キゲンデの大地にて
「何?呼び出した当の本人が来ていないだと?」
その頃、場所は変わってとある部屋にみんながいた。最低でも7人ぐらいはおるかな。男が3人、女が2人、後はよく分からない奴が1人おった。しかし、みんなの顔は暗い。何しろ、1時間以上待たされているからだ。
「一番乗りで来たのですが暇すぎて帰りたいです・・・。それとももう等の本人が来ないのでは?」
と長身痩躯の青年が呟いていた。灰色のコートを着ていて、髪を人房長く垂らしている。どうやら彼が最初についたらしい。見た感じ、冷静沈着な男のようだ。それと反対に怒りをあらわにしてる者もいた。
「せっかくこんな辺境な所に来てやったのに、お茶もないのか?」
彼は人間ではないが、性別は一応男性だ。銅色の怒り顔で口もあり、その口で喋ることが出来る。それに黒色のごっつい鎧も着てるし。付け加えに一張羅の黒いコートも着用している。みんなと雰囲気も違う。そんな彼は怒り心頭だ。すると今度は横から女性の声がした。
「そんなに焦るでない、オッサン。久しぶりに呼ばれたし、それに全員ではないけど半分も集まってくれるなんて滅多にないじゃないか?」
女性はこの空気を静めようとしていた。紫色の長髪で同じ色の服を着てる。おまけに蛇が周りにいる。しかし、蛇は襲うことなく彼女に懐いている。どうやら彼女のペットだろう。
「そうだ。我儘が過ぎるぞ貴様っ!!ここは神聖な場所だ。態度をわきまえろっ!!」
と奥からも男性が助言してきた。しかし彼も人間ではない。緑色のごっつい鎧を着ていて、龍の顔を模した兜を被っている。ちなみに口はないが、龍の口の中に大きな目がある。飾りではないそうだ。手には自身の身長よりも大きいハンマーを握っている。
「貴様っ、誰に向かって命令しているっ!!私をあまり怒らせるなっ!!」
「なら冷静になれっ!!そんな状態ではみんなの気が収まらん」
ごつい者同士が目を合わせてバチバチしていた。そんな事をよそにわいわいと喋っている者もいた。金色の長髪で褐色肌の女性と先と上が尖った兜を付けて、両肩に弾帯が備え付けられ、青い鎧を着たこれまたごっつい者がいた。
「お前っ、元気そうだな。あっちは楽しかったか?」
「ガン・・・ガン・・・オデ、ミンナトアエテウレシイ・・・ガン・・・ガン」
そう、彼は正真正銘ロボットなのだっ!!なのでいつも片言で喋っている。とここまで紹介していると大きな扉が急にドンッと大きな音を立てて、開いて行った。みんなそこに注目して、その後平服した。入って来たのは何やらこの中では一番小さな者だった。ふよふよ浮いて長い垂れ耳に黒い体と長い腕、そう久しぶりの登場、アートルムだった。アートルムは一番奥に行ってそこで止まった。
「待たせてごめんね、みんな。色々見て回ったら、帰れなくなっちゃってね。時間がないっていうのになかなか行けなかったんだ」
「いえ、あなた様のことですから我々も承知しております」
「フォローありがとう。では早速みんなを何故集めたか教えてあげよう。顔をあげて」
そう言うとみんな顔をあげた。すると目の前に急にモニターが映し出されて映像が流れた。
「これは前日の基地の襲撃時の映像だ。この映像に映っている奴らを見てくれ」
「「「「「「!!!!!!」」」」」」
みんなの表情は驚いてた。今までいろんな組織と敵対していたが、こんな組織を見たことがないからだ。
「マゼンタの隊員ではないのですか?」
「残念ながらマゼンタではない。サファイア騎士団でもないよ」
長身痩躯の青年の質問にアートルムは否定した。しかし嫌な顔はしなかった。
「では一体何なのじゃ?」
「それは僕にも分からない。ただ、うちの暗黒の七将軍のうち、二人がやられてしまってね。研究員もやられてしまった。幸い一命は取り留めたけど、すごい重症だったんだ」
その話を聞いて、みんなさらに驚愕した。
「まさかっそんな奴聞いたことがない」
「一体どこの誰だ?なぜやられた?」
「ほう、これはおもしろいな」
「もしかするとマゼンタの隠れ部隊か?」
「いや待て。これだけでは何とも言えない」
「ガン・・・ガン・・・ツヨソウ・・・ガン・・・ガン」
「今日は彼らのことで集まってもらったんだ。もしかすると我々の邪魔になる存在になるかもってね」
そう、本日の議題はノワールファミリーについてだ。こうなった以上、黙ってはいられなくなったらしい。もし敵対するのであれば、彼らを要請しないといけないからだ。そういえばまだ彼らについて話してなかったね。彼らはグレゴリーの中でもさらに上の、あの暗黒の七将軍よりも格上の存在なのだ。その名は”十二神将”と呼ばれている。その名の通り、神のような強さを持っている。それが12人もいるから、要請するのは滅多にないらしい。ではその12人の自己紹介をしよう。灰色のコートを着た長身痩躯の青年は”宮毘羅大将のグレマーズ”、銅色の鎧を着た男は”跋折羅大将のブロンガス”、金髪褐色の女性は”迷企羅大将の琥珀”、緑の鎧を着た男は”頞儞羅大将のドラゴ・ジャルダン”、全身紫の女性は”珊底羅大将の青紫”、青い鎧のロボットは”毘羯羅大将のブルトシュヴァイン”。ほかにもあと6名いるが、ここには来ていないためまた後日の紹介となる。
「君達なら彼らについて知ってるかなって思ったけど、なんか悪いね」
「いえ、滅相もございません。我々の勉強不足です」
「あららブロンガスおじさんったら、さっきと態度が全然違うんがのー」
「まあこれから学べばいいさ。それより厄介なのが彼らがもしマゼンタと接触したらどうなると思う?」
突然アートルムが衝撃な発言をした。これには一同驚いた。
「あっごめんね。へんな質問をしちゃったね。でもいずれ敵として立ちはだかるかもしれないってことになったら・・・」
アートルムは何か言おうとしたが、途中で黙ってしまった。何を言おうとしたかは大体察した。なので
ドラゴ・ジャルダン「アートルム様、そんな心配はご無用です。そんなたかが基地を一つ破壊したぐらいで粋がる奴らに負けるはずがありません」
ブルトシュヴァイン「ガン・・・ガン・・・オデガゼンブタオス・・・ガン・・・ガン」
グレマーズ「お手を煩わせるようなことは致しません」
ブロンガス「どうか我々のご心配をなさらないようにしてください」
琥珀「全部ぶっ潰せばいいんだろ?楽勝だって」
青紫「でもちょっとだけ興味を持った」
みんなアートルムのフォローをしてくれた。この言葉を受け止めて少しはホッとしたが、それでも不安は残っていた。
(あの男は最初に会った時からさらに強くなっている。僕ならまだしも彼らにはまだ危ない存在だ。そうなるともう一つの部隊に頼むしか・・・いや、まずは様子見だ)
これから先、このグレゴリーが残っているか、それとも滅ぼされるか、それは自分にも分からない。だからそういう障害物は一刻も早く取り除かないといけない。しかし、相手がどのくらいの強さなのかは検討がつかない。
「もう怪人を送り込んでいるからそれで観察しようと思うんだ。一応彼にカオスを渡しておいたけど、念には念をね」
「流石アートルム様っ!!もう行動しておられるとはっ!!」
ジャルダンが感激していた。一応この十二神将のメンバーは僕を敬っている者もいれば、興味もない者もいる。特に来てない人はそういう者が大体多い。みんな自由人だからね。でも強制ではないし、来てくれるだけありがたい。
「今日はここまでにしようと思う。結果は後々みんなに報告するよ。それじゃあ解散っ!!」
そう言ってアートルムは消えていった。残った者は体を起こして、自由にした。
ジャルダン「まさか、あのアートルム様が警戒されるとは・・・奴らは何者なんだっ!!」
青紫「それは現在調査中とのことだって。一体何者かしら?」
琥珀「どんな奴でも必ず倒すだけだ」
ブロンガス「しかし情報がない中、どうやって対策をすればいいのだ?」
グレマーズ「しばらくは様子見ですね。今回はグレゴリーとは違うので対策を練らないといけません」
ブルトシュヴァイン「ガン・・・ガン・・・ヤツラ、テゴワイノカ?ナラ、ゼンブコワス・・・ガン・・・ガン」
みんなで集まって会合をし始めたが答えは見つけられなかった。今は報告が来るのを待つしかないか。
「せめて吉報であることを祈るわ」
と青紫は呟いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、キゲンデの荒野ではノワールファミリーとマゼンタが戦っていた。
「ほう、カオスと言うのはなかなかおもしろいな」
ノワールは今カオスと戦っている。それも剣を持った強そうなカオスとだ。いくら剣を持ってようが踏み込みが甘く、まともな攻撃をしてこない。なので
「”メタルスライムナックル”」
と腕をメタルスライムで施してそのまま殴ると、遠くへ吹き飛ばされてそのまま爆散した。ほかの所を見てるとみんなカオス相手には苦戦していなかった。カオスって特撮系の雑魚兵と同じものなのか?カオスについてますます興味を持った。一方あっちではアスールとドゥルジュが戦っていた。しかし宝華と何年もいたけど、あんな性格を持ってたなんてちょっと驚きだ。しかもところどころ英語を話してるし、これも面倒くさいキャラかもしれないな。
「ヘイヘイヘイッ、もっとアタックしてきなよっ!!」
「このあまがっ!!」
アスールは水泳術の効果で地中をスイスイと泳いでいるらしく、攻撃が一方に当たらないらしい。これってもう消耗戦じゃない?しかし彼女がそんな汚いことするかな?ちょっと不安になって来た。
「さてと、そろそろ遊んだし、今度は私からアタックするよっ!!”ハイドロスクリーム”」
一応攻撃はするんだな。良かった、いつも通りの彼女で。アスールの方は青の三叉槍を取り出して、矛先をドゥルジュに向けた。するとその先のほうから何やら水の塊が出てきて、次第に大きくなってやがて台風のようにグルグルと回り出した。そのまま長く伸びてドゥルジュを巻き込んだ後、空の方に進んでいった。
「な、なんだこの技はっ!!ぐはぁぁぁぁっ!!」
そして水が消え、ドゥルジュが空中に浮いている時、アスールは空高く飛んだ。
「まだまだレッツゴーよ。無限の彼方へ!!」
「く、くそ~!!この人間ごときに~ええい、負け・・・ぐはっ!!」
アスールは足に目一杯の力を込めてドゥルジュを下へ蹴りこんだ。そのまま落下して地面に跡が出来るほどの衝撃を与えた。その後震えながらも何とか立ち上がった。
「ぐはっ!?く、一体どこに行ったっ!?」
「私はここよ」
辺りを見渡しても彼女の姿は見えなかった。しかしある所で水の塊を見つけた。最初は小さかったが徐々に水が集まり続け、やがて人の形になった。そうアスールだ。彼女はどうやら水属性らしく、ブランが体を光の分子に変えることと同じく、こっちは体を液化しているようだ。おそらく水中戦では大いに役立つだろう。
「こ、この小娘がっ!!ふざけやがって・・・!!」
「ノーノ―ノー。私の名前はアスールよ。ちゃんと覚えなさいよ」
「うるせーっ!!この化け物がっ!!」
そう言ってドゥルジュは剣を構えてこっちへ突進した。しかし青の三叉槍をまた取り出して剣の攻撃を受け流して、そのまま反撃した。その攻撃でドゥルジュは後ろに転がり倒れてしまった。
「おのれーっ!!これでも喰らえっ!!」
そう言って今度は肩の角から電気攻撃をしてきたが
「問題ない。”ボディーメルティア”」
アスールは体を液化して攻撃をかわし、そのまま元の姿に戻った。
「く、くそっ!!」
「今度は私の番ね。”スパイラルアタック”」
すると水たまりの方から青の三叉槍が飛び出して、彼の腹を突き刺した。その後彼は刺された所を抑えていた。もはや剣すらまともに持てないほどだった。
「これでジ・エンドね。”スパイラルキーック”」
彼女は再び飛んで、青の三叉槍をドゥルジュに突き刺し、そのまま足を突き出して、柄の方を強く踏み込んだ。そしてドゥルジュの体を貫通した。
「ぐあああっ!!ば、ばかな、俺がこんな・・・女・・・ごとき、にーーっ!!」
と彼は言い残してそのまま爆散した。どうやらアスールの勝利らしい。それと同時にカオスと戦っていた者たちもカオスを全て倒し切っていた。ひとまずこれで戦いは終わった。しかし、終わっても盛り上がるムードではなかった。まだマゼンタの戦いが終わってないからだ。
「あとは貴様らだけだっ!覚悟しろっ!」
折角戦いが終わったのに、また連戦をするとはよほどの好戦的だな。ちょうど体も温まってきたし、相手をしてやろう。しかし、自前の剣ではなくスライム製の武器を使って。
「アスール、彼女達を連れて下がれ。あとは我がやる」
「O.K.いいよ。私達は休むわ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ドゥルジュの戦いが終わり、第2ラウンドへ突入した。相手はマゼンタの第8部隊隊長葉月桃樺だ。彼女の能力は確認済みだ。あとは剣術がどのくらいあるのか調べないといけない。最初に動いたのは葉月だった。
「いくぞっ!モンスターっ!!」
刀を抜いた途端、全速力で僕のほうに走って来た。一方武器をまだ持ってない僕は体のスライムで作った剣で戦った。しかし、いくら硬くしてるとはいえ、相手の刀には重みがあり、並みの人ではすぐ押し返られそうな力があった。おそらく鍛えられ続けてきたんだろう。何度も鍔迫り合いになりまがらも、何とか持ちこたえようとした。しかし能力や剣の技術もあるとはな。こんな人間なかなかいない。
「秘剣”南風月”」
今度は剣を縦に回転させながら切り付けてきた。スライムの体を活かし、すんでの所で回避したが、飛ばした斬撃が地面をも切りつけながら遠くの方へ行ってしまった。
「ほう、なかなかやるな。互角に戦い合えるなど」
「貴様もな。この攻撃を交わすとわな」
「こっちもずいぶん剣術を叩きこまれたからな」
「では最大限の力を私にぶつけろっ!!」
「そのつもりだっ!!お前も最大限の力を発揮させろっ!!」
ノワールVS葉月の戦いはスケールを超えた戦いになった。僕は剣の形からバールの形に変えた。
「何だそれはっ?それで戦おうというのか?」
「こっちの方が戦いやすいんでね」
「ふ、どんな武器でも構わぬ」
再び葉月から仕掛けて来た。しかし今度は武器が違ったのか、刀の刃先を釘抜き部に通すといとも簡単に受け流した。流石てこの原理。改めて感激するよ。しかし彼女の攻撃はまだ終わらなかった。今度は後ろから攻撃を仕留めて来たが、バールを後ろに持って行って防いだ。そのままバールを前のほうに移動すると共に刀も一緒に前に飛び出した。葉月は少しよろけながらも何とか態勢を整えた。
「まさか・・・こんなことになるなど・・・」
彼女は先ほどの戦いで体力を大きく消耗していた。それは彼女の仲間も同じでみんな地べたに座っている。魔力もそんな残ってないし、息切れもしてるから早いとこ終わらせて切り上げよう。
「もうお前には体力も魔力も残ってないはずだ」
「たとえそうでも、私は死ぬまでモンスターを倒すまでだっ!!」
しかし当の本人はまだ戦う気だ。このままだは彼女も持たない。なので強引に終わらせることにした。
「いいだろう、ではいくぞっ!!」
「おうっ!!かかってこいっ!!」
今度は同時に走り出して、どんどん距離が縮まって刀とバールの打ち合いになった。そして両者が止まった時、彼女の頬に掠り傷が出来てしまい、そのまま倒れこんだ。きっと体力を使い切ったんだろう。とりあえずお疲れ様だな。一方の僕はというと、服がちょっと切れただけだ。きっとぶつかった時にはもう体力がなかったんだろう。それにほっぺに彼女の血がついていたので、指でとって舐めた。すると体中に衝撃が走った。
(何だこの感覚はっ!!人間を今までたくさん殺し、食べてきたがこの人間はこれ以上ない絶品な味だっ!!これは面白くなってきた。彼女達を殺すのはもったいないな)
そして葉月をスライムで捕まえて、それを仲間の所へ渡した。
「今日はこの辺で帰る。ただ一つ伝えておくんだ。我々は”ノワールファミリー”だと」
その言葉に彼女達はキョトンとしていた。疲れたせいでもあるのか、頭の思考力が動かなかった。その後、黒い緞帳を出して、彼女達を中に投げた。抵抗の様子も見えたが、こっちも戦う気がないのでこれが安全で平和的解決だと思った。これで一通り終わったな。すると奥からブランがやって来て
「ねえねえねえっ!!あんな可愛い女子達を送ったの?」
「もうあっちも疲弊している。これ以上何を求める」
「彼女達、私たちのことをやたらと喋ったりするんじゃないのかなってこと。そうなると危ないわ」
「その時はその時だ。むしろ名前を広げたほうがこっちとしても面倒なことを省けるからな」
「全く・・・これだからまだまだ甘ちゃんね。私だったら口封じに軟禁するけど」
「お前の趣味に付き合う気はない。帰るぞ」
「全くつれなーい、待ってノワール」
みんなをシルバーフェンリルに乗せて、暗黒の魔城へ帰還した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「・・・ここは、どこだ?」
目が覚めるとそこは見慣れた天井が見えた。それにギャッジベッドで寝ていたらしい。あの戦いのあとから意識が飛んでしまって、その後の記憶が覚えてなかった。体を起こすと目の前には神無月、カレントも同じ状態になって寝ていた。どうやら疲れて寝ているらしい。私のわがままに付き合ってもらって悪かったな。すると扉ががらがらと開いた。入って来たのは二人の女性と変な姿の男の人が入って来た。
「だ、大丈夫ですかっ!?みなさん酷い大怪我でしたからっ!!」
「ほんとほんとっ!!急に寮の中に出て来たからびっくりしたよ。それに大けがしてたから、これは一大事だと思ってすぐに連絡したんだよ」
「二人ともすまないな。しかし私は大丈夫だ。それよりあの二人は?」
「別に命に別状はないし、たいした怪我もないから多分疲労がでたんだって」
「そうか、良かった。白鳳、ドナ、ありがとな」
そう彼女達も同じマゼンタで働く隊員だ。白鳳 すもも、白髪ショートのカールを巻いた女の子だ。彼女はまだ小学生で戦闘力は皆無だが、サポートとしては優秀でこの第8部隊では頼れるチームメイトだ。もう一人はドナ・マリー。赤髪ロングのツインテールが特徴の女の子だ。ちなみに葉月、白鳳は日本人、神無月はマゼンタ本部が置いてある世界、カレントは異世界人、ドナはエルフだ。マゼンタは大体スカウトで来る人が多く、それは地球でも例外ではない。極まれに力を持った子が生まれることもあるそうだ。あとマゼンタの本部が置いてある世界は、地球と異世界が融合したような世界で科学と魔法が発達したとんでもない所だ。世界観で言うと地球のように高層ビル、車、スマホなどがあり、異世界のように魔法が誰でも使え、ドラゴンなどもいるのだ。ただ一つ違うとすれば、そこは女性社会だということ。魔法は基本女性にしか出ないようで、男性は一応いるものの女性と扱いがかなり違っている。マゼンタに入るための女子高が世界各国にあり、いわば女性が社会の実権を握っているのだ。
「それとさっきからこっちを見てる貴様っ、いつまでおるんだ!?」
「おいおいおいっ、せっかく見舞いに来てあげたのに、ほら果物だって持ってきたし」
「お前のその奇抜なファッションセンスのせいで目がいつもチカチカするんだ。いい加減その姿で来るのをやめてくれ」
「これ気に入ってるのに・・・」
白いミリタリーロングコートを着て、グラスコード付きサングラスをかけているこの男、実はこの世界ではかなりの有名人だ。その名は”和世山 政希もとい”ジョージ和世山”と呼ばれている。何で有名かって?それはマゼンタの武器やワープ装置など彼が作った物だからだ。たまにメンテナンスをしに各マゼンタの寮に行き来してるのだ。ちなみに二つ名は本人が自ら名乗ったらしい。
「それより聞かせてくれないかい?あっちの世界で何があったのかを」
「・・・!!」
この男、何故そのことを知っているっ!!あれは極秘任務のはずなのに。
「誰にも言ったりはしないさ。君もあの厄介な総隊長にはバレたくないだろ?」
「・・・貴様、何が知りたい?」
「いや、ただあっちでどうしたのかなって気になっただけ」
「どうやって情報を得た?」
「・・・そこは感だよ。ワープ装置を起動させてるのにそのワープ装置から帰ってないし、それにあんな大怪我じゃなにか絶対あったって証拠ってことだ」
この男、なかなか鋭い。この男を懐柔するのは難しいな。しょうがない、せっかくだから二人にも話そう。そして葉月は向こうの世界で起こったことを全て話した。
「な、隊長と互角に渡り合える人間がいたなんてっ!!」
「人間ではない。モンスターだ」
「そ、それでもすごすぎます。しかも突如やって来た敵から守ってくれるなんて」
「変なモンスターもいるもんだね。でもそのモンスターがここに運んだってことになるよね?」
みんな議論をしつつも、なかなか理解が出来ない。そもそも、人間を救うモンスターなんて聞いたことがない。特別に訓練された者なら別だが。
「それにあのモンスターに一杯食わされた。不覚にも顔を傷つけられた」
「あわわわわっ!?余計不安になってきました」
「隊長でこの姿になったんだから、相当手ごわいはずね」
二人はおどおどし始めたが、彼だけは興味深々だった。
「なるほど。人間では勝てないモンスターか。それは興味が湧くな」
「今度は絶対に負けない。一体どうすればいいんだ?」
「・・・難しい質問だね、おそらく勝てないと思うよ」
「何っ!?」
和世山の答えに葉月は憤慨していた。
「何故私が勝てないと決めつけるのだっ!?」
「これは自然の掟さ。人間は人間、動物は動物、悪魔は悪魔、神は神、そしてモンスターをもってモンスターを制する・・・これが自然の心理だ」
「モンスターをもってモンスターを制する?何を言ってるんだ!?」
「今は分からなくてもいい。そのうち分かるさ。あっともうこんな時間か。それじゃあ僕はこの辺で失礼するよ」
そう言って和世山は病室を出た。残った彼女達で彼の言葉を理解しようとしたが全然分からなかった。しかし、彼女達はこの時はまだ知らなかった。その言葉の意味が分かる時が来るまで。
「一体彼は何を知っているのだ?」




