魔法を使って実戦練習をしたりして。もう、くったくたになって、ノイローゼになるんじゃないかと思った。ファザーとマザーが言い争っている所にタキシードを着た男が訪れた。きちっとした黒スーツを着て、しっぽが生えて、天蓋風の笠を被っている、間違いなく人ではない。名前は【エリュシオン】。僕が作ったモンスターだ。なんでも頭が働き、外交の政治や戦略など、色々と頭が回る、まさに頭脳王だ。僕より頭がいいから、僕、いらなくない・・・?何回そう思ったか。空しいな。まあでも、僕でもわかりやすく教えてくれるからいいけど。喧嘩する二人をよそに
「ノワール様、今はまだ大丈夫だと思います。部下の偵察隊が確認したところ、彼らはここに来る可能性はありません。いまもラポップ平原で遊んでいます。なにしろこのキゲンデは一番近寄りがたい場所ですし、わざわざこちらを攻めるメリットもありません。ここを攻めても何もないのですから、そういうことを考える愚か者はあそこにはいませんよ。」
うん、分かりやすく、なんか悔しい。僕もこういう者から学んでみたかったなぁ。なんか納得するなぁ。まあ、それなら心配することもないか。胸をなでおろした。
「ただ、問題なのは城塞都市《ミニスト》の方でしょう。」
「うん?」(どゆことっ⁉)
「はい、ミニストは以前からこのキゲンデの調査を行っています。幸いこの城は、ノワール様の結界で張られておられるので問題はありません。しかし、もし我らの中の誰かが相手に見つかってしまった場合、こちらが不利になります。あの都市には《サンクスアリ王国》という大きい国がバックにあります。ほかにも色々な国がバックにありますので、こちらの戦力の数千、数万倍はあるともいます。今は大きな動きはないのですが、今後は警戒しなくてはなりません。」
確かに納得のいく話だ。ミニストの情報はまだそんなに持っていなく、戦力がどのくらいなのか全く分からない。それにサンクスアリ王国だって⁉初めて聞く名前だ。そうなると余計不安になってくる。このままミニストに攻められたら間違いなくやられるだろう。そうなると、自分の復讐と名を知れることが出来なくなってしまう。なんとかそこは避けたい。しかし、そんなことを言われても打つ手がない。今は戦力増やしのことだけを考えよう。
「さすがだなエリュシオン。よく調べて来たな。ごくろうだったな。」
とにかく今は褒めよう。
「何をおっしゃられておるのですか。ノワール様は全て知っておられたでしょうに。」
えっ⁈何言ってるんだ、こいつ?僕、本当に何も知らなかったけど。むしろ、ほかの人の話を聞いて納得すれば良かったんだけど。というか、何も考えていないし。そう思う気持ちとは別にほかのものはなぜか納得していた。まあ、とりあえず知ってたふりをしよう、そう思った。すると、今度は黒い鎧を着た者と白い騎士鎧を着た者が現れた。名前は【イザナギ】と【モルドレッド】。イザナギは全身CHO合金の鎧や仮面、兜を被っていて、モルドレッドもCHO合金の鎧を着て、兜はドラゴンの形をしていて翼もある。もちろん、僕が作ったモンスターだ。
この二人は仲が悪く、よく喧嘩をするらしい。ただ、この二人はうちの中では武術に長けており、イザナギはスサノオ軍の将軍、モルドレッドはブリタニア団の団長だ。イザナギの戦闘スタイルは足元が兜と鎧を着た馬に変形し、愛剣『伊都之尾羽張』や十種神宝の一つ『八握剣』の二刀流を用いて戦う。モルドレッドの戦闘スタイルは最初は愛剣『アーサー・オブ・エクスカリバー』を使って戦うが、時折鎧を脱ぐ全開放をする。この時はスリムになり、素早さが高くなり、鎧からのびる数本の帯刃で相手をかく乱しながら戦う。だからか、二人はどっちが強いか競っているんだと思っている。作ったぼくがいうのもあれだけど。この二人が来るなんて珍しいなと思いつつ「何のようだ」と問いかけた。すると、イザナギから
「はい、発言をお許しください。実は私の軍の一人が奇妙なものを見つけました。」
んっ、なんだそれは!ますます気になった。今度はモルドレッドが
「はい、私の団員の一人が調べたところ、そこは別の世界に通じる穴があったそうです。なんでも、見た目は黒くもやもやしたもので壁みたいに硬かったのですが、中からは別の世界が見えたとのことです。」
んんっ!!とても気になった!!もしかすると、新しい仲間や武器を作ることが出来るかもしれない。ましてや、友達も作れるかも、と期待していた。なので
「面白そうだ。今度は我が同行しよう。お前達、案内を頼む。」
というと二人はははっ!!といって軍や団の者を呼び寄せた。僕も出動準備に取り掛かった。人間体形になると白い髪が伸びて、体にはスライムがまとわりついた。そして服が完成した。そして、手から黒く長い剣を取り出して、それを鞘に収め、背中にかけた。服装は透き通った黒色だが、どこかぼろい部分もある。実はこれもノワールの発明品だ。自分の体を何かに使えないかと考えている時に、もっと便利に使えたらと思った瞬間閃いた。なら、このスライムを使って服や武器を作ればいいと。案の定、上手くできた。コートをばさつかせると、みんなの視線が僕に向いた。ファザーもマザーも喧嘩をやめ、エリュシオンも僕を見た。
「我も行く!」
とジャラゴンが僕の肩に乗ってきた。たぶん、あっちの世界が楽しすぎて当分帰ってこれないと思うし、みんな心配するからピシッと言って
「しばらく私は仲間を集めに行ってくる。大丈夫だ。必ず戻ってくるから心配しなくていい。それまでファザー、マザー、アズモデウズの言うことに従え。お前達、行ってくる。」
そういってみんなに見送られながら、イザナギとモルドレッドとその配下と一緒にその穴に行こうとした。これがまた新たな旅の幕開けになるとは、最初思っても見なかった・・・