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ノワールVSヴィーラ

 「やって来たのはいいけれど・・・ここってあのお城の中じゃない!?」


その頃、白沢達はノワールのトランクケースに入って、別の世界へとやって来た。着いた場所は、あの暗黒の魔城(ノワール・カステルム)だった。それにここは見た所、図書室らしき場所だ。


「ここにあいつがいるの?」


有川が心配してると白沢は


「とにかく、アイちゃんに聞いてみましょうよ」


と提案した。確かにここには最悪彼女達がいる。そこから彼の居場所を突き止められるかもしれない。早速、図書室を出てアインスを探そうとした。しかし廊下に出ると、何故かみんなバタバタしていた。あっちへ行ったり、こっちへ行ったりと白沢達の存在に気付いていないようだった。それにゴーストやモンスター、さらに十黒のメンバー全員急いでいた。


「何事っ!?」


「分かんないけど、何かあったんじゃない?」


有川は戸惑い、夏奈は混乱した。恐らくここに彼はいない、みんなは思った。その後、やっと空いてきたので、大広間に行くことが出来た。中に入るとゴースト、モンスターや十黒のみんなが集まって会合をしていた。みんな言い合っていて、何か大きな機械も置いてあった。


「・・・どういう状況?」


「・・・分かんないけど、きっと何かあったんだと思う」


5人はただただ立ちすくしていた。すると後ろから聞き覚えのある声がしてきた。


「一旦落ち着きなさい。彼が来るまで・・・」


そう、アインスだった。アインスは今、ツヴァイとアハトと一緒に入って来た。この3人も何やら焦っている様子だった。白沢はさりげなく声をかけてみた。


「一体どうしたの、アイちゃん?みんなドタバタしてるみたいだけど・・・」


「あ、あなたはブラン、いや白沢さん。ちょうど良かったわ、あなた達も手伝ってほしいの」


「え、何で?」


「この城が襲撃されてるからよ」


「・・・・・え?」


あまりの衝撃的な内容に固まってしまった。城が襲撃?何で?頭の中は混乱するばかりだった。


「でもここって見えないはずなんじゃないの?」


「それがその力を無効化する能力を持つ敵が現れて、白のみんなで応戦してるの」


アインスの情報を聞いて、白沢は驚いてしまった。今、ここがこういう状況になっているなんて・・・。彼はこのことを知っているのかな?


「残念だけど、彼と連絡がつかないわ。だから今は彼抜きでやらなくちゃいけないの」


そんな!?肝心の彼がいないなんて・・・。だからみんな困っていたんだ。でもこんな一大事に彼が来てないなんて、自身もどうしたらいいか分からなかった。すると後ろにいた夏奈が


「じゃあ、私達も戦えばいいんじゃない?」


と答えた。


「私達も彼を探している所だし、それにここがピンチならまずはここを助けましょうよ。彼はその後でも大丈夫よ」


他の彼女達も黙って頷いた。夏奈の提案にアインスは


「分かったわ。今はここの死守をしましょう。ありがとう、みんな」


とみんなに感謝した。この気持ちを言葉に表せないぐらい。その後、白沢達は手のひらから魔力スライムを出して、それを身にまとった。


「さてと、いっちょやりますか。みんな、行くわよっ!!」


有川のかけ声で彼女達は外へ出た。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


同時刻、ノワールとユーフェミアの戦いは続いていた。ユーフェミアの攻撃をかわしつつ、反撃の準備を整えていた。


「私の攻撃を避けるなんて、あなたただものじゃないわね!!」


「まあ、鍛えてますから」


「ならなおさら手加減は致しません」


そう言って、また別の魔法を唱えた。今度は魔法陣が杖の先端に出て来た。


「闇魔法”ダークフレアブラスト”」


そう言うと魔法陣から黒い炎が出てきて、僕に目掛けて放出された。あれを喰らうと黒焦げになりそうだな、一般人は。やはりまだまだ未熟だな。いくら闇の魔術師と言われても、僕とレベルが違いすぎるな。僕は手を広げて腕を伸ばして


闇の暴食(ブラックグラトニー)


と唱えると伸ばした手から渦巻き状のスライムが出てきて、一瞬にして黒い炎を飲み込んだ。これは彼女も驚きを隠せなかった。


「な、私の魔法がっ!?闇の力は絶対のはず・・・」


「闇に絶対の力なんてない。闇に対抗出来るのは光か闇だ」


「そ、そんな・・・」


どうやら光属性の魔法は持ってないんだな。もうこれで決着がついたら嬉しいな。しかしそれでも彼女は諦めなかった。しかし今度は自分の杖を捨てた。普通は諦めたと考えたいが、彼女は違う。何やらすごい魔法を唱える気だ。


「なら、これで最後にしてやるっ!!|”デオスマーレ”」


そう言って両手を前に伸ばした。すると複数の魔法陣が出現して、そこから黒いビームが出て来た。その威力はあまりにも大きすぎて、地面に跡が出来るぐらいだった。しかもガトリングのように休む暇もなく放ってくるため、かわすのに精一杯だった。


「なかなかやるな」


「どう、これでもまだ私を未熟だと思う?」


「そうだね・・・まだまだ未熟だよ。例えば・・・こうとか」


するとユーフェミアの後ろから誰かが羽交い絞めしてきた。それは黒季だった。黒季はシャーペンを手にして、彼女の喉に刺していた。ユーフェミアもそれに気づき、魔法を放つのをやめた。しかし彼のスライムで手を拘束された。もはや彼女に打つ手はなかったのだ。


「ど、どうしてあなたがっ!?」


「簡単なことだよ。ただかわして後ろに回り込んだだけだよ」


「な、そんな!?」


「言っただろ、まだ未熟だって」


そう言うと彼女は酷く落胆してしまった。そのまま膝を地面につけた。どうやら勝負あったようだ。


「もうこんなことをやめて、今すぐ元の世界に戻すんだ」


「・・・・・はい」


彼女は小声で答えた。ちょっとしょんぼりしていた。すると奥からオリヴィアがやって来た。手には花束と・・・スマホを抱えていた。もしかして・・・。


「ア、クロキ。サッキスゴイノヲ撮ッタカラ一緒二見ヨウネ」


・・・最悪だ。まさか彼女に一部始終を見られたなんて。これはあっちに帰ったら、記憶を消さすしかないな。僕達が帰ろうとした時、いきなりドカァーンッと音がして、爆風が吹いて来た。ユーフェミアとオリヴィアは爆風に巻き込まれ、飛ばされた後気絶した。一体どこから!?すると煙から誰かのシルエットが映し出された。どうやら4人はいるようだ。


「ほう、あれが噂の男?何かピンとこないけど・・・」


「見た目に騙されるな。あれでも実力があるぞ」


そこから女性の声がしてきた。すると煙が消えて、そこには二人の女性と明らかに人間ではない者が二人いた。その二人に関しては何やら歪な雰囲気を放っている。


「こんばんわだっけ?私は青紫。一応グレゴリーで幹部をやってるわ。今後ともよろしくね」


着物を着た女性から自己紹介をした。グレゴリーの幹部だって!?ならなおさら逃げられないな。それに一般の奴らと比べても魔力量が段違いだから、相当な力を持っているな。幹部と名乗ってもおかしくないな。すると今度は褐色の女性が名乗った。


「私の名前は琥珀。あなた方には悪いけど、今すぐ捕まえてやるわ!!」


「そう簡単にいくかな?」


「貴様の挑発に乗る気はない。大人しくついてきなさい」


どうやら琥珀って人も相当強いな。ただ殺気を強く放っているため、うかつに手は出せない。


「我の名はブロンガス。覚える必要もないがな」


今度は茶色の鎧を着た怪人が名乗った。性別は分からないが恐らく男だろう。彼もただ者ではないな。そして最後に


「ガン・・・ガン・・・オデブルトシュバイン・・・エット・・・ヨロシク・・・ガンガン」


と片言に紹介してきた。こいつは・・・何なの?ロボットなのか怪人なのか。一応魔力はあるみたいだけど、さっぱり分からん。これで相手の紹介は終わった。すると地面から蛇が出て来て、3人の体を縛った。これは一体何の魔法だ!?


「あ~、これは魔法じゃないんだ。私が飼ってるペット達よ」


と青紫が説明した。魔法を放ってもいいけど、そうすると後の二人が危ないな。ここは大人しく捕まるか。


「あら?抵抗しないの?案外大したことないんだね。それともおじけづいた?」


「まさか。ただ君達と話がしたいだけだ」


「なら場所を変えましょう。あっちでいっぱい話しましょう」


そして彼女は黒い緞帳(ブラックカーテン)を出して、みんなを連れて入って行った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


その頃、キゲンデでは白沢とアインス達がカオスと戦っていた。カオスは城の周りを360度襲っていた。そのせいか、ファザーやマザー、イザナミやモルドレッド、アズモデウスも戦っていた。


「一体彼らはどこから?」


「分からん。ただ奥からゾロゾロと出てくることだけは確かだ」


マザーは魔法攻撃、ファザーは剣術で戦っていた。そこへ白沢とアインスが応戦してきた。


「すみません、遅くなって」


「私達も戦うわ」


「おお、心強い!」


ファザーは歓迎した。そして4人はカオスを次々と薙ぎ払った。中には剣や弓など武器を持った者、杖で魔法を唱える者もいたが所詮は雑魚の集まりなので簡単に倒せた。するとマザーはあることに気付いた。


(・・・やっぱりおかしいわ)


マザーはずっと悩んでいることがあった。それはカオスが襲撃してるのに、統一性がないからだ。むしろ私達をあえて足止めするようにうじゃうじゃと出てきている。それに指揮官も見当たらない。てまさかっ!?


「みんな、これはおとりの奇襲ではないわ。私達はただ足止めされてるわ!!」


「「「えっ!!!」」」


マザーの一言でその場にいた3人が驚いた。このカオスがおとりだって!?じゃあ、彼らの狙いはこの城じゃない!?


「もしかすると彼らは私達が動けないように仕向けたのかもしれないわ。でも一体・・・まさかノワールがっ!!」


「どうしたんですか!?」


「敵の狙いはノワールよ!!彼を別の場所へ移動させて私達が来るのを阻止してるのよ!!」


「何ですって!!」


白沢とアインスは驚いた。ノワールが危ない!?このままじゃいられないけど、カオス達が!?


「ならここは私たちに任せろ!!お前達はノワールの方を!!」


「ありがとう、二人とも!!」


「感謝します!!」


そう言って二人は仲間を呼んで、キゲンデから出て行った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


その頃、ノワールはある暗い場所で椅子に拘束されていた。明かりは唯一彼の真上にあるくらいで後は一面暗かった。それに鎖と手錠で拘束されて自由が利かない状態だった。しかし彼は抵抗しなかった。


(ここで抵抗したら彼らの情報聞けないな)


彼は危険を承知でわざと捕まったのだ。すると奥から誰かがやって来て、暗闇からさっきの4人と男性が現れた。


「どうも、居心地はどう?」


「最高だ」


「なら良かった。あなたには色々聞きたいことがあってね、死ぬ前に色々と吐かせてもらうわよ」


青紫がそう言うと、後ろから誰かが椅子を蹴った。そしてそのまま倒れこんだ。


「・・・へぇ。こんなことをしても顔色一つ変えないんだ」


「もう経験済みなんで」


「ならしょうがないか。じゃあこれは経験したことないでしょ?」


彼女が僕を立たせてくれた後、首に蛇が巻き付いて来た。どうやら毒蛇だな。シュルルルッと音を立てているし。お腹空いてるのかな?


「一つ聞きたい。彼女達は今どうしてるんだ?」


「今他人のことを気にするの?」


「いや、気になっただけ」


「まあいいわ。彼女達は大事な商品だからゲージにいれてるわ」


「そうか、良かった」


とりあえず彼女達は無事みたいだ。後は僕の方かな。このまま全員生きて帰るか、みんなあの世行きになるか。すると青紫は椅子を取り出して目の前に座った。


「質問をするわ。まずあなたが私達の基地を次々と壊したってのはほんと?」


「ほんと」


「次に私達の商売の邪魔をしてるのは事実?」


「事実」


「最後にここにいるみんなを殺したい?」


「殺したい」


彼女の質問に淡々と答えた。すると辺りが急に明るくなった。ようやく電気をつけたんだな。そこはどうやら倉庫みたいな場所だった。レンガ造りの倉庫なんて呉の赤レンガ倉庫か、旧広島陸軍被服支廠か横浜の赤レンガ倉庫しかみたことがないな。でも倉庫で拘束なんてサスペンスでしか見たことが無いな。すると隣にいた男性が喋り出した。


「このノートによると、今日はあなたの運命の日と書いてあります。一体どんな運命になるのでしょう」


とノートを見ていた。それにしても大きいノートだな。持ち運び大変じゃない?そんなことを考えていると扉がバンッと開き、そこからウゥーッとサイレンを鳴らしながら車が入って来た。車種は随分古い黒のマーキュリーエイトセダンのトラックでみんなかわすように避けた。やがて止まって運転席や後ろの扉から出て来たのは、5人いや5匹のキツネだった。キツネ共はニヤニヤと笑っていた。


「よーし野郎ども、降りるんだっ!!」


「えへへへへへっ!!!!」


長い鼻に大きく鋭い目と牙、ニヤニヤと笑っていている顔、何故かスーツや帽子、シャツを着ていて、拳銃やナイフなどを手に持っている。いや何で?


「ああ、彼らは”グレゴリーパトロール”と言ってね、この仕事に対して優れた素質を持ってるんだ。彼らは僕達の忠実な部下だよ」


と青紫が説明してきた。すると


「例のやつ、持ってきたか?」


とブロンガスがそう質問すると


「ええ、持ってきやしたよ。これが例のやつです」


と後ろの扉から何かを出した。それは大きなドラム缶だった。一体何をする気なんだ?するとキツネ共がそのドラム缶を運び出して、蓋を開けた。中身は緑色や黄色、紫や黒が混じったような色の液体がギリギリまで入っていた。


「ああこれが何かって?これは”ヴェノム”っていう溶解液、いわゆる毒だね。これの効果を見てみる?」


青紫がそう言うと、ある人が檻に入ったスライムを持ってきた。青紫はゴム手袋をはめてそのスライムを掴んだ。そしてスライムをヴェノムにつけると、何と次第にスライムが溶け出していったのだ。それにスライムも断末魔をあげて苦しんでいた。やがて肘ぐらいまで入れて抜くと、もうスライムの姿はなく、溶け出したスライムの体の一部がついていただけだった。まるで水につけた絵具みたいに。可哀そうに。ん、待てよ、もしかすると・・・。


「そう、さっき見た通りこれはモンスターの細胞や魔力を溶かす液体だよ。大抵のモンスターなら溶けて死ぬけど、あなたなら死なないよね?」


青紫がこっちを睨んできた。予想通り、僕をあのヴェノムに浸させる気だ。流石の僕もあれを浸されたら、ただでは済まないだろう。ほぼ魔力で出来てる僕には唯一の弱点だ。


「じゃあ早速だけど、君も効果を味わってみる?」


青紫がそう言うと、琥珀とブロンガスが縄を解いて、両手を掴んだ。そして徐々にヴェノムの方へ近づいて行って、右手を浸そうとしていた。


「あ、これ、やばいかも・・・」


「最後に言い残すことはない?せめてそれぐらいのチャンスを与えよう」


青紫がそう言うと、僕はこう言った。


「・・・やっと助けに来てくれた」


それを聞いたみんなはきょとんとしていた。するとその時、どこからか急に爆発して、爆発音と共に強い振動が起こった。地面が揺れて、みんなの足元がおぼついている隙に僕は二人の手を薙ぎ払って、外へ逃げ出した。それに気づいたブロンガスは


「な、あの野郎。いつの間に逃げやがった。お前達、追えぇぇぇ!!」


と隊員とグレゴリーパトロール達に命令した。隊員はすぐさまノワールを追って、グレゴリーパトロールはすぐ車に乗って追いかけた。この場に残ったのは5人だけになった。


「一体どういうことだ!?あんなもの聞いてないぞ!!」


ブロンガスは激しく憤慨していた。それに琥珀も


「何が運命の日だ!?貴様の能力も大したことねえじゃねえか!!」


とグレマーズを叱責していた。しかしグレマーズはそれでも冷静に


「私はただ予言しただけです。必ず死ぬとは書いてありません。ここには運命の日と書かれているだけです」


と端的に答えた。その言葉に琥珀は黙ってうつむいた。


「しかし、このまま野放しにする訳にもいかないわ。早々に探さなくては」


「だが、肝心のあいつはどこにいるのか全く分からねえぞ。こうなったら私達で探すしかねえじゃねえか」


「なぜあんなガキ一人に我々が動かねばばらならんのだ!!」


「ブロンガスのオッサンも琥珀も落ち着きなさいって。こうなった以上、僕達がやらないといけないでしょ。それにあの爆発は何なのかも調査しないと」


「ガン・・・ガン・・・オデガオイカケル・・・ガン・・・ガン」


「お前では遅すぎる。ここは琥珀とブロンガス、僕に任せてよ。グレマーズと君はさっきの爆発についてお願いね」


青紫がそう指示すると二人は分かったと言わんばかりに、爆発した所へ歩いて行った。


「さてと、僕達も行きますか」


青紫がそう言うとブロンガス、琥珀がそれに続き、外へ出た。

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