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スライムですが、なにか?

「死ぬとこだった・・・」


僕は一睡も出来なかった。原因は色田黒子のせいだ。昨日は風呂に一緒に入ったはいいが、頭や体を隅々まで洗われて、また背中を強くごしごしと洗うから背中が痛くて、風呂に入ると背中がひりひりした。また、寝る時も布団の数が少ないという理由で、黒子さんの布団で一緒に寝たが、黒子が寝たと同時に僕に抱き着いてきた。なんとかどけようとするも、魔力がないのか体力がないのか動けなかった。しかも、朝までこの姿勢だったから全然寝れなかった。布団からでると黒子さんが朝食を作っていた。今日はパンの耳をあげて砂糖でまぶしたものだった。黒子さんはまだ赤ちゃんの冬美と冬音にミルクをあげて、僕はパンを食べた。


「今日は市役所に籍を入れて、学校に入学手続きをして、必要な物を買っていきましょう」


と黒子さんは言って来た。今日は仕事が休みらしく、春奈さんも夏奈さん、秋穂ちゃんは高校と小学校に行ったらしい。だから、僕と黒子さんと冬美と冬音しかいなかった。ここは静かでなんだか落ち着いた。僕は食事を済ませた後、新しい服に着て、身支度をした。それと同時に黒子さんも準備が出来たらしく、冬美と冬音を抱えて家を出た。まず最初に向かったのは、言われた通り市役所だった。そこで黒子さんは受付の人と話して、僕の籍をいれてもらった。この世界での僕は「色田黒季」で誕生日は2008年1月23日らしい。昨日が23日だからとか言ってたな。次は小学校に行った。ここは夏奈さんと秋穂ちゃんが通っている学校だ。ここでまた教員という人と話して、転入生として入ることとなった。最後は僕の必需品を買おうと言って、大きな建物に入った。そこはショッピングモールと言って、中にはすごい人がたくさんいた。そこで服屋と雑貨屋、文具屋に連れてってくれた。


「大体必要な物は買ったから、ご飯たべようか」


と言ったその時、どこからか悲鳴声と銃声が聞こえた。すると、銃を持った覆面の男達が現れて、


「お前ら、静かにしろ!さもなくば全員殺すぞ!」


と脅してきた。男たちは店の中に入り、


「この中に金を入れろ。いますぐ!」


と店員を脅して、バッグを突き出した。店員はバッグにお金を詰めていた。これってあれだよね?強盗団だよね!


「すげぇ!」


僕は思った。本当にあれがやってきたのだ!人々は逃げ迷い、泣いたりビビッている。僕の心には恐怖心よりも好奇心が強かった。まさか強盗団がここに現れるなんて!夢中になっていると、強盗団は2階に上ってまた店員にお金を詰めさせてた。すると、強盗団の一人がこちらに近づいてきた。


「てめぇ、何しやがった!まさか、警察を呼びやがったな!」


捕まったのは、なんと黒子さんだった!後ろで何かゴソゴソしていたのは気づいていたが、何をしていたんだ?男は黒子さんから何かを取って、放り投げた。そして、男は黒子さんに銃を向けた。


「てめぇ。死にたくなかったら、おとなしくするんだ!」


と大声で言ってきたので、冬美と冬音が泣いてしまった。


「うるせぇぞ!そのガキ共を黙らせろ!」


と怒鳴ったせいか、ますます泣いた。


「ったく、うるせえな!もういい、こいつら殺すぞ!」


とリーダー格の男が現れた。殺すだって?せっかく助けてくれた人達を殺すって?


僕の中になにかが込みあがってきた。


「やめて!この子達を殺さないで!」


と黒子さんが説得するも


「るせぇ!これでもくらえ!」


と言って銃で頭を殴って気絶させた。それと同時に冬美と冬音が飛ばされたので、僕は走って二人を助けた。男共は


「何だこのガキ?お前もこいつみたいに始末してやる!」


と言われたので


「なら、やってみろ!よくも母さんと妹達をいじめたな。本気でかかってこいよ!」


と罵った。すると強盗団は


「小僧のくせに上等だ!ぶっ殺してやる」


と言って銃を僕に向けた。魔力がないこの地球で勝敗は低いが、それでもやるしかないと思った。となると母さんと妹が危ないから、近くの店に移動させた。


「もういいぞ!」


と言った途端、強盗団は銃を乱射させた。銃弾は僕の手、足、体、顔を打ち抜いて、ハチの巣状態になって、その場で倒れた。


「ったく!このガキ、てこずらせやがって!だが、ガキは殺した。次、行くぞ」


と強盗団リーダーが次に移動しようとした時、足が動かなくなった。強盗団の足全部動けなくなった。なぜだ!?と戸惑って下を見ると、足に何やら黒い物が巻き付いていた。


その後を追って見ると、そこには倒したはずの僕がいた。


強盗団は驚き


「なぜ、死んでない?」


と問いかけたので


「スライムですが、なにか?」


と返答した。


「あ、それと今この建物に『時間停止ストップ・ザ・クロック』をかけたから。範囲は狭いけど、僕と君たち以外は動いてないから」


と言った。なぜ、魔法が使えたのか、それは僕にも分からない。だって地球には魔力がないし、魔法だってない。なのに使えたのは何でだ?まあ、それは置いといて、今はこっちを片付けよう。


「さて、次はこっちから・・・」


「この化け物!」


と言って、男はまた銃を乱射した。いや、今言おうとしたのに、それに僕、スライムだし、そもそも死なないし。こいつら、全く学習しないな。しょうがないから、銃は壊そう。


「その銃ってのが邪魔だから、壊すね。『黒い触覚(ネグロ・テンタクル)』」


この魔法は僕の体から先の尖った黒い触手を出す魔法だ。この触手も操ることが出来るから、まずは強盗団の銃を壊して、その後強盗団リーダーを除く人達の首を切った。驚いたリーダー格の男は


「俺が悪かった。ゆ、許してくれ~!」


と泣いてせがんできた。どうやら、あの攻撃で戦う気が無くなったらしい。でもこの魔法、色々便利だけど弱い魔法だし。でもまぁ、こいつらと色々遊んだから


「いいよ、許してあげる」


と言った。リーダー格は


「ほ、本当か!」


と安心した様子だった。でも、もちろん許すのは嘘。


「だけど、お代は君の命でね」


「え?」


リーダー格の男は言葉を失った。


「だって君達、母さんと妹が泣いてたのに許そうとしなかったじゃん。だから、僕も許さない」


と言うと、リーダー格の男は


「な、何でだよ⁈何で死ななくちゃいけないんだ!」


と怒った。すかさず僕はこう答えた。


「君達が同じことをしたから僕も同じことをした。それだけの理由さ」


リーダー格は絶句した。もうこれ以上、話してもしょうがないので


「じゃあ、これでバイバイだね。『死の日食(モルス・エクリプス)』」


そう唱えると床が一面黒くなって、どんどんリーダー格の男が沈んでいく。リーダー格の男は動こうとするも、体が重くて動けなかった。


「なんだ、これは!お前、一体何者なんだ!」


と言われたので


(ノワールっと名乗っておこうかな?いや、それじゃぁなんか面白くない。あ、そうだ!)


「通りすがりのスライムだ!覚えておけ!」


と言った。


そう言った後、リーダー格の男は最後の抵抗も空しく黒い何かに沈んでいった。


「こいつらは何か実験に使えそう!」


と思い、体の中に残りの遺体を入れ込んだ。僕は『時間停止ストップ・ザ・クロック』を解除して、母さんの所に行った。まだ母さんは気絶していたので、先に妹達を抱きかかえた。よかった。泣き止んで寝ているだけだ。しかも、怪我もしていなくて良かった。すると、しばらくして母さんが目を覚ました。


「あれ?強盗の人達は?」


と言ってたので


「あの人達なら消えたよ、母さん」


と伝えた。こっちのほうが安心出来るからな。ほかの人達も動き始めて、急に強盗団がいなくなったことを知った。これで安心だと安堵していると、母さんが急にハグをした。


「無事で良かった」


そう言われて照れくさくなった。こんなに感謝されたのは初めてだ。しかし、母さんはなかなか離してくれなかった。


「それと今、私を母さんって。今まで黒子さんと他人行儀だったのに。すごく嬉しい!」


どうやらそっちのほうがうれしかったみたい。守ってくれたことはいいのか⁈しばらくして、帽子と盾を持った大勢の人が現れて、僕達は話をした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


しばらくして、警察という人達から色々と話したが、自分にはよく分からなかった。とりあえず、みんなを守った人っということにはならないだろう。色々とめんどくさいから。そして、そのまま家に帰った。家には夏奈さんと秋穂が帰っていた。


「ママ、テレビ見てたけど、今日行ったとこじゃないの?」


と夏奈さんが心配していた。秋穂も


「ママ、大丈夫?」


と心配してくれた。母さんはケロッとした顔で


「大丈夫よ、みんな。私とこの子達は元気よ。それよりも今日はいいことがあったのよ!」


と嬉しそうに言ってきた。何々?とみんなは興味を持っていた。


「今日は黒季が私を”お母さん”って呼んでくれたのよ!」


やっぱり、そこが嬉しかったらしい。すると、春奈さんも帰って来て、


「お母さん、今ネットで見たけど、大丈夫だったの⁉」


と息切れをしながら、言ってきた。どうやら、走って帰ってきたらしい。すると母さんは


「大丈夫よ。この娘達にも言ったけど、何も心配しなくていいから。それよりも聞いてよ!」


と心配をよそにほかの話題を振った。


「今日、黒季がお母さんって呼んでくれたのよ!」


そんなに嬉しかったのか、食事中もずっとこの話をしている。いい加減飽きた。こんなことになるなら、言わなきゃよかった。僕はちょっと後悔した。すると、春香さんが


「じゃあ、私は春香姉さんって呼んでみて」


と言い出した。すると、隣にいた夏奈姉さんも


「私も夏奈お姉ちゃんって呼んでほしいな」


と言ってきた。よほど羨ましかったのか、二人も張り合っていた。このまま、言ってもいいかな。でも、後で冷やかされるのはごめんだ。と言っても、一応家族になった訳だし、ええい、しょうがない!僕はおどおどしながら


「は、春香姉。な、夏奈姉」


と言った。すると、嬉しかったのか二人は興奮して


春香「もう一度言ってみて!」


夏奈「なんか悪くない」


と嬉しそうに言った。すごい恥ずかしかった。隣にいた秋穂も


「あ、お兄ちゃんお顔真っ赤っか!」


と冷やかしてきて、僕はさらに恥ずかしくなった。


「良かったね、黒季!お姉ちゃんたちや妹にモテモテで!」


と母さんも冷やかしてきたので、死にたいとまた考えてしまった。飯食べて、風呂に入って早く寝よ。今日はいろんな所に行ったり、強盗団と戦ったり、みんなにいじられたりと悲惨な一日で疲れてしまった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


その夜、みんなが寝静まった時、黒子は一人外に出ていた。家で見てた笑顔ではなく、何か真剣な顔をしている。服装はスーツ姿やジャージ姿、洋服姿でもなく露出度が高い黒色の服を着ている。そのまま人気のない路地に入って誰かを待っていた。雲から隠れていた月が光を照らした頃、奥から何かが姿を現した。


「時間通りだね。待たせたね」


その声の主はアートルムだった。黒子は驚きもせず、近くに寄って話しかけた。


黒子「ごきげんよう、アートルム。それとも、前の名前の方が良かったかしら?」


アートルム「今のままでいいさ。こんな時間に呼び出してすまないね」


黒子「本当よ、わざわざこんな時間に呼び出すなんて非常識じゃないの?」


アートルム「ふふっ。君は昔から変わってないね。あの時もみんなのまとめ役だったじゃない」


何やら、二人は親密な仲らしい。でも、黒子は笑っていない。むしろ、アートルムに警戒しているのだった。どうやら、二人は過去に会ってたらしく、今も連絡しあうほどだ。すると黒子が


「で、今日は何の用で私を呼んだの?まさか、また一緒にいたいって言うんじゃないでしょうね?」


と問い詰めてきた。しかし、アートルムは涼しい顔で


「違うよ。それは本心だけど今日は違う。昨日、君が拾った子についてさ」


と返した。昨日拾った子。ああ、黒季のことか。あの子がどうしたのかしら?まさか!


「まさか、あなたの子なの!」


と黒子が答えると


「違うよ。僕の子じゃないよ。僕の分身を食べる子だよ。僕とは関係ない」


と答えた。黒子は疑った。何か隠してるわね。彼のことだから何か知ってるはずと考えたが、どうしてあなたが彼のことを知ってるのか、どうして拾ったことを知ってるのか分からなかった。


「僕はね、あの子をね引き取りに来たんだ。だから、渡してくれたら、もう君を付きまとわない。どうかな?」


「何を言ってるの。あの子は私が拾ったんだから、私の子よ。あなたにあの子は渡さない。帰ってちょうだい!」


「でも君は知ってただろう。あの子が人間じゃないってこと。お昼のニュース見たよ。強盗団が襲い掛かって来たんだってね。あの時は手が空いてなかったから助けられなかったんだ。許して。でも、なぜ強盗団が消えたのかは知ってるよね?」


「確かに時間停止の魔法を唱えていたから、とっさに無効化魔法をかけたわ。でも、あと二つの知らない魔法を使ってきたわね。あれは何だったのかしら」


どうやら、二人は黒季もといノワールの正体を知っていた。それに二人とも、魔法が使えたのだった!どうやらこの二人、ただ者じゃないらしい。するとア黒子がまた話した。


「あとスライムだって言ってたわ。スライムがあんな魔法、しかも時を止めるほどの魔力を持ってるとは信じられないわ」


「だから、君の所に置いたら危ないって言ったんだ。もし君の身に何かあったら不安なんだよ。僕に預けてくれたらいいって」


「心配ありがとう。でも、あの子は私が責任取って育てるって決めたのよ。もし何かがあってもこっちで対処する。だから、もう関わらないで!」


黒子がそう強く言うと、アートルムは黙ってしまった。彼女は知っていたのだ。彼に預けたら、何をされるかってことを。小さい子供、ましてや自分の子を売り渡すようなことは絶対にしない!これは黒子の想いであり本心だ。


「もう帰るわ。あの子達が待ってるし」


そう言って黒子は帰って行く。すると、後ろからアートルムが


「そういえばその衣装、懐かしくて綺麗だよ。昔みたいに似合ってるよ」


「それはお褒めの言葉として受けっ取っておくわ。ありがとう」


そう言って黒子は帰った。残ったのはアートルムのみ。アートルムは黒い緞帳(ブラックカーテン)を開いて、帰ろうとした。


「ますます気に入ったよ。絶対僕の物にしてみせる。待ってるよ」


アートルムは入る前にそう言って帰った。

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