僕、さいきょーになります
キゲンデをさまよい続けもう数か月になった。体が小さいせいか、なんだかとても壮大に見えてくる。襲ってくるモンスターに殺され、また復活し、そして食べる。これが嫌になるほど毎日続いた。流石の邪竜ジャドラも魂になっているので、威厳が感じられない。いつまでこんな生活をするのだろうか。生きていくのが嫌になった。しかし、死ねない体のため、まさに生き地獄だった。そんなある日、このキゲンデにある一人の人間がおった。その人間は男性で、あるモンスターの集団と戦っている。その数は十匹程群れていた。そのモンスターの見た目は、ムカデみたいで大きく、羽もあって飛んでいて、あごにはハサミみたいなものもあった。ジャドラ曰く、あのモンスターはキング・ミルパッドというらしい。あのモンスターは群れで動き、頭も働きずる賢く、狙った獲物は絶対に逃がさないらしい。あの男性は不幸にも奴らに狙われてしまったんだろう。男性は、かなりの傷を負って、よほど苦戦を強いられたことがよくわかる。男性は剣を振るおうとするも、体が硬いのか、傷一つついていない。その直後後ろから別のキング・ミルパッドが男性の背中をかすった。流石にダメージが効いたのか、男性は倒れこんでしまった。するとキング・ミルパッド達が口を開け、涎を垂らして、今にも食べようとしていた。それを見た僕は、なぜかうずうずしていた。
(あんな奴らに食べられるくらいなら、僕が全て食べてやる!食べるのは、僕の専売特許だからな!!)
そう思って、キング・ミルパッド達の所にいった。キング・ミルパッドも気づいたのか、皆狙いが僕になった。そして、僕は奴らに食われて、一回死んだ。そして、復活して空から覆い被るように体を広げ、キング・ミルパッド達を全て食べた。すると、視覚、聴覚、知能、体力が共に向上した。やはり、今までは弱いモンスターばかり食べてきたから、そんなに力は得られなかったけど、強いモンスターを食べるとさらに力が増してくる。なら、もっと強いモンスターを食べればもっと強くなれるのでは!!そう確信した。そして、男性の所に行き、
「お前も食べてやるから覚悟しな!」
といって食べることにした。すると、男性は
「助けてくれてありがとう。どうせ殺すなら、ひと思いに殺してくれ。あのムカデやろうよりかはマシだと思う。ただ、一つだけ心残りがあるな。」
と震えながら言い出した。きょとんとする僕に対して、男性はロケットペンダントを取り出し、ふたを開けて、ある一つの写真をみせた。その写真には男性ともう一人女性が写っていた。
「これは俺の妻でな、俺の大事な人だ。つい最近、子供がお腹におるって聞いて嬉しかったなぁ。この仕事が終わったら、一緒に子供の名前を決めようって言ったのに、このあり様だ。なんてくそったれな人生だ。最後に子供の顔を見てから死ぬべきだったかなぁ。」
といって、ロケットペンダントを僕に渡して、最後に
「もし妻の所に行ったなら、これを預けてくれないか・・・お願・い・だ・・・」
といって息を引き取った。なぜだろう。生き物を殺しても何も感じないのに、この感情は何だろう。僕はロケットペンダントを持って
「ちゃんと届けるから安心しろ」
といって男性を食べた。すると、今度は体がムズムズしてきて、次第に大きくなって、立てるようになっていた。まだふらつきはするものの、視線は高くなり、手や足も生えてきた。僕もジャドラも驚きを隠せないでいた。
「なっなんじゃこれはー⁉一体どうしたらそうなるんじゃー⁉」
そう、僕は人間の形になっていたのだ。なんで、人間を食べたら、人型になったのか、自分でも整理がつかない状態だった。横からなにか白いものが落ちてきたので確認すると、髪も生えていた。色は白く、ロングの髪だった。そして、あれもあった。見た目は女みたいだが、実際は男だ。ジャドラは驚きながらも落ち着いて
「それでは丸見えだから、何か着るものが必要だ」
と言ってきたので、近くにあった森はいった。木の葉っぱや草、モンスターの死骸や毛皮で服を作ろうとした時だった。指から何かかくかくとした線が伸びた。その線は周りのものに触ると、それらの材料が集まって黒い球体の塊となった。しばらくして、線が指に戻ってきて、辺りを見てみれば、そこにあった木や葉っぱ、モンスターの死骸などがなく、さら地になっていた。ただ、変わったのはそこに出来たばかりの衣類があったこと。二人とも再び驚きながらも、自分には死亡術以外の能力があることがわかった。それは、自分が考えている物を作ることが出来る創造の力だった。
「やはり。もう一つあったのは分かっていたが、まさかものを作る力だったとは!」
ジャドラが驚いてるのをよそに、僕は出来たばかりの服を着た。そして、僕は確信した。
「この力で僕は、最強の存在になってやる!そして、僕をこのような体、もといこんな人生にした相手に復讐してやる!ジャドラ、君もくるか⁈」
ジャドラに問いかけると
「無論、そっちのほうが面白そうじゃ!どこまでもついていくぞ!ノワール様!!!」
そういって二人は手を取り合った。
「そのためには、まず拠点が必要じゃ!どこにするんじゃ?!」
「もちろん、決まっているさ!ここ、キゲンデだよ!ここなら、人もいないし、モンスターに襲われても自力で倒せるし!それに、ここは資源も手付かずのものがたくさんあるから、ここを拠点にしよう!!」と答えた。「面白い!早速やろうではないか!」
とジャドラも賛同し、一緒に資源を集めて、モンスターを倒しながら拠点づくりに励んだ。また、
「次に仲間が必要じゃが、それはどうするんじゃ?」
とジャドラが問いかけた。
「集めるのもめんどくさいからなぁ~。う~ん。そうだ、だったら自分で作ればいい!」
と答えた。
「なんと、それは面白い!早速やろう!で、どうするんじゃ?」
「僕の力は死んだ者の魂を操ることができるからたくさん魂を使って、創造の力、創造術《ツクリマクリ》で作れば簡単だよ!」
「なるほど!創造術か!いい名前だ。それなら、たくさん作ることが可能だな!ここは死んだ者の魂が多くうようよしておるからな!」
そういって、二人で拠点や仲間を作っていった。