異世界人、襲撃
「やっと見つけたわ!!”闇の支配者、ノワール”!!」
後ろから誰かが声をかけて来た。しかも僕の名前を知っている。振り返って見ると、そこには紫髪の長いオフショルダーのワンピースを着た若い女性が立っていた。明らかにこの学校の先生ではない。
「誰ですか?」
僕は会話を濁すも
「とぼけても無駄よ!!あなたの正体を私は知ってるわっ!!」
と強く返した。正体を知ってる!?一体どういうことだっ!?この僕の正体を知ってるのは地球でたった5人だ。彼女は一体どこまで知ってる!?それよりも気になることがあった。
「そもそも君・・・誰?」
全く相手を知らなかった。ていうか、こういうのはまず自分から名乗るんじゃないの?それに闇の支配者って?かっこいいけど、そんな異名つけた覚えがない。
「そうね。名乗る必要は無いのだけれど、一応名乗っておくわ」
名乗る必要ないって、それでも名乗るのがマナーだろ。それに一応ってなんだ、一応って。しかし疑問が一つ残る。
「私の名はユーフェミア。ユーフェミア・ドミティウスよ」
ユーフェミア・ドミティウス?外国人か?またしても外国人かよ。もうこれで二人目だ。
「オオッ!!何カカッコイイ!!闇ノ支配者ッテ言ッテタケド、アナタモアノアニメスキナノネ?」
後ろでオリヴィアが目を光らせていた。そういえば、闇の支配者ってオリヴィアが好きなアニメの名前だったよね?偶然かな?それにしては偶然すぎる気が。
「そこのアナタ!今すぐ彼から離れなさい!!さもないと彼に殺されるわ!!」
急に何言ってるんだ、アイツ!?何でオリヴィアを殺さないといけない!?もう状況が分からない!?するとオリヴィアは
「イヤネ!!クロキハソンナコトシナイネ!!」
と言い返した。何ていい奴なんだ!!するとユーフェミアは
「なら教えてあげるわ!!彼の正体を!!」
と言い出し、突然黒い緞帳を出現させた。何故か彼女にも使えるのだ!
「ナ、ナンダコレハッ!?」
オリヴィアは驚きつつも興奮している。こんな状況でもポジティブなんだな。その後、学校から一変花畑みたいな所に飛ばされた。何だここは!?何か・・・いい所だな。しかも夜で満月が大きい。するとユーフェミアもここにやって来て
「家族の仇、討たせてもらうわ!!」
とどこから取り出したのか、剣を構えた来た。その姿は絵になるほど美しかった。家族の仇って何だ?そもそもいつ君の家族を殺したのかは知らないけど、僕に剣を向けた意味を分かっているんだね。
「僕と戦うのか?」
「ええ、私が必ず葬ってやるわ」
「いいよ、ただし君にハンデをあげよう」
「ハンデ?」
僕は彼女にハンデを提案した。
「僕は君に剣を使わないし、殺さない。それに最初の5秒は攻撃しない。これでどう?」
すると彼女は
「あなた、一体何を考えているのか分かりませんが、いいでしょう」
と僕のハンデを承諾してくれた。オリヴィアはその頃、お花畑で遊んでいた。そして僕はユーフェミアと戦おうとしていた。
「いきますわ!!」
と彼女が言ったと同時に彼女は素早く前へ走った。僕へ向かって剣を貫こうとする気だな。だが分かりやすすぎる。そんな攻撃じゃ、倒せないよ。やがて黒季に近づいて剣を刺そうとした時、急に何かにガンッとぶつかった。
「なっ!?」
ユーフェミアは一瞬訳が分からなくなり、後ろへ戻った。彼の方を見ると、手に何かを持っていたのだ。よく見てみると、それはかばんだった。
「な、かばん!?」
「そうだよ、かばんだよ」
ユーフェミアは驚いた。何故あのかばんが剣を弾き返したのか、分からなかったのだ。ましてやかばんには傷がついてない。
「一体どういうことだ!?ハンデをするんじゃなかったのか!?」
「ハンデをするとは言ったが、武器を使わないとは言ってないよ。それを承諾したのは君だし」
ユーフェミアはものすごく焦っていた。さっきの冷静な感情と全然違う。
「もう5秒たったし、今度はこっちからいくよ」
そう言ってかばんを振り回した。ユーフェミアも負けずと剣で応戦するが、全てかばんによって弾き返されてしまった。むしろかばんが鉄のように硬く、あっちの方が重く感じた。
「一体何故かばんを武器に使う!?」
彼女が疑問を僕にぶつけて来た。まあ、そりゃそうなるわな。
「僕が使うものは何でも武器になるのさ。かばんや木の棒だって。ましてや文房具もね」
「あなた、一体何者なの!?」
「通りすがってないけど、通りすがりのスライムだ!!覚えておけ!!」
そして再び僕はかばんを振り回した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、白沢達は僕がいないことに気付き、校内を探していた。
「どうしよう、彼、どこにもいないわ!」
「まさかオリヴィアちゃんもいなくなるなんて!」
「連絡したけど、出てこないわ!」
「私も彼が行きそうな所を探しましたが、いませんでした」
彼女達が校内を探しても二人は見つからなかったのだ。それなら校外にいるんじゃないかという話になり校外も探したが、そこにもいなくて、そもそも学校の外にいるのかどうかも分からなかった。つまりみんな二人の所在を知らなかったのだ。まさに神隠しのように消えてしまったのだ。
「どうしよう、彼がいないと・・・」
「愛菜、そんなに黒季のことを・・・」
「彼がいないと異世界に行けないじゃない!!」
「そっちかーいっ!!」
白沢の不純な理由に有川は思わずツッコんだ。そんなに異世界気に入ってるんだ。ちょっと意外、有川は思った。みんなしばらく考え込んでいると春香が
「そういえば一つだけあっちに行けれる方法がある!」
と言い出した。その言葉に白沢は食いついた。
「それはどうやって!?」
「確か、彼のトランクケースがあっちと通じてるはず・・・」
「そうだそれよ!!今すぐ行きましょうよ!!」
白沢はみんなの背中を押して、色田家に向かって走った。家に着くと、そこには秋穂、冬美と冬音が宿題をしていた。3人は急な押しかけに驚きつつ、これまでの状況を聞いた。すると3人は驚き、一緒にトランクケースを探した。すると彼の机の下にトランクケースがあるのを発見した。それとジャラゴンが寝ていた。
「何なの、このおもちゃ?」
秋穂が手に持つと、急にジャラゴンが起きてじたばたし始めた。
「貴様、何者だ!?」
「「「「「え~、喋ったっ!?」」」」」
白沢と有川以外全員驚いた。まあ、初めましてかな。二人はジャラゴンと話をして、ようやく落ち着いた。
「やあ、さっきは取り乱して悪かったね。我はジャラゴン。この世で最も気高きドラゴンなり!!」
と自己紹介をした。この世で最も気高きドラゴンってそんな言葉、初めて聞いたんですけど。それにそんな言葉を自分で使うなんて。
「事情は分かった。今すぐ彼の所に連れて行ってやろう」
ジャラゴンはトランクケースを開けて中へ入った。それに続き、白沢と有川も中へ入った。
「私達は黒季を連れて帰るから留守番お願いね。ただし危険なことはしないように」
「「は~い!!」」
夏奈は末っ子たちにそう言って最後に入っていった。トランクケースは蓋を閉じて消えていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「なかなか剣が届かない・・・」
「かばんを振り回すのも疲れたから、そろそろ諦めてくれない?」
ユーフェミアはずっと剣を突き刺すもなかなか届かないことに焦り出した。そもそも剣の腕がまだまだ未熟だな。覚えて1年ってところかな。やがて剣とかばんがぶつかって、お互い弾き返された。ユーフェミアはその拍子に剣を放してしまった。そして剣はくるくると回って地面に突き刺した。その直後にユーフェミアは地べたに尻もちをついた。
「うぅ・・・」
ユーフェミアは反動で体が動けなくなっていた。このままじゃ可哀そうなので、起き上がれるよう手を指し伸ばした。
「もうこの戦いをやめないか?」
戦いをやめるよう促すも、彼女は顔色一つ変えずに僕の手を振り払った。そして自力で立った。
「あなたの助けなんかいらないわ!!剣がなくともまだ戦えるわっ!!」
まだ戦えるってことは今度は魔法でも使うのか!?しかし彼女の力と能力を理解してないので、相手の出方を伺うようにした。しかしここでずっと疑問に思ってたことを話した。
「ねえ、君がさっき言ってた家族の仇ってどういう意味?」
すると彼女はすんなりと答えてくれた。
「私は家族の長女で父は早死に、母は女手一つで育ててくれた。私には5人の妹と2人の弟がいた。小さな村の家で自由に暮らしていたのだ」
これが彼女の過去なのか。案外ごく普通の家庭だな。ちょっぴり家と似てるな。彼女は話を続けて
「私はその家族の中でも特に優秀だったため、ある王国のアカデミーの入学が決まった。みんな歓迎してくれた。そこで私は無事卒業して家族を養うつもりだった。そう、あの時までは・・・」
すると彼女はしばらく黙り込んでしまった。きっと何かがあったんだろう・・・。ここで変なボケがなければいいけど。
「ある日、久しぶりに帰省することになってな、その時に故郷に戻ったんだ。しかし私の目に飛び込んできたのは・・・」
ユーフェミアはしばらく黙る。そして口を開いた。
「・・・焼け野原になっていた私の故郷だった。私は一目散に家の方へ向かった。しかし既に家は崩壊して、中には誰もいなかった。そう、私の家族は誘拐されたのだ!!」
ユーフェミアは声を荒げた。余程の経験をしてきたんだな。
「私はありとあらゆる方法で家族の情報を探した。そしてある情報を手に入れた。・・・私の母と弟が人体実験の被害者になったこと・・・妹達が奴隷として売り渡されたことを・・・」
何と彼女の過去にそんなことがあったとは!?僕は驚きを隠せなかった。しかしそれがどうして僕と結びつく?
「アカデミーをやめた私は必死に家族を探した。しかし母と弟たちはもう手遅れだった。その後、妹達がある貴族に買われたという情報を得た。そこに行くとそこには・・・変わり果てた妹達の姿だった・・・」
ユーフェミアは話している途中、涙を流した。そりゃ、そんな体験をしたら精神もおかしくなるな。ちょっとだけ同情した。そこからは何も話さなかったが、きっと妹達は馬鹿な貴族共に遊ばれて、心身共に死んでしまったんだろう。おそらくあざだらけで、顔の形も変わっているんだろう。ひどいことをする奴もおるもんだ。しばらくしてユーフェミアは話を続けた。
「しかし私が確認したのは4人だけだった。あとの一人はどこに行ったかは分からないが、ある噂を耳にした、ある人物が奴隷を奪っていると」
その言葉を聞くと、確かに僕がやったなと思った。実際、奴隷や人質がいたアジトを壊滅させてるから。もしかして、それで僕だと・・・!?
「その後、ある人物が私の前に現れてな。その人はこう言ったんだ。『お前の妹を連れ去ったのはノワールという男だと。しかもそいつはこの世界を支配しようとしてる』って写真付きで渡してきた」
なるほど、だから僕がノワールって気づいたんだ。それは納得した。いやでもある人物って誰?そういや葉月も同じことを言ってたな。何でそのある人物が僕を知ってるのかは分からない。ただ、僕もその人に会ってみたくなってきた。
「そして私にこの黒い緞帳の力を与えてくれた。だから唯一生き残った妹をどこに隠した!!教えろ!!」
いや、そんなことを言われてもどの人なのか全然分からないし。それにそんな変な噂を流しやがって。ここが日本なら名誉棄損で訴えてたわ。しかしそんな少ない情報じゃ分からないな。実際、誰なのかも分からないし。するとユーフェミアはどこからか杖を出した。いやどこから!?
「この杖はある力を込めている。その力を見せてあげよう。”ダーク・スピリット・バースト”」
すると杖の先にある宝石が赤色から黒色に変わって、やがて黒い稲妻を出した。そしてその稲妻は大きくなり、そして上に発射された。その直後、上にいた稲妻が下に向かって降り始めた。その威力は地面が爆発するほどで当たらないように必死でかわした。しかしこの威力と実力、剣とは違い腕がいいな。
「言い忘れたけど、私はこう呼ばれているわ。”闇の魔術師”ってね」
何だってっ!?闇の魔術師だってっ!?彼女も闇属性なのか!?のどかな風景に緊迫した空気が流れた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
同時刻、崖の上からこっちを見ている人がいた。
「いいぞっ!!ここがお前の最後の場所だ!!さあ、やっつけるのだ!!闇の魔術師よ!!」




