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たたかいにいくヨ!

 セブンブレイ王国の暗い夜の街。そこは飲み屋でにぎやってた。それとは反対に路地はものすごく静かなのだ。滅多に人が通らない所にそこを一人の男性が歩いていた。


「全く・・・騒々しいです。夜とは静かなるものなのに・・・」


一人でぶつぶつと愚痴っていた。彼の名はグレマーズ。とある用でこの国に来ていたのだ。一体どこへ向かっているかは大方予想がつく。


「さてと、一仕事しましょうか」


そう呟き、また闇に飲み込まれるように消えていった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


その頃、ホテルのロビーでは。


「とりゃぁー!!」


「私がフォローするわ!!」


「何なのっ!?さっきと全然力が違うっ!?」


マールスはアマリージョとシャドウ化した有川、アスールと戦っていた。さっきと全然違う姿にマールスは困惑していた。本来なら体が燃えるはずなのに、今のアスールに触っていも燃えるどころか火すらつけられなかったのだ。アスールの属性が水属性だということもあってか、火属性のマールスには弱点だった。


「ねえねえ、さっきからずっと思ってたんだけど、ずっと目が痛くない?」


「そういえば、私の左目もずっとジンジンするね」


二人は目に違和感を覚えていた。アスールの時は何もなかったが、この世界に来てからずっと目がジンジンしていたのだ。これはアマリージョも同じで魔力をもらった途端、目に違和感があったのだ。今頃気づいたのは、つい楽しくなって痛みそっちのけだったからだろう。それに痛いのは石を入れられた方の目だ。


「ねえ、ちょっと覗いてみてよ?」


「分かった、ちょっと覗くね」


そう言ってアスールはアマリージョの目を見てみることにした。すると目は自分の時と同じ、色が付いていたのだ。それに彼女の場合は黄色く染まっている。一体これはどうなっているんだ!?


「あの~いつまでそんなことをしているのですかっ!?」


「あ、すっかり忘れてたわ~!!いや、それとも力を溜めてたって言った方がいいかな」


「私は休んでたわ」


マールスはあまり戦わない二人を見て、ストレスが溜まっていった。そのせいなのか、彼女の手から炎の球体が出てきて、次第に大きくなっていった。まるで太陽みたいに燃え上がり、この部屋を焼き尽くすぐらいの大きさまで膨れ上がった。


「私の怒りをお前たちにぶつけてやるっ!!”フォイボス・デイモス”」


マールスが手を降ろすと、巨大な火球がどんどんと降りて行ってきた。すぐに熱くなる空気、やってくる熱波。これをまともに喰らうと跡形もなく燃え尽きてしまうだろう。


「な、何なのっ!?デカすぎるっ!?」


「これは・・・あなたの水でも消えないわね」


それもそのはず、こんだけデカい火球に水をかけても焼け石に水になってしまい、何より熱波で水が蒸発してしまうから。怯える二人を見てマールスは


「ふふっははははは!!これなら自慢の水攻撃、雷攻撃も効かないでしょ!!このままだとみんな危ないわよ!!」


「それを言うとあなたも危ないじゃない」


「私は炎属性なので、こんな火の塊を喰らっても何ともないのよ!!」


と自慢げに話していた。確かに彼女の言う通り、このままではみんな巻き沿いになってしまう。でも今更こんな状況でいいアイデアが思いつくはずもない。まさに万事休すだった。するとアスールが


「確かにこれはピンチだけど、一つだけあるわ!!」


「何ですかそれは?」


「こうするので~す!!」


と自身の武器をグニャグニャと変形させていって、やがて大きなボール状になった。ここに巨大火球を入れるつもりだろうか。


「ふははははっ!!何を考えていると思ったら。良いことを教えてあげるわ、この火球、温度は太陽と同じぐらいよ!!そんなちんけなボールごときに敵うはずがないでしょ!!」


「そんなこと知ってるわっ!!私の狙いは・・・」


そう言うとボール状がいきなり巨大火球を包み込んで大きな球体になった。その上に乗って穴をあけて、


「”ハイドロタイフーン”」


と唱え、そこから水を注ぎこんだ。するとそこで違和感を覚えた。


(やっぱり能力を使ってると目が痛いわ)


しかしその痛みにも耐え、やがて水をたっぷり注ぎこんだ。マールスは不思議がっていたがアマリージョは理解した。本当の狙いはっ!!


「な、何をしてるの・・・?こんなことをしてもあの火球は消えないわよ」


「知ってるよ。でもこの大きさに水をたっぷり入れ、酸素を遮断させると・・・!!』


「なるほど、そういうことね。あなたも分かって来たんじゃない?炎属性の弱点もとい欠点が」


「・・・!まさかっ!!」


そう、あの巨大火球を包み込ませ、酸素を遮断させて仕上げに水をたっぷり注ぎこむことで火の威力を弱らせることをしたのだ。こうすることで水が冷却作用を発揮し、火は次第に消えていくのだ。


「まさか、科学が得意だとは思わなかったわ・・・」


あまりの発想にマールスは震えてしまった。こんな人間を見たことがないからだ。すると今度はアマリージョが


「じゃあ火も消えたことだし、今度はこっちの番だな。覚悟しなさいっ!!」


と手をパンッと叩いて、そこから電気が発していた。やがて形を変えて、鳥の形になっていった。


「今度はビリビリでお返ししてあげるっ!!”雷鳴鳥(サンダーバード)”」


その後、二羽の鳥たちはマールスに目掛けて飛んで行った。その速さはまるで雷のように速く、避ける時間すら与えなかった。


「そ、そんな・・・この私が・・・こんな奴らに・・・」


マールスは瞬く間にその一撃に当たってしまい、ギャアァァァッと奇声を浴びながら爆発した。爆発後、彼女は黒焦げになってしまった。しかし、死んでいなく気絶していた。


「あららら、まだ生きてるわ」


アスールが駆け寄って声をかけるも返答はなかった。それと同時にアマリージョが倒れてしまった。急な魔力の使い過ぎで足腰が立っていられなくなったのだろう。それと目も抑えて疼いていた。


「な、何なのこの痛みっ!?あの能力を使ってから目がずっとジンジンするっ!?」


やがてアスールが駆け寄り、アマリージョを抱きかかえた。すると痛みが治まってきたのか、急に静かになった。しかし目は何故かまだ光っていた。その目をよく見ると瞳にはノワールファミリーの紋章が出ていた。次第に目の光が消えていくと共に紋章も消えてまぶたを閉じていった。これは何なのか、二人にはまだ分からなかった。やがてアマリージョが目を開けた時にはただ黄色く染まった目が出て来た。


「大丈夫ですか?!」


「今の所ね・・・なんだか体が痺れていてね・・・まともに立てられないかも・・・」


アマリージョの様子を見て、アスールは近くのソファーに運んで横にさせた。アスールは心配した。


「気分はどうですか?」


「なんか気分が優れないわ。しばらく横にさせて」


まあ、なんやかんやでアスールとアマリージョの勝ちで終わった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「今度はこっちの番よっ!!」


「あ、あなたは・・・!!」


「なんなのよっさっきから!!」


ここではブランになった白沢&ヴェルデVSルーナが戦っていた。ブランルーナはお得意のステルス戦法で戦い、対して二人は速攻戦法で戦っていた。ルーナの触手を避けつつ、透明化を使い攻撃するルーナとはほぼ互角だった。


「なんか目が痛くなってきてるんだけど・・・なんか分かる?」


「分かります、能力を使う度に目がジンジンするのが分かります」


こっちでも目の異変に気付いていたのだ。ブランの方は左目が白く、ヴェルデは右目が緑色に光っていた。能力を使う度に目が光るのでルーナは困惑していた。こいつら、どんな体をしてるんだっ!?と思いつつも触手攻撃を続けてきた。


「流石に攻撃パターンが分かりきって飽きちゃいました。それよりもお姉さんと楽しいことしませんか~?」


「何言ってるんだこの女っ!?頭おかしいんじゃないの!?」


「いえいえ、頭はいつも通り正常ですよ?ほかの攻撃をしないのかな~って思っただけよ」


「わざとらしい言い方をするな。そんなに死にたいなら見せてあげるよ!!」


そう言った途端、地面に黒い穴が無数出て来た。穴と言っても特に沈むとかそういうことはなく、ただ出ているだけだ。二人は不思議そうにしゃがみ込み、触ったりして確かめていた。それでも何も起こらないのでルーナに近づこうとした時、黒い穴から先の尖った触手が無数出て来た。


「「!!!っ」」


間一髪で避けるも机や椅子、壁をも貫通していた。どうやら彼女は殺す気でいるらしい。


「驚いたかっ!?これはね、”陰隠れ攻撃(シャドーダイブ)”と言ってね、僕が作り出した暗黒空間から触手を出すことが出来るんだよ。つまり!!僕が持ってる触手が全部じゃないってことっ!!」


技の性能は理解した。単なる攻撃なら交わせばいいからだ。しかし、黒穴はいつの間にか消えては現れて、触手を突き出すので対処に困っているのも事実だ。


「このっ!?いやらしい所からも攻撃してくるから厄介です!!」


「そんな~彼がここにいてくれたらって思っちゃうよ~!!」


「お兄ちゃんは今は忙しいから、ここは私達が戦うしかないのよ!!」


「そんなに強く言わなくても・・・」


文句を言うブランにヴェルデが強い口調で言い返したため、シュンとなった。しかし、状況が変わらないのは事実だ。このままではいつ串刺しにされるか分からないからだ。


「くははははっ!!そのまま逃げ続けろっ!!刺されないように頑張れよっ!!」


ルーナは余裕の態度を出していた。するとブランはあることに気付いた。


「ねえねえ、この触手、切っちゃわない?」


「な、あなたっ!!こんな状況で何言ってるのですかっ!?」


「今はこれがいいかもってうわぁぁぁっ!!」


ブランはヴェルデに提案するも触手の攻撃で避けることに精一杯になり、喋れる余裕がなかった。しかしそれでも必死にブランはヴェルデに相談した。


「これならもう触手攻撃が出来なくなるんじゃないかなーって思ってるんだけど、どう?」


「私に言わないでください。仮にそれが出来たとしても・・・」


「って後ろっ!危ないっ!!」


ヴェルデの後ろに触手が襲ってきたのでブランはヴェルデに体当たりをして、ぎり回避出来た。そのまま触手は壁のほうへ貫いた。その後、ヴェルデはブランと顔を合わせて


「もうあれこれ言ってる場合じゃありませんね。ここはその作戦でいきましょう」


「そうこなくっちゃ!!」


そうして二人は立ち上がって、腰の鞘から武器を取り出した。ブランはヴァイス・デュランダルを、ヴェルデは疾風之生太刀(しっぷうのいくたち)を取り出して触手を切り始めた。すると硬くなかったのか触手はいとも簡単に斬れてしまった。その隙に残りの触手を全て斬り、終わった頃には黒穴から切られた後の触手の姿だけになっていた。


「よし、これで全ての触手が再起不能になりました。これで攻撃が出来ます」


「自慢の触手が壊れて残念だったね。新しいのを作ってもらったら?」


二人はその隙にルーナに駆け寄り、勝負をつけようとした。しかしルーナは困るどころかニヤニヤと笑っていたのだ。おかしいと思いつつも剣を振りかざそうとしたその時、ガキンッ!!ガキンッ!!と鉄のような何かにぶつかった大きな音がした。


「誰が壊れたって?この触手は自己修復機能が付いてるんだよ!!」


すると斬られてバラバラになった触手が次々とくっつき始めた。やがて元の触手に戻り、再び奇襲をし始めた。二人はルーナの元を離れて出来るだけ触手の攻撃を受けないように避けていた。


「せっかくいいとこまで来たのに~!!これじゃまたピンチだよ~!!」


「まさか、再生するとは!!これはやられました」


改めて触手の性能、彼女の強さに圧倒された。このままでは死んでしまう。何とかしようにも触手をどうにかしないとルーナを倒せないのだ。ヴェルデは冷静に考えつつ風の流れを読んで、攻撃を回避しつつ攻撃の隙を探していた。


(やはり相手の死角に入り込むのは難しいか)


死角へ行って攻撃しようとするも触手が攻撃されれば意味がないと判断した。なので真っ向正面からルーナを倒さないといけない。何か弱点があればこの触手を克服できるが今の所、その様子は見られなかった。それに対しブランはただひたすらに逃げ続けていた。どこまでもやってくる触手の相手をしながら、一生懸命ロビー内を走っていた。


「こんな触手、一体どうすればいいの~!!知恵袋に聞いても答えが出なかったし!!」


「『いや、誰に聞こうとしてんのっ!?』」


あまりの行動にヴェルデとルーナは思わずツッコんでしまった。知恵袋に聞くなんて何を考えているのだっ!?


(あの人があの、学校のマドンナって言われてる人なのっ!?見た目とギャップが全然違いすぎるっ!!)


ヴェルデはつい失望してしまった。こんな人がお兄ちゃんと一緒にいるなんて、何かあったに違いない。益々不安になってきた。


「どうだい?お前らにはもったいない芸だけど、この芸を見ながら死ねるなんて最高だろっ!?この技はね、僕の最強の技なんだよ、今の所。すごすぎて考えられないだろ!?」


「確かにすごすぎて考えられない。で、でも攻略法が分かったかも!!」


!!!!!


その言葉に二人は思わず反応してしまった。この女、さっきの行動の中で考えてたっていうの!?しかもどこで気づいたの!?するとブランは走る方向を変えてある所に走ろうとしていた。


「覚悟なさい!!」


彼女が目掛けた先は・・・ルーナだった。一体どういうこと!?ヴェルデは困惑していた。それに対しルーナは


「とうとう頭がバグって血迷ったようだね。いいだろう、この僕が直々に引導を渡してやろう」


すると前からも触手が襲い掛かって来た。しかしブランは逃げることなくただ走っていた。体を分子化したり、光速で躱したりとまるで興奮した猪のように、馬の女の子のように猪突猛進に走っていた。すると彼女の死海から触手が襲い掛かって来た。触手は彼女の心臓部を目掛けて貫こうとした。しかしその触手はいつの間にか斬られていた。そう、ヴェルデのおかげだ。そのままヴェルデも走り出した。


「どうしたの?急に飛び出したりして?」


「私も分かりません・・・けどあなたの言ったことを疑っちゃって。本当に攻略出来るのかを?」


「・・・!!可愛いぃぃっ!!後でなでなでしていい?」


「そんなことを言わないでくださいっ!!」


「冗談よ。いいわ、見せてあげるわ。この攻略方法(クリアルート)ってものを」


ブランはヴェルデにそう伝え、ただひたすら走った。それを信じるかのようにヴェルデも一緒に走った。迫りかかってくる触手攻撃を交わしながら、ルーナとすぐそばまでの距離に近づいた。


「な、何故攻撃が当たらないっ!?」


「風の動きを捕えたからです」


「襲ってきたら避けるだけ、それだけよ」


「こんな奴ら、今までに見たことが無い。まあ、ここまで近づいたことは褒めてやろう。だがその分、攻撃がこっちに集中しやすいということでもある。今度こそ終わりだーっ!!」


「悪いけどまだ終わらないわ」


ブランはルーナに向かって手をかざした。次の瞬間、手が突然光り出し、辺りを照らし始めた。


「な、目がまぶしいっ!?」


「これ、私も喰らってますよ!?」


これは以前メリウスにも使った天火明(あまのほあかり)だ。まぶしい程の光を出すシンプルな技だが敵をかく乱するにはちょうどいい技だ。ルーナはこの光をもろに喰らっているため、触手の動きが止まったのだ。その隙に二人は腕についてる触手の制御装置を壊した。すると触手は魂が抜けたかのように動きを止め、そのまま床に落ちて行った。


「ば、バカなっ!?僕の触手が・・・っ!!」


ルーナは驚いた。それはそうだ。必須アイテムの触手を壊されたから、これでは攻撃が出来ないからだ。そう、ブランの狙いはこの装置を壊すことだったのだ。そして当の本人はすごく喜んでいる。


「やったーっ!!これで触手攻撃は出来ないね」


「な、何故だ何故だ何故だっ!!?」


ルーナは余計混乱した。するとブランが


「それはさっきの攻撃を見て分かったの。あの触手って無限に生えてくるものかなと思ったら、全てあなたの触手だってことにね。あなたが余裕そうに見えたのはこの触手で守っていたからじゃないの?それにあの黒穴ってわーぷ?ってやつじゃないの?」


「!!!!」


突然のネタばらしにルーナはギョッとした。まさかあの短時間であの技のからくりを見つけるとは。その通りだ。陰隠れ攻撃(シャドーダイブ)はワープ能力を使って、6本の触手を出し入れしていたのだ。つまりワープ能力を応用化した技だということ。それに触手を切っても再生するから、それを操ってる制御装置を壊せばいいと思っていたからだ。この作戦にルーナは驚いてしまった。特に驚いたのはヴェルデだろう。さっき見たのはふざけているのではなく、そこまで計算し尽くした上での行動だったんだということに。


「ふ、私もまだまだね」


自身の詰めの甘さを実感したようだ。一方、とっておきの武器を壊されたルーナはというと。


「く、くそおぉぉぉ!!!こんな奴らにっ!!最強の武器があったのにっ!!」


めちゃくちゃ発狂していた。するとブランが追い打ちを掛けるように


「いくら最強の武器を持ったってそれはあなたの力じゃない。ただその武器に頼っているだけよ。せっかく透明化といういい能力を持っているんだから、それをもっと活用しないと」


と助言をした。しかしそれでもルーナは怒りを露わにして


「うるさいっ!!こうなったら手段は問わないっ!!これでも死ねぇぇぇー!!」


そう言ってポケットから機関銃を取り出し、銃口をブランに向けた。


「くくく、よくも僕に恥をかかせたな。死んで償えっ!!」


そう言って引き金を引こうとすると、何者かが回りをすばやく動いていた。やがて走り終わり、見てみるとそこにはヴェルデが立っていた。


「これであなたの終わりよ」


「はーっ!?」


ヴェルデの言葉にルーナは訳が分からなかった。すると手に持っていた機関銃がバラバラになり始めたのだ。ヴェルデは機関銃を解体もといバラバラに斬っていたのだ。バラバラになった機関銃を見て、ルーナは腰を下ろしてしまった。どうやらビビッているようだ。そのままヴェルデはルーナに近づき、刀を構えた。


「これで終わりよ。”満月斬り”」


刀を丸を描くように動かし、一周回った所で刀を上げそのまま振り下ろした。


「う、うわあぁぁぁぁぁっ!!!」


ルーナは恐怖のあまり動けなくなってしまった。やがて刃がどんどん顔に近づき、顔との距離が短くなった時、寸での所で動きを止めた。顔と刃の距離は数センチぐらいの長さしかなかった。その衝撃波で風が強く吹き、ルーナは倒れてしまった。目を白くさせ、涙を流していた。気絶していた。その後、ヴェルデは刀を鞘に納めルーナを後にした。ブランが駆け寄り


「一体どうして攻撃をやめたの?」


と問うも


「無駄な殺傷はしない」


と言った。しかしこれでブラン&ヴェルデVSルーナの戦いはブランとヴェルデの勝利で終わった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ねえ、ヴィオレって何?」


「私もよく分からないけど、急にこの言葉が浮かんできたのよ」


「それはあれか?急に変身した主人公が事情が分からないのに名前だけ何故か知ってるヒーローみたいなやつ?」


「あんたって時々何を言ってるのか分からない」


「はぁ~い、今度は眠っちゃえ~」


その頃、ノワールとヴィオレはユピーテと応戦していた。平和主義者同士が戦うってなんか面白いな。しかしユピーテもなかなかの強者だ。ヴィオレの植物属性の攻撃をうまく使いながら、ユピーテの攻撃を交わしたりしていた。


「それにしてもあんたってそんなに強かったっけ?いつも家じゃなよなよしてるのに」


「能ある鷹は爪を隠す、能ある者は謙虚である、真の実力者は闇に隠れてるって言うでしょ?」


「最後の言葉は分かんない」


「要するにあっちは演技の僕ってこと」


「なるほど。じゃあ、これからは手加減なしでいいんだね?」


「それは勘弁してください」


と羽交い絞めしてきた。今度は結構強いって痛たたたたっ!!するとユピーテが


「何と言う姉弟愛!!まさしくこれが愛情というものね!!」


と何故か称賛していた。いや何で?やっぱりグレゴリーって変人の集まりなのか?何だかよう分からなくなった。すると後ろから4人やって来た。ブラン、アスール、アマリージョ、ヴェルデだった。


「あ、あれ?もう終わったの?」


と聞くと


「なんか骨の無い奴だった」


「手ごたえが無かった」


とアスール、アマリージョが言い出した。まあ、あのぐらいなら分かる。実際、戦いを見たけどどれも面白くない奴らばかりだな。


「でもこっちは大変だったのよ!危うく殺されるかと思った」


「でもブランさんのおかげで勝利することが出来ました。それにしてもいつまで掴んでるの?」


ヴェルデがそう言うと、ヴィオレは腕を緩めた。やっと解放された。それにしても、夏奈姉といい、秋穂といい、みんな結構仲良しになってるな。おまけに強くなってるし。もしかすると人選力あるかも。


「そ、そんな~。マールスちゃんとルーナちゃんがやられたなんて~もう私だけ~!!」


それと反対にユピーテはかなり困っていた。まあ、二人もやられればそうなるか。となると6:1になるのかな、なんか可哀そうだな。ユピーテの方を振り返るとめちゃくちゃ体が震えていて、膝もがくがくしていた。怖かったんだな~。


「もう結果が見えたし、もうやめにしないか?」


と提案するとユピーテは


「分かりました~!」


と素直に認めた。僕は剣を収め、彼女達を締め上げた。


「聞きたいことは山々あるが、人質はどこにある?」


「そ、それなら~、あの研究所の奥にある保管倉庫です~。みんな衰弱してますが、生きてます~」


「ならそこに仲間を送り込む。お前らは後でたっぷり尋問する」


そう言うと、通信魔法を使ってアインス達に情報を伝えた。あと5分あればこっちにつくだろう。


「お前は僕達が連れていく。それまで・・・」


すると今度は大きな黒い渦が現れ、徐々に引き寄せられていた。な、いつの間にこんな黒い渦を出してきたのか!?頭の中が整理できなかった。彼女達は体を縛っているから出すのは無理だろう。だとすると、ほかの第3者が出しているのか!?すると


「きゃあぁぁぁっ!!!なんかこっちに吸い寄せられるっ!!!」


ブランが吸い寄せられていた。ほかのみんなも頑張って抵抗するも、引っ張られるように前へ引き寄せられていた。まるでブラックホールだな。て僕も引き寄せられてるけど。このままじゃ、みんなが危ない。みんなは机や柱にくっついているが、さらに増強して色んな物を吸い寄せて行った。机や椅子、絨毯や花瓶、さらには壁にヒビが出来て、その崩れた欠片までもが吸い寄せられている。あ、これ絶対逃げられない。僕も柱を掴んでいたが、やがて上下にヒビが生じて柱ごと中に吸い寄せられた。すると彼女達もゾロゾロと吸い寄せられた。


「ぎゃああああああぁぁぁぁぁ!!!」


彼女達の断末魔を叫びながら吸っていった。やがて僕と彼女達を吸い終わると、黒い渦は消えていった。宙に舞っていた家具や欠片も次々と落ちて行った。そこに残ったのは縛り上げられた3人の彼女達と空が見えるまでボロボロになっていったホテルだけだった。ユピーテは状況が把握出来ずに混乱していた。


「一体どういうことなの?何で私達だけ吸ってなかったの?」


「私が助けました」


すると奥の方から声がしたので振り返ると、そこにはグレマーズが来ていた。ユピーテはすぐさまびっくりした。自分より地位が高い人物がここに来ていたからだ。グレマーズはゆっくり近づいて行って、やがてすぐそばまで来ていた。


「あなた方には失望しました。もう5人もやられるとは、あの方もたいそう驚いていらっしゃいます」


「く・・・・!!!」


言い返せない事実に固まってしまった。任務に失敗したのだから、絶対に処罰は避けられない。するとグレマーズは黙って剣を取り出した。根元にシリンダーのような造詣があり、そこから続く黒い刃が途中から無くなって、先端が二股に分かれた剣だ。まさか死んで償えと!!いや、それは分かりきっていたことだ。ここに入った時から覚悟はしていた。


「さようなら、みんな・・・」


ユピーテは目を閉じて、死を覚悟した。しかし、剣は彼女ではなく縄を切ったのだ。縄を斬られて自由になった彼女は二人を抱いて立った。


「なぜ殺さないのですか?」


と聞くとグレマーズは


「私はあなた方の救出の任でここに来ただけです。処分はあの方が決めるのであって、私が決めることではありません」


と答えた。それを聞いて納得はしたが、もう一つ謎はあった。あの黒渦についてだ。


「ああ、あれは私が出した技です。実際はワープゲートですが。あなた方を吸わなかったのは、私があいつらだけを吸うように操作しただけです」


と答えた。これで謎は分かった。


「それにしてもよくここが分かりましたね」


「魔力痕跡を調べただけです。たわいもないです」


そう言うとグレマーズは後ろへと回った。どうやら帰るらしい。


「それともう一つ。あの研究所はもう捨てるとのことです。大した者はないのでそのまま本部へ来てくださいとのことだそうです」


「分かりました~。ありがとうございます」


そう言った直後、グレマーズは黒い緞帳(ブラックカーテン)を出して消えていった。


「こうなってしまったのは残念だけど、また会えないかな?」


そう言い残して、ユピーテも帰った。

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