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ノワールVSヴィーラ その3

 その頃、同じ場所でアスール、ジーナ、アハト、グルド、ユキナ、コロロは青紫と戦っていた。互いに攻防戦をしていて、一歩も引けない状態だった。いくら数がこっちが多いとはいえ、実力と強さは別格だった。


「何だか訳が分からなくなってきてるんですけど・・・!!」


「落ち着いてください。私達は蛇女と戦っているだけです」


「このままじゃ、精神がやられてしまいそう」


アスールは困惑しながらも、ツァルバの説得で何とか自我を保っていた。しかしアスールの言う通り、みんな噛まれないように注意して攻撃をかわしている。もし噛まれたら一巻の終わりだ。今までとは違う敵にアスールはただただ逃げ切るしかなかった。


「あれ?鬼ごっこはまだまだ続ける気かい?そろそろ終わらせないと僕の機嫌が損ねるよ?」


「う、うるさい!!こちとら変な敵で精一杯なのよ!あなたのメンツなんて関係ないっ!!」


アスールは怒り心頭だった。よほどストレスが溜まっているんだろう。蛇に対して蹴りや青の三叉槍(ブルー・トリシューラ)で荒っぽい攻撃をしていた。


「敵の挑発に乗るとは、やはり脳筋ゴリラだね」


「今何て言ったっ!?」


「もう一回言うよ、脳筋ゴリラ」


「ふっ、ふざけるなぁー!!」


頭にきたのか、猪突猛進に青紫の方へ走っていった。


「あれれ〜?一体どうしちゃったの?やけになっちゃったの?」


しかし青紫の挑発も聞いてないぐらい、真っ直ぐ全速力で走っていった。あと数センチに近づいた時、後ろから何かにガブって噛まれてしまった。正体は毒蛇で地面から出てきた。足と腕、体中に噛まれてもはや瀕死の状態になってしまった。その様子を青紫は


「あはは!!まじで馬鹿だ!!本当に噛まれちゃった!!何か弁慶みたいに死んじゃったんですけど!!」


と罵った。アスールは青紫と数センチ離れた状態で立ったまま固まってしまった。これを見た仲間はただただ驚愕し、困惑した。そしてリタイアかと思われたその時、アスールが青紫を殴ってきたのだ。


「この、蛇娘があぁぁぁっ!!!」


「なんでぇぇぇ~っ!!」


そのまま青紫はされるがままに後ろへ飛ばされてしまった。その様子を見た他のみんなも開いた口が塞がらなかった。


「いや何でっ!?」


「う~ん、何か分かんないんだけど、昔蛇に噛まれたことがあるんだけどその時は気合で直したから、今回も同じように気合で直した?」


常識外れの回答にみんな固まってしまった。毒を気合で直す人が存在するなんて・・・。すると青紫が遅れてやってきた。


「おのれ~、蛇がだめならこれならどう?」


そう言って手から小さな蛇状のものを出して、アスールの口の中へ入って行った。アスールはそのままごくりっと吞んでしまった。


「な、何を吞ませたの!?」


アスールはすぐさま吐き出そうとしたが、もう食道を通って胃に入ったものを取り出すのは不可能だった。すると青紫は


「あれ?この蛇はちょっと噛むだけで良かったのに。そのまま呑みこむなんて馬鹿だね」


とアスールを小馬鹿にした。当然、アスールは腹を立ててすぐさま殴りかかろうとした。すると青紫の目の前で拳が止まってしまい、そして体も硬直してしまった。アスール本人は訳が分からない状況に困惑していた。


「な、何で体が動かないの!?」


「それはね、僕の能力なんだよ。僕の能力”人を操作する(セルフコントロール)”はその名の通り、人を操る能力だよ。僕の作った蛇を噛めば、どんな者も操ることが出来るし、僕の命令には絶対服従なんだよ。だから、さっさとあいつらを潰してきてよ」


そう言ってグルド達の方に指を指すと、アスールは青の三叉槍(ブルートリシューラ)を手にして、襲い掛かろうとした。それでこそ抵抗はしていたが、徐々に少しずつ前へ進んで行ってることが分かる。何とかしないと、彼女の言うがままに彼らを降ろしてしまう。するとユキナがアスールの足元に冷気を送って、彼女の足を凍らせた。


「これなら、歩くことも出来ないわ!!」


「なるほど、こうやって足止めをすればいいんだな」


「ジーナ様、アハト様、青紫の方をお願いします。彼女は私達が対処します」


「「任せて!!」」


ユキナにそう言われて、二人は青紫の方へ走って行った。


「今度は君達が相手になってくれるの?なら暇つぶし相手になってよ!」


そう言って無数の小さな蛇と大きな蛇を出してきた。


「あの蛇に噛まれないよう気をつけてくんなまし」


「私達はそれほど愚かではありませんでしょ!」


「そうですわ!!」


二人は蛇をかわしつつ、青紫に近づいた。ジーナはスライム製ヨーヨー、アハトはスライム製カトラスで切り刻もうとすると青紫も刀を構えて防ぎ返した。ヨーヨーで攻撃するも蛇によって阻害された。青紫の剣筋はなかなかの者で体に傷をつけることすら難しく、後ろへ回っても蛇のせいでなかなか攻撃が届かなく、もはや360°死角が無かった。


「僕に不意打ちしようと思っているでしょ。残念だけど、僕は全体に目があるから君達の攻撃は全て筒抜けなんだよ」


彼女の言うことは正論だ。このままでは埒が明かない。


その頃、アスールは足元の氷を青の三叉槍(ブルートリシューラ)で壊していた。続けて凍らせるも、どんどん壊していくためユキナの魔力が尽き掛けようとしていた。今度はグルドも自分の血でぐるぐる巻きにするも、アスールの歩く足は止まらずグルドも血の使いすぎで貧血状態になり、血の縄がどんどん液体に戻ってしまった。アスールも抵抗しようと努力しているが、青紫の魔力になすすべなく苦しんでいた。


「く、このままじゃ私・・・はっ、そうだ!!」


アスールは何かを閃いたようで、手に持っていた青の三叉槍(ブルートリシューラ)をそのまま自分の足に突き刺した。これで歩くことも武器を振るうことも出来なくなった。アスールはこのわずかな時間で手がまだ動けることに気付いた。少しは震えていたが、それでも自力で動かせれたので自分の死に刺すという大胆かつ強引なことをしたのだ。全身に毒は回りつつも腕には多く毒が入っていなかったのだ。この様子を見たみんなは驚き、特に青紫はとても動揺していた。


「馬鹿な・・・僕の毒が効いてるはずなのに・・・どうしてそこまでやるんだっ!?」


青紫がそう問いかけるとアスールは


「何でって・・・私はね、平和主義者なのよ。こんなくだらない所へ行くなんて・・・本当は行きたくなかったわ・・・。だけどね・・・人には、仁義ってものがあるのよ・・・。それは・・・誰一人死なせないことよ!!!」


と痛みで息切れしながらも青紫に圧倒するぐらいの迫力で話した。すると足元から毒が消えていることに気が付いた。恐らくあの毒は血管の血液の中に入る形で、槍を刺して血がドロドロと流れている時に毒も一緒に流されたに違いない。その隙に青の三叉槍(ブルートリシューラ)を抜いて、血が出ているにも関わらず青紫の所へ走って行った。青紫は驚いて蛇を出した。しかしその蛇達もアスールの攻撃で首を切り落とした。


「な、何でまだ動けるんだよ!?」


と問う青紫にアスールは


「私はこれでも運動部所属だからよ!!」


と言って槍の先端を青紫の体に突き刺した。すると槍は彼女の体を貫通して背中まで槍を通した。ぎゃあぁぁぁぁぁぁー!!!とうめき声を上げる青紫。そのまま地面に倒れこんでしまった。それと同時にアスールも地面に横たわった。みんなアスールの所へ行って、コロロに足の回復をしてもらった。


「どうしてこんな無茶をするのですかっ!?」


とコロロが起こっているとアスールは


「どうしても反射的に体が動いてしまってね。それに、これしか方法が無かったから・・・」


と言って痛みに耐えながらも話した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


その頃、僕はアインスとツヴァイ、ヤミナ、アーク、ツツジと一緒にグレマーズと戦っていた。相手は剣を持っていて一応戦いはするが、まるでこっちの攻撃が読まれているかのように攻撃を避けまくるのだ。それに相手も魔法攻撃をしてきて、剣で切ったりするのが精いっぱいだった。それにしても相手は随分と余裕そうに攻撃をバンバンとしてくる。まるで反撃のチャンスを与えないかのように。


「あなた方の物語の終末はここで終わりです」


「何を言ってるんですか!?私達はノワール様がいる限り、永遠に終わりません」


「しかしこのノートには終わりと書いてあります」


「何なのですか、そのノート!?」


「私の能力”ありのままで(カムアズユーアー)”は予言能力を兼ね備えている。なのでこのノートに書かれてることは絶対です」


グレマーズは予言能力で僕達の行動を先回りしていたらしい。道理で攻撃が当たらない訳だ。相手は随分戦い慣れている。そんな相手に敬意を評して


「なら我も本気で戦わないとな」


と言った。アインス達に本当の戦い方を教えてあげよう。まずその1.敵の攻撃パターンを覚えて急所や死角の所を攻め込む。グレマーズと戦って予言はあっちが当たっているが悪魔でその通りに動けば死なないということだ。つまり相手の弱点を攻めるのではなく、相手が油断してる無防備な所を攻める。実際、奴の横腹当たりが無防備だ。僕は心臓部へ狙うふりをして横腹に攻撃した。しかし予言の力なのか、グレマーズは素早く剣を腰に動かした。横腹へ攻撃することはできなかったが、代わりに前腹へ蹴りを入れた。グレマーズはそのまま後ろへ吹き飛んでしまった。


「流石です、ノワール様!!」


「やはりノワール様が一番素晴らしい!!」


「やはり、あなたは何でも出来るわね」


みんなが賞賛していると瓦礫からグレマーズが立ち上がっていた。しかも全然ダメージを喰らってなかったようだ。


「危ない危ない。ノートを事前に見たおかげで蹴られる前に飛んでおいたのです。なのであなたの攻撃は無意味だったのですよ」


と余裕そうだった。みんなは驚き怒りもしたが、僕の考えはハズレていなかった。ノートを読むのも把握済みで、後はある行動をすれば勝機はある。それを早速教えよう。Lesson.2.敵の弱点を把握すること。戦いとは2歩3歩何が起こるかわからない。机の上ならともかく、実際は現場で戦う。なら最も重要なことは一つ、それは"相手の弱点を知る"ことだ。


「つ、つまり・・・」


「そう。この場合はこういうことさ」


ノワールは軽やかなステップでみんなの所に戻った。手にはグレマーズのノートを持っていた。ノートがないことに気づいたグレマーズは


「馬鹿な・・・いつの間に盗んだだと!?ふざけてそうに見えてノートを取るなど」


「ありえない、だろ。残念だけど我はそれが可能なのだ!!」


と悔しがるグレマーズに高笑いした。あとはこのノートを


「さて問題です。我が盗んだノートをどうすると思う?」


とグレマーズに見せつける。するとやつはノートを奪い返そうと襲いかかってくるも、素早く避けた。何度もやってみたが、ノートは全然盗めなかった。そして最後にグレマーズの背中を蹴った。


「答えを言わないならこうしよう」


とポケットからライターを取り出した。そして火をつけて、ノートを燃やした。一部燃え広がった所でノートを捨てた。グレマーズはノートの方へ駆け寄り、火を消そうとするも全体に燃え広がった火は消えることなくそのまま黒焦げになってしまった。


「あぁ、なんてことを・・・」


そのままグレマーズは手と膝をついて落ち込んだ。しかしこれでもう予言は出来ない。そう思っていた時だった。僕の体に何かが突き刺さった。見たところ剣だった。この剣を突き刺した相手は・・・グレマーズだった。彼はわざと落ち込んだふりをしてチャンスを伺っていたのだ。やがて剣を抜くと同時に僕は倒れ込んだ。その様子をグレマーズは高笑いをした。ふふふ・・・ふはははははっ!!


「一体どういうことなの!?」


困惑するヤミナ達にグレマーズはポケットから何かを出した。それは時代遅れのガラケーだった。


「私のノートを燃やすとはやられました。しかし、それで予言が止められると思いましたか?」


「・・・まさか!?」


「そう、この能力は写し出される物であればどんな物でも予言が出来るのです!!」


何とノート自体の力ではなく、グレマーズ自身の能力だった。ノートを燃やされても、グレマーズには関係なかったのだ。


「ただし、これは自分で予言するのは不可能です。なのでノートなり、本なり、ましてはこういう機械で予言を行うのです」


「つまり、あなたを倒さない限り予言は続くのね」


「まあ、予言の力が無くともあなた方は余裕で倒せますけどね」


そう言ってガラケーを収め、再び剣を構えた。もはや油断出来ないと悟ってみんな構えの体制に入った。確かにグレマーズの魔力はみんなと比べ物にならないほど強い。みんなで一斉に襲いかかって命があるかどうか、そのぐらいだろう。グレマーズが一歩進むたび、ヤミナ達は一歩下がった。しかしアインスだけは下がらなかった。


「何故あなたは逃げないのですか?」


「ここで逃げたら、ノワールファミリーの名に傷がつくからよ」


「なるほど。しかし当のリーダーはあそこでくたばってます。もう勝ち目はないと思いますが?」


「それはまだ彼の正体に気づいてないからよ。彼はあなたが思うほど弱くないわ」


「何!?」


その時、グレマーズの後ろから何かが突き刺してきた。それは黒く細い剣でグレマーズは何が起こったのか分からなかった。しかも腰当たりを刺されたため、致命症にはならないが痛み苦しい状態になった。


「こ、これは・・・」


「ちょっとくすぐったいけど大丈夫。痛みは一瞬だから」


この声を聞いて後ろを振り返ってみると、そこには刺されて倒れたはずの男が立っていた。しかも血すら流していない。やがてノワールは剣を引き抜き、グレマーズは刺された所を手で抑えてうずくまった。しかし手の隙間から赤い血がドロドロポタポタと流れ出している。グレマーズは痛みを我慢しながらも息切れた声で


「な、なんなのですか、あなたは?」


と質問するとノワールは


「我らはノワールファミリー。闇を愛し、闇を支配する者」


「な・・・!?」


「そして我はノワール。通りすがりのスライムだ。覚えておけ」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「あー、これは酷いですね」


「このままではみんなやられるのであ〜る」


その頃、黄道13星座隊(ゾディアーク)のノヴァとタラバはこの様子を見ていた。ノワールとグレマーズの戦いを見て二人は驚愕していた。するとそこにポカリ、アーミャ、カストル姉妹、ネメアーが入ってきた。


「一体これはなんなのですか!?」


「何か向こう側が大変なことになってる」


5人も画面越しの戦いに注目していた。やはり、相手は相当の実力を持っている。十二神将(ヴィーラ)では手に余ってしまっている。


「やはり、このまま生かしてはいつ我々の邪魔をするか分からない。直ちに潰すべきだ!!」


「潰す?なら僕も♪」


「はいはい、私も♪」


ネメアーとカストル姉妹は殺る気満々だ。物騒だな。でも確かに我々と戦うとどっちが強いのか、少し気になった。するとそこにもう一人入ってきた。


「あー、みんな彼らを助けにいってあげて。出来るだけ戦闘は避けるように」


声の主はアートルムだった。その声を聞いてみんな平伏した。そしてその言葉通り、みんな最低限の装備をして出かけて行った。


「今はまだ彼らにも早い。特にあの男は・・・。まあ、せいぜい測定ぐらいは出来たらな」

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