しすシスッ!
同時刻、とある教会の廃墟にさっきのローブの人物がいた。ここで待ち合わせをしてるそうだ。暗い廃教会でしばらく待ってると、入り口の方から遅れて誰かがやって来た。相手もローブをして、顔が分からなかった。しかしお互い警戒することなく、すんなり近寄った。
「例の件、どうなっている?あれから随分と時間がたったぞ」
「問題ないわ、こっちは片付いた。それよりそっちは大丈夫なの?」
「他人の心配とは、随分余裕だねぇ。それよりも自分自身のことを心配したらどうだ?」
「自分のことは自分がよく分かっています。それに心配ぐらいはしてもいいと思いますが」
もう一人の人物は舌打ちをしながらも、懐から何かを取り出した。それは何やら書類のようだ。
「これは・・・?」
と問いかけると
「お前に頼まれた例の資料だ。ここまで集めるのに苦労したぞ。しかしよくこんな物を欲しがるな」
どうやら何かの機密情報らしい。そこにはびっしり書かれた紙が何重と重ねてあった。その題名は”魔神サタナエルの研究資料”と”13年前の爆発事故事件について”と書かれていた。
「まさかこれを欲しがる奴がいるとはって思ったけど、あんたなら少し納得したわ。それでこれをどうするんだ?」
「ありがとう、これだけあれば十分だわ。後は自分でやるから今日は先に帰って」
そう言うともう一人のローブ人物は廃教会を出て行った。しかし魔神サタナエルの研究資料と一緒に送られた13年前の爆発事故事件とは何なのか、それは本人も詳しくは分からなかった。唯一分かるのは、あるグレゴリーの研究施設が謎の爆発をしたっという所までだ。単なる爆発事故ならまだしも、何故か上層部はこの事件を揉み消していたのだ。きっとそこに何があるのか、当の本人も確かめたくなったそうだ。
「これで奴らの秘密が分かるかも」
その後、謎の人物は廃教会を出て行った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、セブンブレイ王国にて。研究所内では突然と開く扉にみんな驚いていた。今日はほかに来賓の予定がないからだ。研究員は急いで奥へ逃げて、尖兵が扉の前に立ち武器を構えていた。やがて開き終えるとそこには誰もいなかった。おかしいと思い、一人の団員が近づいてみると外にも誰もいなかった。しばらく探しても何も見つからなかったため、中に入ろうとすると突然団員が倒れてしまった。それに続き、次々と団員が倒れていき、やがてこの場にいた全員が倒れてしまった。もちろん彼らは死んでいる。そう、これは間違いなく彼の仕業だ。邪魂吸収でここにいる全員の生命エネルギーを抜き取ったのだ。
「ふー、ここならバレずに済んだ」
すると天井からべチャッと何かが落ちて来た。色は黒く、何やらぬるぬるしていた。すると謎の物体が動き出し、やがて人型のように変わって行った。そう、これが彼の力で彼の体の正体だ。100%全部スライムで出来ていて、ちょっとの隙間でもスライムになればするするっと通り抜けることが出来る。それに粘着性もあるため、壁などにへばりつくことも可能だ。そういえば彼女達はって?もちろん大事に守っている。すると腹のあたりから波紋が出てきて、そこから手が出て来た。それは彼女達の誰かの手でやがて全身が出て来た。最初に出たのは宝華だ。それからも次々と排出された。
「どうだった、ここなら安心でしょ」
「安心どころか息苦しくて大変だったわっ!もっと他にいい方法なかったわけっ!?」
当然宝華はカンカンだ。それはみんな同じで批判が殺到した。一応安心なのに。気を取り直して中に入って行った。そこは何かの研究施設で大きなカプセルや薬品、コンピューターなどこの世界ではありえない物が多く散乱していた。念のためにポケットからマグナムを取り出し前へ進んだ。恐る恐る進むも誰もいなかったので、服装を変えることにした。
「白沢と宝華は僕の魔力を注入してるから、すぐ変えることが出来るよ」
そういえばまだ説明してなかったな。あの黒い服は普段は目に見えない魔力として体内に取り込んでいるが、充分な魔力があれば自分の意思で変えることが可能だ。それにスライム製でスライム状だからいつでも変身出来るし、わざわざ更衣室で着替える時間も短縮出来るのだ。それを見た夏奈姉はさらに興奮してしまい
「一体それは何っ!!こんな屈託の黒色見たことが無いっ!!私も着たーいっ!!」
本当に姉さんだよね?それに春香姉も僕の姿を見て
「なんか懐かしい雰囲気ね。昔もこれを着とったような気がするわ」
いや覚えていたんかい。秋穂はこの姿を見てちょっと引いていた。
「お兄ちゃんの衣装はともかく、白沢さん達の衣装、際どくない?お兄ちゃんの趣味なのこれ?絶対きたくないこれ」
趣味でもないし、かっこいいんだけどね。引かれるとちょっとショックだな。でも性能は抜群にいいんだけどな。まあそれはさておき、しばらく中を散策することにしよう。それにしても気味の悪い研究をしてるんだな。よく見るとビーカーや三角フラスコ、試験管の中に変な色の液体が入っている。しかもその近くには注射器が転がってるし。それに何か装置が置いてあったので開けてみると、そこには血やDNAが入った試験官がびっしりと入っていた。ここでどのような実験をしてたのか大方予想が出来た。ここではカオスの製造もやってるんだな。血を抜き取ってモンスターのDNAなどを混ぜて注入し、カオス製造の実験をしてる。なんとも気味が悪い実験をしてるんだ。
「わ、私、気分が悪くなってきた・・・」
どうやら白沢はこの空気に慣れないらし。まあ普通はそうか。でもまだあるってことはまだ閉じ込められてる人がいるってことだ。彼女達のことを考えて、そっちを優先しよう。すると夏奈姉が
「ねえ、これって・・・」
そう言って指を指したのはあるモニターの画像だった。そのモニターは途中で止まっていて、何かの研究データのようだ。みんなでモニターの前に行って確認をすることにした。そこに映ってたのは・・・カオスの研究についてだった。カオスは元々誰かが作り出した怪物のようだ。それに人間の感情によって姿や能力が変わるらしく、特に女性が適合率が高く女性の体内にカオスの種を入れることにより、身体からカオスを人為的に作り出すというあまりにも気色悪いものが出て来た。それにカオスを生み出した女性はそのまま死んでいくようだ。この事実を見た宝華はあまりのショックに倒れこんでしまった。それに続き、白沢や姉さん、妹もショックで固まってしまった。
「そ、そんな・・・。女性をさらい続ける理由がこれだなんて・・・」
「残念だけど、これが奴らのやってることだ。この先、こういうことが続くけど覚悟はいいか?」
白沢に確認すると、震えながらも立ち上がって
「それでもやるわ。こんなことを無くすために私はここへ来たのよ」
と覚悟を決めた。すると宝華も
「私も覚悟は出来たわ。こんな奴らを絶対に許さない」
と奮起した。あとは姉さん達だけど、今はあまりしゃべらないほうがいいな。すると床から何か黒い物が出てきて、やがて人間体になっていった。そうカオスだった。
「全く厄介だな、こんな時に。姉さん達は隠れて」
僕は背中からスライムを出して、姉さん達を体の中に隠した。白沢や宝華も武器を取り出し、戦闘態勢になった。
「なんて奴らなのっ!?どんどん湧いて出てくるんだけどっ!?」
カオスはどんどん湧いて出てきて、やがて部屋を埋め尽くすぐらいの数まで増えていった。三人ではきついだろう。しかし、ここまで来たらもう逃げられない、その事実はみんな同じだった。
「いいか、カオスを倒す、それだけだ。いくぞ」
三人はカオスの中に飛び込み、戦った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
とある部屋である人が座っていた。さっきのローブ人間でもらった資料の確認中だ。
「そ、そんな・・・こんなことが・・・」
その資料で何かを見つけたらしい。グレゴリーの本当の計画を・・・
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
時はセブンブレイ王国、地下水道の研究所にて。そこに背中合わせで座っている三人の姿が見えた。黒季に白沢、有川の三人だ。この状況を見る限り、カオスを全滅させたらしい。しかしその代償にすっごい疲れた。
「まさか、こんなに疲れるとは・・・」
「も、もう膝が震えて立てないです~」
まあ二人はまだ経験が浅いから仕方がない。しかしこの僕でも魔法無しではきつかった。魔法を使うとその分、魔力を消費するから無下には使いたくないのだ。僕の体のスライムはほとんど魔力で保たれているため、魔力が無くなると体を維持することが出来ないのだ。なので魔力の無駄使いはしたくないのだ。僕は体に手を突っ込んで、腹をえぐった。するとそこからまた三人が出て来た。姉さんと妹だ。
「お疲れ様ね。どう、立てる?」
「しばらく無理っぽい。誰かおんぶして」
魔力がないのか、疲れてるのか、座っているせいか立てる気力がない。春香姉はやれやれといわんばかりに僕を立たせて、背中に乗せた。
「全く、今も昔も世話がかかるわね?」
「すんません・・・」
懐かしいな、春香姉におんぶしてもらうのは。昔はよくおんぶしてもらったっけ。春香姉に文句を言われ、僕も反抗はするけどおんぶは必ずさせてもらったな。
「よし、このまま奥へ進もう」
「え?大丈夫なの?」
「しばらく魔力を溜める。数分あれば大丈夫だ。その間に進んで」
「みんなはどうするの?」
「一応ポーションを持たせたから、飲めばすぐ回復するよ」
そう一応異世界だからポーションは存在する。ポーション一瓶で一般の人間は回復するが、僕のような魔力量が多い場合はポーション一瓶では足りない。しかしその弱点を克服するため、しばらく休むと自動的に回復するという能力を作ったため、魔力の回復は一応出来る。これ以外に便利。
「ポーション飲んだらすぐ回復したわ。この調子で次に進みましょう」
白沢はポーションを飲んだからすぐに元気になった。宝華も立てるようにはなった。これで準備はよしだ。さてあの奥にある扉へ進もうか。最初から一番気になってた所だ。そこに何があるのか気になってた。結構頑丈な扉で簡単には開けられない。なので僕のスライムを使ってこじ開けることにした。背中からスライムを出して、それを扉の4つの隅に配置する。その後、みんなを遠く離れた場所に移動させて、ある程度距離を取ったらそれを目いっぱい引っ張るというちょっと強引なやり方で開けた。何しろパスワードキーが無く、カードキーシステムになってたから開けられようが無かったからね。その後、扉をうまく引きずり出して、その辺に投げ捨てた。
「わざわざここまでする必要ある?」
と宝華に言われながらも、終わりよければ全てよしだ、うん。部屋の中へ入ろうか。その部屋は中央に長い机が置いてあって、ずっと遠くまで伸びていた。一体どこまであるのだ?しばらく奥へ進むと、またしても普通の大きさぐらいの扉があった。
「うりゃあああーっ!!」
これは宝華の蹴りで軽く開けることが出来た。すると今度はまた景色が一変した。そこは夜のように空が暗く、地面も黒くなっていた。しかも大きな棘が生えてるし。
白沢「ここはどこなの?」
黒季「たぶん転移魔法で別の空間に飛ばされたみたいだ」
春香「別の空間ってここどこなの?」
黒季「知らない」
とりあえず前へ歩くしかなかった。まるで不気味な森に入った気分だ。生き物がいる様子もなく、人ですらいる様子もない。いたらホラー的になるんだけどな。しばらく歩くと今度は大きく開けた場所に入って、そこに大きな建物を発見した。見た目はヨーロッパにありそうな雰囲気の建物で、窓もたくさんあり、まるでホテルみたいな建物だ。あそこでも同じ構造の建物を見た気がするけど。
「ここは・・・ホテル?みたいな場所ね」
夏奈姉は一目見てホテルだと分かったらしい。
「入ってみましょうよ」
白沢は入って確認がしたいそうだ。まあ、いいんじゃない。
「何怖いこと言ってるの!?こういう場所に限って何かが起こるのよっ!?」
秋穂の言ってることも事実だな。実際こういう場面で大変な目にあってきたからな。でも入ってみるだけ入りたいな。
「入ってみるだけならいいじゃない?普通のホテルなんだし」
白沢が同じことを言った。もちろん秋穂は反対して、宝華も反対した。
「ちょっと何平然と怖いこと言ってるの?!」
「大丈夫よ、私達ならなんとかなるよ」
「いやいやいや、どこの自信それ?!」
白沢のあまりの発言に宝華はとうとうツッコんだ。宝華はツッコみ役にぴったりだな。僕は春香姉の背中から降りて
「じゃあ僕が入るから、それでいいね」
と言ってホテルの扉を開けた。何も起こらないことを祈りながら開けるも、中は普通のホテルのロビーだった。特に怪しい気配も感じなかったので、みんなを招き寄せた。みんな中に入った所で色々辺りを見渡すも、人のいる気配は感じなかった。本当にただのホテルだろうか?すると上の方からチーンッと音がした。彼女達は慌てて中央の広場に集まってしまった。実際、上の方にエレベーターがあり、その上の回数表示の所が動いていて、矢印がここ1階の所を指していた。すると扉が開き、中から誰かが出て来た。
「ようこそ、我々の拠点へ。ここはグレゴリーの第2支部。ようは私たちのアジトです」
「ここまでよく来れたな。ま、僕の力でここに繋げたんだけどね」
「みんな~、歓迎するわぁ~。今すぐにお茶の準備をするわぁ~」
どうやら中から三人組の女性が現れた。しかし暗いので顔は見れないが。すると急に照明が付き、辺りが明るくなった。明るく見ると、本当にホテルだ。受け行けもあるし、休憩所もある。それに女性達の顔も見えた。一人は眼鏡を掛けたチャイナドレス女性で、もう一人はフードを被った女の子、一人はドレスを着た優しい感じの女性ってあれ?どっかで会った気がするな?
「あなた達がグレゴリーの幹部なの?」
「そうです、私達はグレゴリーの中でも最も強い暗黒の七将軍の一人、火災将軍のマールス・バーミヤン」
「同じく月食将軍のルーナ・ココース。面倒くさいけどよろ~」
「私は~木財将軍の~ユピーテ・ジョリーパ。よろしくねぇ~」
「こ、この人達、何か威厳を感じるわ!?」
白沢も感じたか。そう、この三人はあの暗黒の七将軍の将軍だったのだ。そういえばあの二人も同じことを言ってたような。確か・・・メリウスとウェヌスだっけ。実際、僕と彼女は戦ったことがあるから、その実力を知っている。だから油断は禁物だ。
「本日はこちらに来ていて抱いて誠に申し訳ないのですが、あなた方には死んでもらいます」
「いきなり何っ!?」
「同じく」
マールスの発言に春香姉は驚いた。死んでもらうですってっ!?なんでこんな目に合うのっ!?春香姉の言いたいことは分かった。
「まあ、せめて僕達を楽しませるぐらいにはならないとね」
「いや、無理~!!」
「言ってるね」
秋穂も全力で否定してるし。
「うふふ、私も張り切っていかないといかないのでぇ~死んだらすみません~」
「優しい顔で言ってることが超怖いっ!!それにその笑顔も怖いっ!!」
「分かる」
宝華の言ってることには同感する。あの女性、いつもニコニコしてるけど敵だからねえ。
「では早速始めさせて頂きます」
マールスがそう言うと三人共、上から飛び降りてこっちへ向かってきた。僕は近くにあった椅子をマールスに投げた。するとマールスがその椅子を取ると、椅子は突然発火してしまった。まさかこれが彼女の能力かっ!?
「私の能力は見た通り、火を使う能力”ハートに火をつけて”です。私に触れたものは何人たりとも燃えて無くなります」
「あ、やべーな。というわけで宝華に任せる」
「てまた私に丸投げしたー!!」
僕は宝華を捕まえ、彼女と入れ替わるようにその場を去った。今度はあっちのフードの子の能力を調べよう。
「私を弱いと思わないことね。それっ!!」
すると椅子や机がいつの間にか切られていた。その後も彼女は攻撃をしてくるが、どのような力でどこにあるのかさっぱり分からなかった。しかし僕の目はどんなものでも見れてしまう。よく見ると透明な何かが背中から出ていたのだ。
「やっと分かったようだね。僕の自慢の武器、”透明長棘鞭”は先端が尖っているから、どんなものも切り裂くことが出来る。まさに無敵の武器だ」
「じゃあここはお前だね」
「任せて」
今度は白沢に振った。彼女の能力なら何とか大丈夫だろう。残るはユピーテだが、彼女は何もしてこない。いや何かをまき散らしているのか?あまり匂わないほうがいいかな。すると体が急にだるくなってきた。何だこの感覚は?まるで運動をぶっ通しでやった感覚だ。それは姉さんや妹にもきたようでみんな意識がもうろうとしていた。
「私の能力はぁ~”バラ色の人生よぉ~。私のフェロモンはぁ~みんなを状態異常にするのぉ~。麻痺、毒、眠りなどね。さっきは脱力のフェロモンを放ったけどぉ~、あなたには効果がないのぉ~?」
「あいにく、風邪になったことがないんでね」
「あらあらぁ~、じゃあ精一杯おもてなしをしないとねぇ~」
そう言うとユピーテは一瞬消えて、姉さん達の方へ移動した。まさか殺る気か!?スライムを伸ばし、すぐさまユピーテの攻撃を守った。
「あらぁ~、すごいものを持っているのねぇ~。ならこれならどぉ~」
そう言うと今度は黄色い粉を吹き出した。この匂い、まさか麻痺か。これを吸うと姉さん達が危ない。再びスライムを伸ばして姉さん達を安全圏までに送り込むも、
「隙ありっ!!」
と僕の横溝を殴って来た。どうやら、狙いは姉さん達ではなく僕の方だとはやられた。その後、僕は受付所まで飛んで行った。
「黒季っ!!」
「黒ちゃんっ!!」
「お兄ちゃんっ!?」
春香姉、夏奈姉、秋穂は驚いてしまった。するとユピーテが突然現れて
「みんなもあんな風に会いたくなかったらぁ~私達のために働かない?私はみんなと違って優しいし~、痛めつけないからぁ~いい案だと思うけどね~?」
と勧誘してきたのだ。
「だ、だめよっ!!入ったら何されるか分からないからっ!!」
宝華はマールスの発火能力に苦しめられていた。いくら水属性といえど、多少のやけどはする。それにさっきのルーナの攻撃で肩を刺された。なので肩は負傷しているためうまく攻撃が出来ないのだ。だから今は避けながら躱すしかなかった。すると向こうから白沢が飛んできてぶつかってしまった。その拍子に倒れこんでしまった。
「ごめ~ん。あの子強すぎて太刀打ち出来ないよ~」
どうやら白沢も苦戦していた。何しろ見えない武器に苦しめられたそうだ。それに体中、切り傷もありどれだけ大変だったかが分かってしまう。て今はこっちも危なかった。マールスやルーナが徐々に近づいて来て
「どうやらここまでのようですね」
「やっぱりつまんなかったよ」
と彼女達を殺そうとしていた。するとユピーテが
「待ってぇ~!!その子達を殺すなんて可哀そうよぉ~」
と止めてたのだ。
「何の真似だ!!」
と怒るルーナにユピーテは
「その子達は強いしぃ~、今後のためにもぉ~グレゴリーに入れたほうがぁ~平和的かなぁ~と思ってね」
と弁解した。それを聞いたマールスは
「確かにそれならいいでしょう。私達のために働くのであれば、あなた達を殺さないで上げます」
と提案してきたのだ。それを聞いた宝華は
「冗談じゃない。なんであんた達の所で働かないといけないの?」
と怒り出したのでルーナが
「うるさい!!なら死ね!!」
と短刀を取り出して、腹を突き刺そうとした。しかし間一髪で青の三叉槍で防いだのだ。しかし力があまり入れず、いつ刺されるか分からなかった。もはやこうなっては時間との勝負になって来た。このまま受け入れるか、死ぬかの二つの選択になっていた。すると春香姉が
「冗談はその辺にしなさい。たかが二流の能力者が」
と相手を罵ったのだ。流石の発言に三人は驚いてしまった。
「いい、私はねそんな縛られたルールを守るのが大っ嫌いなの。例えわが身を滅ぼす運命でも私は死ぬまで何者にも屈しないわっ!!」
「何ですってっ!!私達の願いを蹴るというのですかっ!?」
「当たり前でしょっ!!私だって変な組織に入りたくないわ!人間を怪物にする組織に誰が入りたいのっ!!私は私自身で生きていくっ!!あなた達の指図は何一ついらないわっ!!」
今度は夏奈が罵った。すると秋穂も
「私は知ったの。私が今、人として生きてることが幸せなんだってことに。怪物にされた女性達は私の人生を羨ましかったんだと思う。だから、私はこんな思いを誰にも経験させたくないから、あなた達と戦うのっ!!」
と言うとルーナは怒りだして
「貴様らっ!!能力もないくせに調子に乗ってっ!!弱者の戯言にしか聞こえないんだよっ!!」
「能力に頼っているあんたに言われたくない。能力の強さに頼ってるアンタが一番弱いのよ」
「何だとっ!?」
「それより私が許せないことがあるの」
「それは何なのですか!?」
「それは・・・大事な弟を傷つけたことだっ!!!」
「・・・・・は?」
春香の言葉にみんな固まってしまった。何言ってんだこいつ?しかし、それに続き夏奈も
「そうよっ!!私の可愛い弟をよく殴ったわねっ!!その時点でもう許さないわっ!!大事な体に傷がついたらどうするのよっ!!」
「いや何を言ってるんだ、お前らっ!!」
「ほら、秋穂も何か言ってっ!!」
「これ、わざわざ言わないとだめなの?」
秋穂は呆れてしまったが、姉さん達は本気だ。ていう何でお兄ちゃんに対して熱くなってるの、二人揃って?
「呆れました。あなた方がこんなにも愚かだったとは。良いでしょう、望み通り消えてあげます」
「え、別に消えたいなんていってないけど」
しかし、秋穂の思いは届かず、マールスは火球をこっちに飛ばしてきた。あ、これ危ないかも。しかも躱せない。その後、三人は火球に当たって爆発した。辺りは一面火の海になっていた。
「そ、そんな・・・」
「う、嘘でしょ・・・」
呆然とする白沢と宝華。それに対し
「全く、お前が余計なことをするから」
「え~!!せっかく勧誘したのにぃ~!!マールスちゃん、ひどいっ!!」
「これは彼女達が望んだことです。後はこの二人を処理すれば・・・」
「ちょっと待ったぁぁぁぁーっ!!」
その時、火の海から声がしたので振り返ると、そこには三人の姿が見えた。それに無傷でピンピンとしていた。
「な、バカなっ!・?」
「どうなってんだっ!?」
「嘘ぉ~!?」
三人は驚愕して絶句してしまった。白沢と宝華はこの様子を見て、あることに気付いた。それは自分達も経験した、あの石が守ってくれたのだ。
「・・・時は来たか・・・」
一人の人物がしんみりと呟いていた。恐らく人間だろう。何故か仮面をつけているが。その後、少し歩いていくと、ある絶景の所まで来た。そこは辺りを見わたせば、セブンブレイ王国が遠くに見える所に来ている。その人はそこで何をしていたかは分からない。
「今は様子見だな」
そう言うと、すうっと消えてしまった。




