超人姉妹達は異世界でも余裕で生き抜くようです!
「な、何なの・・・これ?」
「これは・・・まさか、異世界特典って奴っ!?」
「何それ」
その頃、三人は突然光り出した石を見た後、また頭痛が起こった。三人共、頭を抱えてその場に倒れこんだ。白沢と宝華はこの状況を理解したが、マールス、ルーナ、ユピーテは今一つ理解出来なかった。当たり前か。石は春香は左、夏奈と秋穂は右の目に入って行った。その後、黒いオーラを発しながら包んでいき、やがて黒い衣装へと変わっていった。
「こ、こんな際どいものを着るなんて・・・私ってまだ大丈夫だよね?」
春香は髪がシニヨンで紫色に染まり、黒のコート、腹が大きく出た黒い全身ラバースーツを着ていた。それに腰には紫の布を巻いている。
「こんな衣装を着るとは・・・なかなかいい着心地だ、快感!!」
夏奈の髪は黄色で黒のインナーカラーが入っている。睫毛や唇も特徴的で長身かつスレンダーな体格になってる。それに黒いコート、フード付きの全身黒ラバースーツを着ていた。コートを脱ぐと、背中が大きく出ていた。
「わ、私の衣装ってこんな破廉恥な物だなんて・・・やっぱりお兄ちゃんの趣味、むごすぎる」
秋穂は緑髪で、黒いコートとブーツ、胸が赤黒の胸がはち切れんばかりの着物のようなハイグレ姿、下にはミニスカを着用している。それにしても、おっきい、胸が。あの胸の中に顔を突っ込んでみたいと白沢はつい考えたしまった。それに秋穂ちゃんは髪がロングになってて、ポニーテールになってるからまた一段と可愛くなってるし。これは興奮するのが我慢出来ないと白沢は悟った。
「な、なななな何なのですか、あなた方は!?そ、そんな露出度の高い服装で・・・」
「何恥ずかしがってるの?もしかして人生でこんな服を着たことないとか・・・」
「だ、黙りなさい!!」
マールスは夏奈を激しく叱責した。そんな恥ずかしいものじゃないのに。
「な、何であっちは福相で僕は貧相なんだよっ!?」
「あなたはまだまだ成長期だからいくらでも変えられるんじゃない?」
「もう成長期終わってるしっ!!」
ルーナは秋穂にすごく激怒していた。それもそのはず、あっちが大きいのに対して、こっちはもうあるのかないのか分からない所に立ってる訳だから、心底羨ましくなったんだろう。
「あらあら、とても変わっちゃっていますね。それにそんなにおなかを出すなんて、とてもいやらしいですわ」
「あんたも同じよ」
ユピーテと春香はお互いの衣装で揉め会っちゃってる。するとどこからか黒い線が三本伸びてきて、春香、夏奈、秋穂の体に刺さった。もちろん白沢と宝華は分かっていたが、後のみんなは訳が分からなかった。
「な、何なの、これ?」
「この黒い物は一体?」
「ふえ~っ!もう訳が分かんない」
三人は驚くも、体から何かが溜まっていくのを感じた。まるで体の中で爆発し合っている感覚だ。やがて奥から、黒季がやって来た。どうやら何事もなかったかのようにやって来た。本当に頑丈だな。
「お前たちに僕の魔力を与え、戦う力も与えた。さあ、ここからはお前達が戦うのだっ!!」
春香「結局人任せなんかいっ!!」
夏奈「今度こそ、我の力を振るう時が!!」
秋穂「ふざけないでいくよ」
すると三人の将軍が
マールス「いいでしょう。今度はあなた方も倒してあげます」
ルーナ「この僕に恥をかかせたことを後悔するがいい!!」
ユピーテ「こらこら、ここは平和的方法で倒しましょうよ」
と戦う素振りを見せた。どうやら相手も本気らしい。とてつもないオーラを発している感じがした。
春香「いいわ、弟をいじめていいのはこの姉である私だけよ!!」
夏奈「弟の仇をとってみせるわ!!」
秋穂「お兄ちゃんがいないと帰れなくなるからお兄ちゃんを倒すな!!」
宝華「なんか、私情入れすぎじゃない?」
こうして黒い三姉妹VS三人の将軍の戦いが始まったのであった。
白沢「みんな~、頑張れ~!!」
宝華「私達・・・いつまでこの怪我状態でいなきゃいけないの・・・?」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「面白い情報を手に入れました」
とある屋敷にある男が入って行った。ある部屋に入って、そこで誰かと話していた。
「本当に存在するんだろうな?あれは・・・」
「もちろんです。この報告書に書いてある通りです。今は彼女達が相手にしていますので」
「しくじらないんだろうな。あれの回収を急がねば、いつまでも野放しにしては我々の計画の妨げになるぞ」
「もしものことがあれば、その時は私が出動します」
「そうか、では頼んだぞ」
そう言って男は消えてしまった。
「グレマーズめ、ネズミのようにこそこそと動くから使いやすいな」
ポツンと残された部屋で誰かが呟いてた。さっきやって来た男はグレマーズだったのだ。この人物とどんな関係か、あれとは何か、この時は知る由もなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、ホテルのロビーで6人は戦っていた。春香VSユピーテ、夏奈VSマールス、秋穂VSルーナ、戦況は今だにどっちが有利な立場か分からない。
「私の炎で黒焦げになりなさい」
「そのセリフ、なかなかかっこいいね」
マールスの炎攻撃を見事交わした夏奈は黒季からもらったナイフ”山吹之刃で背中を突き刺そうとするも相手も見事交わした。
「なかなかやりますね」
「そっちもよく分かったわね」
一方秋穂とルーナは相手の攻撃をお互い交わしながらも徐々に追い詰めていた。
「くっ、僕の攻撃を喰らわないで生き残る人は初めて見たよ」
「私も何でか分からないけど、体が勝手に動くの!?」
まるで相手の攻撃を見切るように体が動くので、自身も不思議がっていた。それに突然出て来た刀”疾風之生太刀”が攻撃を交わしていたのだ。これにより、ルーナの攻撃を交わしながら攻撃することが出来るのだ。それに春香VSユピーテでは
「どうして私の能力が効かないの?」
「私に聞かれても分からない」
どうやらユピーテの能力が効かなく、春香の方が有利になっていた。その隙に手に持ってた鞭”蛇姫之鞭”を使ってユピーテを攻撃していた。
「痛いわぁ~!!もっと優しくして~!!」
「悪いけど、私手加減ってものを知らないのよね!」
何か春香姉、楽しそうだな。それに夏奈姉も華麗に攻撃を交わしていってるし、秋穂も敵の攻撃を見切っているし、なかなかセンスがあるな。これは面白くなってきた。
「あの~、私達が行かなくてもいいの?」
「まあ、大丈夫じゃけぇ、心配せんでええよ」
白沢は不安になっていたが、彼女達にはシャドウがおるし、その実力を見てみたいから見守ることにした。と思っていた矢先、マールスが先に動き出した。
「この、私をあまりじらさないで頂きたいですね!!”火妖灯”」
するとマールスの周りに赤い火の玉みたいなものが出て来た。これが彼女の技なのか!?すると手のひらをかざすとそこから火の玉が発射され、夏奈に目掛けて襲ってきた。夏奈は攻撃を避けようとするが、何と遠くへいった火の玉がUターンして戻って来たのだ。どうやらこの攻撃、当たるまで追いかけてくるから面倒くさいな。しかも全発放ったから、全発共襲って来てる。
「ちょっと~流石にこれは難しいな~」
「逃げてもいいですが、あなたをずっと追いかけますよ」
彼女の言う通り、火の玉はずっと追いかけてきている。このままではいつ他の二人に当たるかも分からない。すると夏奈は止まってしまった。そして数発が夏奈に当たってしまい体が燃え始めていた。
「ふっふふふ!!逃げられないって分かって死を選びましたか。まあいいでしょう、残りの彼女達を集めればいいだけですから」
マールスは勝利の余韻に浸っていた。この調子で火妖灯を使っては夏奈に命中させた。どうやらマールスの有利になっていた。
「勝負あったようですね」
「まだ終わっていませんよ」
その時、後ろから聞き覚えのある声がしてきて、振り返って見た。するとそこには燃えてしまっているはずの彼女・・・夏奈が立っていたのだ。あまりの衝撃にマールスは驚いてしまった。
「な、何故あなたがここにいるのっ!?あなたは確かに燃えたはず・・・!!」
「そう、確かに私は燃えちゃったわ!!だから事前にこの服で守りを作っていたの。案外便利よ、これ伸縮自在だから布みたいに包まることも出来るし。それにあんな火の玉を姉さんや弟、妹達に当たったら危ないしね」
そう彼女は二次被害を防ぐために自ら的にしたのだ。その結果、見事火の玉は百発百中夏奈に当たり、燃えてしまった。それより何この戦闘服について色々知ったか、実は魔力を与えた時に色々情報を伝えたため、すぐに対応が出来たのだ。
「ば、バカなっ!?こんな・・・こんなことが・・・」
勝利の余韻に浸しすぎていたのか、それとも彼女が死んだことに油断してしまったのか、マールスは酷くショックを受けていた。
「そういえば名乗ってなかったね。私の名はアマリージョ。ちょっとビリッとしちゃう女だゾっ!!」
彼女は自身の自己紹介をしたが、あまりにも痛すぎる紹介だな。いや、元々痛いか。アマリージョってどうやってそんな難しい言葉覚えたのっ!?それに手になんか電気を帯びてる。これはもしや・・・!!
「こ、このーーー!!もう一度、燃やしてやるぅ!!”火怒竜”」
マールスは怒りだして、両手に燃え上がる炎を生み出した。その炎は形を変えて、二匹の龍が出来た。これを喰らうと確実に焼死するな、一般の人間は。
「これで死にな・・・」
「サンダーボルト」
夏奈は指先から電撃を放ってマールスの体に直撃した。するとマールスはもろに喰らってしまい、感電し倒れこんだ。そう、夏奈姉に与えた能力、それは”麻痺術”だ。その名の通り、電気を操る能力で相手を痺れさせる電力を放つことが可能だ。ちなみにプラグを持つだけでスマホの充電、エアコンや掃除機、冷蔵庫などを稼働させることが出来るコンセント人間にもなれる。なので電気代を節約したい人にはありがたい能力だ。もちろん、応用すれば強い戦闘能力にもなるが。まあ余談は置いといて、マールスは電気を浴びたせいか火怒羅が消えてしまった。しばらく電気が走っていたのか、彼女は動かなくなってしまったがやがて体を震えさせながら起きた。
「こ、これは・・・地味に嫌な・・・能力ですね・・・」
「これでも手加減したほうなんだけど」
「これは・・・手加減ではなく・・・もはや殺人並みの電力でしたよ・・・」
「ごめんね~私、手加減を知らない人だから~。ていうかこの能力、最っ高にクールだぜっ!!」
この能力がクールなのかは分からないけど、手加減を知らないってのは何か怖いな。もしものことで能力を使われると厄介になってくるし。与える能力間違えたかな?それに白沢、宝華、マールスもみんな固まっちゃってるし、さっきの一撃がどんなにすごいことかが伝わってくるし。
「ねえねえ、もうそろそろ終わりにしない?何かこういうの飽きてきた」
「ふ、ふざけんな・・・戦いを放棄する気か・・・!!」
「バッカやろうっ!!もうこれ以上はあなたが持たないってことよっ!!無茶するんじゃねぇー!!」
「な・・・!!」
夏奈姉のいい所ってどんな人にも情けをかけることが出来る所だ。例えば、好物のコーラを子供がこぼしても叱らずに許してくれたり、相手が姉さんの服を汚してしまっても優しく接したりと相手のことを考えて行動をするのが得意なのだ。この性格のおかげで高校生活でも人望が良くて、充実した生活を送っているのだ。だから相手が敵でも馬鹿にするような真似はしないのだ。
「敵に情けを掛けるなど・・・私には不要だ・・・。私は偽善者を倒すため・・・生まれて来たのだ」
「分かってないね、あなたは戦うために生きてるんじゃない。もっと楽しいことをするために生まれて来たのよ。そんな復讐の人生など糞喰らえよっ!!」
「なら、私と戦え。私に見せてみろ・・・楽しいってものを」
夏奈姉が説得するも彼女の耳には届かなかった。むしろ彼女なりの戦い方があるのだろうか。僕は彼女を見て、ウェヌスと同じ人間だと感じた。
「そこまで言うなら仕方がないね。いいわ、私が教えてあげるわ!楽しいってものを!!」
こうしてマールスとアマリージョは再び戦い始めたのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、秋穂VSルーナはというと。
「ちょこまかと動きおって!!僕の攻撃が全然当たらない・・・」
「私も何がなんだか・・・」
何かこっちはお互い訳が分からない状況で戦っているから泥沼戦になっていた。相手は相手で攻撃が全然当たらないから困惑してるし、秋穂は秋穂で今の状況が分からなくなってるし、これはこれで面白いな。ずっと見てみたいけど、延長戦は嫌いだから早めに済ましてね。
「しかしお前に攻撃を当てなくとも、確実に倒せる方法ならあるけど」
「何よ、急に?!」
「こういうことさ」
するとルーナは手を上げて、そのまま後ろに降ろした。一体何をしているのか?と考えていると、すぐ重大なことに気付いた。何と後ろには三人の姿が見えた。もしかしてあの三人に攻撃をする気なの?!そう思い、全速力で三人の前に現れた。すると案の定、秋穂の右肩が何かに切られた。結構深く刺さったらしく、肩を抑えながら跪いた。
「うわああああーっ!!」
「大丈夫かっ!!待ってろ、今すぐ回復させてやる!!」
僕はポケットからポーションを取り出すと、今度は後ろから何かが刺さった。どうやら彼女の透明長棘鞭だな。
「はははははっ!!どうだっ!言った通りになっただろっ!!今まで調子に乗りやがって。今度こそ終わりにしてやるよ!!今度は二人まとめてな」
ルーナはもう一度手をかざし、僕と秋穂に向かって降ろそうとした。すると秋穂が
「危ない!!お兄ちゃん」
と大声で叫んだ。そして手を振り下ろし、二人を貫通しようとした時だった。寸での所で何かに弾き返されたのだ。よく見ると刀だ。秋穂が刀を左で構えて防いでくれたのだ。
「な、あいつまだ動けるのかっ!?」
「左手が動ければまだ大丈夫よ」
その声は秋穂自身の声だが何かが違った。まるで何かに憑りつかれたかのように刀を構えだしたのだ。右肩の傷はいつの間にか治っていた。下の方に空になったポーションがあったからそれを飲んだのだろう。
「貴様っ何者だっ!?」
どうやらルーナは何かに気付いたらしい。違和感といい、さっきまでと雰囲気が違っていたのだ。すると秋穂がルーナに向かって
「私はヴェルデ。家族思いの妹です」
と説明しだした。ヴェルデ?家族思い?妹?ルーナには全く理解出来なかった。むしろさっきまでと魔力やオーラが違うことに驚いた。まあ僕が驚いたのはあいつがヴェルデって単語を知ってるということだ。何で知ってるの?
「ま、まあどんな奴が来ようとも僕の能力の前では無力何だよ!!」
そう言ってヴェルデに攻撃するも、それをあたかも読んでたかのようにヴェルデは攻撃を刀で防いだ。そしてヴェルデはあることに気付いた。
「あなたの攻略法が分かりました。あなた、透明だと言いましたよね。つまりあなたの能力は透明化ですね。だからあなたに攻撃すればその透明化も解除するということではないでしょうか?」
その答えにルーナはギクッとなった。どうやらそのようだな。
「ど、どこで分かった・・・?!」
「あなた、透明人間になれるんですよね。なら本体を攻撃するだけですので簡単なことです」
「僕が鞭を透明化させたのに何故避けられたんだ!?」
「それは風の流れを読んだだけです。あなたが鞭を振るおうとすると必ず風が起こりますから、その風の流れを掴んで避けただけです」
「な、なんだとっ!?」
流石だな、風の流れを掴むとはなかなか難しいぞ。それで攻撃を交わして秋穂を守った訳だな。それにルーナの能力は透明化だったのか。これはちょっと驚いたな。
「ふふふ、そうだ。僕の能力は”死者の子供”、透明能力さ。僕に触れた者は透明になる、もちろん僕自身も。ただ、その時は時間制限があるし、決行魔力を消費するからあまり多くは使わないんだけどね」
「やはりそうでしたか。能力が分かればだいたい攻略は可能です。あとはあなたを始末するだけです」
「そんな悠長なことを言ってると痛い目を見るよ・・・”透明魔弾”」
そう言ってルーナは手をピストル状に変えた。狙いはヴェルデの方でそこから見えない弾が射出された。貫通はしないが銃に撃たれた感覚の痛みはあるらしい。しかしヴェルデはそれでも刀で全弾防いだ。
「な、何でだ!?何で全部防いだのっ!?」
「言ったはずです。風の流れを読んだと」
これはこれで使えるな。相手の攻撃を避けることが出来る、つまり予知することが出来るということだ。
「今度はこっちの番ですね。”疾風乱舞”」
ヴェルデは左手をかざすと、そこから風が吹いて来てやがて竜巻状になり、ルーナに当てた。そのまま竜巻は前へ進んでやがて壁にぶつかった。そこは大きな跡が出来ていた。
「こ、この・・・。何だこの力は・・・!?」
「これが私の能力”暴風術”の力よ」
暴風術、その名の通り風を操ることが出来る能力だ。もちろん風を使うだけじゃなく、風の動きを読んだり、風速や風向き、さらには温度もコントロール可能だ。洗濯物を早く乾かすことが出来たり、風力発電では役に立つこと間違いなしだ。
「なるほど・・・だから風を読めるのか・・・これは面白くなってきた」
奥からルーナがやって来て自身の姿を消した。ヴェルデは辺りを見渡すも流石に透明になるとどこにいるは分からなかった。するとどこからか声が聞こえて
「君に攻撃しても面白くないから別の奴に攻撃をしようじゃないか」
と宣言した。すると宣言通り、僕の両手を切ってきたのだ。ちょうど一瞬の出来事だ。両手はそのまま落ちて行った。まあスライムだから痛みはないけど。しかしヴェルデの方を見てみると何かさっきと違う何かを放っていた。これは・・・怒りか?
「よくも・・・よくも・・・よくもお兄ちゃんの手を切ってくれたわね!!」
ヴェルデは怒り心頭だった。
「お兄ちゃんに傷をつけた恨み、一生許さないからね」
でも何か言ってることは怖いんだよね。でも僕スライムだから手を切られても問題ないけど。それにしてもあいつ、どうやって攻撃したんだ?透明化は分かったが、鋭い凶器を持ってそうには思わないな。もしかしてもう武器を装備しているのか?!
「ふふ、お察しの通り僕の腕にはある装備がしてあるのさ。今見せてあげるよ」
そう言うとルーナは透明化を解除し、腕には何やら触手みたいなものが出て来た。数は四本あり、その先端は尖っていた。なるほど、今までもこうやって戦ってきたんだな。
「このアームはいかつい学者野郎につけられたものだけど、慣れれば案外楽しいぞ!」
「なるほど、その触手で私とお兄ちゃんを切りつけたのですね」
「そうさ、驚いたかっ!?」
「いえ、別に」
別におぉっ!!てはならないな、もう何でもありの世界だからね。それにしてもよく出来た触手だ。生きてるみたいにうねっているし、よく扱えたな。すると奥から鋭い悲鳴が出た。
「う、うぎゃあぁぁぁーっ!!!」
声の主は宝華だった。そういえばあいつ、触手系苦手だったな。うねうねしているのが気持ち悪いとかどうとか。あいつはこいつと相性が悪いな。
「この触手を見て驚いたな。しかしこいつには自己学習機能が付いていて、勝手に学習していくんだ。どの攻撃パターンをすればいいとか、どこから攻撃してくるのかとか、こいつはまさに最強の武器だ!!」
言われてみればそうかもね。自己学習機能なんてもはやAIを搭載してるもんか。これは難しかったかな。しかしそれでもヴェルデの目は変わっていなかった。
「ふ、こんなちんけな触手、私とお兄ちゃんを引き裂こうとするなんて100年早いわよ!!」
今度は何をいってるの?!ようお兄ちゃん愛を全開にするね。一体どうしてそうなった?
「面白い。触手よ、消えろ。今度こそ引導を渡してやるよ!!」
「面白いですわ。この邪魔猫を倒してお兄ちゃんに褒められたいですわ。なので死んでください!!」
二人して怖いこと言うな。なんやかんやで再び戦い始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
時は同じく今度は春香姉VSユピーテ。こっちはほのぼのとした戦いが繰り広げられていた。
「こらぁ~、そんなに攻撃しないでぇ~」
「私も出来れば戦いたくないけど・・・」
お互いまともに戦う様子ではなく、ただ春香姉が一方的に鞭で叩いているだけだった。それに相手も戦う素振りを見せない。このまま終わってくれたらうれしいけど。
「ここは平和的にいきましょうよ。そうだっ!お茶でもいかがですか?」
「この状況で何言ってるの!?まあ、ちょうど喉が渇いていた所だし」
そう言うとユピーテはティーカップとポットを乗せたワゴンを持って来て、お茶を入れ始めた。それに伴い春香も椅子に座って優雅にお茶をし始めた。本当に何しに来たんだろう?お茶を飲みながら春香は
「どうしてあなたは戦いたくないの?ほかのみんなと違って」
と質問し始めた。すると
「そんなの理由は一つよ。私は戦いが嫌なだけ」
と端的に答えた。
「え!?それならどうしてこんな組織に入ったの?!ここに入れば・・・」
「それは十分承知してるわ。ただ、私は家族がいるの。弟と妹がね。うちの両親は戦争で亡くなってね、それで長女である私が女手一つで育てたわけ。たくさん仕事をして、お金を稼いだけれどそれでも貧しかったわ。そんな時にこの組織の求人を見つけたの。ここなら給料もいいし、組織の関係者が家族を助けてくれるって。私はとても喜んだわ。どんな雑用でもこなすつもりでいたけれど・・・」
ユピーテはどもってしまった。何か言いたくないことがあるのだろうか。その後、再び口を開き
「私、ある時に戦場に呼び出されたの。お前の能力が必要だって。私の能力はさっき見た通り、フェロモンを扱う能力だから。その能力を知った彼らは私をいつも戦場に呼び出してね、いつの間にか今の地位になっちゃったけど。この地位にいれば給料も高くなるし、家族を養っていけれる。そう思っていたのだけど、この地位になって分かったの。私達は戦争で人を殺しに行き、人を誘拐するってな。驚いたわ、憎んでいた戦争を、家族を奪った戦争を自分がするなんてね。でもそれしか家族を救えないって思ったの」
彼女の言葉に春香は黙ってしまった。これが彼女の現実なのか?!そう考えると背筋がゾクッとした。それに彼女の言い分は分かる気がする。自分も同じ長女で同じ境遇にいる同士、共感出来るのだった。自分も家族を守るためなら、彼女と同じことをしたのかもしれない。しかし
「あなたの言い分は分かったわ。でもねどんな理由があろうともこんなことをしてはいけないの。私も同じ長女だからすごく共感出来る所はあるけど、人の道を誤ってはいけないの。こんなことを言うのは辛いけど、私は弟と妹、生徒を傷つけたあなたを許さないわ。だから・・・もうこんなことはやめて」
春香は自分の思いを伝えた。これで彼女が納得してくれればうれしいけれど。すると
「あなたの言いたいこと、分かる気がするわ。私にはそんな勇気がなかったから・・・なのね。私もあなたみたいに心を広く持てば良かったわ。それでも私は大事な家族のためにあなた達と戦うわ」
どうやら戦う運命は避けられないらしい。しかし、春香は分かっていると言わんばかりに黙って椅子から立った。
「分かったわ。あなたを倒して、自由にしてあげるわ」
「ええ、かかってきなさい。その前に一つ、ありがとう。こんな私のために説教をしてくれて」
そう言って二人は構えのポーズをとった。そして春香は
「私はヴィオレ。あなたを救う者」
と名乗った。ユピーテも
「私はユピーテ。あなたを倒すもの。そして平和を愛する者でもあるわ」
と名乗った。その後、ユピーテは大きな剣を取り出した。ヴィオレも鞭を取り出したが、お互いじっと見つめて動かなかった。緊張感が走る空気。二人は未だに動こうとはしなかった。そして奥から爆風が来て、マールスが壁にぶつかった。そして壁の欠片が落ちた時、二人は同時に動いた。徐々に迫って行って、剣と鞭がぶつかった。お互い鍔迫り合いになり、両方押していた。そして距離をとって、椅子などの障害物をよけながら二人は横へ走って行った。そしてまた剣と鞭がぶつかった。無知は剣を打って、剣は鞭の攻撃を交わしていた。やがて剣の剣身に鞭が絡まって、そのまま剣を引き上げた。
「なかなかやるね。まるで初心者とは思えないわ」
「そっちも私の鞭捌きを簡単に防げるなんて」
「今度は能力勝負よ~!!”猛毒鱗粉”」
そう言って手から紫色のミストを放った。その名の通り、猛毒の霧で当たったらすぐに死にそうだ。しかしヴィオレも負けずと
「恐ろしい技みたいだけれど、私には毒が効かないのよね。”木奇怪魁”」
そう言うとヴィオレも手から木の幹を出して、ユピーテに目掛けた。春香もといヴィオレの能力、それは”栽培術”だ。もちろんオリジナル能力で、植物を自在に操ることが出来る能力だ。それに砂漠や荒れ地でも植物が育つ力もあり、枯れかけてる植物やまだ苗状態の植物の成長を促すことも出来る、まさに地球に優しい能力だ。地球温暖化防止にもなるし。それに毒性の植物も扱えるため、毒にも効かないのだ。ただ弱点もあって、植物なのか喉が異常に乾きやすいけど。
「すごい技ね。でもこのスピードなら誰でも避けられるわ」
「今のは試し運転よ。どんな力かなって」
「そうなのね~。でもこの幹のおかげであなたに近づけられるわ」
ユピーテは今出した幹の上に乗って走り出した。しかしそれもヴィオレの計算内だ。こうなることは予測済みらしい。
「ではまたこっちから。”源木森護”」
すると木の幹から何やら細い植物が生えてきて、ユピーテの体に絡みついた。この技は相手の魔力を吸いとる技で、吸い取った魔力は養分として体に蓄えられるそうだ。まるで植物みたいな力だな・・・て植物か。
「私の体から魔力を吸いとるなんてなんて豪快な。なら”発火煙幕”」
すると今度はあちらこちらから火が出始めた。さっきの技は着火能力の技らしい。やがて火は木の幹を燃え始めていき、このままでは火事になりそうだった。しかしそれでもヴィオレは何事もなかったかのように
「私、世界史と理科全般は得意なの。だからどうやって火を止めるかは知ってるのよ」
と言った直後、今度は別の木が生えてきた。どうやら銀杏の木だ。
「知ってる?銀杏って水分が多いから燃えにくいのよね」
「ええ~っ!?そんなの知らなかったぁ~!!」
「わざとらしい。それよりも自分のことを優先したら?自分の能力で火がそっち燃えちゃってるけど」
「問題ありませんわ。”霧状の鎧”」
「何だ、緊急用の技があるのね」
霧状の鎧、この能力は体を霧状にすることで攻撃を回避する技だ。これならどんな状況でも脱出可能だな。やがて霧が集まって体を形成していった。
「あなた、なかなかやりますわね。こんな人、初めてです!!」
「それはこっちも!!あんた、結構しぶといのね!!」
「それは誉め言葉じゃないですよ!!」
「ごめん、ごめん。じゃあ早速再開しましょう!!」
「そう来なくっては!!」
二人は再び戦い始めた。アマリージョ、ヴェルデ、ヴィオレの戦闘を見た黒季は
「これはなかなか使えるぞ!まさか、姉さんと妹がこんなに強かったなんて!!案外近くにいたんだな!!」
と評価した。すると隣で見ていた宝華は
「あの~私達も参加しなくていいの?」
と質問してきた。ピンチだったのに何言ってるんだろう、面白いな。まあ、これだけ見れば十分か。後は帰って分析すれば、面白いぉとが分かってくるかも。
黒季「よし!満を持していくとするか!」
白沢「やっと戦えるわ!!」
有川「今度は負けないわ!!」
黒木&白沢「「本当に?」」
有川「あ、あれはっ・・・そ、そう、油断しただけよ!!」
非は認めたくないんだな。




