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ノワールVSヴィーラ その4

「ぐわぁー!!」


「このぉー」


琥珀とブロンガスが押されていた。最初は優勢だったものの次第に流れが反転していた。どんなに攻撃や反撃をしても、相手は自分達の遥か彼方を見ているかのようにやり返してくる。もはやこのままでは危ない状況だ。


「どうした、もう終わりか?」


「幹部って言うから期待してたけど、期待外れでしたね」


その頃、リュウ玄とミズオは余裕の笑みをしていた。それと同時にブラン達も駆けつけてきた。更に追い討ちをかけるように青紫、ブルトシュバイン、そしてグレマーズも飛ばされてブロンガス達に直撃した。


「な、貴様らもか!?」


「ガン・・・ガン・・・ゴメン・・・ガンガン」


「私の想像を遥かに超えていた。予言にはなかったのに」


どうやらみんなやられたらしい。証拠にみんなボロボロだった。しかも深手を負わされた者や気絶してる者もいた。もう結果は見えていた。すると後ろからある人物が歩いてきた。禍々しいオーラを放っていて、雰囲気で危険人物だと分かってしまうぐらいだ。やがて仲間の所を素通りして、ブロンガス達の前に立った。ブロンガスは隙を見て剣を抜こうとするも相手に隙がなく、なかなか動けなかった。


「何なんだ、貴様らは!?」


ブロンガスが震えながらそう言うとアインスが


「我らはノワールファミリー。闇を愛し、闇を支配する者。そして貴方達を倒す者」


と答えた。それに続き


「我の名はノワール。闇の支配者であり、通りすがりのスライムだ。悪役は2つもいらない、我々で十分だ」


と答えた。さっき歩いてきた者はノワールだったのだ。ノワールはブロンガス達をスライムで拘束して身動きを封じた。このまま殺してもいいが、それでは面白くない。何か情報を話してくれたら殺そう。


「グレゴリーの内部情報を全て話せ。そうすれば楽に殺してやる」


しかしブロンガスは話そうとはしなかった。それは他の奴らも同じで話そうとはしなかった。死を覚悟しながらも口を滑らせなかった。



「誰が貴様なんかに話すものかっ!!」


ブロンガスは力強く反発した。折角チャンスを与えたのにそれを無下にするとは、哀れな奴らだな。しかしかと言って、それが奴らの答えなのだからあれこれ言う必要もない。仕方がないから絶望の中で死ね。


「残念だけどさよなら」


そう言って剣を抜こうとしたその時、空から何かが降ってくるのを感じた。しかもものすごい勢いでこっちに落ちてくる。やがて黒い何かが後数十メートルまで近づいた所でみんなをスライムで捕まえて安全な場所へ避難させた。一方ブロンガス達は動けなかったので巻き添いを喰らってしまった。やがて土煙が消えてシルエットが見えた。その正体は・・・まるでジャングル大帝の主人公が大人になったような姿のライオンがいた。一つ違うとするなら、立髪や体は毛皮ではなく鉄みたいな物で出来てるってことだろう。白い息を吹いてグルルルとうねり声をしていて、こっちを睨んでいた。そして後ろに振り返ってブロンガス達を見て


「まさか、こんな奴らにやられるとは情けない奴らだな。我々のメンツが丸潰れではないかっ!!」


と叱責した。迫力ある発言に琥珀はビビって震え固まってしまった。それよりもあまりの重圧をすごく感じているので、誰も喋ろうとはしなかった。相手はかなり戦闘力も位も奴らより上だろう。その後、今度はこっちを睨んだ。周りを見渡して、しばらく黙ってしまった。一体何をする気なんだ!?その時、今度は下からものすごい振動が伝わってきた。段々とこっちに向かって来てるような気がしたのでまたみんなを掴んで上へ逃げた。すると案の定、地面からまた大きい何かが浮かび上がってきた。


「諸君、お待たせしたのであ〜る」


と叫んで出て来たのは、大きな武者鎧を着た大男だった。腕にデカいハサミもあり、背中に刀を背負っていて、彼もヴィーラとは違う威厳を感じた。そして背中から刀を抜き出すと、さらに禍々しい雰囲気を漂わせていた。いや、そもそもが禍々しい。それにあの刀もただの刀ではない。普通の魔剣と桁違いの魔力量だ。恐らく威力も相当あるはずだ。


「迷惑だ、バカ蟹!!その巨体邪魔なんだよっ!!」


「それはすまなかったのであ〜る」


「その喋り方もやめろ!!」


「巨体といえば、そなたも同じであ〜るがな」


デカい生き物同士言い争っていた。何か面白いな。生き物同士が言い争うのは人間の言い争いより面白いな。


「ちょっと言い争いしないでくださいよ。私達のイメージ型落ちじゃないですか!?ほら、ここはこうキリッとしてください」


今度はライオンの背中から眼鏡女性が現れた。それと同時に顔がそっくりな双子の女子、男性と女性も現れた。人間もいるんだな。


「あのー、そろそろいいですか?」


男性がみんなに呟いていた。見た所、彼は僕と同じ境遇だと思う、勘だけど。きっと目立ってないけど、実は最強って感じだな。


「ねえ、彼らはあんたの知り合いって訳でもなさそうだけど誰か知ってる?」


とアスールが小声で細々と言って来たけど僕も知らなかった。きっとグレゴリーの仲間に違いない。その証拠にブロンガス達を黒い緞帳(ブラックカーテン)で運んだり、グレマーズの傷を治している。恐らく十二神将(ヴィーラ)を救出するために派遣されたようだ。それにしてもグレゴリーってユーモアのある奴が多いな。すると物陰からヒョコッと現れた者がいた。オリヴィアだ。今オリヴィアは寝てるユーフェミアと一緒に安全圏に隠れていた。しばらく身を潜めて隠れていたのだが、急な振動がしたので見てみると何か面白いことになってたのでこっそり見ていたのだ。そして今、オリヴィアがスマホを取り出してこの状況をカメラに収めようとしてカシャっと撮った。しかしそれと同時にフラッシュが出たので、双子の女子が気づいてしまった。


「あれ?あそこに人間がいるよ」


「あ、ほんとだ。どうしちゃおっか?」


「う〜ん、あっこんなのはどう?」


「え、何々?」


双子の女子が二人きりでコソコソと話していた。そしてライオンに提案した。


「ねえねえ、こんなのはどう?」


「何だと?」


「面白いこと思いついちゃった♪♪」


「ふん、勝手にしろ」


「「わーい♪♪じゃあやっちゃおっか♪♪」」


二人は互いの顔を見つめてハイタッチをした。そして「「いってらっしゃい」」と言って黒いキラキラとした物をばら撒いた。やがて地面にある程度ばら撒くと黒い液体が湧き出て、次第に体を作っていた。これはカオスだ。まさか、カオスはこの双子が作っていたのか!?これは予想外だ。カオスをこんなに簡単に作るとは、驚いた。やがてカオスがある程度増えた所で双子女子が何やらボソボソと唱えていた。するとカオス達が突然破裂し始めて血のような黒い液体が流れていた。すると黒い液体が一つの所に集まってやがて大きな血の水溜りになっていくと、そこからぐるぐると回って掘り出した温泉のように噴き出した。するとそこから出て来たのは全体は緑色で大きな手がある頭部と大きな口がある下部が合体した不思議な形のモンスターが生まれた。そのモンスターは手を伸ばしてオリヴィアとユーフェミアを掴んで大きな口に放り込んだ。


「アレ〜!?ナンカツカマッタネ?」


「何で出ちゃったの!?隠れるようにしたんだよね!?」


「そうだよ。何で出て来たんだろう」


恐らく興味本意で出て来たんだろう。何やってんだか。でもこうなって死んでしまったら家族に申し訳ないな。するとモンスターは辺りを歩き始め周囲の物を壊していった。


「このカオスは"グラトニーパラサイト"。あの口で食べられたら危ないよ〜♪♪」


「危険だからみんな逃げるように〜♪」


つまりこのままではみんなアイツに喰われてしまう。すると、ライオンとカニが黒い緞帳(ブラックカーテン)を出してみんなを逃した。


「今は戦わないでおく。目的も果たせたしな」


「諸君、ご機嫌であ〜る。また会おうであ〜る」


「それじゃあ、また会いましょう」


「「バイバ〜イ♪♪」」


そう言ってみんな帰ってしまった。残された僕達はあのカオスをどうやって倒すか考えていた。しかし余り考える時間もないので、戦いながら考えることにした。しかし余りにもデカい体に中々攻撃が効かずにその太った脂肪で攻撃が届かなかった。


「何でこんな面倒臭い敵を作っちゃったのよ!?何か突っついても脂肪で跳ね返されるんだけど」


「こんだけ食べていればそれは脂肪がつきますよ。実際私の矢も全て跳ね返されてます」


アスールとツヴァイが槍と弓矢で攻撃するも全部ポヨンと跳ね返された。フィアは無我夢中で鉤爪で攻撃しても全然効いてないカオスに激怒していた。


「こいつ全然効いてないです。腹が立ってきましたです」


「馬鹿犬はいつまでも馬鹿犬だな。下じゃなくて上を攻撃したらいいのに」


ゼクスとフィアが言い争っていても、ゼクスは上部の方へ巨大チャクラムを投げて攻撃していた。攻撃は通るものの巨大な腕で攻撃を防いでいた。


「やはりあの腕も厄介ですわ。腕を切り落としてあげましょう」


「私も手伝うわ」


ジーナとアマリージョは腕を切り落とす攻撃を仕掛けた。しかし腕は意外にも硬く、鋭い刃でやっても傷すらつかなかった。するとグラトニーパラサイトは腕を大きく回してジーナとアマリージョの腹に打ちつけた。


「きゃぁぁぁっ!?」


「ぐわぁぁぁっ!?」


二人は飛ばされて地面に叩きつけられた。幸いCHO合金製のスーツのおかげで最小限の攻撃で済んだが、それでもジンジンとする痛みが伝わってきた。


「大丈夫?」


「私は大丈夫ですわ」


「そう、ならまだ戦えるわね?」


「もちろんですわ」


二人が攻撃を仕掛けると下の口から黒いヘドロを出して来た。それに気づいたのか、それぞれ横へ逃げていった。ヘドロはジュウ〜と音を鳴らして溶け始めた。


「まさか、食った物を吐き出すとは。しかも溶解液だとは」


「いくらお前でもこれは喰らいたくないだろ?」


「体を溶かすにはまだ抗体を持ってないからな」


リュウ玄とグルドはヘドロを交わしつつ攻撃をしていた。ヴィオラとヤミナ、アリス、アークはその頃、体の動きを封じていた。何十メートルもある体を封じるのは簡単なことではなかったが、それでも頑張ってロープや鞭、植物の蔓で体をグルグルと巻いていた。


「ねえ、あとどのくらい頑張れる?」


「悪い知らせです。さっきの戦いで半分以上魔力を使ってしまいました」


「ヤミナちゃん、そんなに使ったら駄目じゃない」


「説教はいいから、それよりこっちを手伝って!!もう私も体力、魔力共に限界!!」


ヴィオレは苦しい状況になっていた。それは他の二人も同じでどんなに動きを封じても魔力がどんどん消費され、次第にミシミシと縄がちぎっていた。そして縄は全部ちぎられ、グラトニーパラサイトは腕をまた振りかざして大きく回した。その時に生じる風の圧はかなり激しいもので辺りの物を吹き飛ばした。それと同時にノワール以外みんな吹き飛ばされた。あまりにも大きすぎる体になす術なくみんなやられていった。このままでは中に入ってる二人を救出するのは困難だ。口に入っても消化される運命にもなるし。もはや絶対絶滅だ。すると口の中から声が聞こえてきた。その声にハッと我に振り返り見てみると、何と


「助ケテネ〜!!」


とオリヴィアが手を振っていた。もう一方の手にはユーフェミアをかかえていた。どうやら飲み込まれた後、食道の入り口付近に捕まって飲み込まれるのを防いだのだ。そのままユーフェミアを引っ張って口の入り口までやってきたようだ。


「結構苦労シタネ」


口の間から手を伸ばして、手招きをしている。幸い相手は気づいていなかった。その隙にノワールは口に駆け寄り、唇を掴んで二人を口から出した。そしてそのままジャラゴンに物陰の方へ運ばせた。後は残ったカオスを倒すかだけになった。しかし見ての通り、奴の体には外側からの攻撃は一切効いてない。だとすると内側の攻撃は効果があるかもしれない。善は急げ、口の中へ突っ込んだ。すると流石に気づいたのか、カオスは腕を伸ばして僕の体を掴んだ。そして下の口の方へ持って行って、そのまま口の中へ入って飲み込んだ。


「なっ!?」


みんなノワールが食べられたことに驚きを隠せなかった。まさか自分から突っ込んで食べられるとは誰も思わなかった。一体何をする気なのか、誰も知る由もなかった。一方カオスの方はというと満足する物を食べたのか、暴れるのをやめて上機嫌になっていた。そしてどこかへ行こうとした時、グラトニーパラサイトの様子に変化が起こった。何やらお腹辺りに何かが起こっているらしい。そのせいか突然苦しみ始めた。口を腕で抑えていて、そのまま体を前後に動かしていた。訳が分からなくなったブランやアインス達はただただ見ていた。すると脳内に謎の信号が来て『逃げろ』と聞こえて来た。その言葉通り、アインスはみんなを連れて逃げ出した。すると丁度カオスの体が光り始めて、空には魔法陣みたいな物が出現し始めた。そして爆発した。爆発はカオス全体を包み込むように空へと黒い光を放って、大気と大地が震えていた。カオスは蒸発するように消えていった。しかし光はどんどん周囲を破壊していって、やがて施設全体を埋め尽くすぐらいまで広がった。黒い光は満月まで届くぐらいまで登っていったようだった。そして全てが終わった頃には、もうそこには木も建物もなく、ただ大きなクレーターが出来ただけだった。彼方の方は白い光が出て来た。どうやら太陽が登ってきたようだ。時刻は午前6時。最初にこの世界に来たのが3時ぐらいだとして計3時間の戦いになった。しかしたかが3時間か、されど3時間か、この状況を見ればどれだけすさまじかったか分かる。やがて遠くから声が聞こえてきた。アインス達だった。みんなこの景色を見て絶句した。まさか、彼があんな力を持っているなど誰も予想してなかった。そんな中、とりあえず彼本人を探すことにした。しかし彼を探すも一向に見つからなかった。まさかあの爆発と共にきえてしまったのか、そう考えていると空から何かが振って来て、アスールの頭の方へ落ちて来た。


「うわっ!?なんなのこれっ!?」


手に取ってみると、それは黒いネバネバしたものだった。触った感じ、小学校で作ったスライムに似ていた。しばらくスライムを弄っていると


「何かくすぐったいな」


と聞き覚えのある声がした。その声にみんな気づき、アスールの方へみんな集まった。すると突然スライムから手が出て来て、自立で伸びていった。そして口と白目までもが出てきた。恐る恐る触ってみると


「みんな無事だね。僕は魔力を使い果たして今スライム状になってるんだ。僕、ノワールだよ」


と話してきた。その言葉を聞いて、アインス達一同みんな絶叫してしまった。

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