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通りすがりのスライムだ!

目を開ければ、そこは光が見えるものがだいたい多いかもしれない。そこから始まる希望、学校に通って勉強をして、友達も作って、中学、高校、大学、そして恋人を作って結婚。子供ができて、美味しいものを食べて、そして死ぬ。それが何よりの幸せかもしれない。いや、それは人生という人形使い《パペティアー》が我々を操っているかもしれない。また、人生が人の取扱説明書を読んでそのルールに従っているだけかもしれない。それでも、充分幸せだと思う。しかし、自分は絶望という暗い闇から生まれた。辺りは暗く、とても希望があるようには見え無かった。ここはどこか、自分は何処から来たのか、そもそも自分は誰なのか。ただ、ひとつだけ分かっていることがある。それは・・・自分は()()()()()()ということだけだ。そう、気づけば得体の知れない何かになっていた。指の感覚はなく、肌がすうすうと風を感じる。自分は何になってしまったのか、どうしてこうなったのかはわからない。ただ、呼吸、考えること、動くこと、感情、男だということは分かった。そして、この体、なんか悪い感じはしない。この体を扱うには、しばらく時間がかかるだろう。だが、やって見せよう。これが人生なら、人じゃなくても、絶望だけでも、必ず希望と幸せを、なんなら全世界を手に入れてみせよう。そうだ、すべてはそこから始めよう。さあ、ここからは私の世界だ。だがその前に、眠たくなったから寝よう。

 それからもう数十年がたったころかな。ふと、自分がまだ生まれた夢をたまに見る。今となってはも

う古い記憶でしかない。ただ、懐かしいとは思う反面、そんなにいい思い出じゃないからどうでもいい

けど。それより、もう朝になったのか。台所では朝食の準備をしているようだ。どうして家族がおるかって?それは自分はこの家族に拾われたからだ。自分は今、色田(いろだ)家という所に居候している。家族構成は母黒子、長女春香姉、次女夏奈姉、三女秋穂、末っ子で双子の冬美と冬音。昔、雨の中をさまよっていたところを母さんに拾われた。親もいなく、名前すらなかった自分を快く受け入れてくれて、ついでに名前まで付けてもらった。その名前は()()()《くろき》。悪くない名前だった。その日から、僕はこの家族の一員となった。さてと前述はさて置き、今は高校生になった。


「ご飯冷めないうちにどうぞ」


と母さんが言って、みんなで一緒に


「いただきます」


と言って食べ始めた。食べ終わると、皆、パジャマやジャージから制服に着替えた。母さんと春香姉はスーツに着替えて、僕と夏奈姉と秋穂は制服に着替えた。冬美と冬音はもう洋服に着替えていたので皆で玄関に行って、笑顔でさあ行こうと思った瞬間、扉の前に眼鏡をかけた大阪のおばちゃん風の人が家族を睨んで立っていた。そして家族全員の笑顔が消えた。そうこの人は家族が暮らす東京にあるアパート「松田荘」の大家・松田アキである。


()()()()()()()()()()()


朝から最悪の一発目だった。この人と会う度に


「色田さん、いつ家賃払ってくれるんじゃ!もう、数か月も溜まっとるんじゃけぇの!!さっさと払わんかいの!!!」


とそう言って母さんに詰め寄ってきた。

そう、うちの家族はなぜか家賃を払うのが遅い。母さんは普通の会社に勤めているというけれど、母さんは


「松田さんをからかうのが面白い」


との一点張り。時間もないので、大家さんの静止を振り払いながら、走って逃げた。母さんとは途中で別れ、冬美と冬音を小学校に送って、秋穂は中学校に行って、春香姉、夏奈姉、僕はある所についた。そこは四月から通うことになる私立「広凌アンデルセン学園」という高校だ。数年前は女子校だったらしく、今は共学だが、その名残か今だ女子の数が多い。自分は近いからという適当な理由で入学した。春奈姉とは直前に別れた。なにしろ、春奈姉はこの高校の新米教師になるからだ。担当は世界史。去年、教育実習を終わらせて、今年初めての先生だ。夏奈姉は2年生だから、教室にいったけど、俺は新入生だから講堂に行った。そこではもう新入生がいっぱいで椅子を探すのに苦労した。なんとか椅子を見つけて座って、入学式が始まった。まずは学園長の挨拶から始まった。学園長の名は福山紫苑ふくやましおんというグラマーな美人が現れた。みんなは魅了されていたけれど、僕はまったく興味がなかった。まあ、話は長かったし、こんな感じだろうと思っていた。次に生徒会長の挨拶が始まった。これも聞き流した。次の新入生代表の挨拶だった。彼女の名前は白沢愛菜しろさわまな。ロングで茶髪で透き通って、目つきも優しい、まるで秋田美人のような顔立ちをしていた。声も綺麗で、講堂にいた人全員を魅了していた。それでも僕は聞き流した。次に教室へ移動となり、1-Bの教室に入った。僕の席は教室の真ん中だったので窓際でないのは残念だったが、代わりに朝、講堂で会った白沢愛菜と同じクラスになり、隣の席に座った。無論自分は興味がなかったが、それよりもクラスの人達が一斉に押しかけて来たのだった。他のクラスの人達も一斉に来て、まるで美術品を見るみたいに人が寄ってたかってきた。僕は静かな学校生活を送りたいだけなのに、流石に彼女も迷惑そうにみえたので、


「もうすぐ先生が来るよ。」


といってその場を静めた。そして、若い眼鏡をかけた先生が来た。名前を泉夢花いずみゆめかという。このクラスの担任だ。HRが始まって、途中白沢から


「ありがとね。たすけてくれて。」


と小声で言われた。とりあえず頭を下げて


「いえいえ。」


といった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


入学式なのか、もう昼頃には終わった。みんなが下校する中、僕はコンビニによって昼ご飯を買っ

て、家に帰ろうとしていた。その時、その道中にいかつい三人の不良が女性をナンパしていた。しかも

その女性は白沢だったのだ。朝からよく絡まれてるなと一瞬思った。このまま素通りするのも可哀そう

だし、不良の方に行って、


「あのぉ」


と声を掛けてしまった。もちろん、不良は自分の倍は背をかがめて、自分を睨みつけて


「何見てんだ。」


とキレそうになっていた。しょうがないので


「ナンパをするならよせでやれ」


と言ってやった。もちろん、不良達は怒って、今にも殴りかかりそうになったので、僕はびびりながら


「喧嘩ならここでなく廃工場で正々堂々やろう」


と誘った。不良達は賛同し、廃工場に行った。その隙に、白沢に


「早く逃げな。」


といって心配する彼女を残して僕も廃工場に行った。廃工場では不良達が待っていた。僕も入って、男達に近づいたところで他にもぞろぞろと、大勢の不良達が現れた。驚いたなぁ。十人ぐらいの不良がおったから。不良達は


「三人じゃ可哀そうだから仲間を呼んだ。」


と余裕そうにいった。


(恐らく、僕をたっぷりと痛めつけるんだろう。ひ弱そうに見えたから、こんな大勢を呼んだんだろう。)


しかし、僕は驚かなかった。むしろ楽しみでしょうがなかった。ついニヤニヤが止まらなかった。


「何笑ってるんだ。」


と怒る不良に対し、僕は


「いやいや、こんなに人数を呼んできてくれてありがとな。むしろ、パーティーは人数の多いほうが盛り上がるからな。」


と相手を馬鹿にしてやった。もちろん、不良は「殺れ。」といって、不良達が一斉に僕に殴ろうとした。しかし、僕は見切って全部のパンチを交わした。不良達は驚く間もなく、お返しの腹パンをたったらすぐに倒れてしまった。


「なぜ速いんだ!」


という不良に対し、


「お前らがナメクジ並みに遅いんだ。」


と言い返した。もちろん、すぐさま不良は殴ろうとするが、直前に猫だましをやって、隙が出来てしまい、その瞬間にみぞおちを押して気絶させた。一人残ったリーダー格は、僕に土下座をして


「許してくれ!」


と申し出た。僕はこれ以上昼飯の時間を無くしたくないので、土下座した不良を残して帰ろうとした。すると、その不良が


「くくく、ばかめ。」


といって落ちてあった鉄パイプを拾って僕の頭に叩きつけた。


「油断したな。何が正々堂々だよ。勝負は勝てばいいんだよ。この俺様に楯突いたらこうなるって、これで勉強になっただろ。強いものだけが勝つんだ。お前を仲間の所に持っていって再び教育してやる。いいか、最後に笑うのはこの俺様なんだよ。ぎゃーっはははっ!!!」



といって鉄パイプを抜こうとした。しかし、鉄パイプが思いのほか、重くなかなか抜くことができなかった。そうしているうちにみるみると鉄パイプが吸収されてしまった。


「なぜだ!!」


と戸惑う不良。それもそのはず、僕の全身がだんだんと液状みたいになっていくんだから。僕は不良を睨みつけて、


「これが僕の正体だ!!」


といった。そう、僕の正体はスライムだった。生まれた時からずっと、スライムだったのだ。最初な慣れない体で苦労し、それこそ人型を保つのに精一杯だった。しかし、次第にこの体に慣れ、色々と便利な所があると思ったので今は苦じゃない。怯える不良に対し、僕は取り込んだ鉄パイプを不良に向かって殴りかけた。鉄パイプは丁度不良の頭に当たって、血を流していた。逃げようとする不良の右足に、僕はカバンに隠し持っていた鉄のバールを指して逃げないようにし、そのあとスライムの拳で殴りまくった。不良は


「なっなんでこんな事をするんだ!!」


と言ってきたので、僕は


「ナメクジ以下の脳みそしかないきみに教えてあげる。きみが僕を殴ったから、僕も殴ることにした!!」


と笑顔で答えた。


「たっ・・・たすけてくれて。」


と満身創痍で泣きながら懇願するも、


「きみはこう言った。油断したな。何が正々堂々だよ。勝負は勝てばいいんだよ。この俺様に楯突いたらこうなるって、これで勉強になっただろ。強いものだけが勝つんだ。お前を仲間の所に持って行って再び教育してやる。いいか、最後に笑うのはこの俺様なんだよ。ぎゃーっははは」


と言い返した。不良はゾッとし、逃げようとしても右足を損傷して、後ずさりをしながら怯えていた。


「こいつらも一緒に教育してやるから覚悟しな!」


といって、右手をかざした。

すると、どこからか黒いもやもやとしたものが出てきた。


「これは黒い緞帳ブラックカーテンといってね、時空間を移動することができる言わばワープゲートだよ!過去や未来にも行けるし、別世界に行くことも可能だよ!!」


といって、不良を掴んだ。


「ただ、これだけの相手を運ぶには時間がかかるからな。そうだ、おいで、オバケ達!悪霊召喚術サモン・ザ・ゴースト


と唱えると、黒季の体から何かヒュルヒュルっと出てきた。それは不良にも見えて、間違いなくお化けみたいなものだった。お化けの見た目はまず、色がついていた。緑、赤、青、黄色、紫、水色、オレンジといった色で分けられており、緑や水色といったものは小柄で、赤や黄色は大きく、青や紫、オレンジは細長いもので、手や口もあり、目が大きいなどどれも独特の形をしたいた。ただ、しゃべることは出来ないのか、笑い声やうめき声などを発している。


「僕のオバケ達、かわいいでしょ。この子達はね、ライトの明かりも太陽の光も除霊術も一切効かない無敵のオバケだよ。しかも、透けることもできるし。ただ、みんないたずら好きだけどね。まあ、仲良くしてね。」


といって、オバケ達も次々と不良どもを持ち上げていく。


「や・・・やめろ!!貴様、それでも人間かっ!!!」


という不良に対し、


「僕は人間じゃないよ。冥土の土産に話しておこう。僕は・・・”通りすがりのスライム”だからね。」


そう言って絶句する不良を黒い緞帳ブラックカーテンの中に入れて、そのあと閉じた。「あ、言い忘れたけど、僕わがままなんでね」といって廃工場を去った。気づけば、もう夕方になっていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


家に帰るとみんなが夕飯の準備をしてくれた。今日は待ちに待った餃子だった。この餃子、実は数回しかでない贅沢品だった。いままでは小麦粉をといで、その生地をフライパンで焼く一銭洋食もどきを食べたり、食べれる草を採取したり。食料がないときは、チョコレートを少しずつ分けて食べたりしていた。それが今日は餃子だったのだ。もちろん、冷凍餃子は高かったので、餃子の皮、ニラ、ネギ、ミンチの代わりにツナ缶で作るのが我が家の楽しみだった。今日は色々とあったので、今日の餃子はとてもおいしく感じた。そうそう、あの後、白沢が警察を呼んで来たんだけど、廃工場はもぬけの殻だったらしい。まあ、別の世界に飛ばしちゃったからね。それよりも今あるこの幸せと家族と食べる食事のことだけ考えることにした。


 そういえば、どうして魔法が使えるかって?それはまだ僕が白金家に入る前に遡る・・・。


どうも菅波明晃です。この度は僕の小説を読んで頂き誠にありがとうございます。始めて書いた小説ですので、正直自信がありません。しかし、たくさんの人達に読んで頂ければ幸いです。これからもどんどん書いていきたいと思っています。短い後書きですが、何卒よろしくお願いいたします。

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